2004年02月28日
愉快議満員御礼に感謝
愉快議へのご参加ありがとうございました。報告を書きたいのですが、仕事の山が片付いておらず、3月1日サービスインのサービスもあったりであたふたしています。
報告はこのブログのこのエントリを書き直す形で後日書きたいと思います。
田口さんが先に下記のページで報告しています。
・愉快議の簡単な報告
http://www.project-on.com/
2004年02月27日
書きあぐねている人のための小説入門
私は万年、小説家志望。いつ書くのだオマエは?ええ、そのうちそのうち、といいながら、日々は過ぎ、青年老い易く学成り難しといいますな、いいませんか、意味分かりませんか、そうですか、南無。
書きあぐねてるとはそういう自問自答状況のことに違いない。この本を手に取った動機である。
95年に「この人の閾」で芥川賞を、その後の作品で数々の文学賞に輝く小説家、保坂和志による小説作法の書。さすがに気鋭の小説家が書いただけあって、文句なしの一級品だと感じた一冊。作法論にも関わらず、感動した部分も少なくない。
冒頭の小説の本質を語る部分からまず引き込まれる。少し長めに引用してみる。
「
「小説とは何か?」を考えるとき、私は小学校時代の二人の同級生のことを思い出す。一人は四年のときのMさんで、社会科の授業で先生が「”昔”というのは、いつのことでしょう」という問題を出し、生徒全員に小さな紙に答えを書かせていたときのことだ。
集まった先生がパラパラ見ながら、読んでいく。「10年前、佐藤、100年前、山本さん。10年前、保坂、50年前、鈴木。また50年前、大久保.....」こんな感じで続いていったのだが、Mさんの答えだけは違っていた。
「お母さんのお母さんのお母さんが生まれる前」
」
二人目にこんな例が続く。
「
二人目は小学校六年の同級生だったW君で、卒業文集にまつわる思い出だ。全員がそろいもそろって「桜が満開のなかをお母さんに手を引かれて歩いてきた六年前が、昨日のように思い出されます」「四月からは希望に胸をふくらませて、中学校に進みます」なんてことを書いているなかで、W君だけはこう書いた
「四年のとき ながしの すのこで ころんで つめを はがして いたかった」
」
小説の原型、小説の書き出しとして使えるのはこの二人の文章だけだと著者は自論の語りをはじめる。もうこの引用だけで、先が気になってくる。個の手触り、社会科されていないもの、身体性、小説の生まれる瞬間。著者の経験と感性に裏付けられた、小説に対する哲学が展開されていく。既にあるものは書くな。同時代の小説の表現論として、小説家志望の人間なら読んでおくべき貴重な情報だと感じた。
会社員時代にいかにしてデビュー作を書くに至ったか、一作目をどう書くべきか、など、成し遂げた人間でなければ語れないノウハウ、風景を書くことは特別な意味を持つと言うアドバイスや、ストーリーとは?テクニックとはという各論が続く。どれも、実際にこれから書くものへの、真摯な姿勢の書き方がいい。無論、著者の作品は独特なので、小説論としては偏りも感じられるが、素人の投稿作品にありがちなパターンの批判などはすこぶる具体的で参考になる。
丁寧にかけばかくほど伝わるとは限らず、抜けや雑な文章の方が、伝わることがあるという意見は、なるほどなと思う。ビジネス本執筆の仕事とは、ある意味、対極にあるわけだ。ビジネスや技術の記事ばかり書いている私は、どんどん、小説家から遠ざかっているのだなと感じた。
前半の本質論から後半の各論まで、思想系の小説論並みの内容の濃さを持っている。実践者が理論を語れるとは限らないものだが、この著者は例外のようだ。自分の仕事をメタな視点で冷静に観察し、持ち前の筆力でそれをまとめあげることに成功している。名著。
2004年02月26日
あたまのよくなる算数ゲーム「algo」
書店で見て気になってしょうがないので、ついに買ってみた。これは面白いので自信を持ってのおすすめカードゲーム。1人から4人で幾つかのルールで楽しめるが、二人用がメインの模様。
■数学オリンピック委員会共同開発
アルゴは相手のカードの数字を当てるゲームである。アマゾンの評を引用すると以下のような内容。
「
広中平祐京都大学名誉教授を会長とする「算数オリンピック委員会」、大道芸人としても活躍する数学者ピーター・フランクル氏、そして東京大学数学科の算数研究会が共同で発明・開発した数学力をつけるための推理カードゲーム。
基本的な遊び方は、0〜11までの数字カード(12枚)の白・黒2組(全24枚)を使い、ルールに従って相手の持っているカードの数字をあて、1ラウンドごとに付属のチップをやりとりする対戦ゲームだが、トランプゲーム「ソリティア」のようにひとりで遊ぶ方法も用意されている。一度に対戦できる人数は、2〜4人だが、個々で戦うほか、2対2のチームに分かれて協力しながら推理する「ペアプレー」ができるのも面白い。
」
さすが数学者が設計しただけあってゲームの要素を究極までシェイプアップしているなあと感動。
パッケージを開けた際に0から11までの白と黒のカードとコインだけだったので、拍子抜けし、ここまで楽しめるとは思わなかったのだが、奥が深い。ゲームなので、偶然要素はあるものの、ある程度繰り返すと、記憶力と計算力で勝敗が明確に分かれる。

■簡単なルールと対人ゲームの奥深さ
自分と相手に4枚のカードを配り伏せておく。カードは小さい順に左から右へ並べる。同じ数字は黒は白より小さいと考える。プレイヤーは中央に置いた残りカードの山から1枚引く。
そして、相手の伏せたカードの数字を言い当てる(アタック)。最初はすべて伏せてあるから、自分の持ちカードにない数字と、相手の伏せカードの並び順から推測して、適当な数字を言う。
数字があっていれば相手はカードを表に返す。当たりの場合はさらにアタックを繰り返すことができる。アタックが失敗したら、引いたカードを数字の見える表の状態で手持ちカードの間に並べる。相手からはこれで伏せた手持ちカードの推測ができるようになる。
これを繰り返して先に相手の4枚のカードを言い当てて、ひっくり返したプレイヤーが勝ち。1ゲーム15分程度もあれば楽しめる。
やっていて思ったのは、このゲームはつまり、次の3つの要素が勝敗の決め手らしいということ。
1 確率計算
基本的には、確率計算を瞬時にできるかどうかのゲームだと思う。自分にとって判明しているカードの数字から、伏せられているカードの数字の確率を計算する。
2 記憶力
自分と相手のアタック済みの数字を記憶しておき、無駄のないアタックができるかどうかの能力。
3 心理的かけひき
慣れたプレイヤー同士になると、アタック成功率が低い場合に敢えて相手の読みを惑わすブラフを使ったり、相手のカードの確認具合から推測するようになる。
■買わなくてもWeb上で楽しめる
このゲームは買わなくてもWeb上で遊ぶことができる。
・アルゴ公式ホームページ
http://members.jcom.home.ne.jp/algo-j/
ここにルールとFlashのオンライン版がある。この中のデジタルアルゴがメインゲームだ。十分に面白かったりするし、練習にも良い。
しかし、このゲーム、コンピュータなら理論的に最強にできるはずである。このオンライン版は、手加減されている気がする。人間同士のプレイの方が飛躍的に面白い。
どこまでコンピュータに近い能力を持てるかという競争になる。
というわけで、ウチのオフィスにいらっしゃる方で、用事が済んだ後にやりたい方は橋本まで事前にお伝えください。
2004年02月25日
PDF使いこなしテクニック
会社のIR資料、学会論文、商品カタログ、電子書籍、最近は契約書までPDF化が進んでいる。PDFの資料は通常のWebページと比較して、内容が濃いことが多いと感じている。きれいに印刷しやすいし、修正しにくい形で配布する用途でも適している。そして何より広く使われているので、ビジネスにも使える、電子文書のデファクトスタンダードと言えるだろう。
しかし、問題は表示に時間がかかったり、PDFを作るのがコストがかかったりすることだ。k今日はPDFの活用ノウハウやソフトを並べてみた。
1 PDF文書のURLクリック後、でPDFを表示する
・PDF をブラウザで表示させない
http://blog.bulknews.net/mt/archives/000712.html
PDFはブラウザで表示させると動作が重いし画面も狭い上、不安定になる。このメモを読んだとき、思わず膝を叩いてしまった。あまりに簡単な設定変更で、WebからPDF表示へのフローがスムーズになった。なぜ今まで気がつかなかったのだろう。(さすが宮川さんの技術力?)
