daiya: 2007年8月アーカイブ

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・TreeSize Free
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またハードディスクがいっぱいになってきた。毎度のことだが、占有状況を確認するソフトで、新しいのはないかなと探してみた。今度使ってみたのはTreeSize Free。どのフォルダが容量を食っているのかをツリー上にサイズや割合で表示してくれる。高速にスキャンできるし、ディスク容量を解決するために削除対象を見つけるためのツールとして、便利なツールだ。

小さなファイルが大量にあると、総和サイズ以上にディスクを使う。そうした状態を発見するために、フォルダを収録ファイル数でソートして表示するオプションがあるのが実用的である。

このソフトには有料のPro版がある。デモ版を使ってみた。

・TreeSize Professional
http://www.jam-software.com/treesize/index.shtml
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占有状況をビジュアライズする機能が充実している。かなり整理しないとダメだなとグラフで見ると上のツリーよりも切実に分かるなあ。

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ついでにファイルの”年齢”分布までグラフでわかったりする。6ヶ月から1年目のファイルが多いらしい。初めて知った。

現代語訳 風姿花伝

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・「現代語訳 風姿花伝」
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すべてのクリエイターにオススメしたいのが「現代語訳 風姿花伝」(PHPエディターズ・グループ)である。風姿花伝はご存知のように、600年前に能を極めた世阿弥が書いた芸能指南の書。明治になるまで一子相伝で伝えられてきた。この書の中でも最も秘匿性が高い「口伝」で語られた「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」というフレーズは有名である。この現代語訳は古い言葉で書かれたその奥義が、誰にでもわかる言葉に翻訳されている

世阿弥によると花とは、面白くて珍しいもののことである。見るものの心を動かさなければ花ではない。そして、どんなに洗練された表現でも、ありふれたものは花ではない。だから、表現者はたくさんの持ちネタを修得し、場の雰囲気に合わせて、最適なものを繰り出せるようになりなさい。それが花のある芸人ですと伝えている。

私流に超訳してしまうと、こんなことも言っている。

・開演は会場が静まるのを待ってから始めなさい。
・昼の公演では穏やかな出し物から少しずつ盛り上げていきなさい
・夜の公演ではいきなりテンションを高く始めなさい
・練習中の芸は地方巡業で磨き、ここぞという東京ドーム公演で完成形を見せなさい
・若い芸人は若さゆえの輝きを持つが、それは一瞬のことなので根気よく精進しなさい
・35歳で世の中に認められないなら一流は諦めたほうがいいかもしれない

まだまだあるが、ずいぶん実践的で、芸能全般に応用できそうなノウハウである。幽玄、去来花、物真似という言葉もこの本から出たもの。長く秘密になっていたものが、こうして読みやすい形で読める現代は幸せだ。

さて、なぜ花は秘すべきなのだろうか。なぜ風姿花伝は一般の目から500年以上も隠されてきたのだろうか。答えが最終章に書いてある。

風姿花伝の極意は、「珍しいものが花だと思って演じていることを周囲に悟られるな」ということだったからなのである。珍しいものが見られると期待する観客の前では、何を出してもびっくりさせることが難しい。つまりネタバレ厳禁ということなのだ。

Web2.0、オープンソース、集合知の時代になってあらゆる知識が万人に共有されている。消費者にとっては便利で快適な時代だが、作り手にとっては「秘すれば花なり」が難しくなってきたともいえる。

世阿弥は芸能は人々を面白がらせ幸せにするものだと語っている。その価値を守るためにクリエイターは、これからも舞台裏は隠すべきなのかもしれない。しかし、隠すものは、隠していることを悟られてはいけない。見るものに不便や無粋を感じさせることなく、舞台裏を秘するは花なり。それがインターネット時代のクリエイティブの目指す理想なのではないかなと考えた。

・Lego Crazy Action Contraptions: A Lego Inventions Book (Klutz S.)
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Legoの特殊パーツとセットになった子ども向けのテクニック本。紹介作品には、この本の60個の付属ブロックだけで作れるものもあるが、「赤いバケツ」などの標準的なブロックセットを持っているとさらに楽しめる。

付属パーツは歯車やレバー、車軸など、動かす仕組みを作るための部品が多い。組み立ての説明図と完成品のカラー写真と遊び方が紹介されている。リング綴じになっていてパーツを入れる袋も一体になっているので、外出時に持ち歩けいて、子どもに遊ばせることができる。

Legoは大人もはまる。私がはまっている。最近、子どもと遊んでいるうちに、LEGOの完成品をデジカメで記録すると楽しいことに気がついた。赤いバケツの部品で作った最近の2作。つくっているうちに子どもが邪魔するので「えーい、うるさい」と言ってしまったりする本末転倒状態。

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・The Brick Testament
http://www.thebricktestament.com/


私の場合、まだ写真だが、レゴを使って映像作品をつくるというのは、1ジャンルとして確立されているようである。

・Brickfilms.com
http://www.brickfilms.com/

・IFILM - LEGO Films Collection
http://www.ifilm.com/ifilmcollection/0/22?htv=12

・YouTube Legoの検索結果
http://jp.youtube.com/results?search_query=lego

・pstart
http://www.pegtop.net/start/
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Windowsデスクトップの下部にあるクイック起動が好きである。メールやブラウザー、デスクトップ表示など、一番よく使うアプリケーション群はそこに登録して呼び出している。アプリケーションのランチャとして大変便利なのだが、クイック起動の領域は限られており、わずかな数のアプリを登録するだけにとどまっていた。

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Pstartは、小さな領域にたくさんのアプリやメモを登録できるランチャーソフト。タスクトレイに表示されるアイコンから、登録したアプリを自在に呼び出せる。またアプリケーション名で検索が可能なので100や200も大量にソフトをインストールしている人に便利だ。

