2004年08月18日

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父と暮らせば
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http://www.pal-ep.com/chichitokuraseba/chichitokuraseba-top.htm

日本映画まだまだ捨てたものではありません。

「遅れていた原稿を6時までに書けたら映画に行ってよい」を自分に課して、うまく提出できたので、神保町岩波ホールへ「父と暮らせば」を観にいってきました。開始30分前に到着するも、既に3階下の階段まで並んでいて人気に驚き。年齢層は比較的高めで中高年が半分、あとは私と同年齢くらいの善良そうな映画ファンたち。いかにも岩波ホール。

これって何の映画?

実は知らずに観にいきました。

この映画については、いつも参考にしている映画瓦版が最高評価の★★★★、本塁打をつけていたことで知りましたが、これまたいつもの通り、解説などは一切読まずにでかけました。見終わっての感想は...。後半涙が止まりませんでした。照明がついてからも半数以上の観客が涙ぐんでいました。素晴らしい映画でした。金メダル。今年のマイベストになりそうな予感です。

・父と暮らせば
http://www.pal-ep.com/chichitokuraseba/chichitokuraseba-top.htm

・映画瓦版
http://www.eiga-kawaraban.com/

井上ひさし原作、黒木和雄監督、宮沢りえ主演、原田芳雄、浅野忠信。

監督は「Tommorow/明日」という名作があります。「美しい夏キリシマ」(これは観ていません)とあわせて、このテーマでは3部作のようです。とはいっても、ストーリーや人物につながりはありません。

さて、鑑賞価値を減らすネタバレをしないように慎重にここから書きますが、ここまでで気になった方は見終わってから以降を読んでください。なお、パンフレット(700円)は、シナリオが全部収録されていて、買う価値があります。

舞台は広島。原爆投下の3年後。父と娘の物語です。公式映画紹介にもありますし、すぐ分かるのでこれは書いてしまうとお父さんは幽霊です。登場人物はこれに加えて恋人役の浅野忠信のたった3人。基本的には限りなく舞台演劇です。特に宮沢りえ、原田芳雄の二人の好演が光ります。

黒木監督の「Tommorow/明日」とタッチは似ています。「Tommorow/明日」では原爆投下の前日の広島で、戦時下にありながら、それぞれの想いを抱えて幸せになろうと必死に生きる人たちの生活が描かれました。観客の誰もが「明日」起きることを知っている。だから、黒木監督は敢えてその悲惨を描かないことで、失われたものの大きさを見事に表現しました。これも名作だったと思います。私は3回くらい観ました。

・DVD: TOMORROW 明日
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0002CHRRA/daiya0b-22/


「父と暮らせば」でも原爆の悲惨なシーンは登場しません。今度は「明日」を生き残った人たちの心に焦点をあてました。悲しみを真正面から受け止めながらも、それを前向きの視点で乗り越える強さ、優しさが、この作品の魅力だと思います。

途中、映画館で嗚咽の声がそこかしこから聞こえてきましたが、決して救いのない悲しい涙ではないのが、この作品の素晴らしさだとも思いました。舞台はヒロシマという特異点なのですが、描かれたのはもっと普遍的な、再生の物語であったと感じます。海外でどのような評価を受けるのか注目です。英語の題名は「Face of Jizo」であるとのこと。

前半、予備知識なしの私にはなかなか主題がつかめず、もしかして退屈映画?などと一瞬思ってしまいましたが、観終わって、監督らが全体を通して何をしたかったのか、その脚本の見事さに心を打たれました。シナリオが完璧です。井上ひさしの天才にも拍手です。この映画に私は絶賛ですが、ベースになった演劇も素晴らしそうですね。

というわけで、まだしばらく上映期間は続くようです。文部省やPTA推薦映画に指定されているようですが、決してノーモアヒロシマ風教育的指導なだけの作品ではありません。ひたすら、おすすめです。ブッシュ批判のプロパガンダ映画が巷では話題のようですが、日本人ならばこちらを先に是非。

・舞台 父と暮らせば こまつ座ビデオ劇場1[ビデオ]
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4760111816/daiya0b-22/

原作 井上ひさし 父と暮らせば
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#いやあ、宮沢りえは、いろいろ人生経験を積んだせいか、名女優になったなあと思いました。工藤夕貴と並んで、子役からうまく脱皮して国際的な場で活躍できる才能になっているなあとしみじみ思いました。


参考:
父と暮せば@映画生活


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Posted by daiya at 2004年08月18日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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