Books-Management: 2010年4月アーカイブ

・ザ・マインドマップ
themindmapbook01.jpg

私が教員をしている大学・大学院では、ここ数年で、20人に1人くらいの割合で授業ノートをマインドマップでとっている学生を見かけるようになった。世界では教育分野とビジネス分野で2億5千万人が使っている思考ツールであるといわれる。この本はマインドマップ発案者トニー・プザンによる、世界1千万部突破のオフィシャルガイド。

マインドマップの利点はなにか?

最初に普通のノートの4つの欠点

・キーワードが明確でない
・記憶しにくい
・時間を無駄にする
・脳の創造性を刺激しない

が挙げられている。

授業内容を最初から最後まで時系列でノートをとるよりも、自分が気になったキーワードを軸にして、関係性をネットワーク状にまとめていく方が、頭に定着する。読み返した時も効率よく想起することができることが魅力であるという。

同じ講義を聴いていても10人いれば10通りのマインドマップができあがる。まったく同じものができてしまうことはない。個性が発揮され、頭を使えば使うほど個性的な思考ができることがマインドマップの素晴らしいところだと思う。

そして「マインドマップ作成のプロセスから答えが出る」ということ。きれいにノートを取って終わりではなく、考えながらマップを描くことで自分の思考が整理されていく。ただ記録するだけの方法論ではないのだ。

実は私はマインドマップが苦手である。直観的に自分に向いた思考ツールだと思って何度も挑戦しているが、なかなか定着しない。それでオフィシャルガイドブックを読んで再挑戦してみようというわけ。きれいにマップを描こうとする心理がいけないらしい。見やすさ、美しさを意識しないことが大切のようだ。心がけてみよう(そうは言われてもこの本の例は見やすくて、美しいんだよなあ...。)

巻末のおまけが豪華。アインシュタインやエジソン、ニュートンやダヴィンチ、ベートーベン、ミケランジェロ、コロンブスにピカソなど、歴史的な天才たちのノートが写真で収録されている。天才はみんなビジュアルなノートを取っていることに改めて気がつかされる。

・努力しない生き方
419aeMxrU9L__SL500_AA300_.jpg

20年間無敗の雀鬼 桜井章一の語る人生哲学。努力と書いて「努めて力まない」ととく、そのココロは?。ポジティブシンキング、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング全部試したけどダメ、肌に合わないよっていう人は、この本でうまくいくかもしれない。

「この本では「努力する」「求める」「つくる」といった足し算へと向かうさまざまな発想や行為を俎上に載せている。そしてそれらがどれだけ無理で不自然なものを孕んでいるか、それゆえ破綻しやすく、かつ人生に対していかに破滅的なものになりうるかを述べたつもりである。」

確かにどんな分野でも達人の極意は、いかに力を入れないか、にある。

「つまり、麻雀にせよ、何にしろ、そこにあったのはいつも「努力」ではなく「工夫」だったと思う。「工夫」があれば何事も楽しくできるのだ。「努力」をしようとすればかならず余計な力が入る。練習して上達を続けるには力が入っていてはダメだ。」

努力の嘘っぽさが嫌いだと著者ははっきり言う。

この本の中身は、持たない、得ない、壁を超えない、頑張らない、悟らない、満たさない、才能を磨かない、覚えない、急がない、意味を求めない、計算しない、集中しない、育てない、など数十の「○○しない」ノウハウの集積だ。しかし、姿勢はちっともネガティブでもニヒリズムでもない。ポジティブでもネガティブでもなくて、しなやかな生き方論なのだ。

「私は道場で「勝つ」ことを求めず、「負けない」気持ちでやれと言っている。「勝つ」は人がつくりだす欲望だが、「負けない」は野生の動物がもっているような本能に近いところからくるものだ。」