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USBメモリにインストールして、メモリ内のポータブルアプリのランチャとして利用できるように設計されている点がユニーク。メモ管理機能、CPUやメモリ使用量などシステムリソースのチェック機能もある。

・Vista Battery Saver
http://www.codeplex.com/vistabattery/
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Windows Vistaを搭載したノートPCの、外出時の電源を長持ちさせるユーティリティ。

このプログラムは、電源の状態をプログラムが検出し、バッテリー使用時には、3D視覚効果のAeroとサイドバー機能をオフに設定する。このふたつがVistaの動作が重たい元凶なのだともいえそうだが、そうすることで最大70%も電源消費をセーブすることが可能であるらしい。なお、3D効果やサイドバーをモバイル時も使いたい人もいるだろう。残り電源が30%になったら、セーブモードに入るなどの設定もできるようになっている。

ノートPCの電源を長持ちさせる工夫としては私は、

1 ディスプレイの明るさを最低にする
2 無線LANをオフにする
3 内蔵CD/DVDの電源をオフにする

といったことを普段心がけている。

1は特に効果的であると思う。ただし輝度を最低にすると大変に暗くて文字が読みにくくなる。配色、コントラストなどを変更して、輝度が最低のときにも判別しやすいモードなどがあったらよいなあと思う。

・スナップ写真のルールとマナー
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スナップ写真を撮影するときの疑問に対して、日本写真家協会の著作権委員と協会顧問弁護士が実例を挙げながら、答えて指導する本。こんなとき写真を撮っていいのだろうか、撮影した写真を公開していいのだろうか?、という疑問にマナーとルールそして法律の観点から、明解に答えてくれる。

たとえば、

「歩行者天国で大道芸をしている人を撮りました。まわりには、たくさんの人が写っています。アップではないのですが、みんなの顔ははっきりと分かります。肖像権があるといわれたらと思うと、発表することに躊躇してしまいます。また、大道芸をしている人にも断っていないので、心配なのですが。」

という疑問に対して、自由に出入りできる路上で、多くの人に無料で見せている大道芸は、撮影は自由。多くの場合、写ってしまった見物客も肖像権は主張できない、という風に答えがある。

プロ写真家による撮影術の本はたくさん出版されいて、ずいぶん読んだことがある。多くの本は、芸術や報道のためには隠し撮りも辞さずな強気のスタンスだったりする。プロは命懸けだからその覚悟でいいのかもしれないが、アマチュアは無用にトラブルを招いては危険であるし、そこまでする価値もない。安全な趣味の写真の楽しみ方のガイドとして、この本はとても参考になった。

私が最近気になるのは、自分の子供の写真である。まだ4歳だから本人が肖像権を主張するわけもないのだが、安全上、無暗にネットで公開するのもよくないよなあと考えている。

そこで、編み出したのが正面から撮らない撮影術。背後や真横、逆光をうまく利用して、ネット公開OKな写真をつくっている。


こんなかんじ。↓

岡本太郎の遊ぶ心

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・岡本太郎の遊ぶ心
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岡本太郎の秘書を50年間勤めた岡本敏子が書いたTARO伝。

岡本太郎は、漫画家 岡本一平、小説家 岡本かの子という、奔放な表現者の家に生まれた。一平は、かの子の愛人を家に同居させることを許し、奇妙な三角関係を内包する家庭で育てられた。やがてかの子は精神状態が不安定になり、子育てを放棄したも同然になる。太郎は孤独で早熟な少年に育った。後に太郎は「私は父母に生んでもらったんじゃなくて、自分が決意してこの世に生まれてきたのだ」と語っている。

子供時代から晩年までの岡本太郎の活躍のハイライトが、写真を使って解説されている。絵、造形、カメラ、ゴルフ、ピアノなどが一級の腕前で、岡本太郎の多才ぶりがよくわかる。縄文土器やペットのカラスをこよなく愛した偏愛ぶりや、ピカソ、アンドレ・マルロー、ブラッサイ、大江健三郎、瀬戸内寂聴など内外の著名人との幅広い交流が紹介される。

「私はまさに4、5歳のいのちをナマのまま生きている」

「無償の情熱をもって激しく行動することが、遊びの本質だ」

「合理主義こそが人間を大虐殺する」

「俗に大人になるというのは、本当に生きがいのある人生を降りてしまうことだといってよい」

「合理に非合理を突きつけ、目的志向の中に無償を爆発させる」

テレビで有名になった「芸術は爆発だ」という短いメッセージの裏側にある深い意味が、見えてくる本だ。

・今日の芸術―時代を創造するものは誰か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005051.html

・岡本太郎 神秘
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004986.html

この2冊を読んで、岡本太郎の人生について俯瞰したいと思ったのが、この本を読んだ動機だった。よくわかった。

夕凪の街 桜の国

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・夕凪の街 桜の国
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現在公開中の映画の原作。

・映画『夕凪の街 桜の国』OFFICIAL SITE
http://www.yunagi-sakura.jp/

「夕凪の街」「桜の国」は時代の異なるふたりの女性の物語である。舞台はヒロシマ。合計でたった120ページの短い漫画で、絵柄も地味なのだが、重なり合う二話は緻密に構成されており、2時間の映画に匹敵する人間ドラマが描かれている。大傑作。

映画監督 黒木和雄の原爆三部作「Tommorrow」「美しい夏キリシマ」「父と暮らせば」と作風がよく似ているなあと思う。戦争や原爆の悲惨さを直接は描かず、残されたものの生活や心を静かに描く。

