最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件

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探偵ミステリが好きな人は絶対必読の傑作ノンフィクション。

1860年6月の朝、英国の田舎の村の屋敷ロード・ヒル・ハウスで、その家の三歳の男の子が無惨な姿で殺されているのが発見される。犯行のあった夜に屋敷にいた家族と使用人たち全員が容疑者となる。

屋敷の主人、後妻の妻、前妻の子供たち、後妻の子供たち、子供の面倒を見ていた子守りの女性たち。子守りの女性が最初の容疑者として疑われたが、自白はとれない。科学捜査が未発達の時代の事件であり、密室で行われた犯行の捜査は暗礁に乗り上げてしまう。

典型的な英国のカントリーハウスで起きた残酷な殺人事件を、当時の新聞は大きく取り上げた。世間はにわか探偵ブームとなって、一般人や作家たちが真犯人は誰かを推理する投稿が盛んになる。

世間の注目が集まる中で、当時、刑事課が創設されて刑事になった8人のうちのひとりジョナサン・ウィッチャー警部がロンドンからが派遣されてくる。地道な捜査を積み重ね。それまで平穏にみえていた屋敷には、複雑な感情のもつれを秘めた人間関係があったことが明らかになっていく。そしてウィッチャー警部は、意外な真犯人を確信するのだが...。

現実は小説よりも奇なり。事件の関係者や警部のその後を何十年間も追跡取材していくと明らかになる意外な事実もある。

ノンフィクションだが、実際の事件の真犯人は誰かを読者とともに考えさせるスタイルだから、真相は最後まで読まないと分からない。また当時の英国における刑事や探偵の実像、世間の持っていたイメージ、そしてミステリ文学に及ぼした影響が語られていく。探偵小説の夜明けはこの現実の事件から始まったのだ。ウィルキー・コリンズ作『月長石』、ディケンズの未完の『エドウィン・ドルードの謎』など、この事件にインスパイアされた有名作品が多数ある。

ミステリとしてもノンフィクションとしても5つ星。

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このページは、daiyaが2011年9月23日 23:59に書いたブログ記事です。

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