スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

|

・スピリチュアルにハマる人、ハマらない人
4344980034.01._AA240_SCLZZZZZZZ_V33718048_.jpg

精神科医の香山リカが書いたスピリチュアルブーム論。特に人気のスピリチュアルカウンセラー江原啓之の人気の分析が詳しい。江原啓之の著作は書店で平積みだしテレビでも顔をよく見る。立ち読みしてもよくわからず、何者だろうと気になっていた。

・江原啓之
4334901344.01._AA240_SCLZZZZZZZ_V52365542_.jpg

この人だ。

スピリチュアルのリーダーは胡散臭さ、怪しさをどう払拭するかが成功のカギである。それまでのスピリチュアルのリーダーは偉い科学者のお墨付きを得ようとする傾向があった。だが、江原氏の本の推薦文を書いているのは林真理子、室井祐月、酒井順子ら若い女性に人気の作家達である。その影響力によって女性ファンに圧倒的な支持を受けた。


おそらく、江原氏の著作に「東大教授もその能力に感嘆」といった推薦文が記されていたとしたら、彼は今のような人気を得ることはむずかしかったであろう。博士号や学会などではなく、ポピュラーな人気を誇る作家やエッセイストの名前こそが現代の権威であることを、江原氏は見抜いていたのではないだろうか。

そして「波動」や「オーラ」というキーワード。


「低級霊に憑依されて霊障が起きていますね」などと言われれば不気味に感じる人でも、「あなたのオーラはきれいなグリーンですね」であればすんなり聞くことができるのではないか。

すべてを受け入れ、やさしく肯定してくれる存在なのである。

精神分析学者ウィニコットのいう「移行対象」としての江原啓之という著者の見方が面白い。移行対象とは乳幼児が、自分と母親だけの閉じた関係から第三者がいる外的世界へ出ていく中間領域の存在のこと。

移行対象はふつうはヌイグルミや毛布がその役目を果たす。大人には必要が無いものだ。だが、現代の閉塞的な状況が、大人にとっても似た存在を必要とさせているのではないかという。ファンの女性にとって、江原啓之はトトロやリラックマと同じだと著者は指摘している。

スピリチュアルの人気を支えているのは圧倒的に女性であるそうだが、男性だってこういうものを信じていないわけではないだろう。ビジネス系自己啓発本にも科学的根拠が無い精神論を説くものが多い。信じられるものが欲しくて癒されたい時代の象徴なのだと思う。

このブログ記事について

このページは、daiyaが2006年12月 3日 23:59に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ストップ・ザ・クロックス」です。

次のブログ記事は「エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1