こんなに違う!世界の性教育

| | トラックバック(0)

・こんなに違う!世界の性教育
51KSOrKIfnL.jpg

「人と人との基本的な関係を教える性教育には、その国で国民一人ひとりがどう扱われているかが投影されます。また、きれいごとでは済まされない、その国の背負ってきた歴史や切実な現実も反映されています。つまり、ある国の性教育を見れば、その国の歴史や文化、社会のなりたちなどが透けて見えてくるのです。」

アメリカ、オランダ、フィンランド、イギリス、ドイツ、オーストラリア、カナダ、タイ、中国、韓国、日本。各国の性教育に詳しい日本人研究者が一章を担当して丁寧に執筆している。各国の性教育の教材、教科書も紹介される。

世界の性教育の先進国はオランダである。5歳から性教育を学校で教える。同性愛と結婚、ドラッグ、尊厳死、セックスワーカー。オランダはこれらすべてを合法化した自由の国。だが透明化して、情報をきちんと与えることで、10代少女の出産・中絶率、マリファナ使用率も実は低い。超早期の性教育は「寝た子を起こす」にはならなかった。

性教育はお国柄が表れる。推進派と反対派がぶつかるイギリスでは性教育は義務にも関わらず親が授業を退席させる権利を持つ。ドイツには東西格差がある。禁欲教育をめぐり揺れるアメリカ。オーストラリアではインターネットサイトが性教育をサポートする。中国では専門誌「人之初」が国民的人気。マイノリティに優しいカナダでは性の多様性教育に力を入れる。

HIV大国でもあるタイはコンドームキャンペーンが有名だが、エイズ予防キャンペーンで実施した「水の交換」もわかりやすいワークショップだ。参加者数と同じ数だけ水の入ったカップを用意し、そのうちの2つだけに無色透明の水酸化ナトリウムを入れておく。これがHIVウィルスの代わりだ。そして皆でカップを手に持って3人の相手と数滴だけ水を交換する。フェノールフタレインをたらすと水酸化ナトリウムが入ったカップの水は赤くなる。ほんのわずかな回数の交換でHIV感染が全体に広まっていくリスクを実感できる。

日本は性教育ではどちらかというと遅れている国だ。ヨーロッパ諸国の15歳の性交経験率は男子平均30%、女子24%だが、日本では男子7.2%、女子9.4%と遅いからということもあるだろうし、同性愛や性同一性障害に対する認知の低さも原因にあるようだ。中学校での性教育の時間は保健の授業内でたった3時間しかない。そういえば私もあまり受けた記憶がないのだ。

日本は貧しい性教育にも関わらず、中絶やHIV感染はさほど社会的な問題となっていない。メディアを通した接触でどうにかこうにか中学高校あたりで独習しているということなのだろうか。同性愛者の受容度は高いとは言えないあたりが問題といえば問題ですかね。

Clip to Evernote

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: こんなに違う!世界の性教育

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/3253

このブログ記事について

このページは、daiyaが2011年6月 9日 23:59に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「神饌 ― 神様の食事から"食の原点"を見つめる」です。

次のブログ記事は「高層難民」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1