ねこのオーランドー農場をかう

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・ねこのオーランドー農場をかう
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大人も楽しめる絵本、というか、大人でないとよさがわからないのじゃないだろうか。とてもサイズが大きい超大型本。イギリスの絵本作家キャスリーン・ヘイルが1942年に描いた。農場の経営者になった猫とそこに住む動物たちの物語。

ねこのオーランドー一家は、ピクニックの途中で見つけた荒れた農場を買収して自分たちで再建を図ることに決める。最初の仕事は家に入りこんだ動物たちを外へ追い出すこと。客間のソファーには豚がのソフィーねているし、牛はかべに顔を突っ込んでいるし、メンドリは台所のお皿の上ですわっている。馬のバルカンはわらの屋根をむちゃむしゃ食べている。無理に追い出そうとしても難しそう。

そこでオーランドーたちは、みえっぱりな馬のひげをとかし蹄をみがいてやる。するといいところをみせたくなって外へでかけていく。きれい好きの豚には豚小屋をおおそうじをしてやると喜んで小屋へもどっていく。鳥小屋にラジオをおいて音楽番組を鳴らすと、メンドリたちはたまごをうみはじめる。

みんなが働くために気持ちの良い環境をつくる。ひとりひとりの性格や長所を考えて、それぞれのモチベーションを引き出すのが、マネージャーのオーランドーの仕事なのだ。多様な動物たちは、種が違うわけだから、どうしたって勝手ばらばらに行動しがちだ。どうにかこうにか調整して、最大の生産をどうやって達成するかが経営者の腕の見せ所。

なるほど1942年の作品かと思うのは「農場を買う」というタイトルからもわかるように、実にわかりやすい資本主義の構図があること。ご主人(正体不明)から資金調達をして農場を買収したねこのオーランドー一家は資本家で、買収された農場に住みついていた動物たちは労働者である。そして、はたらくみんなを幸せにしながら、最大利益を達成する有能な経営者の仕事がテーマなのだ。

とはいっても、そんな難しいことは一切言葉では書かれていない。最初から最後までオーランドーと動物のドタバタ喜劇だ。子供に経営の醍醐味を、経営用語を一切使わずに、興味を持たせることができる内容。会社のマネージャー研修で題材にしてもいいかもしれない。

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このページは、daiyaが2010年10月17日 23:59に書いたブログ記事です。

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