2 AcrobatReader起動の高速化
・「Adobe Reader」の起動を高速化できる「Adobe Reader SpeedUp」が公開
http://www.forest.impress.co.jp/article/2004/01/13/adobereaderspeedup.html
Acrobat起動時に不要なプラグインソフトの読み込みをなくして高速化する。精確なベンチマークをしていないが、私の環境では体感的に速くなったのでおすすめ。
3 PDFをフリーソフトで作成する
文書をPDF化するフリーソフト。CutePDFという名前のプリンタとしてPCにインストールされる特殊な形態のソフトウェア。WordやExcelやブラウザから、印刷先として、CutePDFを指定して印刷すると、PDFファイルとして出力される。つまり、印刷機能のあるアプリケーションからならば、すべて文書をPDF化できる。
・CutePDF
http://www.acrosoftware.com/Products/CutePDF/Printer.asp
これを使って昨日のBlogの記事をPDF化してみた。
4 最適化する
たまに巨大なPDFがあるが、メール添付で送ろうとする際に困ったりする。このソフトでサイズを小さくできることがある。
・PDFの最適化ツール「PDF Cleaner」v0.97
http://www.forest.impress.co.jp/article/2003/02/26/okiniiri.html
PDFファイルの構造を最適化してサイズを小さくできるソフト
5 PDFを探す
PDFといえばカタログである。PDFで公開されている商品カタログだけを検索するサービス。
・PDF専門カタログサーチエンジン
http://www.pdf-seek.com/
デスクトップに大量に存在するPDFドキュメントは、検索が難しい。キーワードがどのPDFに含まれるかは検索できても、ページ単位では検索がヒットしないからだ。その問題を解決したソフトでなるほどなと思う。
・複数のPDFから目当てのページを自由自在に探せる!!!
PDF検索ユーティリティソフト「PDFNavi 4.0」
http://www.junglejapan.com/release/020710.html
さて、
PDFを作成するCutePDFは素晴らしく便利なのだが、海外のソフトで細かい設定が難しい。ソースネクストが来月1980円で、PDF作成ソフトを発売するらしい。また使い勝手をレポートしたいと思います。
・いきなりPDF
http://www.sourcenext.com/products/pdf/

他にもPDF関連のTipsや面白いソフトがあったら教えてください。
2004年02月24日
ヒトはなぜ、夢を見るのか
実は私は夜の睡眠では、年に2回くらいしか夢を見ない。周りの人間に聞くと夢はもっと頻繁に見ているという。ほとんど毎日見るという人までいる。見る回数が少ないせいか、カラーか白黒かと問われても即答できない。「なぜ私は夢を見ないのか?」と疑問に思いながら「ヒトはなぜ夢を見るのか」という本を読む。ヒトじゃないのかオレ?
この本では、なぜラスコーの洞窟の壁画の男性は勃起して描かれているのか?という意外な問いと答えを含む「睡眠と夢の人類史」から始まる。地球の自転、公転リズムとの関係や魚類レベルからの進化の過程で、眠りもまた進化してきた歴史が語られる。
睡眠時間は個体差が大きいらしいが、「マドリッドのパロミノという女性はある日あくびをして以来、30年間眠らないでいる」という信じられない一節があった。ネットで詳細を調べたところ次のページが見つかった。普通は、数日間で幻覚を見て、衰弱してしまうものらしい。医者の立会いの下、6日間眠らずにギネスブックに載った人がいると他の本で読んでいたのだが、それどころではない人が実在するのかと驚く。
・【The Sleep】なぜ、人は眠るのか?
http://www.johos.com/joho/report/0032.html
そして、中盤で当初の私の疑問への答えが見つかった。人は皆、一晩に4回のレム睡眠時に夢をみているが、言語化できないので、夢の内容は作業記憶上で失われてしまい、起きたときに思い出せないのだという。睡眠は不要な情報を忘れることが目的と言う面もあるから、夢の内容をすべて記憶していたら、睡眠の目的が果たせないと言うことでもあるのだろうと思った。だから、大抵の場合、思い出すのは第4回目のレム睡眠時の明け方の夢であるらしい。
「はじめに」に面白い数字があがっている。「われわれは一日に八時間ほど眠り、その間九十分ほど夢を見る。七十五年生きるとすると、二十五年眠り、五年間夢を見ることになる」。5年間を良い夢で過ごすか悪夢で過ごすかは人生にとっても、随分大きな違いになりそうだ。
この本を手に取ったときに、明晰夢のことが出ているのではないかと期待した。後半でかなり触れられていて満足。私は、以前、このテレビ番組で明晰夢のことを知った。
・確実に見たい夢を見る方法を調査せよ!2
http://www.ntv.co.jp/FERC/research/20020217/f1247_2.html
訓練法などもある。
「
1935年、文化人類学者のキルトン・スチュアート博士は、マレー半島に住む先住民族『セマイ族』の調査を行なったところ、彼らは独自の方法を使って、夢をコントロールしている事が明らかになった。
そして、アメリカのサンタバーバラ睡眠障害センター元所長、チャールズ・マックフィー氏によると、彼らが見ているのは『めいせきむ明晰夢』と呼ばれる夢であるという。
『明晰夢』とは、夢の中で「自分は今、夢をみているのだ」と自覚しながら見る夢のことである。マックフィー氏によると、明晰夢を見ている人は、夢の中でそれが夢である事を自覚しており、その夢の続きをどんな風にするかを自分の意志で決めることが出来るという。
」
見たい夢を見る人々がいて、映像で紹介される驚きの内容だった。彼らは毎朝夢を家族に報告し、アドバイスを受ける習慣があり、それが夢を自由に操作できる能力につながっているらしいという内容だった。
この本によると明晰夢を見ている間は夢であることを本人が自覚しているという。明晰夢を見る人は、夢の中で正確に時間を数えて、眼球運動で合図することもできるという。覚醒レベルが異常に高い睡眠で、実験室でも訓練によって誰でも見ることができることが証明されているそうだ。
一生で五年間見る夢を自由に操作できたなら、究極のバーチャルリアリティと言えそうだ。やってみたいが、訓練の前提が夢を書き留めたり報告することにあるので、私の場合、のっけから難しいのだが...。
この本は、医学博士、理学博士で睡眠の研究者による一般向けの解説書。脳科学、生理学、進化論、文化史、人類学と幅広い観点からの考察もあって面白く読めた。
・過去記事 朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000651.html
睡眠に関する情報あり。
2004年02月23日
出版考、ふたつの知、情報の適者生存、金儲け
ある小さなコミュニティで(議論の刺激剤的な言葉と言う意味合いもあったのですが)、「すべての出版はビジネスであり、金儲けだと考えています」と発言したことで、いろいろやりとりがあり...。
以下の文章を書いたのでブログに多少修正してメモとして残しておこうと思います。文脈から切り離してしまうと意味があるかどうか分かりませんが。
---
出版。書かれた書物の段階では、ある人から見て高尚な本も低俗な本も、ともに「流通する商品」であると考えます。売れること、読まれること、多くに評価されることが本の価値ということになるのだと私は思っています。
