一〇〇年前の世界一周 ある青年の撮った日本と世界

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・一〇〇年前の世界一周 ある青年の撮った日本と世界
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1905年、ベルリンの上流階級の青年が見聞を広めるために休職し世界一周旅行に旅立った。アメリカ、日本、朝鮮、中国、インドネシア、インド、スリランカなどを1年半かけて周遊し、各地の風景、風物をカメラで記録に残した。彩色が施されて疑似カラー化された写真はどれも傑作ぞろい。100年前の世界中にタイムスリップできる写真+紀行文のビジュアルブック(ナショナル・ジオグラフィック刊)。

シルクハットやロングスカートの人々が行きかうニューヨークや、カウボーイが馬車に乗り西部劇の舞台のようなアメリカの町、辮髪の男たちが闊歩する中国の道、など古い歴史物の映画を見ているような気分になるが、セットではなくすべてが本物。

4カ月滞在した日本の印象は特に素晴らしかったようで、「この上なく清潔で異国情緒にあふれ、細かい心遣いが行き届いた旅館」に感動し、「一気に体にまわり、華やいだ気分にさせる」燗酒に酔って、「エロチシズムを感じさせない女優や歌手のよう」な芸者たちと楽しく交流したことが記録されている。

「当時日本では、ビフテキはヨーロッパ人に対する最高級のもてなしだと信じられていた。直立不動の役人と通訳の脇で、私はこの巨大なビフテキを食べ始めた。幸い私はまだ若く、食欲は旺盛で胃も丈夫だったので、さほど苦労せずに食べることができた。この儀式に時間をかけては失礼にあたる、と同時に一口噛んでは会話を続ける必要に迫られ、それがさらに状況を複雑にした。」

30歳の時の世界旅行だったが、紀行文が書かれたのは実にその50年後、著者80歳の時だったそうだ。50年の間に著者は結婚し、子供をもうけた。世界大戦があり、ナチスを嫌った著者はドイツ国籍を捨てた。兄弟や友人の多くは亡くなっている。遠い日の思い出として自分の青春時代を回想してこれを書き下ろした。こんな走馬灯が見られる晩年ってうらやましい。若い時にいい旅をするってことは意味があるのだ。

写真が本当に素晴らしい。2時間ほど意識が時空を飛んだ。

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このページは、daiyaが2010年2月 9日 23:59に書いたブログ記事です。

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