こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる

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・こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる
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2001年から2006年まで日本コカ・コーラ代表取締役社長、2006年より取締役会長を務める"Mr.コカコーラ"魚谷雅彦氏直伝のマーケティング経営論。世界一のブランドを背負いながらも果敢にイノベーション創出に挑戦してきた同氏の話は、どんな学者や評論家の意見よりも、本物だ。本物である証拠に、論旨明快でわかりやすい。

新卒でライオンに入社した一人の若手マーケッターが、幾多の冒険と困難を乗り越えて、外資企業でトップに登りつめるまでの、経営者の履歴書としても読みどころが多い。常に現場を意識し、常識を疑い、逆境に燃える、そしてすべてを楽しむ、そんな生き方が魅力的だ。

日本コカ・コーラはグローバルな同グループの中でも異彩を放っている。単に炭酸飲料のコカ・コーラを販売するだけでなく、ジョージア、爽健美茶、紅茶花伝など日本独自のブランドを創造して、トップブランドに育て上げてきた輝かしい歴史を持つ。時代の精神を代弁するかのような「男のやすらぎ」「明日があるさ」といったCMキャンペーンは、何千万人もの日本人の共感と支持を得てきた。(男の安らぎキャンペーンは懸賞応募者4400万人!)。

日本コカ・コーラの製品を買う客は1日5000万人という。自動販売機で2000万人、スーパーコンビニで1600万人、ファストフードやレストランで900万人、残りがその他という内訳である。缶コーヒーのデザインや味を少し変えるだけでも、日本人の気分に影響を与えうる圧倒的ポジションに同社はいるのだ。そんな会社の舵取り役として著者は何を守り、何を変えようと考えたのか。

「実際、コカ・コーラという製品に関して言えば、「intrinsic value」=基本的な価値は100年以上変わっていないということになります。しかし、「extrinsic value」=付帯的情緒的な価値はどうか。コカ・コーラはまさにこれを時代に合わせて大きく変えてきたのです。」

同社は120年間、コーラの味は変えていないが、時代の変化に対応してブランドの中身を常に最適なものに変えてきた。では「付帯的情緒的ま価値」を創造するには?著者は「顧客は見えているか」「現場に足を運んでいるか」「飛びぬけた商品を展開しているか」という問いかけを忘れるなという。現場や対象に棲みこむことで、顧客の潜在的な心理やニーズ、インサイトを発見することがまず重要なのだ。

そして常に先取りで創造すること。部下に提案書に書いてほしいのは「何が新しい価値か。それだけ」。長たらしい"市場の背景""現状分析"が必要な企画ではお客の心を一瞬でとらえられない、だからだめだ、と教える。根っからの価値創造型マーケッターだ。

「市場の変化に対応することが重要だ、という話がよくされます。でも、それが意味しているのは、お客さまが変わったから、自分たちも変化する、というのではなく、何かそのヒントになるような現象を見て、自分たちからその変化を先取りするということです。 そうでなければ、お客さまは驚かない。もっと言えば、世の中にないものは生まれえない。自動車がないときに、自動車をつくった人がいたのです。ソフトドリンクがないときにコカ・コーラを作った人がいたのです。」

世界で最初に大西洋を横断したのはリンドバーグ、では2番目は誰?と著者は問う。一番手のイノベーターのブランド優位性は追随を許さないものがある。そういう意味でコカ・コーラはまさに王者だが、なお経営トップは新価値創造に挑戦しようとする。恐るべきマーケティングマインド、それが120年繁栄の原理なのだろう。

著者は現在は会長職と兼任して、ブランドヴィジョンという会社を創業し、マーケティングソリューションの事業を展開されているそうだ。NTTドコモなどを顧客に持つらしいが、日本政府やJALがブランド構築の仕事をここに頼むべきだなあ。

・ブランドヴィジョン
http://brandvision.co.jp/

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このページは、daiyaが2009年11月10日 23:59に書いたブログ記事です。

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