キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる

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いま情報社会で何が起きているかをキュレーションをキーワードに総括する。

「コンテンツが王だった時代は終わった。いまやキュレーションが王だ」

キュレーターとは、博物館や美術館で展示を企画する専門家(日本では主に学芸員)のこと。展示する作品を選び観客に見せる場をデザインする行為がキュレーション。ソーシャルメディア時代の情報流通におけるキュレーター的役割の重要性を説く内容。とても共感する部分が多かった。

「一次情報を発信することよりも、その情報が持つ意味、その情報が持つ可能性、その情報が持つ「あなただけにとっての価値」、そういうコンテキストを付与できる存在の方が重要性を増してきている」

一次情報の新聞記者よりも、新聞を含む多様な情報を整理して、自分に納得できる解釈を与えてくれるブロガーの方が、私にとっては役に立つ情報源だ。情報大爆発の時代に、効率的に情報を収集するには、検索エンジンで自ら情報を探すよりも、キュレーター的なメディアを見つける方が確実である。だからこそ、世界の多くの人々が検索エンジンよりもFacebookなどのソーシャルメディアを長時間利用するようになっているわけだ。

21世紀は機能消費とつながり消費の時代だと佐々木俊尚氏は言う。消費の本来の姿である機能だけの消費とともに、共感や共鳴できる関係性を通してモノを買うのがつながり消費だ。ネットのクチコミを介してモノを買う現代人の消費生活において、つながり消費は特に大きな比率を占めてきている。21世紀のキュレーターは、消費者とのつながりを編集する仕事でもある。キュレーターの時代には機能を説明して売ろうとする旧型のセールスマンは死ぬ。

絵画(アウトサイダーアート)、音楽(ブラジル音楽のジスモンチ)、映画(『ハングオーバー』)におけるキュレーションの事例、ツイッター・フェイスブック、フォースクエアなどのソーシャルメディアの最先端状況の紹介、清水博氏の場の研究(セマンティックボーダーとホロニックループ)、情報ビオトープ、背伸び記号消費など、各章でキーワードがめまぐるしく変わる。新書にしては材料が多くて冒険的な広がりを持つが、ちゃんとキュレートされている。

著書をよく読むが佐々木俊尚氏の文章が私は好きだ。この人はジャーナリストとしての客観的視点を保ちつつも常にネットワーク社会を温かい目で見つめている。たとえばこの本では、ネット掲示板(2ちゃんねる、でしょう)に対する達観した評価にしびれた。

「つまり匿名掲示板というのは、実際には普通の社会生活を送っている人たちが自虐的なネタを好感し、笑いをとるきわめてシニカルな場所であると考える方が理にかなっているということです。そこでは笑いは自虐的でシニカルであるけれども、しかし自虐とシニカルの向こう側に、人生の真実や本音が垣間見えてくる。乱暴な言葉づかいや特殊な用語に混乱させられやすいけれども、実はネットの掲示板というのは極めて高度なコミュニケーションが行われている場なのです。」

共感、共鳴できるキュレーターが書いた本ということもあって、響くところの多い本であった。

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このページは、daiyaが2011年3月 7日 23:59に書いたブログ記事です。

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