私たちがやったこと

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・私たちがやったこと
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受賞作「体の贈り物」で知られる現代アメリカ作家のレベッカ・ブラウン短編集。7本の中から以下に印象に残った作品を3つ概要紹介。

表題作「私たちがやったこと」

「安全のために、私たちはあなたの目をつぶして私の耳の中を焼くことに合意した。こうすれば私たちはいつも一緒にいるはずだ。二人ともそれぞれ、相手が持っていないもの、相手が必要としているものを持っているのであり、二人ともそれぞれ、相手に何が必要なのか、相手をどう世話したらいいかが完璧にわかっているのだ。」

この本に収められた連作はどれも満たされない愛、すれ違う愛、ほどけていく愛を幻想的に描いている。甘くはない愛のおとぎ話といった感じ。現代的。

レベッカ・ブラウンはレズビアン作家として知られている。作品には中性的なセクシュアリティの登場人物が多くて、読んでいて「この主人公は男かな、女かな」と明確な記述がでるまで落ち着かない気持ちにさせられる。おそらく作者にとってはそれはどうでもよいことなのだろう。男女を決めてくれないと落ち着かない読者のほうがセックスにとらわれているわけだ。「私たちがやったこと」でも二人が求めあうのは視覚と聴覚であり、男性性、女性性ではない。IとかYouとか一人称二人称に性別の区別がない英語の作家ならではの文体といえるかもしれないが。

新婚の夫婦の新婚旅行先に、ひっきりなしに友人知人が訪れて解放されずに困り果てる「結婚の悦び」。秘密と愛は密接な結びつきがある。男女の営みは隠さなければならないし、隠すからこそ悦びなのだ。秘め事というしね。何日たっても帰らないお客たちと連日連夜のパーティを繰り返す夫に辟易させられる花嫁。みんなに祝福されながらも満たされない。寓話的な話だが、男女の普遍的な何かを象徴しているように思える。

最後に配置された「悲しみ」も10ページの超短編だが味わい深い。去っていく人と送り出す人の本音と建前。遠くに行っても忘れないからね、毎日手紙を書くねといって別れた後、私たちはどうあるべきだろうか。

独特のタッチで7パターン、愛のスケッチがある。

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このページは、daiyaが2009年2月 5日 23:59に書いたブログ記事です。

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