無論、そうでない価値もあるとは知っていますが、現状の出版産業や言説空間の枠組みでは、商品を超えてマスに対して持続的に(=稼ぎながら)、主張をしたいとなると、それは私の定義では一般的な「出版」活動を超えてしまっています。ビジネスとしての出版と表現者がどう関わっていくべきか、自分のテーマとして考えてみました。
私は、科学者ギルド、専門家ギルドの小さな知と、マスの大きな知は異なるものだと考えています。つまり、マスに間違って伝わるということはないのだと思うのです。
マスに対して情報を伝達する場合、情報の送り手から見ると、曲解されたり、ディティールが失われたりして、本意が理解してもらえないと感じられることが多いと思います。私もライターの仕事をしていて、そのように感じます。が、それはそういうものとも思います。
マスは無知でも推論能力に欠けるわけでもないと思います。中には科学者や専門家も含まれているでしょう。ただ多様なのだ、と思うのです。マスに選択され、多様な受け止められ方をすることで、大きな知が形成される。多様性は全体の存続に必要な性質と思います。
大抵は、マスの選択は、ミーム論的に、適者生存の法則が働いて、面白いもの、分かりやすいもの、売れるものが優先されると思います。大きな知は、科学者や専門家ギルドの論理では、間違っていると指摘したくなりますが、マスの選択は歴史そのものであって、「間違う」ことはないというのが本当だと考えます。つまり、大きな知は現象なのだと考えています。
大きな知は、小さな知からみて、一見、「間違って」いても、それはより普遍的なものを守ろうとする動きの結果なのであって批判の対象ではないと考えます。守ろうとしているものは以下のような価値だと思います。
・必要なこと、求めていたこと、快いこと、生活に便利なこと
→面白い
・一部の人に詳細までわかることよりも多くの人に大枠が理解されること。
→わかりやすい
・経済が動くこと。儲かること。その知に関わるものが生活の糧を得ること。
→売れる
例えば、例をとるなら、売れる言説には以下のようなものもあるとおもいます。
【ゲーム脳】
ゲームをするとキレやすい子どもが育つ
という言説の背後には、「人や自然とかかわる経験をこどもにさせたい」という大きな知があるのでしょうし、
【インターネットは便所の落書きだ】
は、「インターネットの情報には信頼できないものもあるから広く情報を見て総合的に判断した方が良い」という知があると思うのです。
間違ってマスに伝えたことをギルド内で批判することはたやすいと思います。でも、自らがそれを糾す際に、マスに選択される形、つまり、面白く、分かりやすく、売れる表現方法の上で語ることができるかというと、できる人は少ないと感じています。古典的には知と修辞学は同居していたはずが、専門家による知の細分化によって、修辞学は知の使い手と分離しがちになっているというのが原因のひとつなのではないでしょうか。
メッセージはコンテクスト内で意味を持つのだとすれば、流通に関わるものが知にコンテクストを与えないといけないとも思います。送り手側が「なんでつまらない本ばかり売れるんだ」と嘆く出版不況があるとしたら、送り手と流通が、良い本をベストセラーランキングへ入れる努力に失敗していることが原因と考えます。
記号表象レベルで、シニフィエ・シニフィアンが分離できないのと同じように、メッセージ内容と表現方法は分離できないものと思います。
そして、小さな知のレベルでいくら「正しく」とも、その正しさの依拠するものは、それがギルド内でのテンポラリな合意であるということだけだと思います。ギルドの外では、その正しさは、必ずしも選択理由にならないと考えます。科学者ギルドの知も長い時間が経過すると、科学的に誤っていたことが分かってしまったりして、正しいかどうかは分からないものと思います。
私が、「出版はビジネスであり、金儲けである」という表現を使って言いたかったことは、知の流通手段がビジネスであることは、ふたつの知をつなぐあり方として必然であるということでした。
2004年02月22日
OvalLinkというコミュニティ、パネルに参加して
土曜日にOvalLinkのパネルディスカッション『コミュニティとメディアの可能性 』にパネリストとして参加しました。OvalLinkは日経BP社が2002年12月に閉鎖した有料会員制Webサイト「ブロードバンドビジネス・ラボ」のメンバーが、止めてしまうのはもったいないと考えて、有志運営に切り替えたビジネスコミュニティ、だそうです。
「だ、そうです」、と書いたのは私も、今回のイベントに誘われるまで、その存在を知らなかったからです。熱狂の懇親会まで参加してみての直感的感想は、「最先端のシーラカンスを発見してしまったエウレカ!」です。この表現は、古くて新しくて、とてつもなく貴重なものという意味です。
このコミュニティは、このイベント内でさえ、ハンドル名で呼び合う文化なので、誰が所属しているか明かしてはいけないと思ったので、書けませんが、とにかく顔ぶれ豪華で先端的な人たちの集団でした。リアルでは要職にある方、著名な方も多く参加されていて、名刺交換や紹介を受けるたびに、驚きの連続でした。
大学教授、大手企業や組織の要職者、大手メディアの責任者といった中心の人も、ベンチャー経営者、アクティビスト、芸術家、私のような個人の表現者といった周縁の人も、「先端という周縁」に集まって、フラットに刺激しあうコミュニティになっていました。
オフのイベントが祝祭として機能していました。リアル世界の仮面を外して、ハメを外して真剣に議論したり、騒いだり。運営者の方々には違うぞと言われてしまうかもしれないのですが、直感的にはパソコン通信の古き良き時代を思い出しました。
インターネットの前の世代にパソコン通信がオンラインコミュニティの主役であった頃にも、こうした「中心と周縁が先端で結婚する」コミュニティってあったと思います。ですが、近頃のコミュニティは、オンラインという場の先端性が希薄化したせいで、中心と周縁が分離して、リアルな世界の群れ具合やヒエラルキーを反映したものが多くなってきたと感じます。
OvalLinkはそういった意味で、シーラカンスだと思った次第です。でも、このシーラカンス、懐古趣味の集団というわけでは決してないようです。コミュニティの新しい価値を作り出そうと、運営者はさまざまな取り組みと発想に取り組まれていることが、イベント参加で分かりました。
当日のパネルディスカッションでは、司会の水島助教授より、以下のような説明がありました。対談相手は、日本のサイバー文化のエッジを牽引してきた界面的メディアのInterCommunications編集長の大和田氏、テレビ局の地上波責任者の古川氏でした。共にメディアの顔から一段降りて個人の立場で、お話をしてくださいました。
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テーマ2 コミュニティーと組織、マネジメント、マーケティング(15分)
オンライン文化に公私ともに長く関わっていると、「コミュニティ」という言葉で、すぐ“オンライン・コミュニティ”をイメージしがちですが、言うまでもなくこの言葉は人間の共同性(態/体)そのものを表すものとして、かなり多義的に用いられています。
ここでは、経済システム・社会システムとしての「コミュニティ」の位置について、考えてみることにしましょう。「コミュニティ」とは、どこまで“自生的”であり、どこまで操作的、すなわち“利用可能”なものなのか――マーケティング的な活用を意図して「コミュニティ」を仕込むことは、果たしてどの程度可能なことなのででしょうか。
翻って考えれば、20世紀の「メディア」は、かなりのレベルで操作可能なものとして、設計されてきました。この観点から「コミュニティ」と「メディア」が交差する点を見つけ出すこともできるのではないでしょうか?