・父と暮らせば
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002020.html

・「アトミック・カフェ」と「美しい夏 キリシマ」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003460.html

作者は私と同世代で戦争を知らないこどもたちである。取材をベースにこの作品を作り上げたという。体験のないものでも戦争を語り継ぐことができることを証明したといえそうだ。平成16年度文化庁メディア芸術賞漫画部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。

同時に、戦争体験世代が直接語る漫画として、対極的な水木しげるの戦争作品も読んだ。壮絶な戦争体験の、直接的な漫画化だった。この体験があるからこそ、生死の境を超越した妖怪モノがあったのだなと、なんだか納得する。

・総員玉砕せよ!
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「昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、500人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長篇コミック。」

The Family of Man

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・The Family of Man
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米国のアマゾンから取り寄せた。期待通り素晴らしい作品だった。

1955年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で企画された写真展「The Family of Man」は何年にも渡って世界各地で開催されて絶賛され、伝説になった。世界中の有名、無名の写真家たちが切り取った、世界中の人々の人生の一瞬503枚が、この本におさめられている。

「The Family of Man」は若い男女が、芝生や公園で抱き合い、キスして、見つめ合う写真群から始まる。次のパートでは恋人同士が結ばれ、子供を産み、育てていく。男も女も家族のために精一杯働く。子供は無邪気に遊び、学校で学び、やがて一人前の大人になっていく。

幸せなことだけではない。貧困や戦争で死んでいく人たちがいる。苦しい生活の救いを宗教に求める人たちがいる。選挙で社会を変えようと投票する人たちがいる。これは、写真展のプロデューサーEdward Steichenが言う「人々の自身への、家族への、コミュニティへの、我々が生きる世界への、日々の関係」を集めた写真集なのである。

ジェイムズ・ジョイスなど有名な文学作品から引用された詩や名言が、写真の主題が変わる節目ごとに効果的に引用されている。なお、以下の名前のリストのように、20世紀を代表することになる写真家たちが多数参加している。

Elliott Erwitt, W. Eugene Smith, Lee Friedlander, Garry Winogrand, Roy De Carava, Louis Faurer, Ernst Haas, Robert Doisneau, Robert Capa, Cornell Capa, Henri Cartier Bresson, Frank Horvat, Paul Himmel, Rober Frank, Wayne Miller, Eve Arnold, Irving Penn, David Seymor, Burt Glinn, Ruth Orkin, Dorothea Lange, Ansel Adams, Alfred Eisenstaedt, Pierre Verger, Jacob Tuggener, Andreas Feininger, Harry Callahan, Gordon Parks, Ben Shahn, Homer Page, Margaret Bourke-White and Dmitri Kessel amongst many others.

展示から50年後の現在も、根本のメッセージが熱く伝わってくる普遍性の名作。

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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003803.html

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・劉邦 (Ryuhou)
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/net/se389650.html
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Web制作やプレゼンテーション作成をしていると、色を管理したいことはよくある。メニューの色はこのオレンジで、ロゴのフォント色はこのブルーという風に、データを再利用できるようにしておきたい。この作業はPC上では結構面倒なことだった。カラーのRGB値を調べてリストを作らないといけないからだ。

劉邦はPC上で色を簡単に管理するソフトウェアである。スポイトツールを使って、画面上の色を吸い取り、名前をつける。その繰り返しで色のリストが作成でき、必要な時に呼びだせる。

・いろいろな色の形式に対応(RGB,HTML,HSV,DWORD,CMY,CMYK,HLS,YUV)
・上記の形式の相互変換
・リストに対する検索
・一つ一つの色にコメントを付加
・画面上の任意の点の色を抽出
・画面上の任意の点と周囲の色との平均色を抽出
・画面上の指定範囲の色を全て抽出
・HTMLの文字色、背景色を確認しながら作成
・カラープラグインを追加することで扱える色の形式を増やすことが可能
・簡易パレット(色を混ぜることも可能)
・色に対する効果「少し明るく・暗く」「反転」「グレースケール」「最も近いWebセーフカラー」「ランダム」

 などをの機能がある。

・闘う物理学者 天才たちの華麗なる喧嘩
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歴史上の偉大な物理学者をめぐるで喧嘩や論争に焦点を当てて、現代物理学の歴史の一面を面白く、わかりやすく描いた一般向けの科学読み物。取りあげられたのは以下の大物物理学者(ではないのもあるが...)。

・ファインマン VS ゲルマン
・ガリレオ VS ローマ法王
・アインシュタイン VS ボーア
・ノーベル賞 VS フランクリンメダル
・ボーム VS アメリカ「帝国」
・ランダウ VS スターリン
・マリー・キュリー VS 差別
・湯川秀樹 VS 朝永振一郎
・ホーキング VS ペンローズ

意外な事実の紹介で読者に関心を持たせていく。

たとえば350年にわたったガリレオとバチカンの戦いの章はあれ?と思った。史料をちゃんと調べるとガリレオは、そういったと言われる有名なセリフ「それでも地球は周っている」などとは言っていないそうなのである。

「ガリレオ裁判は、通常流布されているような「科学と宗教の争い」という次元の話ではなく、老練な政治家(ローマ法王)が自分の保身のために親友であったガリレオを生贄にしたという次元の話なのである。意外と単純な話だったのである。だから本当は、後世に語り継がれるほどの大事件ではないのだ。」

ガリレオは法王とツーカーだったらしく、現実は内輪揉めに近い状況だったという。科学のために戦った孤高のガリレオのイメージが崩されて、政争に敗れたエリート科学者という実態が明かされている。

こうした天才たちの現実の姿を伝えるエピソードを紹介しながら、天動説と地動説、相対性理論と量子論、実在論と実証論など、当時彼らが対立した論点を、わかりやすく解説してくれる。どれも上質なエッセイで科学への興味をかきたててくれる良書だと思う。

