たのしい写真―よい子のための写真教室
写真家ホンマタカシが書いたオリジナルな写真史論と、理解のためのワークショップ、佐々木悟や堀江敏幸との対談、写真関連の私的エッセイなど中身は盛りだくさん。各所に写真資料も散りばめられていて、視覚的にも楽しい本だ。
「写真教育にはブラックボックスが多すぎると、いつも感じてきました。「天才的に撮るべきだ」と言う人がよくいます。教育の現場に身を置いていながら、「写真は教えることができない」と広言する写真家もいます。写真に関する文章も、わざと難しい言葉で書いているんじゃないかと勘ぐりたくなることがしばしばです。」
勘違いしてはいけないが、これはお子様向けのカメラ入門本ではない。ポストモダンの写真史を理解したい大人向けの教科書だ。これまでもモダンの教科書はたくさんあったが、他の分野の文化論と同様に、定説が固まっていないポストモダンはわかりにくかった。
ホンマタカシは歴史の転換点を『決定的瞬間』(アンリ・カルティエ・ブレッソン)と『ニューカラー』(ウィリアム・エグルストン)に置く。小型カメラと大型カメラ、主観的と客観的、モノクロとカラー、瞬間を切りとるシャッタースピードの違い。表現形態の歴史上の変化が年表や写真家紹介によってわかりやすく解説されている。
今日の写真の特徴としては、
(1)ストレートからセットアップへ
(2)大きな物語から小さな物語へ
(3)美術への接近あるいは美術からの接近
(4)あらゆる境界線の曖昧さ
の4つが挙げられている。
こうしたポイントを理解するためにいくつかのワークショップが用意されている。たとえば、「Q:あなたの好きな写真集の中から1枚の好きな写真を選んで、それがどのように成立しているかを言葉で説明し、次いでその1枚と同じ構造の写真を撮影してください。」という出題対する生徒と先生の回答例が示される。実際に自分でやってみたくなる楽しそうな出題ばかり。
自分なりの写真観、写真史観を持ちたいという人に特におすすめ。
というわけで、この本に興味を持つような方のために、明日の月曜日に「写真の境界線」というイベントを執り行いますので、興味関心のある方の積極的なご参加をお待ちしております。下記が案内です。私は司会兼発表者です。
・オーバルリンク写真部主催 2009 Vol.1 写真の境界線
http://blog.ovallink.jp/2009/08/photoevent.html
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