ユリイカ2012年8月号 特集=クリストファー・ノーラン 『メメント』から『インセプション』、そして『ダークナイト ライジング』へ

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ユリイカ2012年8月号は映画『ダークナイト ライジング』監督のクリストファー・ノーラン特集。

多彩で豪華な顔ぶれが、『メメント』、『インソムニア』、『プレステージ』、『インセプション』、『ダークナイト』、そして『ダークナイト ライジング』といった作品に触れながら、ノーランの現代社会へのメッセージを解読している。

似通っている指摘も多くて、

・時間軸と記憶の編集
・境界が曖昧な正義と悪
・CGを嫌い実写にこだわることによる効果

がノーランの論点だ。記事では福嶋亮大氏の「奇術師のニヒリズム」という評がとても納得がいった。

なおノーラン自身へのライジング撮影後のロングインタビューも収録されていてる。IMAXフィルムへのこだわりや3Dは嫌いだという話がある。そうなのか、私は映画館でIMAXで見たが、3Dではないのはなぜ?と疑問に思っていたのだ。

いろんな評論家や思想家がダークナイトについて小難しく理論化していく中で、ちゃんとアメコミ原作を読みこんで、「孤独で心に闇を抱えたヒーロー」というバットマン像はノーランの発想ではなくコミックに忠実に描いているものと指摘した小田切博氏は鋭い。バットマンキャラクターの陽から隠への転換は1970年代からの話であって現代ではないという、ちゃぶ台ひっくり返しみたいな話。

『ダークナイト ライジング』を先日観た。前作と同じように素晴らしい作品だった。

ダークナイトは悪や破壊に惹きつけられる人間の性、あるいはテロ欲求を満たすために作られた傑作映画なのではないかと思う。そのねじ曲がった物語性が堪らない。暗くて深い魅力をたたえている。ヒーロー物だけれどお子様向けではないのだ。

ゴッサムシティでは正義も悪も壊れている。超法規的な暴力によって秩序を回復しようとするバットマン。よくみると戦闘シーンでは峰打ちとはいかず、殺人、傷害、器物損壊、交通違反に公務執行妨害と、犯罪おかしまくりなのであり、いかに悪者を倒すという大義があっても、正当化するのは論理的に難しい存在だ。バットマンは正義が勝つことを楽しませる映画ではない。

むしろジョーカーやベインの狂気のテロリズム、それに暴力で挑むバットマン。何が正義かではなく、現実にはありえない正しい暴力のふるい方を楽しんでストレス発散ができて良かった、そういう見方が正しい作品だと思う。奈落から聞こえるリズムにのって大規模な破壊行為がなされるシーンで内心これから人が大勢死ぬのに、思わずワクワクしてしまった人、多いはず。そういう人間の暗い欲望を、バットマンはみたしてくれるのだと思う。
・映画 ダークナイト ライジング
http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/

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このページは、daiyaが2012年8月19日 23:59に書いたブログ記事です。

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