「視聴率男」の発想術

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・「視聴率男」の発想術
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「エンタの神様」「24時間テレビ」「投稿!!特ホウ王国」「速報!歌の大辞テン!!」「マジカル頭脳パワー!!」「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」など視聴率20%超の番組を次々に作り出し、ハズレがほとんどないヒットメーカーの本。

1000万人が求めるものをコンスタントにつくる人の持論が展開されている。


あえてヒットを生むための肝心な要素を挙げるとすれば、まずは世の中でいちばん多い、いわゆる”普通の人”のことをよく理解しておくことだと思う。常日頃から自分の中に、世の中の最大公約数的な”普通の人”を住まわせておくようにすることが何よりも大事なのだ。この後に続く本書の主要なテーマも、まさしくそこにあるといえる。


スタンダード的要素の割合が多いヒットというのは、わかりやすく言えば、すでに世の中に「ありそうでないもの」を生み出す作業、ということになる。

できあがってみれば「なーんだ」と言われるくらいに当たり前で、誰からもまんべんなく支持されるものでありながら、それまではどこにもなかったもの。

普通の人に受け入れられるヒット番組、ヒット商品とはそういうことだと思う。


普通の人が潜在的には誰もが感じているけれど、誰も気づいていないニーズにうまく応えることができればヒットにつながる

自分の中でつくりあげた普通の人の部分=「100のレベルの自分」に対して「200のレベルの自分」が新しい答えを見つけ出していってあげることが発想の基本だとする。そのためには自分の頭に1000万人を住まわせ、日本一普通の人になることが大切だという。

「まったく新しい何か」を生み出そうとしてその結果、マニアックだったり奇をてらったモノをつくると失敗するということらしい。

テレビの場合は1000万人が見るという前提は常に存在していて、その枠組みの中で、何を売るかという考え方になる。「視聴率は親切率」だとし、とにかくわかりやすさを心がけろとアドバイスしている。外さないことが重要で、アバンギャルドは常に傍流だと切り捨てる。

究極的にマス相手のマーケティングの極意は参考になった。実績が示すようにこの著者は時流に乗った天才なのだと思う。

と同時に疑問も生じる。

「エンタの神様」「24時間テレビ」「投稿!!特ホウ王国」「速報!歌の大辞テン!!」「マジカル頭脳パワー!!」「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」

私はこれらの番組が面白いと思えない一人だからだ。

「最大公約数の面白いと思うもの」という発想は、逆に言えば、そこから外れた人たちにとっては「つまらないもの」にもなりうる。インターネットはよく使うけれどテレビはあまり見ない人たちというのが私の周りには、随分多くなってきた。そうした層の多くは多様なこだわりや趣味を持っていることが多い。多様な最小公倍数のニッチ集合が、画一的なマスとは別に増えてきているのではないだろうか。”ロングテール”はネットだけでなく、テレビでも進行しているのではないか。

「1000万人向けの感動」をしらじらしく感じながらも視ている視聴者はきっと多いはずである。放送の限界を通信が突き破り、コンテンツの世界でも革新が起きるとしたら、新しい世界では、1000万人が浅い感動をするのではなくて、数万人の異なる集団が異なる内容に対して、深い感動をするようになる気がする。


・誰がテレビをつまらなくしたのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003903.html

・テレビの教科書―ビジネス構造から制作現場まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003734.html

・テレビのからくり
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002987.html

・テレビの嘘を見破る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002377.html

このブログ記事について

このページは、daiyaが2007年1月13日 23:59に書いたブログ記事です。

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