写真家の引き出し

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・写真家の引き出し
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写真家 小川義文氏の写真とエッセイ。
http://www.crossroad.tv/
著者のオフィシャルサイト

私は車には乗らないしモノとしての車にもまるで興味もないのだが、この自動車写真本にはすっかり魅了されてしまった。ジャガー クーペ、ランドローバー ディスカバリー、ボルボが、自然や都市を背景に、ありえないほど美しく撮影されている。

「19世紀の人々にとって、写真術は移ろいやすい自然を永遠に固定するという長年の夢を実現してくれる手法だった。現代のデジタルによる写真術は、本物よりもっと本物らしい、まるで虚構のイメージにさえ思えるほどクォリティの高い画像をつくり出すことが可能になった。」

クルマというのは街にありふれていて、普通に写してもオモシロい写真にはならないものだが、この本に収録された作品は露出も構図も計算されつくしていて、一枚一枚がまるで美術館の絵画のようだ。

これらはすべてデジタルカメラによるもので、デジタルフォトの真髄を著者は「写真を絵画化すること」と語っている。それは撮影後のデジタル加工も含む。

「私の写真は非現実になろうとしているかもしれない。写真の目的が、写実からより絵画に接近しているのだから。写真に写し撮られたものは実在であることを意味するが、芸術におけるリアル(真実)とは、現実をそのまま再現することではないはずだ。それは、作家の主観と創意とを通じて選択された事実である。」

クルマに特化した作品が何十枚も続くが、飽きることなく楽しめる。作品をテーマに写真術を語る数ページのエッセイが間に16本挟まれている。写真と文章の配分が絶妙で、写真展にいって作品の横で作者の話を聞いているみたいな体験ができる本である。

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このページは、daiyaが2008年3月26日 23:59に書いたブログ記事です。

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