匂いのエロティシズム

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・匂いのエロティシズム
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「面白いのは、爽やかさとか清潔感といった言葉に適した香りを選ばせると、民族や文化、あるいは世代の違いによってかなりばらつきが見られるのに、性的な魅力に結びつく匂いとなるとかなりの普遍性が見られるとうことだ。」

ムスク(麝香)、アンバー、シベットといった動物に由来する匂いが、世界中で香料や媚薬として使われてきた。代表格のムスクは匂いの成分としては腋の下の匂いや体臭に近いことがわかっている。だがヒトはフェロモンに刺激されて、直接的に性行動が発動する動物とは異なる。

多くの哺乳類は生殖器や肛門から発情兆候の匂いを発するが、二足歩行になったヒトは鼻の位置が高くなって、匂いをかぐのが困難になったので嗅覚が退化し、視覚刺激に反応するエロスを持ったというのがフロイトの説。だが、ヒトはもっと複雑なのではないかというのが著者のエロモン仮説である。

人間は嗅覚的な匂いだけでなく、視覚や言葉にも性的な匂いを感じ取って反応する。「この、新たな意味を帯びた性的な匂いのことを、私はエロモンと呼んでみたい。フェロモンが本能に訴える匂いであったとすれば、エロモンはエロスに訴える匂いであり、人間的な意識が無くてはあり得ないものと考えるわけである。」

脳の生殖管理ソフトがバージョンアップして、フェロモンのような単純刺激ではなく、視覚や五感も総動員したマルチメディア対応のソフトウェアに進化したのではないかと著者はいう。マルチメディアとエロスの相性が良いのは、テクノロジーの歴史をみたら明らかだ。

「人間的な意識を前提とする「匂いのエロティシズム」は、だから本能的でも原初的でもない。エロスの匂いを感じ、匂いにエロスを感じることは、先祖帰りでも生物進化の逆行でも何でもないのである。むしろ、あらゆるものをエロス化してきた以上、フェロモンのような本能的な匂いとは全く別の、新たな匂いのエロスの形さえ創造できるのが、われわれ人間なのではないだろうか。」

性行動と社会関係、脳の進化、フェティシズム、文学研究など、性と匂いをキーワードにして幅広く著者の持論が展開されている。香料会社のパフューマー(調香師)なだけあって、香料の歴史や効果などの蘊蓄部分が濃い。

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このページは、daiyaが2009年12月 2日 23:59に書いたブログ記事です。

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