ネットの炎上力

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・ネットの炎上力
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・J-CASTニュース ビジネス&メディアウォッチ
http://www.j-cast.com/

J-CASTニュース創業社長の蜷川真夫氏が語るネットニュースの破壊力と新しいビジネスモデル。蜷川氏は元朝日新聞社会部記者でAERA編集長だった人物。マスメディアを常に意識しながら、確信犯的にお騒がせメディアをつくろうとしているようだ。

「火事には野次馬が群がる。その先頭で見て、後ろの野次馬に説明するのが記者だと教わった。見たことを分かりやすく伝えろ。ネットの炎上も似たところがあって、火事場を見つけると野次馬が寄ってくる。寄ってくるのが群れをなすので「ネットイナゴ」と呼んだりする。芸能人の記者会見も同じようで、群がる記者の先頭で、お馴染みのテレビリポーターが突っ込んでいる。後ろでメモしている記者たち。カメラを通して、視聴者がその光景を見ている。「炎上」はネット街ダネの典型例だった。」

実際にはJ-CASTニュースは単なる野次馬というより、ボヤ騒ぎの現場で火に油を注ぐような積極的役割を果たしているように思える。意図はどうあれ、メディアが事件の観察に止まらずに参与してしまうのがネットのニュースの宿命なのだろう。J-CASTはネット炎上の汚名も名誉も背負いながら、ページビューを増やしてきた。

J-CASTではどんな話題が人気だったか。創刊1年目のアクセスランキングが紹介されているが、上位3位は下記の通り。気にはなるけどどうでもいい話題のランキングとも言えそう...。

1位 リア・ディゾン「局部?写真」疑惑で大騒動 (1/2) : J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2007/07/10009188.html

2位 元「モー娘。」飯田のファン 「できちゃった婚」にショック画像 (1/2) : J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2007/07/09009133.html

3位 激論「太田総理」で騒動 民主議員が「お詫び」 (1/2) : J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2007/07/03008937.html

オーマイニュースをはじめとする市民記者型のニュースが次々に倒れていった一方で、J-CASTが伸びてきたのは、アテンション・エコノミーの中で注目を集めすいものを、社会性よりも優先して取り上げてきたから、なのだろう。

そうして集まった野次馬同士のコミュニケーションからも新たな次元の情報が生まれている。著者は読者のコメントに可能性を見ている。

「もし、収支の問題が解決したとして、ネットならではの独自性のあるコンテンツとはいかなるものか。そのヒントの一つが、読者コメントによる記事の補完だと思っている。これまで紹介した記事に対するコメントの広がりは大きく、取材して記事をかく限度を超えている。読者からのコメントに、お金をかけても得られないような情報が含まれていることが少なくない。」

同じ記事を読んだ他の読者の意見はニュースを理解する上で重要な情報だが、核家族化やメディアの個人化によって、ニュースに関する意見交換をするリアルな場が減っていることも、こうしたニーズと関係があるのかもしれない。たとえば昔は朝に新聞を読みながら家族にどう思うかを聞くことができた。今は新聞をとらず、会社や自宅のPCの前でひとりでニュースを読む人が多い。

ニュース炎上のお祭りに群がる人々が、すこし落ち着いた目で他のコメントを読み、ニュースを客観的に評価する。そうした新しい情報空間としてJ-CASTみたいなメディアが今、機能しているように思う。

日本のネット炎上のウォッチャーであり仕掛け人の話、事例もたっぷりあって、おもしろかった。

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このページは、daiyaが2010年3月14日 23:59に書いたブログ記事です。

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