Books-Education: 2008年8月アーカイブ

大人問題

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・大人問題
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絵本作家の五味太郎が大人向けに書いた教育論。

子どもにとって大人は有害だと宣言する。子どもに問題があるのではなくて大人"は"問題であり、大人"が"問題であり、大人"の"問題であるのだ。大人問題の本。かつて大人や学校や大嫌いだった人(私はそうでした)には、拍手喝采の名言集である。

「行きたい方向がなんとなくあると、人生それなりに甘いよ」

「一般論としては、だいたいの親は子どもに「集中力」をつけさせたいと思っているのですが、ファミコンに関しての集中力というものは認めません。」

「子どもって、いつの時代も大人から見ると「ばっかりやってる」ように見えるらしいのです。」

「アニメばっかり見ていると「アニメおたく」と言うけど、それは、アニメの地位が低いからにほかなりません。」

「親はなぜか、わが子が「バランスのいい子になってほしい」と思っています。偏らない子になってほしいと願います。富士山があるからなんでしょうか。」

絵本作家らしく簡潔な短文が並ぶ。読者の中の子どもの部分に強い共感を呼び覚ます。著者は、型にはまった教育を与えていればよしとする大人の思考の怠慢ぶりを徹底的にやり玉に挙げている。親となった今これを読むと、著者に拍手を送りたい気持ちと、すこし後ろめたい部分もある。自分もいつのまにかそういう有害な大人化している部分があるんじゃないかと考えてしまう。

うちの息子も最近はゲームばかりやっている。父親の私がゲーム好きだから遺伝なのだが、彼が黙々と何時間も同じゲームをやっている姿を見ると大丈夫なのかなとやっぱり思ったりする。何かに習熟することと偏ることは表裏一体に思える。

何にせよ、どっぷりはまる体験って重要だなあとも思うわけだ。没入しないと何かをつかんでこれない。結果として一時的に偏るのは仕方ない。息子にはいろいろなものオタクになってほしいなあと思う。いろんな方向に没入してバランスをとってもらいたい。これって大人の考え方なのだろうか。

「この世からもし「いじめ」というものをなくしたいと思うなら、まず今の学校システムをなくせばいいと思っています。つまり、学校にいじめがあるのではなくて、学校という構造がそもそもいじめなのだと思います。」

PTAや教育委員会(飽くまでイメージ)が聞いたら激怒しそうな学校批判もある。でも確かにそうなんだよねと思う。大勢の生徒を十把一絡げで教えざるを得ない学校教育というのは、理想からはほど遠くて、せいぜいが必要悪なのだ。背の順番に並ばせて「前へならえ」で整列させるなんて、今思うと動物の調教みたいである。

五味太郎は物事をシンプルにとらえるのがうまい絵本作家だ。その作家としての目で教育の問題、大人の問題をずばっと言い当てている。自分もすっかり大人になってしまったなぁと反省気味に嘆いている人、ぜひ読んでください。

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