死体の経済学

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・死体の経済学
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映画『おくりびと』をDVDで見た。感動。山崎努の名演が光る。

・おくりびと [DVD]
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で、この『死体の経済学』は映画で予習してから読むとよくわかる本だ。葬儀業界に詳しいライターによる現代葬儀業界事情。

数年前に祖母が他界した際に、私ははじめて納棺師の仕事を見た。その15年くらい前の祖父の葬式では、そうした儀式はなかったはずで不思議に思っていたのだが、実際、この職業がスキマ産業として成り立ってきたのが10年ほど前からなのだという。葬儀の世界は意外にも"時代の流れ"で変化していくものであることがよくわかる本だ。

日本の葬儀費用は平均231万円だが我々はそれが高いのか安いのか判断ができない。棺桶やドライアイスや祭壇や会場費は、葬儀社のメニューにある金額を払うしかないが、本当の原価はいくらなのか。ちょっと驚いてしまう定価が、この本には書かれている。

「原価の数十倍を請求することが唯一許されたビジネス、それが葬儀なのだ。」

何もないことに意味を持たせるのが儀式であり、お金を払うからこそ意味が出てくるものともいえる。"知らない方がいい"という業者の声も引用されている。葬儀業界には「葬儀屋は月に1体死体がでれば食っていける。月に2体死体がでれば貯金ができる。月に3体死体がでれば家族揃って海外旅行ができる」という有名な格言があるそうだ。

近年は低価格帯の新規参入や、現代のニーズにこたえる新規サービスが次々に登場している。エンバーミング(遺体保存と死に化粧)業者、死臭消臭剤開発にかかわる人々、チェーン展開する遺品整理屋など、業界人へのインタビューと著者の考察がある。ぼろ儲けというわけにもいかなくなってきたのかもしれないが、高齢者の増加は確実で、今後も成長マーケットであることは間違いないだろう。

死体を扱う仕事というのは、必ず誰かがやらばければならないのだけれど、大多数の人はやりたくない仕事だ。この業界は遺族を満足させなければやっていけない。有望ビジネスという視点で参入するにせよ、結果として、遺族を慰めて幸せにする仕事が増え、それに従事してやりがいを感じる人が増えて、さらに関係者が儲かるビジネスが続くなら、いいことだなと思った。

・遺品整理屋は見た
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004753.html

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このページは、daiyaが2009年11月16日 23:59に書いたブログ記事です。

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