それにしても天才科学者たちには極端でこどもっぽい振る舞いが目立つ。天才であるが故に、横暴も奇行も仕方がないとして許されたということなのだろう。また、こどもの純粋さ、飽くなき好奇心、無謀な行動力などがあったからこそ、天才だったのだろうなあとも思える。

周囲が「天才だからしょうがない」と大目に見ること=本人の能力といえるのかもしれない。だとしたら、奇行の量で科学者たちの行動を測れば、次の大天才を発見できるのかもしれないと思ったりした。

・タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005061.html

・ビッグバンの父の真実
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004784.html

・ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002797.html

・はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004230.html

・ホーキング、宇宙のすべてを語る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004047.html

・奇想、宇宙をゆく―最先端物理学12の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003562.html

・科学者は妄想する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003473.html

・心霊写真 不思議をめぐる事件史
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子供の頃は心霊写真を信じていた。信じていたが故に、怖いもの見たさで、夏にワイドショーの心霊写真番組(「あなたの知らない世界」とか)があると、欠かさずに見ていた。一般人が投稿してくるところにリアリティがあったし、「専門家」があれは地縛霊、これは浮遊霊、それは守護霊などと解説する形式は分かりやすかった。当時は、写ってしまうと嫌なので、お墓にはカメラを向けないようにしようと思っていた。

霊があるかどうかはともかく、いま思えば、そのときに見た、ほぼすべての「心霊写真」は偽物であった。レンズに光学的なフレアなどのノイズが生じるのはよくあることだし、昔のフィルムカメラの場合はコマ送りに失敗して二重写しになることも起きうる。誰だってたくさん写せば、それっぽい「心霊写真」は撮れてしまうことを、後になって知った。
日本の心霊写真史もまた同じような誤解から始まった。明治初期の、写真を撮ると魂が吸われるという迷信が信じられていた頃に、へんなものが写った写真がいわくつきで公開されるようになった。

「明治末期から家庭にカメラが普及しはじめたとき、カメラに関する知識が同時に普及しなかったことが、後の「心霊写真」の歴史に大きく影響したと言える。失敗写真を「心霊写真」と思い込む風潮は、実に百年後の今日まで続いているのである。」」

昔の心霊写真は意図を持って作られたものが多かったが、現代の心霊写真の多くは、カメラのノイズや樹木の影などに幽霊の姿を見立てるものが多い。著者は、なんでもない写真を心霊写真にするポストモダニズムが現代のブームであるという。写真の大衆化によって、一般人が写真を大量に撮影するようになり、それをテレビが取り上げる。ここに「投稿」→「鑑定」→「供養」というシステムができあがったのだという。

心霊写真は偽物であるという前提で、日本の心霊写真について明治初期から現代までの動向を丁寧に調べており、サブカル文化史としてとても読み応えのある一冊だった。

ところで、携帯カメラやデジカメで心霊写真が撮れたという話をブログ上であまり聞かない。写るんですやデジカメ普及で心霊写真の報告数は増えているらしいから、ブログのネタとしてはもっとあってもいいはずだ。いや、探せば事例はたくさんあるのだが、見てもあまり怖くないのである。

考えてみるに、銀塩じゃないと写らない気がする、とか、デジタル写真は合成加工が容易だから信用できないということもある。そもそもデジタル化されてブログに晒されちゃう幽霊というのが間抜けな気がして、怖くない気がするというのが、大きな話題にならない理由なのではないかと個人的には、思う。

・::HIRAX.NET:: : 恐怖!「心霊」を見つけ出すソフトウェア
http://www.hirax.net/articles/2006/07/30/dekirukana8_ghost

STUDIO-蔵:心霊写真工房
http://www.studio-kura.com/download/sinrei/
心霊写真工房は普通の画像ファイルを心霊写真に変えてしまうソフトです。思い出の1枚をちょっとサイケに変身させてみてはいかがでしょう?

・【匠のデジタル工房・玄人専科】 : 初級編&上級編:心霊写真改造講座(1)
http://pchansblog.exblog.jp/2463391/

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・SoftBank 912SH|SoftBank
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/912sh/
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新しい携帯電話を購入した。

過去ログを調べてみると、

2004年08月15日

・FOMA SH900iに乗り換える
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001998.html

2006年07月15日

・音楽再生22時間のケータイ SH902isでSusan Cagleと松山千春を聴く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004624.html

ということで、私は夏に乗り換えることが多いらしい。そして、またもシャープの携帯である。今回も液晶が素晴らしいというのが決め手だった。

キャリアは長年ドコモ一筋であったが、話題のソフトバンクも使ってみなくてはね、ということで、シャープの”アクオス”ケータイ 912SHに決定。ドコモとソフトバンクの料金やサービス内容の違いは、ネット上にたくさん情報があるので、ここには書かない。

買い替えたことで便利になった点を3つ紹介する。

■ワンセグを見ながらメールやウェブが楽しめる横長の大画面

この機種の特徴は大きな横長画面でワンセグを見ながら、画面分割でメールやウェブを同時に楽しめることである。ワンセグとネットサーフィンのながら体験は最高のひまつぶしになる。家でテレビを見ながらノートPCでネットサーフィンする体験のミニ版である。予想以上に楽しい。

■かなり便利な携帯ポータルとしてのヤフー

Y!ボタンを押すと、携帯版ヤフーにつながる。PCと同じサービスが使える。これが実は予想外に便利なのであった。ヤフーのIDはPCと共用できるので、各サービスのカスタマイズはPCで行っておけば操作が簡単である。ヤフーオークションほか、ヤフーのサービスをよく使っている私にとっては、3割くらいケータイが便利になった気がする。

