光媒の花

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・光媒の花
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これは抜群に面白い。おすすめ。

「この全六章を書けただけでも作家になってよかったと思います。」と、ベストセラー連発の道尾秀介にとっても、これは会心の作品であるらしい。

ある街を舞台に、表向きは普通に見えながら、心に深い闇を抱えて生きる人たちの連作群像劇。6つの物語の主役たちは年齢性別や職業はさまざまで、同じ街に住んでいるという点をのぞいて深いつながりはない。前の作品の脇役、端役だった人間が続く作品では主役になる。次は誰の視点に飛ぶのかなあと想像しながら読むのが楽しい。

「光媒の花」は、「風媒花」(風が花粉を運ぶ花)や「鳥媒花」(鳥が花粉を運ぶ花)から連想した造語らしい。人生の光と闇を媒介として、6つの物語の花を受粉させていく一匹の蝶の目線で、読者は前の花から次の花へと跳んでいく。

悪い人だと思っていた人にもそれなりの理由があったり、事故だと思っていたことが事件だったり、ひとつの現実を異なる視点から見ることで、世界の重層感が増していく。全体的に殺人、レイプ、虐待、少年犯罪と暗いエピソードがならぶが、希望や救いを必ず描いているのがいい。

山本周五郎賞受賞作。

・千年樹
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/05/post-1215.html違う作家だが、最近読んだおもしろい連作短編と言えばこれもよかった。

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このページは、daiyaが2010年7月11日 23:59に書いたブログ記事です。

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