日本の色辞典

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・日本の色辞典
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まず色見本の美しさに感動する。歴史や文化の背景を綴った個別の解説も充実している。
「三百七十九色のうち、本文で解説した二百九色の伝統色については、一部をのぞき、すべて天然の染料で絹布を染め、もしくは天然の顔料(岩絵の具)を和紙に塗って再現した色見本を付した。」

と、注でさらっと書かれているが、大変な手間暇をかけて丁寧に作られた出版物だ。本来の色を再現するため「延喜式」の資料までさかのぼり、染色材料の処方を調べ尽くした上で作られている。書籍の限界に挑戦している。

日本の伝統色は布や和紙に使われテクスチャの質感を伴ってこそ美しいのだ。写真ベースの色見本はこれだけで鑑賞に値する。伝統色は決してRGBのような単純な情報に還元できないことを思い知らされる。なかには女郎花色(おみなえしいろ)のように、薄い藍色と黄色の色糸を緯と経に織りなした布の襲でしか再現できないパターンもある。

赤、紫、青、緑、黄、茶、黒・白、金・銀の8グループに466色が分類されている。たとえば赤グループは、

【赤】 代赭色、茜色、緋、唐紅、今様色、一斤染、朱華、赤香色、赤朽葉、蘇芳色、黄櫨染、臙脂色、猩々色など104色。

冠位十二階で最高位の深紫、黒紫を含む紫グループは、

【紫】深紫、帝王紫、京紫、紫鈍、藤色、江戸紫、滅紫、杜若色、棟色、葡萄色、紫苑色、二藍、似紫、茄子紺など46色

などがある。(数の上では茶色(107色)が多い。)

古典文学や風雅な世界で使われる色名が、実際にはどんなに美しい色なのかがよくわかる。色見本にならべて、その色が主体の文物や風景、代表的な芸術作品もカラー写真で収録されているからイメージしやすい。

読み物部分が充実しているため、実用のリファレンスというだけでなく、鑑賞して楽しむ図鑑として、一家に一冊あってよさそう。日本図書協会選定図書。

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このページは、daiyaが2008年11月 9日 23:59に書いたブログ記事です。

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