Keyword:ナレッジと知識、データベース、共生(共創)、アソシエーション
規範、秩序、操作、バイラル、・・・・
口火を切っていただく方:橋本さん
ある意味で、「アクセス向上委員会」から「データセクション」・・・「セマ
ンティックWeb」に至る橋本さんの“歩み”はまさしくこのフィールドの可能性を追求されてきたものと読み替えることができるのではないか・・と思います。ちょっと「自分史的」に“見えてきたもの”を語っていただけないでしょうか?
(約8分:この部分は、ある程度話される「ネタ」などをご準備ください)
古川さんには、広告をとることによって成立している「放送」というビジネスモデルとの対比、大和田さんには、社会インフラとしての通信事業と「情報流通」の関係を踏まえて、「コミュニケーション」と「ビジネス」の関係について、絡んでいただければと思っています。
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この台本に対して、キーワードだけ準備してお話させていただきました。自分史という切り口を重視しました。超要約。
・背伸びのマイメディア
個人のホームページは「背伸びのマイメディア」であると思います。その背伸びによって社会と接点とインタラクションを持つことで、自分も成長しながら、ある段階からは、ビジネスとも関わっていけるという実体験をお話させていただきました。
・先端という周縁
オンライン言説空間において、マスメディア(中心)に対してのマイメディア(周縁)の関係は、優劣があるわけではなく、並列するものであると思います。周縁の役割は、中心に異議を唱えたり、中心の論理をずらしていくことにありそうです。中心と周縁の相互依存によって新しい価値が生じて、そこがビジネスになったりするなあと自分の経験や思いをお話させていただきました。
・ソーシャルネットワーキングメディア
最近話題のOrkutなどソーシャルネットワーク上にメディアを作ることで、個人の表現がもっとビジネスに近づく可能性があると思っています。
あ、これじゃあ要約すぎてなんだか分かりませんか。。。
というわけで、OvalLink、私は年会費を払って入会することにしました。まだ会員ではないので自信をもってオススメすることができなくて残念ですが、最先端の知的コミュニティを探してインターネットをさまよっている方、近頃たいしたメーリングリストや掲示板が見つからないんだよね、という方、このコミュニティが答えになるような気がしています。
ご一緒に入会しませんか?
2004年02月21日
心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観
面白い。見方によっては、古典優生学的と批判されかねない、きわどいテーマを扱っていると思う。
■こころの遺伝を証明することの危うさ
私は学校で、姿形や体質、病気は遺伝することがあると習った。しかし、知能や性格が遺伝するとは教わらなかった。社交的で明るいだとか、語学の習得が早いとか、プレッシャーに弱い、異性の好みやつきあい方に偏りがある、などの「こころ」の性質は、後天的な学習と育ちの環境が決めるものであって、遺伝子が決めるわけではない、ということになっている。
なぜ、”そういうことになっている”のか?。ひとつの理由はそれが倫理的に「Politically Correct」な言説だからだろう。「こころ」が遺伝するとすれば、優秀な家系の子どもは優秀で、犯罪者の家系は犯罪者を生むという論理につながる。実際、そういうこともあれば、そうでないこともあるわけで、「それは遺伝である」という言説は差別にもつながりかねない。社会的に受け入れられにくい。
もうひとつの理由は、遺伝と、後天的学習及び環境の要因を切り離して分析することが不可能だと考えられるからだ。親が優秀で裕福な家庭は、そうでない家庭よりも、比較的恵まれた環境をこどもに与えることができると考えられる。逆の環境の仮定もありえる。だが、実際に成長した子どものこころを、遺伝的な部分と学習・環境要因と切り分けて分析することは難しい。測れないものは証明できない。
つまり、この本のテーマはきわどい。「こころは遺伝する」ことを科学的に証明した上で、且つ、社会的に受け入れられる説明をしなければならない。そんなことができるだろうか?。この本はその難しい挑戦に、慶応大学の助教授が果敢に挑んでいるスリリングな内容である。
■双子の研究からわかること
科学的証明のてがかりは、「別々に育てられた一卵性双生児」である。
そもそも双子がこの世に生まれないとする。計算によると通常の遺伝プロセスを人類の絶滅まで繰り返しても、同じ遺伝子を持つヒトは生まれてこないらしい。人類絶滅までの延べ人口は大きく見積もっても20桁程度の数字。これに対して、遺伝子の組み合わせパターンは2400桁レベルと考えられるからだと言う。
それゆえ、一卵性双生児は遺伝的に奇跡とも言える貴重な研究材料なのだと著者は考えた。その事例を多数集めて、双子の各々のたどった一生や、性格、能力を調べていく。IQ、学業成績、宗教性、創造性、外向性、職業興味、神経質などの項目の類似性を数値化する。
稀にだが、事情があって何十年も生き別れになって異なる環境で育った一卵性双生児がいる。異環境の一卵性双生児の事例を多数集める。これは同環境で育った双子と区別して集計する。
同時に遺伝的には少し離れた関係にある二卵性双生児でも、同環境・異環境に分けてサンプルを集め、類似度を数値化する。こうして、一卵性(同環境、異環境)、二卵性(同環境、異なる環境)の4つの類似度が集計される。
4つの類似度の相関度を算出する。一卵性は遺伝子を100%共有しており、二卵性は50%の共有度であるから、この違いも加味して、有意な相関項目がみつかれば、こころの性質のうちで遺伝するものがみつかる、というわけだ。
IQや明るい性格その他、幾つもの要素に強い相関が発見される。
まったく異なる環境で、お互いの存在さえ知らなかったのに、学校の成績や職業、乗っている車種、好きなお酒の銘柄、離婚歴、果ては妻と子どもの名前(好きだから名づけた)まで一緒だった双子の例が紹介される。
こうして、こころの遺伝の証明の第一歩が始まる。この部分は数値やグラフでデータが多数示され、最も読み応えのある部分である。
■こころの遺伝は決定的なのか?
