太陽の庭

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・太陽の庭
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『花宵道中』の宮木あや子の新作。

日本の上流階級だけが謁見を許される"神"永代院由継の屋敷に暮らす女たちの物語。そこは外界と接触を絶った閉鎖的な封建社会。正妻と多数の妾が相互監視下に同居している。男児が誕生すると妬まれ人知れず闇に葬られる母子、飼殺しにされる妾の子供たち。屋敷の住人達は日本の戸籍を持たずそこで一生を過ごす。由継の寵愛を得るものだけが存在を許されている。

一子相伝の永代院は日本の天皇制を連想させる。現実の天皇制はだいぶオープンになっているから、もはやそれはどこにもない制度なのだが、著者の日本の宗教と社会の関係性の解釈にいろいろと含みが読み取れる。天皇制というロマンを書いている。

前半は制度と因習にがんじがらめにされた空間で、妾織枝の子の駒也と、正妻雅恵の娘の葵、その弟の和琴らが繰り広げる官能的で悲劇的な愛憎劇。同性愛と近親姦の濃密なにおい。後半は一転してマスコミのタブー永代院の実像を追いかける雑誌記者の外部視点で描かれる。インターネットの掲示板炎上など現代的な要素も織り込みつつ、内と外から永代院の神秘性が曝かれていく。

『花宵道中』『白蝶花』の閉鎖的世界観がここでもしっかりと構築されている(未読だが『雨の塔』の設定が似ているらしい)。R18文学としてのあからさまな性表現は低めになったが、相変わらず退廃的で妖しい官能美が読み所。

・白蝶花
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-996.html

・花宵道中
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-936.html

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このページは、daiyaが2009年12月27日 23:59に書いたブログ記事です。

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