クレイジーパワー 社会起業家―新たな市場を切り拓く人々

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・クレイジーパワー 社会起業家―新たな市場を切り拓く人々
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「常識のある人は、自分を世間に合わせようとする。非常識な人は、世間を自分に合わせようとする。ゆえに非常識な人がいなければ、この世に進歩はありえない。」。BOP(経済ピラミッドの底辺)市場でビジネスを興すことで世界を変えようとたくらむクレイジーな社会起業家たちの現状をまとめた本。

BOP市場はアジアだけでも低所得人口が人口28億6千万人で総所得3兆4700億ドル、世界では40億人で5兆ドルといわれる巨大市場だ。しかし、その消費者たちは貧困や飢餓、戦争やテロ、格差や差別、組織の腐敗に苦しむ国の人々であり、先進国の常識的ビジネスモデルはそのままでは通用しない。社会や政治の変革を伴う、非常識なビジネスモデルが必要とされるのである。

市場経済型のアプローチを使って持続可能な発展を作り出す社会起業家たちが30人以上も、次々に登場する。グラミン銀行のムハンマド・ユヌスやノーベル平和賞のワンガリ・マータイなど著名人もいるが、この本ではじめて知ったクレイジーも多い。

性の話がタブーだったタイで、ミーチャイ・ウィラワイタヤは「コンドーム膨らませ大会」や「ミス・コンドーム美人コンテスト」を企画して「コンドーム王」の異名をとり、人々がコンドームのことを「ミーチャイ」と呼ぶまでにもなった。そして、この間にタイの出生率は彼の思わく通り驚異的ペースで低下した。天才である。この事例では、「深刻な問題を早期に発見することと、その明るい面を示すこと」が重要であると著者は総括している。それには型破りな発想が必要なのだ。

起業家オルランド・リンコン・ボニーヤはコロンビアの貧困地域の若者をIT起業家集団に変身させるイノベーションパーク「パケルソフト」を立ち上げた。「パルケソフトで行われているのはあくまで社会的活動で、たまたまその手段に科学技術を使っているだけです。」。社会的な影響力を持つ仕事に従事しながら、起業のチャンスが与えられる環境に多くの有能な若者が群れている。

持続可能なビジネスを強く意識しているのが最近の社会起業家の特徴のようだ。クリーンテクノロジー投資会社の幹部は「ひと昔前の環境起業家を動かしていたのは『地球を救え』の精神でした。それが悪いわけではありませんが、彼らは起業家ならではの規律や厳格さ、投資利益率に対する意識などに欠けている傾向がありました。」と違いを言っている。

ビジネスを意識する人間は自らの報酬だって意識すべきである。「「持つ者」と「持たざる者」の格差は毎日のようにニュースになるが、営利企業と社会的企業の給与格差がニュースで取り上げられることはほとんどない。誰もが「見て見ぬふり」をしているのだ。」と著者が書いているが、報酬は起業家自身の持続可能性の大きな問題でもあるだろう。

新世代の社会起業家によって、システムの転換が行われている重点分野としては、透明性、説明責任、認証、土地改革、排出権取引、価値の評価・測定の6つが挙げられている。営利のビジネスモデルはやりつくされた感があり、新たなビジネスモデルを考案するのは至難の業だが、社会起業、環境起業の領域はまだ手つかずの領域が多いのかもしれない。アイデアが数年間で大きく実るケースが多いように思えた。

・最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/10-10.html

・絶対貧困 世界最貧民の目線
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1037.html

・世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1105.html

・いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-964.html

・未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/80.html

・誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-821.html

・ビジョナリーカンパニー【特別編】
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-403.html

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このページは、daiyaが2009年11月 8日 23:59に書いたブログ記事です。

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