Books-Trivia: 2005年1月アーカイブ

・問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?
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明鏡国語辞典の編者たちが書いた問題な日本語解説。

きもい、きしょい、はずい、きょどい、おもしい、うざい、グロい、こくる、めんどい。
こういう若者言葉、時々、分からないものがある。年を取ったのだなあと実感してしまう。ときどき自分の美的センスに合わないものには不快感を感じてしまったりする。特に可能を表すのに「食べれる」「見れる」「出れる」とする”ら抜き言葉”は大嫌いだ。

一方、この本は、私よりも進歩的だ。新しい言葉遣いを国語の乱れとして批判するのではなく、むしろ、広く使われる言葉がやがては国語の本則になっていくのだ、という意識が感じられる。

■気になっていた日本語の発見の連続

それにしても発見の連続だった。そのうち調べてみようと思っていた疑問が数十個も氷解した。知らないこともいっぱいあった。

たとえば、

・「独壇場」(どくだんじょう)は許容されているが、本来は独擅場(どくせんじょう)が正しい。
 どくせんじょうという発音は聞いたことがなかった

・「全然いい」、「全然大丈夫」は間違いではない
 間違いだと思っていました。

・「人妻」は「ひとづま」だが稲妻は「いなずま」、神通力は「じんずうりき」が本則。 二つの漢字が単独で意味をなし分離可能なときに「つ、づ」となる

・「おざなり」「なおざり」は別の単語で共に正しい
 私はなおざりはスペルミスと思っていました

・「とんでもありません」は必ずしも間違いではない
 とんでもございませんの間違いと認識していました

・二十世紀は本来は「にじっせいき」だが「にじゅっせいき」が広く使われる
 そうなのか、にじっせいき、なのか

■コンピュータなのかコンピューターなのか

IT業界の人間は「コンピュータ」と書く人が圧倒的に多い。逆にデジタルに縁遠い一般世界の人たちは「コンピューター」と書いていると思う。役所、辞書、新聞では「コンピューター」だ。

この表記はずっと気になっていた。私は相手によって使い分けている。

Web上ではどう使われているだろうかとGoogleで調べてみた。

インターネット上ではデジタル系が多いせいか、

コンピュータ(コンピューターを除く)の検索結果 約 5,230,000
コンピューター(コンピュータを除く)の検索結果 約 2,080,000

で、コンピュータが優勢である。一般書籍では逆転するかもしれない。

ではユーザとユーザーではどうかというと、

ユーザ(ユーザーを除く)の検索結果 約 4,850,000
ユーザー(ユーザを除く)の検索結果 約 6,560,000

この本によると本来はコンピューター、ユーザーと書くそうだが、「外来語の表記」では「ー」は慣例に応じて省くこともできるとあり、間違いというわけではないらしい。ただ、語形が短いメーカー、シャッターなどは省かないほうがいいのではないかとまとめられている。

■リンクを張るのか、貼るのか

この本には出ていなかったが、ずっと気になっている言葉がある。リンクを張る、リンクを貼る、である。

リンクを張る の検索結果 約 169,000 件
リンクを貼る の検索結果 約 99,500 件

おそらく、張るが正しいと思うわけだが、長年、Webを作る側にいると、貼るも正しいことにしてほしくなる。特に画像でのリンクの場合、張るのでなく、貼っている気がする。文字列リンクであっても、コピーアンドペーストで「貼る」場合、感覚的には貼っているのである。張っていない。

普通に考えると「ホームページに画像を貼る」は正しいだろう。ページは紙のメタファーだからだ。「ホームページに画像リンクを貼る」も画像が主ならば論理的には正しいことになると思われる。では、文字列はどうなのか。従来は文字は筆で書くから”貼れ”ないのだが、クリップボードのあるコンピュータでは”貼る”ことができる。認めてもいいような気がする。

いまちょうど使ったが、かつて95年ごろ、ネット上では「ホームページ」論争があった。
「ホームページ」とは、本来、

1 サイトのトップページ
2 ブラウザー起動時に開くページ

であって、その他のページは「Webページ」と呼ぶべきだという議論だった。今ではそう細かい差異を気にせず使うのが一般的だと思う。私はTPOで使い分けているが、古くからの技術系ユーザの中にはこだわっている人も多い。

Googleで調べてみると、利用頻度は

ホームページ の検索結果 約 47,900,000 件
Webページ の検索結果 約 7,910,000 件

ということだった。

それぞれ本来の意味で使われたかどうかは調べていないが、なんでもホームページ派が勝ったような印象である。

言葉はよく使われれば、最初は文法的に間違い、乱れであっても、正しいと認められていく。今まではそれを一部の国語の専門家が決めていたが、この本に登場する専門家たち、結構、ネットで検索して普及状況を確認しているようだ。これからは検索エンジンが国語を決めていくのかもしれない。

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