隣りの女

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・隣りの女
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向田邦子。実はこの本はKoboの電子書籍ストアで発見して読んだ。ストアのラインナップが貧弱だと逆にこれまで敢えて読もうと思わなかった意外な作品を発掘するきっかけになってすごくいい。いいぞ楽天ありがとう(ポジティブシンキング)。

著者の絶筆となった『春が来た』も収録されている。

学生時代に『思い出トランプ』を読んで衝撃を受け、私の脳内で凄い作家殿堂入りしている向田邦子であるが、そんなに数を読んでいるわけではない。人気ドラマの脚本家として『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』などを手掛けたが、小説家としては直木賞受賞の翌年に飛行機事故で逝去しているのでそれほど多くない人なのだな。今知った。

この短編集でも不倫する主婦や嫁に行き遅れた女など複雑な女性の深層心理と衝動を強いリアリティを持って描く。男性にとってはある意味怖い作品が多い。安アパートの一室でミシンの内職に励む主婦が、隣の部屋の女の情事を盗み聞きするうちに、自分も恋がしたくなり、ひょうんなことから知り合った隣の女の男を追いかけて、アメリカまで行ってしまう表題作。

男と女の関係、渡航の冒険性、ミシンの内職という設定など、今読み返すとかなり昭和のにおいがするのだが、三丁目の夕日みたいな古き良きお気楽さだけじゃなく、猥雑で本物の昭和の人生模様が描かれている。いい。平成のリアリティってあとで振り返ってなんなんだろう。


ちなみにこの作品の表紙はKoboのスリープモードのとき白黒で常時表示されているとかなり怖い。怪談小説みたいだ(笑)。

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このページは、daiyaが2012年8月14日 23:59に書いたブログ記事です。

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