自然に潜在能力を引き出すための方法論として、努力しない、があるわけだ。目標は前にではなくて、両脇に置くような感覚がいいという。目指したら負けなんだよ、と。

でも、努力しないだけじゃダメ人間じゃないの?いやいや違うのだ。伝説の勝負師である著者には数々の修羅場体験がある。そして自ら好んでサメの海に入ることを楽しむ。生命の危険と隣り合わせになることで本能的な生きる力を引き出しているのだ。努力しない生き方は何もしない生き方とはまったく違う、デンジャラスなにおいを感じた。

勝間でも香山でもないオルタナティブな方法論が桜井にはある。

・機長の「集中術」
51Y-vHKozvL__SL500_AA300_.jpg

わかりやすい極意の書だ。

「集中力がスキルである以上、テクニカルスキルと同様に、目的意識の強さ、教育、訓練、努力、工夫、習慣などによって、いくらでも何歳になっても伸ばすことができるのです。」

著者は日本航空で常務歴42年の元機長。総飛行時間1万8500時間(地球800周相当)。引退まで一度も病気で休んだり自己都合でスケジュールを変更したことがなく、この4月、63歳まで現役で機長を務めた。日本航空の国際路線すべてを飛んだ伝説的パイロットが語る集中力発揮の方法論。

集中力とは捨てる技術だという。自分が好きなこと、やりたいこと、やるべきことに集中し、それ以外をいかに捨てるかが重要だという。具体的に著者は長年のパイロット生活においてどう心がけてきたかを教えている。

「パイロットが一般の職業に比べて、集中力の発揮の仕方がうまい、スゴイと言われるのは、数百名の尊い生命をあずかっている、という使命感があることはもちろんですが、常に時間というものを意識して仕事をしていることも、大きな要因のひとつです。 そしてフライトに関わるすべての業務を、出発の時間、あるいは到着の時間から逆算して、それぞれの仕事、手順、操作、打ち合わせなどに時間の制限をつけて実施しているのです。 このように、一般の仕事でも常に時間を意識して実施すれば、必然的に、集中力を発揮せざるを得なくなります。」

とても思い当たることがひとつある。私は普通の人よりも多くの本を読むから、しばしば「どうやったら本を速く読めますか?」という質問をいただく。答えは簡単で、30分おきに何ページ読めたかをチェックすれば自然と速くなる。速読メソッドなんて不要で、人は文字を速く読もうと意識すれば、少なくとも意識しているうちは速く読めるものだ。そのうち忘れて遅くなるので、一定間隔で読み進めたページ数を確認すれば、それだけで何割かは速くなる。私の場合は電車内での読書が中心なので、時間内に何ページ読めるかが特に重要なのだ。

また「間」の使い方にもパイロットならではの秘訣がある。

「ノーマル・オペレーション(通常操作)では、「間」をとりながら、ひとつひとつ確実に操作をしていくことに、注意力・集中力を使っています。トラブルや緊急事態が発生した場合は、逆に迅速に対応しないと、手遅れになってしまいます。このように、「平時においては、ちょっと『間』をとり、緊急時には迅速な対応」が「間」のとり方のポイントです。」

著者はアスリートのような一瞬の集中力と同時に、長時間にわたる持続的な集中力も常に意識している。小さなことを見逃さない注意と、本質と重要度を見極める注意を同時に持つことも重要視している。虫の眼、鳥の眼、魚の眼、心眼の4つの眼をバランスよく使うことが大事だと説く。

著者の話す秘訣は、当たり前に聞こえるものが多い。だが42年間、人命を預かって飛行機を運航してきた機長の実績は重い。長期間にわたって高い集中力を発揮してきた達人の振り返りの言葉はまさに金言であると思う。日常の中で自己の集中力を客観的にコントロールすることが、仕事や人生を大きく変えうるということに気がつかされる。

・集中力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/03/post-64.html

このアーカイブについて

このページには、2010年4月以降に書かれたブログ記事のうちBooks-Managementカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはBooks-Management: 2010年3月です。

次のアーカイブはBooks-Management: 2010年5月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1