Books-Internet: 2006年2月アーカイブ

・ブログ道
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「メール道」の著者で、人間として尊敬する師匠、久米信行さんが、今度はブログの本を出版された。その名も「ブログ道」。ブログの道に生きる者にとっての作法と心得が説かれている。

・メール道
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001854.html
メール道と久米社長については過去に紹介している。

この本の出版記念パーティで私は久米さんの対談相手にご指名いただいた。

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パーティの報告:

・テレビブログとブログテレビ:好きな番組+好きな仲間+好きな時空で:IT Pro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20060207/228755/

・橋本大也さんとの対談でテレビブログを知…
http://plaza.rakuten.co.jp/enginekimyo/diary/200601300000/

・[4k]shikeの日記 - パーティご来場有難うございました
http://d.hatena.ne.jp/shike/20060204


業界のキーパーソンが多数集まる賑やかな会合だったので、壇上では本の詳細に立ち入りお話をするには至らなかったのですが、この場を借りて、この本で感銘を受けた箇所を少し長く引用させていただく。


やがてブログを続けるうちに、書くこと自体が面白くなり、仲間の目を気にしなくても続くようになります。そしてある日、ブログを一緒に始めた仲間の何人かを見ると、いつしかそれぞれの山を目指して黙々と進んでいるかもしれません。目指す山が違えば、すなわちブログのテーマや表現方法が違えば、もはや競争相手ではなく、「道を歩む同志」だと感じられることでしょう。かつてほど共に過ごす時間はなくとも、共感と尊敬は逆に深まっているかもしれません。

また、道の途中で見知らぬ人たちと意気投合することもあるでしょう。見晴らしの良い場所に出て眺めれば、別の山でこちらを見つめる人と目が合い、心が通うかもしれません。また道が重なって出会うときもあるでしょう。そして、一緒に何かを創造することもあるでしょう。

やがて、群れるより、一人で歩む方が快くなるでしょう。時には一人で登り続ける辛さも痛感するでしょうが、そんな時は互いの歩みをブログで確かめ合うことができるはずです。今もどこかで縁者が共に歩んでいることにおおいに勇気づけられるのです。わが道を恐れず歩む人たちが、ブログの絆で結ばれながら、いつしか新しい世界を、曼荼羅を描いていくことになるでしょう。

ブログ縁者のあるべき関係を、見事にいい表わしている名文だと思った。それと同時に、私が深く共感するのは、久米さんの縁者の考え方は、ベンチャー経営者同志の精神的つながりに似ていると思っているからだ。ブログも企業経営も、お互いに良いときもあれば悪いときもある。市場では競合の関係もあるし、戦略上敵対しないといけないこともある。だが、精神的な絆で結ばれた同志は、浮世のことはどうあれ、求道者として深い部分ではつながっている。手段がアナログでもデジタルでも変わらない人間同士の絆のことを説明しているのだと思う。

この本のタイトルは、ブログ術ではなくブログ道である。円熟したオンラインコミュニケーションの作法と心得がまとめられている。

「コメント・トラックバックは「群れず・悩まず・争わず」」

「ブログを独立自創×共創共栄のメディアにする」

「縁を育むお礼と賞賛のコメント・トラックバック」

ときどき、ネットの世界では、「メールには署名を入れないといけない」「他人のブログに無断リンクはいけない」「引用していないのにトラックバックするのは失礼」などなど、形式的マナー論が盛り上がっているときがある。久米さんが教えてくれるのは、形式じゃなくて思いやりのこころこそ大切だという当たり前の事実。

道の本だが、術の話もある。たとえば、ブログの記事にも署名を入れるといいというアドバイスは、はじめて聞いた。作法的にも、SEO的にも、確かにその通り、効果的かもしれない。久米さんは自らのブログで署名を実践している。

・3/3「ブログ道」出版記念パーティがわり…
http://plaza.rakuten.co.jp/enginekimyo/diary/200602090000/
署名のある記事の例


ブログを道と考え日々研鑽したい人たちのための教典。

・RSSマーケティング・ガイド 動き始めたWeb2.0
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メーラー、ブラウザにつぐ第3のツールとしてRSSリーダーが注目されている。マイクロソフトの次世代ブラウザ、OSでの採用も予定されており、今年から来年にかけて、いっきにユーザ数を増やすことは間違いない注目の技術である。

