いるの いないの (怪談えほん3)

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・いるの いないの (怪談えほん3)
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京極夏彦と町田尚子による絵本。

古い日本家屋の暗がりの怖さを子供の心にトラウマのごとく植え付ける怪作。

おばあさんの家にやってきた少年は、ふと天井のはりの闇をみつめた。そこになにかがいるような気配を感じる。本当になにかいるのか、気のせいなのか、心配になる。猫がいっぱいいて、暗がりだらけの古い家で、おばあさんと二人の平穏な生活。常に天井の気配の正体はなかなかわからない。

日本家屋の闇について谷崎潤一郎は『陰翳礼讃』でこんなことをいっている。

「思うに西洋人のいう「東洋の神秘」とは、かくの如き暗がりが持つ不気味な静かさを指すのであろう。われらといえども少年のころは日の目の届かぬ茶の間や書院の床の間の奥を視つめると、云い知れぬ怖れと寒けを覚えたものである。しかもその神秘の鍵は何処にあるのか。種明かしをすれば、畢竟それは陰翳の魔法であって、もし隅々に作られている蔭を追い除けてしまったら、忽焉としてその床の間はただの空白に帰するのである。われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。」

日本の伝統的な暗がりの怖さと味を子供に教える絵本としてよくできている。いつ出るのかと思わせてなかなかでなくて、もう出ないのかと思うとぐわっと出る。びっくり箱的な展開。読み聞かせるには親が演出をよく考えてちゃんと怖がらせてやりましょう。

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このページは、daiyaが2012年3月 1日 23:59に書いたブログ記事です。

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