■Bluetooth経由でPCからケータイへファイル転送

私のノートPCはBluetoothを内蔵しているので、このケータイと直接通信が可能である。デスクトップのファイルを右クリックして「Bluetooth機器へ送る」だけで、携帯電話へファイルを転送することができる。転送されたファイルは、ワード、エクセル、パワーポイントなどでも内蔵ソフトのドキュメントビューアで閲覧が可能。Bluetoothなので転送量も気にしないでよい。この手軽な連携はものすごく便利である。この機能がもっと普及すればUSBメモリーっていらなくなるのではないかと思った。

なお、ワンセグ録画用、ファイル持ち歩き用に2ギガバイトのMicroSDカードを購入した。アマゾンだと安い。

・SanDisk microSD Memory Kit 2GB SDSDQ-2048-J3K
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・Slickr
http://cellardoorsw.com/slickr/
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Slickrは写真アルバム共有サイトのFlickr上の写真を、スクリーンセーバーとして表示するフリーソフト。類似ソフトはいろいろあるが、表示の美しさが特徴。ユーザ名、グループ名、タグなどを指定すると、マッチする写真を次々にスライドショー表示する。おすすめはFlickr全体で最も注目されている写真を表示するinterestingness順。

FlickrAPIを使うことで認証が必要なページにあるプライベート写真も表示させることができる。家族の写真を非公開でアップしている場合などに有効。

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なお、Flickrだけでなくローカルのディレクトリ内にある画像を表示するオプション設定も用意されている。

GRV2283、GRV2284

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・GRV2283、GRV2284
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「日本を代表するデザイン集団GROOVISIONS待望のDVD!」

「グラフィックを中心に、インテリア、ファッションなどさまざまなデザインを手掛けるデザイン集団・groovisions。彼らが発表した2作品をバージョンアップ。若手DJ・HALFBYのPV「RODO MACHINE」と2004年の個展“Cloudbusting”で発表した作品を収録。 」

東京駅前の新丸ビルをウィンドウショッピングしていたら、店頭でこのDVD映像が流されていて、目が釘付けになった。衝動買いしそうになったが「売り切れ」で次回入荷はしばらく後であるとのこと。店頭では大変な人気だそうだ。残念無念で家に帰ったが、アマゾンであっさり発見して購入。

『GRV2283』は、奇妙なダンスを踊りながら街を歩く男に、街の人々が巻き込まれて、パレードになって、追いかけて、追いかけられて、もう大変という4分数十秒のCG映像。ループ再生される仕様なので、一度つけておくと延々と繰り返されていく。音楽と映像が絶妙にマッチしてやみつきになるグルーブ感。

『GRV2284』は二匹の動物たちが入れ替りながら、ひたすら横スクロールで地球を一周する約15分の中編CGムービー。ディティールに注目させる『GRV2283』とは違って、ぼけーっと眺める癒し系。

どちらもWebのFlash感覚の作風。IT関係のパーティやイベントなどのBGVに使えそうな作品。

・nowondvd.net-ONLINE DVD SHOP  GROOVISIONS / GRV2283,GRV2284
http://www.nowondvd.net/products/GRV22834/

こちらでサンプル映像を見ることができる。

・GRV1778: DVD: グラフィック・アート
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姉妹作品。自動車を上から眺める映像。

・3RVX
http://matt.malensek.net/software
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私のノートPCには物理的な音量コントロールのインタフェースがないので、デスクトップ上で音量を変えないといけない。電話がかかってきて音をすぐに消したい時、突然大音量の楽曲が流れてしまったときなどは、とっさにミュートしたいのだが、マウスで何度かクリックしないとそれができない。かなり面倒に感じていた。

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3RVXは任意のキーにボリュームアップ、ダウン、ミュートを割り当てられる。私はWinキー+カーソルの上下で音量制御、Win+スペースでミュートに設定している。設定パネルでお好みのキーを設定できる。スタートアップで常駐する設定にしておくとさらに便利だ。

外観を変更するスキンが充実しており、デスクトップを飾る小物としてもおしゃれ。

・感動する科学体験100 世界の不思議を楽しもう
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科学雑誌ニューサイエンティストが2005年のクリスマスギフト用に限定販売したベストセラー「100 Things to Do Before You Die」の翻訳版。人生観が変わる体験が100個紹介されている。面白い。

最初の6個はこんな内容である。

1 ロケットの打ち上げを見る
2 ドラマチックな皆既日食を見る
3 巨大竜巻を追う
4 古代芸術(洞窟壁画)に感動する
5 グルーンフラッシュを見る
6 カエルの原腸胚形成を見る

私が体験した事があるのは、うーん、100のうち3個しかなかった。やりたいことは10個見つかった。すべての体験に共通しているのは、やろうと思わなかったらできないことばかりということである。偶然ミグジェットで空を飛ぶことはないだろうし、散歩の道端で、世界最大の花ラフレシアを見ることもないだろう。地下2000メートルの洞窟に潜ったり。中国奥地の客家円楼に招かれることもないだろう。人生観を変えるような体験は降って湧いてこない。だから○年以内にこれを体験するという目標を立てるのに、よい本である。

翻訳者はアイデマラソンの樋口さんご夫妻。出版の経緯は「私が英国のヒースロー空港で帰国直前に購入し、機内で読み通して、その面白さに感動して、帰国後出版社と交渉し、出版権を技術評論社で結び、私とヨメサンとで翻訳したものです。」であるとのこと。この本には、20万件を超える発想を書いた人が「これはスゴイ」と思った発想ばかりなのである。

