オフシーズン

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・オフシーズン
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『ザ・ウーマン』は第三作で、その前に第二作『襲撃者の夜』、第一作『オフシーズン』がある。『オフシーズン』(1981年初版)はケッチャムのデビュー作だったが、あまりの残酷な描写に版元が著者にマイルドに改変させたうえ、ついには長期間絶版にしてしまった。この文庫版は最初の極めて残酷なバージョンを完全復元したもの。容赦ない。

舞台はカナダ国境に近いメイン州の海辺の避暑地。ニューヨークから6人の男女が休暇を別荘で過ごすためにやってくる。この家を、シーズンオフの静かな晩に謎の集団が襲撃する。汚い服を着た無表情な子供たちと、野人のような男と女が現れて、旅行者6人を次々に嬲り殺しにしていく。殺すだけではなく、生きたまま内臓を引き出し、手足を切断する。彼らの食糧とするために。

彼らに命乞いや取引のコミュニケーションは通じないが、彼らは知性を持っている。ゾンビではない(物語が進行すると正体はある程度明かされる)。6人の犠牲者たちとの生死を賭けた駆け引きに緊張感がある。

殺るか殺られるかの瀬戸際で、6人の男女は人間関係を破綻させ修羅場はより一層救いようのないものになっていく。これでもかといわんばかりに人間のダークサイドを見せつける部分はゴールデイングの『蝿の王』みたいでもあり、これは後の『隣の家の少女』で極まるわけだが。

巻末の著者インタビューにあるように『悪魔のいけにえ』『サランドラ』『食人族』など初期のスプラッタームービーの影響を強く受けており映画的だ。だいたい展開は読めるのだが、それやりすぎというくらい強烈な描写を極める。映像よりトラウマ度が高いかも。物凄い猟奇ホラーを読みたいという人にはとてもおすすめ。

ザ・ウーマン
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/11/post-1739.html

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このページは、daiyaが2012年11月21日 23:59に書いたブログ記事です。

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