上記の方法で、遺伝と学習・環境要因を切り離して分析するとしても、完全な遺伝の証明にならないと著者は考える。遺伝は遺伝子が確率的に複製されるだけであって、その表現形が複製されるわけではない。抱えた遺伝子が必ず発現するとも限らない。例えば「美人の顔」は、顔の個々のパーツの性質(目がパッチリ、鼻が高いなど)できまるわけではなく、組み合わせ全体で決まるわけだし、癌の遺伝子を持っていても癌になるとは限らない。
環境や学習に対しても、著者は鋭い分析を続ける。得意なことが好きになって、自分も他人も、もっとその能力を伸ばそうとする。環境も学習も、与えられたものという面は極一部で、本人が選択したり変革していくものととらえる。
「遺伝」の意味が一般にいかに誤解されているか、著者は専門的な概念を、分かりやすい例を挙げながら解説し、遺伝=決定論の偏見イメージを突き崩し、科学的な理解とは何かを語る。
こうした事柄を論じたうえで、この本は最後に「こころの遺伝」の存在と、その意味を結論するクライマックスへ向かう。最終章にいたって、私としてはこの本は、前述の「Politically Correct」の問題を、なるほどね、という落としどころへ持っていくことでクリアしているように思える。
この本、じっくり読まないと著者は、一見、遺伝決定論者のように見える。いや、著者は中立に書いているのかもしれないが、この人自身の肩書きが、俗世間的にはエリートなわけで、一般読者としてはどうしても、そう読みがちになる。読後感としては、中立の人っぽく感じたけれど、まだ分からないでいる。
分からないから、面白くて一気に読めたのかもしれない。新書でとっかかりやすい。データ量も豊富で、トリビア的にも、かなり、おすすめの一冊。
2004年02月20日
Beepで三三七拍子
今日は閑話休題的な日記。
斜め向かいに座っているSさん。プログラミング中にバイナリデータをコンソールに表示させてしまい、ビーーーーーというBeep音がオフィスに鳴り響く。Beep音を聞くときは、ハードウェアトラブルとか、ロクなことがないので緊張する。
このBeep音は、PCの内蔵ブザーが出すものなので、サウンドカードがないPCでも鳴らすことができる。マシンの起動時にピという音を鳴らすのもこれ。昔のPCはBeep音が唯一の音源だった頃もあった。でも、最近はアプリケーションでこれを使うケースはほとんどなくない。Beep音、Windowsの通常操作で意図的に鳴らそうと思っても、やり方は難しい。
そこでプログラムを開発している人が結構いる。Beep soundのプログラマ、なぜか日本人が多く、海外には少ない。日本はBeep先進国なのかもしれない。
で、早速、幾つか紹介。
・三三七拍子をbeepで出力する
http://www.net24.ne.jp/~omoti/note/c/sansan.html
実行ファイルをダウンロードして起動するととりあえず三三七拍子が聞ける。スピーカーがなくても、ボリュームゼロでも聞こえる。音は小さいので、静かにして聴く必要あり。
このソフトを使うと、Wave形式の音楽ファイルをBeep用ブザーで演奏させることができる。Beep音のブザーは単一音源なので、鳴らす回数、発生時間、周波数、音量を調整する程度のことしか本来できない。それで音楽を聴こうという試み。鍵盤演奏ができる。
MidiファイルをドラッグアンドドロップするとMidiをBeepで演奏してくれる。これはなかなか気に入った。好きな曲が聴けるのがいい。Midiファイルは付属していないので以下のサイトから入手した。
・童謡・唱歌の世界(参考紹介ですがすごくいいサイト)
http://www5b.biglobe.ne.jp/~pst/douyou-syouka/童謡、唱歌のMidiファイルがフリーでダウンロードできる。
・Beep3
http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se240802.html

なんとBeep音で3重和音を演奏させる。ブザーはひとつしかないわけで、3つの音の波形をソフトウェアで合成して鳴らす、のだろう。すごい音がする。CPUに非常な負荷がかかるらしく時々落ちる。
Beep音は同じ音源ファイルを演奏させても、マシンごとにかなり音の響き方が違うことが分かった。マイナーな趣味っぽいですが、Beep音周りの情報お持ちの方ください。
2004年02月19日
こころの情報学
■情報論のパズルを完成させる本
情報学、動物行動学、人工知能、現象学、言語学、社会学のキーワード(例えば、アフォーダンス、フレーム問題、オートポイエーシス、など)を総合し、情報という視点から人のこころを説明する本。情報科学のキーワードが無数に登場し、著者は本来、別次元である、それらのキーワードをパズルのように見事に組み合わせて、人のこころの意味を考えていく。情報科学好きにはたまらないワクワク本。
私が読み取れたこの本の概要。
著者は、情報を「それによって生物がパターンをつくりだすパターン」と定義している。すなわち、心(あるいは心的システム)を持つ生物がいなければ、情報は存在しないという<生命情報>の立場に立つ。つまりヒトや動物がいないと情報も存在しない。
これに対するのは記号の意味が捨象された<機械情報>の世界であり、記号の伝達と効率のみの世界。コンピュータ同士の情報のやりとりや、意味が固定化された社会の情報を指す。(思うに、セマンティックWebが扱うのは機械情報である。)
この生命情報を処理するのが、心的システム(あるいはこころ)であるとする。認知活動により意識にのぼる情報のパターンが、言語の意味作用や、他の情報との出会いにより、ダイナミックに変化する遷移のプロセスが「こころ」の正体という定義である。
こころはオートポイエーシスの性質を持つとも言う。オートポイエーシス(自己創出性)は、このメディアアート「顔ポイエーシス」を見るとわかりやすいと私は思ったので紹介。(この本で紹介されているわけではないです)
・『顔ポイエーシス facepoiesis』と遺伝的絵画(Genetic Paintings) について
http://www.renga.com/facepoiesis/tabula/index.htm
人が描いた顔の絵を交配し、別の顔を生成していくプログラム。元の顔のパーツや配置の要素情報が遺伝子として引き継がれて、無数の顔が増殖する。これらの顔の中には、描き手が将来描くかもしれない顔までもが含まれているかもしれない。
つまり、外部環境の情報(人が描いた絵、前の世代の顔)を取り込んで、何らかの選択パターン(遺伝メカニズム)を使って、自律的に新たな意味(顔)を生み出し続ける性質がオートポイエーシスと説明できると思う。
こうして定義された、「こころ」と、言語、社会、環境、技術、インターネットなどとの関係が説得力ある統合として語られていく。広い研究領域の成果が次々に紹介されては、このキーワードはここに組み込める、といった風に、パズルが完成されていくプロセスは知的好奇心を刺激されまくり。
電車を乗り過ごして最後まで読んだ。一般向けに書かれた本だが、一通りのキーワードは事前に理解しておく方がわかりやすいとは、思った。私は今、知識不足で不明で残った部分を勉強中。
この著者の西垣通教授の著書は、情報を考える上でいつも啓発される。理系のはずなのに文系の領域にも詳しく、現代思想まで踏み込んで現代を論じるすごい人。思想だからか、この本は5年前の本だけれど、まるで色褪せていない。
・東京大学 西垣研究室
http://www.digital-narcis.org/nishigaki/
西垣先生とは、4年前にパネリスト参加したイベントで司会をしていただいていたことに、裏表紙の写真を見て気がつき愕然とする。このイベントの第一部は先生の独演会「ネット社会の新しいパラダイム」。当時、まだ著書を読んでいなかった私は、自分の出番の準備をしながら、ポカーンと聞いていたけれど、今この議事録を読んでやっと内容がわかった。
ああ、もっとお話しとけばよかった。今度何かでお会いできる時のために他の著書も読んでおこうと。