・普通の手書きメモがデジタルに エアペン アイデマアラソン スターターキット
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005043.html

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・「金のアイデアを生む方法 ”ひらめき”体質に変わる本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004920.html

・IQってホントは何なんだ? 知能をめぐる神話と真実
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「心理テストはウソでした。」の著者の最新作。

日本では知能について真正面から語ることがほとんどタブーになっている。この本の冒頭で紹介されているように、多くの人はIQという言葉は知っているが、何十年も前の古い知能検査法のイメージでとらえている。知能については漠然としか知らない。書籍もほとんどない。今の日本は、世界の知能研究の最新情報がほとんど入ってこない暗黒時代であると著者は嘆いている。

この本の前半では知能研究の歴史が語られている。

「1908年のビネ・シモン検査は、検査問題の難易度を年齢別にそろえるだけで、知能が1次元的に序列化できることを示したが、序列化を避けるために、精神年齢という言葉を使った。一方、スピアマンは知能が一般知能gと特殊知能sから構成されるという数学モデルを提案した。この一般知能を具体的に表現したのが知能指数という概念である。」

この一般知能gは、短期記憶や決断・反応速度、読み書き、視空間能力、数学的能力など何十項目もの個別の能力テストの値を因子分析することで確認される最上位因子である。最新の知能因子理論のCHC理論では、一般知能gの下に16の因子があり、さらにその下に多数の特殊な因子が配置されている。

多数の課題の成績を相関分析することで、課題ごとに特殊な因子と、ほとんどの課題に共通の因子をみつけることができる。一般知能gが具体的に何なのかは諸説があるわけだが、俗に言う「頭の良さ」は測定可能であるということになる。

一般知能gは測定可能である。それが世界の常識なのに、日本では、知能は複雑で測定はできないとする、多重知能理論が人気があるそうだ。これに対して著者は「マスコミや教育関係者には、知能が1次元的ではないという主張が心地よく響く。序列化の必要がなく、各自の個性が尊重できるからである。しかし、gは統計的に分離可能で、かなりの影響力がある。」と述べている。

知能を脳という臓器のはたらきだと考えれば、身体能力と同じように、能力を測れてもおかしくはないかもしれない。測れないことにしておいたほうが社会的には都合がよいということなのだろう。遺伝と知能の関係も近年、明らかになってきているそうだが、これも差別や偏見を助長するからか、おおっぴらには語られない。

英国での60年に及ぶ大規模なIQ追跡研究の結果は興味深い。IQは生涯にわたって安定していたのだが、驚くべきはIQが高かった人は長生きし、低かった人は早死にしている事実である。原因はわかっていないが、頭の良い人は健康的な環境や行動を選び、その結果、長生きするのではないかと言われているらしい。

あまり知られていない知能研究の実態を知ることができておもしろい本だ。

・「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003417.html

群衆心理

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・群衆心理
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1895年に書かれた群衆心理学の古典。ル・ボンは、「これからは群衆の時代になる」と20世紀の展開を正しく予言した。すぐれた研究であるが故に、現実の独裁者にも参考にされ、ヒトラー、ムッソリーニ、レーニンらが好んで引用した本でもあった。

群衆は衝動的で、動揺、興奮しやすく、暗示を受けやすい。物事を軽々しく信じてしまう。指導者の言葉がうみだす心象(イマージュ)に操られてしまう、など、群衆の一般的性質と特殊的な性質、その原因を説明する。出版から100年以上が経過し、メディアやコミュニケーション手段はめざましく発達したが、群集心理の基本はここに書かれた状態とあまり変わってはいないようだ。

群集心理を操る指導者は言葉を巧みに選び、理性ではなく感情に訴えかけることで、抗いがたい心象(イマージュ)を人々の心の中に呼び起こす。断言、反復、感染というテクニックがその扇動効果を倍増させる。現代でも使われている選挙の公約や、社会運動メッセージの技術である。

「道理も議論もある種の言葉やある種の標語に対しては抵抗することができないであろう。群衆の前で、心をこめてそれらを口にすると、たちまち、人々の面はうやうやしくなり、頭をたれる。多くの人々は、それらを自然の力、いや超自然の力であると考えた。言葉や標語は、漠然とした壮大な心象を人々の心のうちに呼び起こす。心象を暈す漠然さそのものが、神秘な力を増大させるのである。言葉や標語は、会堂の奥深く隠れて信心家がびくびくしながら近づく、あの恐るべき神々にも比せられよう。」

歴史を動かす英雄や独裁者の本質を見抜いた記述が見事だなと感動した。

「指導者は、多くの場合、思想家ではなくて、実行家であり、あまり明晰な頭脳を具えていないし、またそれを具えることはできないであろう。なぜならば、明晰な頭脳は、概して人を嫌疑と非行動へ導くからである。指導者は、特に狂気とすれすれのところにいる興奮した人や、半狂人のなかから輩出する。彼等の擁護する思想や、その追求する目的がどんなに不条理であろうとも、その確信に対しては、どんな議論の鋭鋒もくじけてしまう。軽蔑も迫害も、かえって指導者をいっそう奮起させるだけである。一身の利益も家庭も、一切が犠牲にされている。指導者にあっては、保存本能すら消えうせて、遂には、殉教ということが、しばしば彼等の求める唯一の報酬となるのだ。強烈な信仰が、大きな暗示力を彼等の言葉に与える。常に大衆は強固な意志を具えた人間の言葉に傾聴するものである。群衆中の個人は、全く意志を失って、それを具えている者のほうへ本能的に向かうのである。」

