幸運な宇宙

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・幸運な宇宙
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ビッグバンによって生じた膨大なエネルギーから、物質が生成され、銀河や惑星ができて、太陽のほどよく近くに地球できた。最初のエネルギーの大きさや分布、物質の割合、太陽と地球の距離などが、ほんの少しでも違っていたら、地球や人間の存在の可能性はなかった。確率論的に考えると、人間の誕生は奇跡に等しい出来事である。この宇宙の奇跡的な幸運をどう考えるべきか、現代の最先端の宇宙論の視点からじっくり考察する内容。500ページの大作。

前半はビッグバン理論の解説から始まって、万物理論構築の経緯と最新状況、インフレーション理論、超弦理論、M理論、マルチバース論、ダークマター、ダークエネルギーなどキーワードを整理し、これまでにわかっている宇宙の姿が要約されている。宇宙は何でできているのか?、どうやって始まったのか?、果てはあるのか?などの疑問に明快に答える。科学読み物として楽しい。

そして後半では、なぜ奇跡的な確率で今の宇宙と私たちが存在しているのか?という根源的なテーマに挑む。そのありえない確率は、神が創造に介在したからだと宗教者やインテリジェントデザイン論者は、目的や意味を見いだす。

著者は「福引の当選者の多くが思い違いをするように、わたしたちも、自分が当選したことに、間違って何か深い意味(幸運の女神に微笑まれて、などの)を認めてしまうかもしれない。ほんとうは、偶然の結果で幸運だったに過ぎないにもかかわらず。」とし、目的や意味を見出すことはナンセンスであると斬る。

そして科学的態度としての数種類の既存の人間原理説を分類し、それぞれの説の長短を明確にする。宇宙や人間がなぜ存在するのかを突き詰めて考えていくならば、本当の問題は「何が存在するかを決めるのは何か?」ということだと著者は問題を絞り込む。そして、著者独自の人間原理説を展開する。

著者の結論は、人間と宇宙と心を総合する理論。量子力学における観察者の必要性と同じように、宇宙論に心を必要物として持ち込む。要約抜粋すると「宇宙は自らを意識しているという状態を、量子論的後戻り因果関係もしくは、未発見の何らかの別の物理的メカニズムによって自ら作り上げたのだ」「自らを理解することができる自己一貫性を持ったループだけが、自らを作り出すことができるので、生命と心(少なくとも、その可能性)を持った宇宙だけが実際に存在するのではないか」というもの。

人間原理説の拡張である。何かが存在することを認識するものがいるから存在ということがありえる。宇宙に生命や心が現れるのは、幸運であると同時に必然でもあるということになる。宇宙論は存在の哲学そのものになる。

宇宙論のアップデートと存在の哲学のふたつが一冊で味わえる実にお得な内容。読み応えたっぷり。

・多世界宇宙の探検 ほかの宇宙を探し求めて
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/11/post-670.html

・ビッグバンの父の真実
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004784.html

・ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002797.html

・はじめての"超ひも理論"―宇宙・力・時間の謎を解く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004230.html

・ホーキング、宇宙のすべてを語る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004047.html

・奇想、宇宙をゆく―最先端物理学12の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003562.html

・科学者は妄想する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003473.html

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このページは、daiyaが2008年6月 2日 23:59に書いたブログ記事です。

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