・デジタル社会の光と影
−これからのネット社会の新しいパラダイムを探る−
@情報通信総合研究所
http://www.icr.co.jp/newsletter/report/2000/crisis/1-0.html
2004年02月18日
話し方の技術が面白いほど身につく本
■話し方の技術
人前で話す仕事が多くなってきたので勉強のために読んだ本。セミナーやパネルディスカッションといったイベントだけでなく、名刺交換の直後、他人のプレゼンの準備時間や、休憩時間の前後の、2,3分の隙間時間で、自分を印象づけられる話ができると、いいなと思いながらページをめくる。
・サンドイッチ法
挨拶ではじめる→名乗る→内容を話す→再び名乗る→挨拶で終わるといった具合で、形式を作ることで、突然求められたスピーチにも対応できるというノウハウ。
・ライフル型アイコンタクト
たくさんのオーディエンスの前で話すときに目のやり場に困るという問題の解決法。オーディエンス1人につき3秒ずつアイコンタクト。話の区切りで目線を変える。電車内でのトレーニング法など。
・カラスの声トレーニング
ある種の発声法。口を閉じ、鼻で息を吸う。
など、大量のノウハウがイラスト入りで解説されていく。フムフムいいながら1時間で読み終わる。自分の話し方のスキルはまだまだだなと思った。
自己分析して、ひとつだけ自信を持ってできているのは、腹式呼吸法。子どもの頃、喘息で治療のために医師から勧められ、身についたこの習慣、病気が治った今でも役立っている。おかげで運動音痴でスモーカーなのに肺活量だけは5000を超えている。長く通る発生だけはできている気がする。今となっては喘息万歳。
・肺活量とは肺の換気能力を示す数値
http://health.www.infoseek.co.jp/library/0800/w0801019.html
肺活量の平均値の求め方:
男性={27.63−(0.112×年齢)}×身長
女性={21.78−(0.101×年齢)}×身長
私の場合、平均値は4285だから平均を超えることができた。
「健康な成人では男性は3000〜4000ml、女性は2000〜3000mlくらいになります」
最近、仕事術でベストセラー連発の斉藤孝氏も呼吸法の本を出版している。腹式呼吸は健康にも良いらしいのでおすすめ。
■音声によるお手本と魅力的な声質
この本にはCDがついていて著者の話し方セミナーが丸ごと収録されている。本だけでは分からないニュアンスがここで補完される。話し方の本にCDをつけるのは大正解だなと思った。聞いてみると、話の内容はともかく、確かに聞き取りやすい。間の取り方が特に勉強になった。
話し方に理想形はなくて「らしさ」って重要だなと思う。経営者らしさ、研究者らしさ、営業マンらしさ、やり手コンサルタントらしさ、個人ブランドの人なら○○さんらしさ。聞き手が求めている像を守りつつも意外性を打ち出していく。個人的に惹きつけられるのは、言葉を慎重に選びながら落ち着いて話す人。それでいながら、話の内容が大胆で本質を突いていると、すごいなこの人と思う。
声質というのは生来のもので練習で変えるわけにはいかないのかもしれないが、最近、テレビで興味深い番組を観た。世界的にも数えるほどしか存在しない奇跡の声を持つ岡本知高のライブ&トーク。
・岡本知高オフィシャルサイト
http://www.p-and-d.co.jp/okamoto/
男性でありながら、女性ソプラノの音域を持つ世界でも稀有な存在の男性ソプラノ“ソプラニスタ”
まずはこんな声が出せるのかと驚愕。さらに声質を科学者が分析したところ、波形も特殊で、美空ひばり、ビートルズなどと同じ1/fゆらぎが計測されるとのこと。声を聞くことでα波による癒し効果があるそうだ。声の世界は奥が深い。
■自分の話す姿を撮影して眺めてみる
前回の超本格会議はビデオで録画していた。DVDへコピーをしながら、自分のしゃべり方を見直してみた。悪い癖をいくつも発見。自分の話す姿をビデオでみるのははじめてだったけれど、非常に勉強になった。無意識に出ている言葉や動作、意識して行っていることの効果、が客観的に分析できる。
私は話の中に「要するに」「つまり」「結局」がとにかく多い。10分のうちに10回以上使っている部分が何箇所もあった。ほとんどは、なくても意味が通じる。これは今後、意識して直した方がよさそうと思った。歩き回ったり、身体を傾けると見栄えがよくないことも知る。
この本のチェックリストを見ながら、今まで聴いた講演を思い出す。話す内容のプロは多いけれど、話し方のプロって案外少ないのではないだろうか。面白い話をもっと面白く伝えるための技術として、話し方の技術、重要に思った。
次のイベントに向けて練習、練習と。
2004年02月17日
本を読む本、ぼくが読んだ面白い本......
1940年に初版がでて以来、読書術の古典として世界的にベストセラーになった本。内容は書物をどう理解し、知識を自分のものとして獲得していくかの方法論を体系的に述べている。
読書には4つのレベルがあるという。
1 初級読書(Elementary Reading)
「その本は何を述べているか」を理解する読書
2 点検読書(Inspectional Reading)
系統立てて拾い読みする読書
3 分析読書(Analytical Reading)
系統立てて質問をする積極的読書。著者との対話型の読書。
4 シントピカル読書(Syntopical Reading)
ひとつの主題について何冊もの本を比較読書し、客観理解をすすめる。
書かれていない主題をも発見する究極の読書。
このレベルを上げていくことで深い理解に到達し、知識を活用できるようになるのだという。作者と対話し、そこに書かれていないテーマを発見せよ、行間を読むのではなく行間を書け、というメッセージになるほどと感銘。
古典的な本であるのに、意外にも速読、とばし読み勧める内容になっている。そして、どんな本も数行に要約してみよ、とし、アダムスミス「諸国民の富」、アリストテレス「倫理学」、ヘロドトス「歴史」などの古典の要約例があげられる。
最初に点検読書で全体のアウトラインを把握し、著者の言いたい事をつかみ、読むべき価値のある部分をじっくりと考えながら読む方が、最初からだらだら読むよりも、速いし理解も深まるということを言いたいようだ。
この本を読んでいて思い出したのが次の本である。(今日の記事はむしろこちらが紹介したい本)。まさに同じような読書論を展開している人がいる。
・ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術

立花隆による読書術と大量の書評集。素晴らしい。
立花隆の大量読書は有名だが、この本ではまず、その読書術が語られる。蔵書のために地上3階、地下2階のビルを建ててしまう作家であるから、本と読書に関するこだわりは熱い。当然のように速読をポリシーとしている。点検読書と同じ意味の速読を実践しているのだなとわかる。
「
この世界は、書物の存在量から見たとき、いかなる巨大美術館、巨大美術展よりも、作品が信じられないほど多量にあり、はじめから逐語読みをしていたら、一生かかっても絶対に読みきれないどころか、数百年かかっても読みきれないほどの量がある。しかもその中にクズが山のように入りまじっているのだから「全部はじめからじっくり読み」方式は絶対にしてはならない無謀な方式なのである。そんなことをしていたら、出会うべき本に出会えないうちに一生を終わってしまうこと必定である。
」
「音楽的読み」と「絵画的読み」という著者の言葉はうまい表現だと思った。順序通りに分析読書する方法であり、後者は数十分で一冊を読むような点検読書の方法のこと。著者曰く、基本は絵画的読みで把握し、読む価値がある部分を音楽的読みで読むべきだとのこと。
この本の大半を占める中盤は、著者が5年間に読んだ中から選んだ数百冊の書評。週刊文春の連載をまとめたもの。的確な引用と明確な評価。良い本はほめ、悪い本はけなす。ひとつのテーマに対して大量の類書を読む著者は、「本を読む本」でいうシントピック読書の実践者であると思った。
