図解P2Pビジネス

| | トラックバック(1)

・図解P2Pビジネス
4798108529.01.MZZZZZZZ.jpg

この本の一節によると、現在のインターネットのトラフィックの4割から6割がファイル交換ソフトによるものだそうだ。その内訳は動画が38%、音楽20%、画像17%。インターネットは実は動画をP2Pで交換する用途に一番使われているのだ。これにはちょっと驚く。

■P2Pという概念の整理

かつてナップスター全盛の頃、IT業界ではそこかしこで新型P2Pのアプリケーションについてブレストが行われていた。参加者はP2Pを音楽ファイル交換以外で使う方法を考えるわけだが、

・P2Pで2ちゃんねる形式の掲示板
・P2Pで楽天
・P2PのWeb検索エンジン
・P2Pで分散スーパーコンピュータ
・P2Pで電子メールのやりとりができるアプリケーション

などなど、アイデアは次々にでてきた。

だが、99.9%のアイデアは、それってP2Pでなくても良いのでは?とか、それはP2Pと違うのでは?などの理由で却下されていき、最後は皆で「そもそもP2Pってなんだっけ?」というオチにはまり込み、こんがらがったままタイムアウトするのが常だった。

パソコン同士をLANで相互に接続するのもP2Pだし、インスタントメッセージを送りあうのもP2Pだし、音楽ファイルを共有するのもP2Pである。SkypeのようなP2PでIP電話を実現するケースもあるし、宇宙からくる電波を分散コンピューティングで解析するのもP2Pだった。P2Pという言葉にはいくつもの異なる意味が混在している。

P2Pという言葉の意味をこの本はうまく次の3つに整理している。

1 Peer to Peer(PCとPCをつなぐP2P)
2 Person to Person(人と人をつなぐP2P)
3 People to People(利用者の利用者によるP2P)

この定義では、クライアント/サーバ型のシステム上で実現されていても(たとえば電子メール)、2や3であればP2Pである。実現技術の仕組みに限らず、もっと広くP2Pをとらえようとしている。そして、P2Pファイル共有アプリの著作権侵害の問題や、セキュリティの問題についても考察されている。P2Pの全体像を知らない人にも伝わるように、包括的に書かれていて、参考になる。

■P2Pアプリの最新事情をわかりやすく

後半は具体的に最近流行しているP2Pアプリケーションを紹介している。動画配信のKontiki、巨大ファイル配信のBitTorrent、P2P電話のSkype、写真交換のHello、音楽コミュニティのMercora、コラボレーションツールのGrooveなど。P2Pアプリケーションについてはヘビーユーザ向けのIT雑誌以外では真面目に内容が説明されることが少ないので、こうしたビジネス書で丁寧に説明してもらえるのは、ネットのマニア層ではないビジネスマンにとっては特に助かるだろう。

(幸か不幸か私はマニアだったため...)多くのアプリについては実際に使ったことがあったが、ひとつ知らないアプリの名前が出ていた。調べてみたら大変興味深いものであることがわかった。P2Pで地震情報を共有するアプリケーション。

・P2P地震情報 - 地震情報を自動でチェック
http://www11.plala.or.jp/taknet/p2pquake/
q_map1-s.png
p2pq_info1.png


当サイトでは、次の3つを「P2P」によって実現しよう、という試みを行っています。

気象庁の地震情報を自動でチェック(P2Pで伝達することで気象庁Webサーバーへの負担を減らす)
ユーザーによる「揺れた」という情報の発信・共有(より早く地震発生を知る)
地震に関する情報の共有
 いわゆる「地震情報チェッカー」です。普段はタスクトレイに隠れているので、常駐させておいても邪魔になりません。また、P2Pだからといって「怪しい」「違法」といった心配はなく、むしろP2Pによる様々な利点を感じていただけると思います。

この仕組みを使うと気象庁の発表よりも早く実際の地震発生を知ることができるという。気象庁の公式大本営発表と草の根の地域報告を融合させた点がP2Pらしくて面白い。

■P2Pグループウェアの可能性?

もっと真面目に考えてみると、Grooveのような実名グループ内ファイル共有は、現在のクライアント/サーバ型から置き換えられる可能性があると感じている(3ヶ月使ってみての感想)。アリエル・プロジェクトAのような、各自の手元の最新情報を全員が同期するスケジューラーやグループウェアもP2P移行がありえるのではないだろうか。

・Groove Virtual Office
http://www.groove.net/home/index.cfm
マイクロソフトに買収されたP2Pグループウェア。共有フォルダがユーザ間で同期する。ファイルをアップロード、ダウンロードという概念がなく、放っておけばグループ全員のフォルダの内容が同じものになる。

・複数プロジェクトを一元管理できるプロジェクト管理ソフト「アリエル・プロジェクトA」- Ariel Networks
http://www.ariel-networks.com/product/project_a/index.html


ファイルや情報をサーバに登録する手間、ファイルを指定して送りあう手間がなくなるのはとても便利だ。マイクロソフトはGrooveを買収している。Windowsの”マイ フォルダ”の隣に”アワ フォルダ”などというフォルダが登場する日も近いのだろうか。

・P2Pビジネスブログ
http://www.ariel-networks.com/news/
著者の徳力さんは、P2Pコラボレーションソフト開発のアリエルネットワークスのメンバーで、P2Pビジネスの充実したブログを運営している。必見。

トラックバック(1)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 図解P2Pビジネス

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/1678

» コンテンツ配信とHDR視聴についてのメモ(ミズタマのチチ)~のトラックバック

少し前から、ネットでコンテンツ配信する事業や、コンテンツ流通にどんな変化がおきるのかを興味深く観察しています。 この話題は、ネットワーク、メディア、広告・マーケティングなど、いろいろな面を持ち影響範囲も広い。 実際、広告業に携わるものとしても少なからぬ... 続きを読む

このブログ記事について

このページは、daiyaが2005年6月 7日 23:59に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ƒWƒƒƒ“ƒPƒ“•¶–¾˜_」です。

次のブログ記事は「インターネット広告革命―クロスメディアが「広告」を変える。」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1