つまり、政治家になってほしい、と思われるような理性的でマトモな人は、歴史的変革の指導者にはなりえない、ということでもある。指導者は、自身の信念を盲信しているからこそ、群衆を従えるだけのパワーを持っている。その後の日本や世界の有力な政治家を振り返っても、そういった傾向はあるなあと思う。

煽動されたくない人と、世界征服や独裁者を目指す人、共に必読の古典である。

ミクロコスモス I

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・ミクロコスモス I
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思想家 中沢新一の最近の評論、エッセイ、講義録をまとめたもの。どれも読みやすい。
レヴィ=ストロース構造主義の総括整理が個人的にはよかった。

西洋の精神は「論証」「抽象」「実証」の精神であるのに対して、レヴィ・ストロースの「構造」は、そのイメージに反して抽象的でも形式主義的でもない「具体の科学」そのものだとし、もうひとつの知のはたらき=野生の思考をこう説明する。

「彼の「構造」は単なる文化コードではない。それは自然と文化のインターフェイス上に働く自然智的コードだ。そのために、「構造」は弁別的知性の上で働いていないこといなるので、当然それは「無意識」の働きということになる。「構造」とは、もっとも厳密な意味で「詩的」なレヴェルの現実である。」

「私たちは根本的に自分の思考のあり方を変えなくてはならないのであって、そのとき身体が重要な拠点になる。ただしその身体は、リビドー的な無意識が渦巻くカオスとしての身体ではなく、いたずらにスポーツする健康なだけの身体でもない。たいせつなのは、身体のなかで具体的なかたちで動いている、ある種の知的なものの動きを知ることである。その知性の働きのことを、レヴィ=ストロースは「構造」と名づけたのである。仏教ではそれは「知恵」と呼ばれたことを考えても、彼の思想はまったくアジア人である私たちには近しいものに感じられるのである。」

レヴィ=ストロースの構造主義といえば、たとえば近親相姦のタブーに関する研究がよく知られている。親戚関係の誰と性交してはいけないかは、部族によって異なるのだけれど、どの部族にも必ず、してはいけませんというタブーが存在する。そうしたタブーの存在という普遍的な構造は、部族間の女性の交換を保証するための規則であると結論した。結果として生物学的多様性や文化の流動性が生まれる。そうしたはたらきは西洋の合理的精神ではなく、無意識のはたらき=野生の思考がうみだすものである、としたのがレヴィ・ストロースだった。

「論証」「抽象」「実証」など現代を覆う科学的認識では、自然の美しさ、複雑さ、それがもたらす感覚的喜びが否定されてしまう。自然に内在する知性作用によってこそ、私たちはもっと高次の豊かな認識に到達できるはずだとし、「これこそが「自然の叡智」と呼びうるものである。私たちの二十一世紀をどう切り開いていくかという思想の鍵がここにある、と私は思う」と著者は書いている。総括したうえで現代における意義を語っているのが、この著者らしさ、学者でなくて思想家らしいさだなと思った。

この本にはこのほか、岡本太郎、グノーシス、アースダイバーネタ、芸術人類学など、幅広いテーマの考察が並ぶ。寄せ集め風だが、一気に読ませる内容になっていて満腹。

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今日は最近買ったCD・DVDを紹介してみます。
(普通のブログっぽいな!)
3枚、脈絡がありません。

■ユライ花

・ユライ花 中孝介
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1. 花
2. サヨナラのない恋
3. それぞれに
4. 波の物語
5. Goin'on
6. Ave Maria
7. ひとさし指のメロディー
8. 真昼の花火
9. 恋の栞
10. 思い出のすぐそばで
11. 星空の下で
12. 家路(piano ver.)


「花」いいですね。テレビで一度聞いて耳から離れず、サビだけ口ずさんで1週間して、あれはなんていう歌?と調べて買いました。森山直太郎みたいと思って聞いていたのですが、直太郎作曲だったのですね。花のように花のように ただそこに咲くだけで美しくあれ 名曲です。

■がんばろう!!決定盤 日本の労働歌ベスト

・がんばろう!!決定盤 日本の労働歌ベスト
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1. 富の鎖(社会主義の歌)
2. 革命歌
3. 赤旗の歌(ドイツ民謡)
4. 聞け万国の労働者(メーデー歌)
5. インターナショナル
6. くるめくわだち(ドイツ民謡)
7. ワルシャワ労働者の歌-ワルシャビャンカ-(ロシア革命歌)
8. コンミュニストのマルセーズ
9. 小さい同志
10. 鐘が鳴れば(ソビエト同盟赤衛軍軍歌)
11. 晴れた五月
12. 町から村から工場から
13. 世界をつなげ花の輪に
14. 若者よ
15. 民族独立行動隊の歌
16. 祖国の山河に
17. 原爆を許すまじ
18. しあわせの歌
19. がんばろう
20. 心はいつも夜明けだ
21. たんぽぽ
22. 勝利をわれらに-We shall overcome-

私は労働組合活動家でも社会主義運動家でもないのですが、なぜこれを買ったのかというと、以前紹介した歌「たんぽぽ」が収録されているからです。(ブログの読者から教えていただきました。感謝)。また、小説などでよく出てくる「インターナショナル」や、ジョーンバエズが歌っていたので知っている「勝利をわれらに」なども収録されていました。満足。


・案外、知らずに歌ってた童謡の謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003167.html

「たんぽぽ」をめぐる話はこちら。

■DVD BOOK 魅惑のオペラ フィガロの結婚

・DVD BOOK 魅惑のオペラ フィガロの結婚
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オペラに興味があるのですが、チケットが高いから勉強してから行こうと思っていますが、ちょうどいいDVD付録のシリーズ本をみつけました。有名なオペラの名演を全部収録したDVDと全訳セリフつきの解説本のセットです。2006年12月にシリーズ配本スタートで、これはその一作目のフィガロの結婚です。