紹介されるのは、ジャンルを問わずあらゆる本だが、著者の好みで科学書や歴史書、ニューサイエンス(オカルトともいう)、奇書の類が目立つ。自分が読んだ本の批評が書かれているのも面白いし、気になっていた本の評価も参考になる。これを先に読んでおけば、買わなくても良い本を買わずにすむから、この本は書評部だけでも価値があると思った。
そして終章の「『捨てる技術』を一刀両断する」が凄まじい。何でも捨てることが大切という内容のベストセラー本を、完膚なきまでに叩きのめす。作者が気の毒になるほど徹底的である。
・「考え方が根本的に間違っている」
・「(この本こそ)「捨てる技術」を使うならまっ先に捨ててしかるべき」
・「私はこの本をまったく評価しない」
・「ほとんどカスみたいな本である」
といった罵倒が実に40ページも続く。この激しい批判書評の過程で、著者は自らの情報についての哲学や価値観を展開していく部分は、この本のクライマックスである。
「捨てる技術」は私は読んでいない。自論展開のために戦略的にこの本を選んで悪く言ったのか、本当に激昂するほどこの本が嫌いなのか、判断が難しいのだが、ここまで叩かれる本自体も読んでみたくなった。
お断りしておくと私は立花隆のファン。何の分野であっても、豊富な知識を根拠として挙げて、説得力のある評価をする人である。「知の巨人」と呼ばれる一方で、トンデモ系だという批判もあって、たくさん出版物まで出ている。
・立花隆先生、かなりヘンですよ―「教養のない東大生」からの挑戦状
・立花隆「嘘八百」の研究―ジャーナリズム界の田中角栄、その最終真実。
立花批判の多くは、彼の語る立ち位置を誤解したもののような気がしてならない。彼は「元」ジャーナリストの作家であって、今は単なるジャーナリストでも科学者でもない。呆れるほど博覧強記なのと、強い物言いのせいで、誤解されてしまっていると思う。専門家ではないが故に、多くの分野に通じ、最先端の知の面白さの世界をナビゲートすることが、この人のやりたい仕事なのだと思う。読者層も本好きばかりだろうから、多少の間違いにミスリードされるとしたら、される方が悪いんじゃないか、とファンとしては思う次第。
2004年02月16日
「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく
・「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく

著者の友寄英哲氏は、1987年に円周率4万桁暗記を達成しギネスブックに掲載された記憶術の実践者。世界一の記録達成者がどのようなノウハウを持っているのかを知りたくて、熟読。次々に繰り出される記憶訓練術の数々。面白い。そういうことだったのかと連発。
著者が円周率暗記は、語呂合わせで達成したということは良く知られている。「富士山麓にオーム鳴く」式に文章を作ってひたすら根性で記憶して行くのだろうな、だけど、それは自分には無理だと読む前は思っていた。そんな根性は私にはないから。ところが、著者の話を聞いていると、ひょっとすると私にもできたりしてと思えてくる。
■語呂合わせとイメージングによる暗記
円周率の暗記は数字を仮名に変換した語呂合わせ作成する。10桁ごとに区切って文章化する。つまり4千の文章を記憶する。ひとつひとつの文章は3秒で記憶、想起できる大きさにおさえる。
ポイントは二つあるようだ。
1 イメージ化する
五感に訴求するイメージに変換する。しかも不快で奇抜なものほど、記憶に定着して良いらしい。500桁までの本番で使ったイメージも後半で明かされている。
2 独自の数字→仮名変換ルールを活用する
二桁の数字に言葉を割り当てたキーワード辞書を作成して、変換パターンを拡張する。この本には著者が使ったキーワードも公開されている。
そして、あとはひたすら暗記の日々になるのだが、記憶力強化と習慣化のための無数の工夫が語られる。通勤時間を使った練習法や、リラックスのための体操法、あがり克服のための運動、テープを使った睡眠学習(肯定している)、自作の暗記ツールの開発など。どれも、普通の人間が取り組めそうで、他の事柄の暗記にも使えそうなノウハウが続く。例えば、毎日の通勤途中の本屋で立ち読みした内容を書き出すことを続ける。次の電柱までに10桁憶える、など。
著者は54歳で記録を達成したそうだ。暗誦するだけで17時間かかる。しかもテレビカメラの前での実施。記憶力と同時に集中力も重要な要素だったそうだ。感動したのは、円周率の最後の一桁を話す自分をイメージして6年間の練習に取り組んだという部分。用意した決めセリフのカッコよさにしびれた。イメージトレーニングのお手本だと思った。
脳科学の大先生や学習心理学者も、理論を知っているだけで、本人が実際に記憶ができるわけではない。実践者が話す内容は貴重だと思う。語呂合わせは言語に依存するので、この著者が、日本人であるという事実は、幸運なことだとも思った。
この本はまだまだ読み取れていない秘密が隠されていそうだ。円周率以外にも広く使える。もう一回読もう。
■デスクトップの暗記術?
私は記憶力が良くないので、幾つかイメージ化、語呂合わせで記憶していることがある。
1 コピー、カット、ペースト
キーボードのショートカットを私は長い間覚えられなかった。あるとき先輩から、こう憶えれば簡単だよと教えられた。これは毎日のように使っている語呂合わせ。
CTRL+C コピー 「コピーのC」
CTRL+X カット 「Xはハサミだからカット」
CTRL+V ペースト 「Vは下向きの矢印でココ!に差し込むという意味」
これを憶えて以来、毎日のように、ハサミ、ココ!とぶつぶつ言いながらカット&ペーストできるようになった。
2 Alexa、WebArchiveの関係
「過去のWebを閲覧できるInternetArchiveサービスは、関連検索のAlexa社が記録したアーカイブを提供している。」という関係を記憶しておくノウハウ。(私は情報活用セミナーで毎回話すことなのですが、Alexaの名前が以前はなかなか出てこなかったので考案)
イメージ化:
アーカイブ=大量に古いものが保存されて腐るので「あれ?臭(くさい)?」
この本が推奨している、バカバカしく五感に訴求するイメージ、になったので、二度と忘れない、気がする。
・InternetArchive
http://web.archive.org/
・Alexa
http://www.alexa.com/
3 Googleのシソーラス検索
Googleでは、英語キーワードに限り、検索語の先頭に「~」(チルダもしくはニョロ)をつけると関連語を同時に検索する。例えば「~culture」で検索すると「Art」「Music」なども含めた検索結果がでる。
海外のサイト探しに便利な機能だけれど、どうもニョロを忘れてしまうので、「ニョロニョロつながる言葉がぐるぐる(Google)回る」イメージ化したところ、忘れなくなった。
#みなさんも何か語呂合わせで暗記していることがあれば教えてください。
2004年02月15日
愉快議!〜 仕事も恋も「つかみ」の技術で完全武装 面白き事も無き世を面白く 〜
今月の無敵会議開催の詳細が決まりました。今回は土曜日に開催してみます。
愉快議!〜 仕事も恋も「つかみ」の技術で完全武装 面白き事も無き世を面白く 〜
あなたの究極の「面白い」を教えてください。
世界一面白いと思うジョーク、儲かって笑いの止まらないビジネス、目を惹かれたキャッチコピー、1日見ていて飽きないWebサイト、間抜けな写真や映像作品、心を揺さぶられた小説。カタチはなんでも結構です。
ニヤリ、爆笑、ナルホド、スゴイぜ、イケてる、これツカエルぞ。面白さの種類や意味はあなたが考えてください。そして、極上のひとつだけ、理由付きで教えていただきたい。当日は、参加者が100人いれば、面白さ100倍です。きっと愉快な会議になるでしょう。
でも、笑うだけの会議だと思わないでください。
企画なら発想の面白さ。営業なら雑談の愉快さ。経営者ならユニークなビジネスモデル。投資家ならイケてる企業の発見。モテたいなら軽妙洒脱なトーク。すべてポイントは面白さにあります。
