インターネット広告革命―クロスメディアが「広告」を変える。

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・インターネット広告革命―クロスメディアが「広告」を変える。
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この本の主題であるインターネット広告革命の内容とは、

1 広告表現革命
ブロードバンドに対応した音声や映像によるリッチメディア広告や、ユーザとインタラクションするインタラクティブ広告など、広告表現の多様化。

2 ターゲッティング革命
ユーザの閲覧履歴分析やテキストマイニングの技術を使ってユーザの関心を割り出したり、配信時間帯を制御することで、視聴者層を絞り込む。

3 メディアプランニング革命
メディアミックス(異なる媒体の加算効果)からクロスメディア(媒体効果の乗算)によるメディアプランニングへ。

という3つのインターネット広告の変化から構成される。

ポスト・クリックだけでなくポスト・インプレッションも重視したブランド形成型の広告戦略が必要だという分析がある。

従来のWebマーケティングでは、投下した広告予算の効果を計測する指標はクリックレート(クリック数÷露出数)であった。つまり露出(インプレッション)しただけではダメで、即時にクリックされなければその広告の効果は評価されなかった。

しかし、最近のユーザの動向をWeb視聴率会社の調査データやアクセスログのデータから分析していくと、広告が即時にクリックされなくても、露出後一ヶ月以内に広告主のサイトへユーザが訪問する率が高いことが発見されたという。つまり、インターネット広告にもテレビCMのようなブランド認知の効果があり、露出効果も含めての広告戦略が必要になってきた。

具体的には米国ダブルクリック社のデータによると、2003年第2四半期から、

1 クリックスルー率
広告をクリックしてから広告主指定ページを訪問した比率

2 ビュースルー率
広告を見ているが、その場ではクリックせず、30日以内に広告主サイトを訪問した比率

の2つの指標で、後者が前者を上回る状況になったそうである。

即時にクリックされなければならない広告は、私流にわかりやすく言えば「ポン引き」みたいなものだと思う。その場でクリックさせる工夫はいろいろある。たとえば古い手法なら、バナー広告を押しボタン風にするとか「クリック」という文字を入れるだとか、破線で囲ってみるなど。こうした小手先の工夫のトレンドはめまぐるしく変化するが、それほど難しいことではない。

しかしネットユーザもリテラシーが高まってきてポン引きを見抜くようになったし、クリックしたからといって買うわけでもない。ポン引き広告の限界がきたのだと思っている。これは私自身も感じていて、たとえばよく知らないWebショップの商品広告バナーを見て商品がほしくなった場合、まず行くのはその知らないショップではなくて、アマゾンや楽天などの既に知っている「有名サイト」である。

以前、書評した「けなす技術」の中で切込隊長氏が、マス広告が消費者に選択肢を与え、選択肢からの決定にはネットが大きな影響力を持つ、ネットだけではマーケティング効果は期待薄だと書いていた。この本のメディアミックス(異なる媒体の加算効果)からクロスメディア(媒体効果の乗算)へというメッセージはそれに近いメッセージである。

テレビのようなマスメディアと、インターネットメディアを組み合わせて、ブランドを作ったうえでポン引きもやるのが賢いということなのだと思う。

・けなす技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003238.html

テレビとインターネットを融合させた広告キャンペーンが効果的と結論されている。

ネット上でのブランド認知という点では、ユーザに強い印象を与えるリッチメディアやインタラクティブ広告が、効果が高いとされていた。BMWのショートムービー広告キャンペーンの成功などが語られている。

最新の広告事情がわかって面白い本だったが、著者は博報堂資本の大手ネット広告代理店の副社長であり、要旨はもっと幅広く広告を出しましょう、特にネット広告の比率を上げましょうという結論だから、ある程度割り引いて考えないといけない部分もあるなと感じた。

特に映像や大きなサイズのFlashを多用したリッチメディア広告については、その商品に強い関心のある人には効果が確かに高いのかもしれない。たとえば今ならスターウォーズの予告編ムービーが3分間も見られるビデオ広告があったとしたら、私も見たい。クリックもするし商品も買うかもしれない。しかし、通常はそこまで強い関心を持つユーザにターゲッティングしマッチングを成功させるのは至難の技なのではないか。スターウォーズのようなロイヤリティが確立されたブランド商品は数が少ないのだから。

むしろ、インターネット広告の未来は、リッチメディア広告のように”ユーザを捕まえる”ものではなくて、アドセンス、アドワーズのように広告であることをなるべく感じさせず、そのページの情報価値を高める(関連度の高い広告情報表示)ことで、”ユーザが捕まえる”ものであるような気がしている。

サイトを見て何かを買うというプロセスの間に、何らかの広告があったことをユーザが意識することがない、というのが究極的なインターネット広告ではないだろうか。

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このページは、daiyaが2005年6月 8日 23:59に書いたブログ記事です。

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