日本人の声

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・日本人の声
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日本人の男女の声に変化があるそうだ。

    女性    男性
1950~60年代 600ヘルツ 310ヘルツ
1970年代   520ヘルツ 350ヘルツ
1980~90年代 500ヘルツ 420ヘルツ

50年代から90年代までに女性は100ヘルツ低くなり、男性は100ヘルツ高くなった。半音以上違うということだ。この本によると原因はこの半世紀で男性は身長が高くなり、女性は社会に進出し高い声が特徴の女言葉を使わなくなったことなどにあるらしい。

もともと日本人は欧米人に比べて声が高い民族であるらしい。理由はひとつには背が低いからだ。背の高さと声の高さの関係には、ある係数を加えて反比例する「ファントの法則」がある。体が小さいと声帯などの発声器官のサイズも小さくなり、楽器と同様に小さいほど高い音を出すようになるのだ。聴く方の器官も同じだ。

「そのようにすべての部位が小さい人同士がコミュニケーションを交わす場合には、相手からの声は高いほうが聞き取りやすいし、聞き取りやすい声を出すためにも高くなるといった傾向が強くなる。この相互作用が繰り返されることによって、いたちごっこのように声は高いほう、高いほうへとエスカレートしていったと考えられる。」

もうひとつの理由は生活環境や文化にあった。広い草原や山岳地帯、木造建築に暮らすのに高い声が必要だったから、声は高くなったという。身体特徴や生活環境によって声は変わっていく。だから「声は民族を象徴する」と著者は結論している。

声の質には使用言語も影響している。欧米人は腹式呼吸で深い声を出すが、日本人は喉で出す声が多い。日本語が肺からのあまり空気圧を必要としない言語体系であるから、発声法が喉の筋肉を使った発声に最適化されているのだ。

日本人でも腹式呼吸はプロの歌手は当たり前のように使う。ボイストレーニングの基本は腹式呼吸の練習である。調査ではプロの歌手は腹筋80に対して、のどの筋肉を20使う。素人はその割合が逆になるという。体格が大きくて腹式発声の言語を使う欧米人とはちがって、日本人の深い声は意図的につくる必要があるわけだ。

発声の仕組みから、言語と声、民族によって好まれる声の違い、日本人が好む声(f分の1ゆらぎ)など、声に関する研究が広く取り上げられ、わかりやすく整理されている。日本人の、と題されているが日本に限らず、人間の声の魅力とは何かを考えるのに大変参考になる本だ。


・声のふしぎ百科 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/12/post-322.html

・7秒のイメージ・マジックであなたの声はもっとよくなる―相手を説得する、声の印象が変わる、気持ちが伝わる
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このページは、daiyaが2008年9月28日 23:59に書いたブログ記事です。

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