この会議で交換する面白さのエッセンスはそれぞれの「現場」の実践力アップに使えるはずです。
そしてお約束。
会議ですから全員参加です。インタラクティブな会議時間では、5-6人のグループを作って、ビジネスや生活で面白い刺激の発想を共同開発します。当意即妙の技に自信のある人もない人も、オモシロ度のレベルアップができる共創の場を提供できるように、主宰の二人は企画を練りこんでいます。ご期待ください。
愉快議、それは「人の心をつかむものは何か」を探る会議です。
■ 参加の方法
これは会議です。全員参加です。参加するには、あなたのとっておきの「面白い!」を教えてください。
出会った人には必ず話してしまう「おもしろ」小話、モニターの前でくすりと笑ってしまう「おもしろ」サイト、思わずつっこんでしまった「おもしろ」商品、小膝を叩かずにはいられない「おもしろ」アイデア・・・。
かたちはなんでも構いません。
あなたの、ワハハ!、ニヤリ!、ナルホド!、スゲエ!、イケてる!、を文章で表現してください。
推薦文には関連ホームページのURLを含めてくださって結構です。
参加者の皆さんには当日投稿結果を印刷して配布させていただきます。
また、投稿だけの参加も可能です。投稿していただいた方全員に、後日「愉快会議、これであなたもつかみの名人(要約版)」を配布いたします。
■ 実施要綱
日時 2004年02月28日(Sat) 19:40-22:00(19:30受付開始)
場所 デジタルハリウッド渋谷校
〒150-0042 東京都渋谷区道玄坂2-25-12 道玄坂カブトビル4F
(地図)
費用 3,000円(税込、当日現金払)
定員 50名(先着順)
持ち物 筆記用具、携帯電話
主催 橋本大也(Passion for the Future)
百式管理人(百式)
協賛 デジタルハリウッド株式会社
■ プログラム
第一部 フリートーク (60分)
・橋本 vs 百式管理人、GoogleAdwordsで本気対決の報告会
・話題になるとはどういうことか?話題性の法則を探る
・笑えるサイト、ジョークなアプリ、独断偏見なんでもありの「おもしろ」ベスト10
・厳選したマーケティング手法、発想術、企画ノウハウのご紹介
・「面白い!」に規則性はあるのか?おもしろさを科学する
第ニ部 愉快議 (30分)
グループに分かれてあるテーマについて議論していただきます。テーマは当日発表します。
当日は携帯電話を使ったリアルタイムアンケートを実施します。
第三部 結果発表 (30分)
会議内容の発表
・橋本、田口が参加者投稿から選ぶ独断と偏見の『究極の究極の「面白い!」』
第四部 名刺交換と交流会
名刺とそれ以外のあらゆるものを交換。
■ 投稿・お申込みはこちらから
会議への参加お申込み、ここからからどうぞ。
2004年02月14日
デジタルID革命
今後、数年というスパンでRFID、無線ICタグのビジネスがくるのではないかと、私も考えているので、総合している最新本を読む。
慶応大学国領教授と、日経デジタルコア編著によるデジタルID技術の現状報告と展望の解説本。デジタルIDとは、RFIDやICカードなどの無線ICタグ技術を指している。総務省の発表では、無線ICタグの市場は2010年には31兆円規模の市場に成長するという。
生産者、製造年月日、原材料、流通経路などの情報を記録した、小さなICタグを商品につけて流通させる。そして、読み取り装置を使って、商品情報を流通、販売、消費者がそれぞれ便利に使う。生産者も商品の流通や使用状況を把握し、市場分析に役立てる。現在、バーコードが果たしているようなトレーサビリティ技術の革新。(自動認識技術ではまだバーコード技術が90%の出荷総額のシェアを持っているらしい)。
一口にトレーサビリティといっても、消費者の視点でのトレース(遡及)と、生産者や流通の視点でのトラック(追跡)の2種類があるとこの本は定義する。トレースは、手元の商品の出自を知りたいと思ったときに、確認できること。トラックは、流通経路のどこを今流れているかを確認すること。
消費者は生産者が分かることで安心感を得たり、CDや書籍の詳細情報を入手できたりする。ビジネス側としては、流通を合理化したり、マーケティングに活かせたり、患者や医療器具などにつけることで医療現場でのミスを無くす、など、この技術の有望性は数え切れないほどある。
しかし、追跡できるということは、人の着ている服の値段や最近買った書籍のタイトル、どの駅を毎日乗り降りしているか、冷蔵庫の中身は何か、まで第3者に分かってしまう可能性があるわけで、プライバシーに対する懸念も大きい。
また、業界的には、誰がICタグとリーダーの費用負担をすべきなのか、は議論がまとまりにくい。上流に受益者がいるのに、なぜエンドユーザや小売店が費用負担をすべきなのか異論もでる。バーコードの場合には、セブンイレブンなどがバイイングパワーを使った交渉圧力で、すべての商品への印刷を働きかけて実現した、という歴史も、紹介される。
一番面白かったのは、第3章「トレーサビリティのビジネスモデル」の章。食品、医療、航空貨物・手荷物、アパレル、流通、書店、街づくり、の各業界の現状が、詳しく語られる。
読み終わっての感想は、あれ、結構障害が多いなということ。10年、20年というスパンで考えると普及は確実に思うけれど、これからすぐに無線タグ化が進むには問題山積みな状況であると思った。
流通合理化では技術的にバーコードのままでいいじゃないか?な部分が多く、技術の内容も小売現場で実用化するには、足りない部分も多いようだ。そういえば先日こんなニュースもあった。
RFIDによるレジ一括精算、実用化のネックはポテトチップス
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/30/1938.html
面白い試みでは、この本でも紹介されていたが、六本木ヒルズのR-Click実験には注目している。六本木ヒルズ内で、白いキーホルダーをRFIDの張られたディスプレイにかざしてクリックすると、周辺情報が携帯にメールされる。商品と情報ではなく、場所と情報(とヒト)にRFIDをヒモ付ける、こういうやり方の方が当面は、分かりやすく受け入れられやすい気がする。
この本は著者が多いためか、ひとつの結論にまとまらない。結局、今ICタグビジネスは儲かるのかどうか、はよく分からなくなってしまった。私的にはそれが知りたいのであるが...。最新事情と問題点を知るにはとても良い本だと思った。
・六本木ヒルズ Rクリック
http://r-click.jp/
・日経デジタルコア テーマ「トレーサビリティー」
http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/report/theme_traceability.html
このサイトを読むだけでもこの本の概要は理解できる。とても充実。大満足。
・書籍の「無線ICタグ」化に疑問あり
仲俣 暁生 「本とコンピュータ」編集室
http://it.nikkei.co.jp/it/njh/njh.cfm?i=20030718s2000s2
書籍ICタグのプライバシー問題についての異議。
2004年02月13日
IT時代の「仕事術」を考える
「仕事術」系の書籍をまとめ読みして、要点を抽出し、考えたこと。
もう何冊か書評を続けてからと思いましたが、このネタ続けると疲れるので一旦総括。
■ふたつの効率が人間の情報処理能力を決めているという考え
人の情報処理能力=脳力というのは、身長や体重の分布と同じ正規分布を描くものではないと思っている。正規分布の世界。例えば体重50キロの人もいれば100キロの人もいる。身長1.5メートルの人もいれば2メートル超の人もいる。しかし、大半は平均値付近に集合していて、10トンの人も、5メートルの人もいない。
しかし、歴史を振り返ると、個人の知的成果は、正規分布を大きくはずれた人が目立つとも感じる。一人の人間が、驚異的な量の仕事をこなし、その巨人の肩の上で、次の時代が起こされていく。能力は平均の世界でも、成果はべき乗則の世界であり、ごく少数の巨人の影響力が大きい