素晴らしい映像です。仕事をする際の、バックグラウンド映像としても使えます。家の中の空気が変わります。2時間半も流していると、ついついオペラ風に歌いだしそうで困ります。

普通に撮影したデジカメ写真を、トイカメラLomo、Holgaの写真風に、周辺光量を落とし退色させいい感じにしあげてくれるフリーソフト。日記ブログに雰囲気のある写真を使いたい人におすすめ。

まず、普通の写真を用意し、切り抜きツールのCropperを使って、240x240pixelの正方形に切り抜く。

・超簡単写真切り抜きツール cropper【shockwise.com】
http://shockwise.com/tool/cropper.php
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そして、こちらのソフトで読み込ませると、こんな仕上がりになる。見事にそれっぽくて感動。

・トイカメラ風写真作成ツール LOMO*LIKE【shockwise.com】
http://www.shockwise.com/tool/lomolike.php
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「普通の写真をロシア製のトイカメラ「LOMO」で撮影したようなノスタルジックな写真に焼き直しすることができます。トイカメラの味とも言える「周辺光量落ち」「甘めのピント」「青み」「鮮やかすぎる発色」「プリズム現象」「色ズレ」等を再現しているつもりです。 ドロップする度に結果は気まぐれに変化しますので、どんな写真になるかは運次第。ついでに角を丸める機能もついています。」

・トイカメラ使い方レシピ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004975.html

・タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち
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タイムマシン開発に取り組んだ科学者たちの歴史を時系列でまとめた読み物。主な登場人物はニコラ・テスラ、アインシュタイン、エディントン、ホーキング、キップ・ソーン、リチャード・ゴットなど。

理論的にタイムマシンが実現可能かどうかは現代の物理学者の間でも意見が分かれている。これまでに考案されたタイムマシンの原理の多くは、とてつもなく大きなエネルギーを使って時空をねじまげることである。ブラックホールやワームホールのような天体を利用するアイデアがいくつも考えられてきた。あるいは光より速い粒子”タキオン”を発見して利用するという考え方もある。

もうタイムマシンは完成しているという話もでてくる。

・ローマ教皇庁が一流科学者の手を借りて過去をのぞくカメラクロノバイザーを完成させていた
・ニコラ・テスラはタイムトラベルを体験していた
・ロシアの科学者が開発した最新タイムマシン装置でネズミを数秒だけ未来へ送ることに成功した

などという怪しいエピソードが実態とともに紹介されている。

現実に実現可能性が高そうなのは、原子以下のレベルでのタイムトラベルである。たとえば量子テレポーテーションは、情報を時間経過なしに別の場所へ送信する技術であるが、もしその情報を元に物質を再構成できるなら、時空を超えて移動したことになる。ごく微小な物質レベルでは、タイムマシン、タイムトラベルが今世紀中に証明されるかもしれない。

タイムマシンという夢の乗り物を作る科学者たち。そのの試行錯誤を通して、先端の難解な研究をやさしくひもといてくれるおもしろい科学読み物。

・タイムマシン
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004825.html

・タイムマシンをつくろう!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003584.html

・ダメな議論―論理思考で見抜く
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「人はなぜ特定の考え方を正しいと思うのか」に関する考察。よく考えれば間違いがわかるのに、常識や空気にとらわれて、根拠のないダメな議論を受け入れてしまう理由について、チェックポイントと対策を示す。

一番、気になったのは読書について。

著者はありがちな読書についてこう述べている。

「私たちは、「自分の知らないことを知る」本を探しながら「自分の知っている(漠然と感じている)ことが書いてある」本を購入し、読書を「自分の役に立てる」ことを目標としつつ、「自分の思想・行動に何ら影響のない(読んでも読まなくても変わらない)」本を読んでいます。つまりは、自分が日頃から抱いている「信仰」にお墨つきを与えてくれる、「自分が読んで心地よいと感じる」本を選んでいるにすぎないというわけです。」

たとえば高所得の成功者は、成功するかどうかは自分の才能・努力によって決まるという考え方を支持するが、低所得者層は運によって決まるという考え方への支持が多いという。「実際に成功している人はそれが自分の実力によるものだと思いたがるのに対し、成功していない人はそれが自分の実力のせいだと思いたくないという心理によります。」

科学的に検証が必要な話題でない限り、私たちは信じたいものを信じてしまう。常識や空気によって「まぁ、ホントは間違いかもしれないけど、どっちでもいいや」や「何となく常識なことは何となく正しいと思っておくのが賢い」という経験則、処世術へ流れてしまう。

これは私もよく実感する。ときどき食事や飲み会などでマイ箸を持ち歩いている人がいる。割りばしが環境によくないからという理由なわけである。自治体や企業レベルで割りばしを使わないようにしよう運動もある。しかし、実際には割りばしが環境に与える影響はほとんどないらしいことを、私は知っている。環境を気にするのは良いことだし、マイ箸を持ち歩く害はないから、私が敢えてその人に「それって意味ないですよ」と言う必要はない。だから言わない。そうすると、割りばしは環境に悪いという説は、「常識」のまま残っていってしまう。

保守の力というのは多くの場合、こうした、信じたいものを信じる心理と、「まぁ、どっちでもいいや」の心理によって形成されていくのだろう。こういう決め方をこの本はダメな議論と呼び、

・定義の誤解・失敗はないか
・無内容または反証不可能な言説
・難解な理論の不安定な結論
・単純なデータ観察で否定されないか
・比喩と例話に支えられた主張

などの見抜き方を教えている。有名な評論家たちのダメな議論の実例もたっぷりで、面白く、ためになる本だった。

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