「上から目線」の構造

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・「上から目線」の構造
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現代日本人の「上から目線」という心理構造を解剖する。

まず著者は、劣等コンプレックスによる「上から目線」と、親心による「上から目線」の2種類を区別している。世の中がフラットになってきて、上司が部下に、先輩が後輩に対してあっていいはずの目線まで、「上から目線はやめてください」と若者からは嫌がられる時代になった。

上から目線の背景には上下、勝ち負けの図式や、モラトリアム心理における根拠のない自信があるという。「自分はこんなところでくすぶっている人間じゃない」という心理があって、「上から」になれば現実逃避ができるというところに、若者の上から目線が登場する。高くて不安定な自尊心のあらわれ、横柄に隠された自己防衛の構造。帯のイラストには「うちの部長も成長したよね」と話す部下たちのの会話があって、ありがちで、笑える。

「ここからわかるのは、良くも悪くも自分自身が「上から目線」の立場で相手に接するのには慣れているが、相手の「上から目線」とうまくつきあっていくのに慣れていないということだ。だから、後輩に対して世話を焼いたり、リーダーシップを発揮して引っ張っていくのは、スムーズにできる。しかし、先輩に対して頼ったり、言うことを素直に聞いたりといったかかわりがうまくいかず、ぎこちなくなってしまうのだ。」

上司は得意だが先輩は苦手。先輩に頼ったり甘えたりがうまくいかないという人が増えてきたようだ。同じ方向をみながら並んで話すカウンター席のコミュニケーション、松下幸之助流の「あんたの意見はどうか。僕はこう思うんだが」という相談調が効果的だとしてアドバイスがある。

この「上から目線」という構造は、ライター、ブロガーの職業病でもあると思う。文章と言うのは対象をある程度突き放して見ないと書けないから、どうしても上から目線になりがちだ。多くのユーモア表現にも、背景に上から目線があるだろう。文章の上手な人は上から目線の構造を読者に対して目立たなくする。会話だって同じだろう。他者から見て傲慢な上から目線はだめだけれど、謙虚な上から目線を目指すべきかなあと。

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このページは、daiyaが2011年11月18日 23:59に書いたブログ記事です。

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