ビジネス書大バカ事典

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「「もどき本」を読んでみると、こんな本がまじめな顔をして世の中に公然と流通していることに、しかもその多くがベストセラーになっていることに、まあ、びっくりする。」

いかがわしいビジネス書「もどき」作家としてやりだまにあげられるのは、勝間和代、苫米地英人、神田昌典、石井裕之、本田健、本田直之、斉藤一人、小林正観など、よく売れているビジネス書の著者たち。具体的に書名を挙げながら、数々のご都合主義や矛盾した記述をあげつらう。その語り口が面白い。いちゃもん芸の本である。

それぞれの著者のイタい所を的確にとらえて狙い撃ちしており、いまどきのビジネス書を広く読んでいる人は笑いながら読める本である。でも、ちょっとめくじら立てすぎじゃないかなというのが素直な感想。

著者の批判としては、誇大広告、不当表示論だという主張が多いわけだが、ビジネス書って読者にとってクスリというよりやる気を燃やすための燃料なのだと思う。少なくとも読者としての私は、ここに挙げられたようなビジネス書を、燃料として消費してきた。効いた本もあった。

現実のビジネスの秘訣って、実のところ、今やるべきことを一生懸命にやる、という、およそ当たり前のことであることが多い。難しいことや奇抜なことではない。ドラッカーの名言に「想像力や知識は成果の限界を設定するのみで成果をあげることとは関係がない。成果をあげるためには仕事をやり遂げる能力をもつこと」というのがある。ポジティブな意欲を持ってやり遂げることが、ビジネスでは一番重要なのだ。多少の間違いはやっているうちに修正される。

そもそもビジネス書を買う読者だって、ある程度割り切って読んでいるはずなのだ。それに勝間和代が嫌いな人は勝間本を読まないでしょう。勝間和代が大好きな人が読むからパワーになる。信じていない人が教典を読んで、ちゃんちゃらおかしいとか、わけらからんという方がおかしいということじゃないだろうか。あれ、なに反論をしているんだろう、私は。

この本に対してめくじら立てるのも野暮なのだ。聞いて笑えるいちゃもんが楽しい本だ。
たとえば、少量の努力で最大の効果をうたう著者について「それよりもわたしは、本田が本を年400冊も読むと知って、なんだ超人的な努力をしているではないか、全然「レバレッジ」がかかってないじゃないか、と思ったものである。」と言ったり、「人に好かれる六原則」で、「誠実な関心を寄せる」「笑顔を忘れない」「心からほめる」なんてテクニックが書いてあるが、成功するために「誠実」になるのは無理だし、それじゃ作り「笑顔」だし、「心から」が嘘になるだろうという。このパターンって確かに自己啓発系にありがちな内容である。人間、なんにでも「感謝」できるものではない。

うーん、真理である。

それと自己啓発の本を科学の本と勘違いして読むなよ、というメッセージは正しいと思う。

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このページは、daiyaが2011年1月24日 23:59に書いたブログ記事です。

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