「RSSはビジネスとどういう関係があるのか?」。このテーマを、複数の専門家が各章を分担して一冊の本として最新の結論をまとめた。これまでRSSは技術論で語られることが多かったが、ビジネスマンが知りたいのは、それが利益や顧客にどのような影響を持つかということだろう。

著者の一人でRSSの広告ビジネスにいち早く取りんだ田中弦氏(RSS広告社社長)は、不動産ビジネスにたとえて新しい広告モデルの特徴をわかりやすく語っている。RSS広告とは以下の図のように、ブログやニュースサイトのRSSに、関連する広告を差し込むビジネスである。


・RSS広告(RSS広告社のサイトから図引用)
http://www.rssad.jp/
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従来のネット広告は主にサイトのトップページへの読者誘導が目的であった。これに対して、RSSは個別記事への誘導を可能にする。「RSS広告はページ単位から記事単位へと土地を細切れにし、それぞれの価値を上げようとするものである」。だから「どこまでコンテンツを小さく区切って地上げすることができるか」というチャレンジだと書いている。

実際にRSS広告はどのように使われているのか。「「待ち」と「トレンド連動」」「集中と分散の両方に対応」というメリットや、周辺市場の未整備による現時点でのデメリットも率直に語られている。

たとえばRSS広告社の事例では、地震が起きると、ブログで地震についての記事が大量に書かれて、地震保険の広告の配信数が多くなった。トレンドというのは多様でこれがくる!とヤマの予想が難しいものだが、あらかじめ話題になりそうなRSS広告をいくつも仕込んでおくことによって、「ユーザの興味が最も喚起されたタイミングで的確にリーチできる」。検索連動型と違ってユーザが知らないキーワードにも対応できるので、新製品や突発的な事件、事故への広告効果が高いようだ。

目次は以下のような構成で、RSSとビジネスの接点を網羅的に語る。

chapter1:ネットビジネスに何が起こっているのか
 1-1 「検索」「発信」「受信」の情報革命
 1-2 ユーザーの情報消費が変わろうとしている

chapter2:RSSマーケティングの誕生
 2-1 RSSのマーケティング利用が始まった
 2-2 ますます増加するユーザーとの接点
 2-3 マーケティングツールとしての3つの特徴
 2-4 RSSマーケティングの実際
 2-5 企業マーケティングはRSSでどう変わるのか

chapter3:RSS広告の特徴とその可能性
 3-1 ネット広告はどう発展してきたのか
 3-2 RSS広告市場の夜明け
 3-3 RSS広告のメリット・デメリット

chapter4:RSSがウェブ検索に革命を起こす
 4-1 RSSは検索を変えるのか
 4-2 RSS検索エンジンが輝くとき

chapter5:口コミはRSSから起こる
 5-1 インターネットの口コミ効果
 5-2 口コミを促進させる次世代ウェブサービス

chapter6:ウェブサイトはRSSで変わる、変える
 6-1 RSSの活用で企業サイトが変わる
 6-2 RSSのアクセス解析

chapter7:RSSがメールを超えるとき
 7-1 メールが抱えている問題点
 7-2 RSSのアクセス解析

chapter8:モバイルRSSマーケティング
 8-1 モバイルインターネット市場の現状
 8-2 モバイルインターネットにおけるRSS
 8-3 RSS普及にあたっての課題
 8-4 携帯電話のメディアとしての特徴
 8-5 モバイルインターネットにおけるRSSの実際
 8-6 モバイルインターネットはRSSでどう変わるのか

chapter9:What is RSS, What is Web 2.0
 9-1 Web 2.0とはいったい何なのか
 9-2 RSSがWeb 2.0で果たす役割
 9-3 Web 2.0はもう始まっている
 9-4 Web 2.0で何が変わるのか

付録:主なRSSサービス
索引

まだビジネス事例が僅かな分野であるため、先行者による執筆のこの本で初めて明かされる知見が多い。理屈や予想だけではなく、数字をベースにした現時点での状況要約が大変参考になる。

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