図説「最悪」の仕事の歴史

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・図説「最悪」の仕事の歴史
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「世界最悪の仕事は何か」をテーマにヨーロッパ(主に英国中心)の歴史を振り返って、ワースト1を決めるという趣旨の本。そこでローマ時代、中世、チューダー王朝時代、スチュアート王朝時代、ジョージ王朝時代、ヴィクトリア王朝時代という区分で、最悪職業のノミネートが行われる。最終章で発表される史上最悪の仕事とは?

登場する職業は、金鉱夫、写本装飾師、沼地の鉄収集人、コイン奴隷、ウミガラスの卵採り、治療床屋、亜麻の浸水職人、財務府大記録の転記者、焼き串少年、御便器番、爆破火具師助手、シラミとり、疫病埋葬人、浴場ガイド、絵画モデル、船医助手、ネズミ捕り師、骨拾い、など約70種類。名前からは仕事の中身がわかりにくいが、どれも身の毛もよだつような作業や労働環境が含まれる。

たとえばローマ時代の最悪候補が「反吐収集人」である。ローマ人たちは享楽におぼれ、たくさん食べるために、食べては吐きを繰り返したらしい。セネカの著作にはこんな記述があるそうだ。「われわれが宴会で寝椅子に寄り掛かっているときでさえも、或る奴隷は客の反吐を拭き取ったり、或る奴隷は長椅子の下に身を屈めて、泥酔した客の残したものを集めます。」。

チューダー王朝時代の最悪候補はヘンリー8世のお尻を拭く「御便器番」。スチュアート王朝時代の最悪候補はガマの油売りの英国版「ヒキガエル喰い」。薬の万能さをデモンストレーションするために観衆の前でヒキガエルを丸呑みしたという。

この本に出てくる仕事は多くが現在の「3K(きつい、汚い、危険)」どころではない大変そうな仕事ばかりだ。全体の総括として共通する要素として以下の5つがあげられていた。3Kに低収入と退屈が加わっているわけだ。

1 体力が必要なこと
2 汚れ仕事であること
3 低収入であること
4 危険であること
5 退屈であること

もともとこの本は英国のテレビ番組をベースにしている。番組では実際にその職業を体験してみて、昔の人たちの厳しい労働の実態や、社会のゆがみなどを考えさせるという教育的趣旨で構成されている。

・The worst jobs in history
http://www.channel4.com/history/microsites/W/worstjobs/
番組の公式サイト

この本を読むと、そんな時代に生まれなくてよかったと思うだけでなく、社会における職業について考えさせられる。誰かがやらねばならない辛い仕事というのはどの時代にも存在している。社会には上水道と同時に下水道が必要である。

仕事の中身の最悪度だって主観的なものでもある。たとえば、人間を手術や解剖する医者の仕事は見方によっては身の毛もよだつ仕事だ。弁護士は犯罪者や事件事故ばかりを相手にするやばい仕事である。人々から尊敬され、高収入だから、それらは3K仕事には決してならない。

結局のところ、やりがいがあるかどうか、ということが最高と最悪を決める本当の要素ということになるのじゃないか、というのが私の結論であった。

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このページは、daiyaが2008年3月25日 23:59に書いたブログ記事です。

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