私が愛した大河ドラマ

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・私が愛した大河ドラマ
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「NHK大河ドラマですかぁ、うーん.....観てないですねえ、ここ二十年くらい」という書き出しではじめたみなもと太郎が、草創期の大河ドラマへの熱い思いを語っていたり、NHK大河ドラマが「もはや米の飯のようなもの」という小谷野敦が、自分が原作者になりたいと言い出したり、松村邦洋がやたら大河マニアとして「次は足利義満の時代を」と提言したり、大河ドラマ好きの著名人や元製作者たち15人のエッセイ集。第一作『花の生涯』から第50作『お江』までの資料集もついている(視聴率一覧も含む)。

大河ドラマに対しては大きく、歴史忠実派とホームドラマ派があることが鮮明になる。

著述家 宝泉薫氏が初期の大河ドラマは時代背景の説明にも時間を費やして、今日と人間の考え方が違いますからという注釈が前提となっていたが、「現在の大河は、今も昔も人間は変わらないという視点に立ち、ホームドラマ感覚でその時代を身近に引き寄せようとする。」と指摘している。

ジャーナリスト田岡俊次氏は「また概して大河ドラマには主婦層を引きつけようとの狙いか、あるいは脚本家に女性が少なくないためか、少女的な情緒性が感じられる場面がよくあって品格を下げている」と批判する。

松村邦洋氏の大河ドラマの楽しみ方には深く共感。「大河ドラマは、それだけで見てももちろん楽しめますが、ボクはたとえばドラマで描かれた時代を解説した本などを脇に置いて、照らし合わせて楽しむのが好きです。相乗効果というか、ドラマの背景をより深く理解することで、物語の楽しさが何倍にも膨らむような気がするんです。」

有識者たちの意見を読み込むと、要は歴史性とドラマ性のバランスをとることが重要ということになる。で、私は熱心に毎週欠かさず見ている『平清盛』がなぜ低視聴率なのか、考えてみた。

・視聴者の歴史知識が不足
 戦国時代の武将や幕末の志士と比べると、源平合戦は背景知識が十分に共有されていない。

・登場人物の関係が複雑
 天皇家、藤原摂関家、源氏、平氏と勢力が入り乱れるうえ、院政と摂関政治で権力構造も複雑。平家は名前が○盛と似た人物が十人以上いるため、とにかく名前と関係を覚えにくい。

・エキセントリックな人物像が多い
 白河法皇、鳥羽上皇、藤原道長、後白河法皇など、かなり魑魅魍魎的エキセントリックな人物像が強調されていて、共感しにくい。

・近親相姦や男色をもろに描いてしまった
 現代とは違う倫理観があったことを描こうとして、日曜夜のお茶の間で子供と見るにはやっかいな展開がいっぱいになってしまった。藤原道長の男色趣味などは資料に残っているし、正しいのでしょうが。

・清盛が活躍しない前半
 30代終わりの保元の乱、平治の乱で頭角を現すまで平清盛は歴史の表舞台の人間ではなかったといえる。前半は目立った活躍をせず、大物に振り回される役割に見えてしまい、応援したいキャラになっていない。

といったことがあるが、この本の軸で考えると歴史重視に振り過ぎて、ドラマを忘れてしまったのがおそらく敗因なのだ。

この本のエッセイでは、過去50作で視聴率的には不発に終わったが、有識者には高い評価を受けているものがある。物語の中盤から後半、保元の乱、平治の乱で栄華を極めてから壇ノ浦で滅亡するまでが、一番盛り上がるところなわけで、これからの立て直し次第では、後世の評論家の高い評価も得られるのではないかと思った。

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このページは、daiyaが2012年4月26日 23:59に書いたブログ記事です。

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