Books-Media: 2008年2月アーカイブ

日本映画のヒット力

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・日本映画のヒット力
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日本映画が復活した。2006年に21年ぶりに邦画が洋画の興行収入シェアを上回り、2007年には興行収入10億円以上の作品が東方13本、松竹5本あって、それぞれ前年度を上回っている。ジブリのアニメ作品やテレビドラマとの連動作品などの大ヒットは往年の映画ブーム時の記録を次々に塗り替えている。この本は著名な映画ジャーナリストが、映画の内容には敢えて立ち入らず、興行成績でヒットをはかり、なぜ日本映画は近年、再び儲かるようになったのかを分析している。

テーマは、

・かつて日本映画がダメだった理由
・情報戦が日本映画を生き返らせた
・テレビ局は日本映画の救世主か
・東宝株式会社・映画調整部の力
・スター・プロダクションが映画ビジネスに参入・・・・

など。

映画の宣伝と言うとかつてはどれだけテレビスポットCMを打つかであったそうだが、現在はテレビスポットにたよる宣伝戦略が岐路に立たされているという指摘がある。テレビで広告しただけではだめで、人々が、多様な場面に多様なメディアを介して同時多発的に知るということが話題性につながるということなのである。クロスメディア戦略はボリュームで計ってはいけないということだろう。

「このように現代の情報戦とは、単純にその映画の情報の多さを競い合うのではない。情報は多岐にわたる。というより、情報はかなり捻じ曲がった流通の仕方をする。ここが非常に重要なのだ。」

後半で紹介された最近の映画の観客の動向調査も興味深かった。

1 映画は女性の方が好き。観客に10%多い。
2 単館系では20代、30代の若い人が多い
3 観客の過半数が会社員、次いで学生、主婦
4 テレビ、予告編、雑誌、ポスター、チラシ、新聞の順で認知する
5 ヘビー層は監督、主演者で選ぶ、ミドルライト層は話題性や他者の評価で選ぶ
6 複数で鑑賞が中心、ヘビー層ミドル層は異性中心
7 ヘビー層ほどシネコンを好む
8 6割以上が入場料低減を望む

などの結果がある。

日本映画というと年配者が中心、若物は洋画が中心という時代は終わっていて、本当に若い人たちの文化に定着しつつあるのだ。まさに復活という印象である。私はかなり映画を見る方だが、確かに日本映画率が増えている。

私の最近の邦画のおすすめはこれ。

・ゆれる
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久しぶりに故郷へ帰ったカメラマン(オダギリジョー)は、兄と一緒に幼ななじみの千恵子と峡谷へドライブする。兄と千恵子が二人で吊橋を渡ったときに千恵子が転落死してしまう。これは事故なのか殺人なのか?揺れる吊橋のようにゆれる関係者の心。手に汗握るサスペンスであり、心揺り動かされる人間ドラマ。西川美和監督のファンになった。

麗しき男性誌

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・麗しき男性誌
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斎藤美奈子が男性雑誌を斬る。かなり痛快。

取りあげられた雑誌は週刊ポスト、プレジデント、日経トレンディ、文芸春秋、週刊新潮、週刊東洋経済、ダカーポ、ナンバー、週刊ゴルフダイジェスト、サライ、日経おとなのOFF、ダンチュウ、ニュートン、メンズクラブ、エスクァイア、ブリオ、ナビ、ブルータス、レオン、ホットドッグプレス、東京ウォーカー、週刊プレイボーイ、週刊スパ、メンズノンノなど。さらに普通の男性雑誌に加えてヤンキー御用達の「ヤングオート」、ヘラ釣り専門の「月刊へら」、バス釣り雑誌の「バサー」、「山と渓谷」、軍事雑誌「丸」などの特殊な男性雑誌もレビューしているのが愉快。

論旨明快に男性雑誌のイタいところを突いてくる。当たり前といえば当たり前だが、男性雑誌というのは、その時代の男性の欲望やコンプレックスの反映なのだ。たとえば一件、対極にありそうなアエラとスパも、基本的にやってることは一緒だという指摘は鋭いとうなった。

「どちらも20代〜30代の「ちょっとハミ出たヤツ」に関心を持ち、その条件に合致する人を何人か取材し、あたかもそれが「日本の普遍的な大問題」であるかのうような分析を加える。関心領域といい切り口といい、この二誌は意外にも親戚同士だったのだ。ただし、両誌の間には決定的な差がある。自虐の「スパ」とは裏腹に、「アエラ」には上昇志向の強さがあることだ。この差は読者層の差を反映しているともいえる。「S」が偏差値低め、自虐度高しのサラリーマンを相手にしているとすれば、「A」が意識してるのは偏差値高め、プライドも高めのお姉さま方だ。」

この本の本文は2000年5月から2002年12月にアエラに連載された内容なので、変化の激しい雑誌の評論としては古くなった部分があるが(廃刊した雑誌も複数ある)、文庫版では2007年時点での追記があって、その間の誌面の変遷をフォローしてくれている。こうした雑誌の編集方針の比較や歴史については情報があまりないので、非常に参考になった。

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