2004年04月29日

主婦もかせげるパソコンで月収30万

主婦もかせげるパソコンで月収30万―ホームページの新ビジネス・アフィリエイト体験記
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パートで働く程度の収入になれば嬉しい!と思って始めたアフィリエイトプログラムですが、今では旦那さんのお給料を超えるほどの収入になる月もあります

こんな書き出しで始まるこの本は、イーコマースの代理店制度、アフィリエイトプログラムを活用して、月収30万円以上を稼いでしまう主婦の体験記である。1時間くらいで読むことができる軽めの本。

・アフィリエイトエッセンス
http://www.affiliate-essence.net/
著者の藍玉さんのアフィリエイト解説サイト。このサイトにもノウハウが語られている。

・悩みドットジェイピー
http://www.nayami.jp/index.html
運営しているアフィリエイトサイト

・女性のためのPC選び デルライフ
http://www.affiliate-essence.net/pc/index.html

著者は普通の主婦らしい。家事や子育ての合間を縫って、いかにしてホームページ更新の時間をやりくりしているか、家庭とサイドビジネスの両立の悩みの独白部分などが特に面白い。パソコン初心者の著者が、数年間でどのようにネットに詳しくなり、技術を覚え、稼げるようになったかの成長物語。

実は私の周囲にも、アフィリエイトで月収数十万円達成者は何人かいるのだが、どの人もこの著者と共通の匂いがするように思う。したたかでうかつな女性であるということだ。
著者は、「素人のうかつさ」と「商売人のしたたかさ」の両方を兼ね備えた人だと感じる。うかつなだけでは儲からないが、商売気だけでは警戒されてしまう。アマチュアっぽさ、普通っぽさでユーザの心の警戒心を解いた上で、したたかに設計したサイトへ誘い込む。共感と信頼が商品購入へとつながっていく。著者のサイトの秘密はそんなところにありそうだ。

本業の構えで年配の男性が同じことをやると、往々にしてうまくいかない。生活や人生をかけて本気になると、肝心のうかつさがなくなる。うかつさは偽装してもばれやすいものだ。天然でなければ売らんかなの商魂が見え見栄になる。初心者で主婦というポジションはそれが自然体にできる。だから、アフィリエイトのトッププレイヤーには主婦が多いということなのではないか。

この本を読むと誰でも月収30万円のビジネスが片手間にできるようになるのだろうか?もちろん、そうはいかないだろう。悩みドットジェイピーのような充実したコンテンツを作る技術とデザインセンスは必要である。またノウハウはすぐに古くなるので、仲間のネットワークを作り、情報を交換し、新しいノウハウを生み出す側に立つことも重要だとこの本を読んでわかる。したたかさの部分は必須であると思う。普通に勉強は必要なのだ。

この本で一番、参考になったのはそのしたたかさの部分の勉強を、どうやって楽しいプロセスに変えていくかの工夫の話である。家族の理解を得て生活に取り込むこと、仲間をオンラインで作りコミュニケーションすること、メディアに登場してモチベーションを高めることなど。個人の人気ページ作者と同じで、結局は、好きこそものの上手なれであり、楽しんだ人が勝つ世界のような気がする。

雑誌インターネットマガジンの最新号もアフィリエイト情報が満載。トッププレイヤーの主婦たちが顔出しでコメントしている。

・インターネットマガジン
「プチ・ビジネス」でお小遣い稼ぎ!
http://internet.impress.co.jp/im/
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2004年04月28日

人の心を動かす文章術

人の心を動かす文章術
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ああ、これは、大絶賛です。

20年間で6万通の小論文を添削した人気講師が書いた文章術の本。最近、文章術についての本を立て続けに書評しているが、実践的という点ではこれがベストである。

「小論文指導の第一人者が明かす 面白い文章を書くテクニック 作文 エッセイ メールがちょっとした工夫で見違えるように上手く書ける」

と帯にある。ノウハウ本は多くが過大キャッチコピーに負けてしまうものだが、この本に1限っては、看板に偽りはないと思った。

大学の先生や作家が書いた文章術本と決定的に違うのは、実際に何十本も添削のビフォア&アフターを提示して見せたこと。生徒が書いた下手な文章に、著者が赤ペンで、少し文章を挿入したり、順番を入れ替えるだけで、読みやすく、いきいきとした文章に生まれ変わる。指導のプロのワザが見事である。ホンモノだと思った。

私は小学生の頃、美大生の家庭教師に数ヶ月だけ、絵画を習ったことがある。私の描いた絵に、先生が輪郭に、薄い絵の具で光や影をスーっと書き添えるだけで、風景や建造物が立体的に浮かび上がるのに、感動したのを覚えている。この著者の添削もそれに似ている。ちょっとしたお化粧が作品に命を吹き込む。

著者は学校教育の作文授業がテクニックを小手先のワザだとして軽視していることを嘆いている。逆に、大切なのは、まず、いくつかのテクニックをみにつけることだと主張し、その「いくつか」を本当に教えてくれる本だ。

テクニックとしては、

・リアリティを演出するテクニック
・効果的な書き出し
・修飾語の使い方
・感情を移入させるテクニック
・リズム、メリハリを与える工夫
・主題の打ち出し方

などが紹介される。

向田邦子らの名文に技術を学ぶ章もあったりして、小論文の授業の枠をはるかに超えている。下手とはいえ、原文の持つ味を尊重する指導のやり方もこの先生は、立派だなと思った。原文を完全には壊さず、良いところを残しながら、本当に言いたいことや、持ち味を引き出す添削指導ができる著者は偉大な師だと思う。

後半の推敲論だけでも大変な勉強になった。アマチュアがしばしばやってしまう、文章のつまづきポイントを著者はよく知っている。「私が思うに...と思う」「理由は...だからである」「よく〜している人をよくみかける」「もっとも多いのは〜、〜が多い」など。私もこのブログで年中、そういった作文ミスをやってしまうのだが、陥りがちな罠を最初に知っていれば、推敲効率が上がるはずだ。

・白藍塾公式ウェブサイト
http://www.hakuranjuku.co.jp/著者の主宰する作文セミナー。今度、時間のあるときに受講してみたいと思っている。

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2004年04月27日

ロゴデザインの研究に役立つサイト

新会社、新サービスを開始するときに考えるべきリストのひとつ入っているのがロゴである。ロゴでビジネスの勝負が決まるわけもないが、ユーザのサービスに対する印象に少なくない影響を与えている。ビジネス色が強いのか、娯楽色が強いのか、高級ブランドなのか、親しみやすい廉価なブランドなのか。ロゴデザイン次第では、ユーザに自社サービスの説明が大幅に省ける。

データセクション社のロゴデザインは、こんなかんじである。ロゴはひとつではなく4つあるという少し変わったコンセプト。まだ未確認なのだが、このデザインは、業界のデザイン年鑑の本にも掲載されているらしい。デザインしたのはヒキダス社。

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4人で創業したので、4つの色と形を持つ。組織を構成するメンバーが、それぞれのカラーと形を追求していく新しい時代の会社であるということを伝えようとしている。名刺も各色、4種類作っている。客先をチームで訪問しての名刺交換の際に、各メンバーが色違いを差し出すと「あれ?色が違うのですか?」と聞かれて、会話が弾むというメリットもある。

最近はWebを探せば、2,3万円でロゴを作成してくれる廉価なサービスがある。あまり費用を使わずにロゴの作成が可能になったわけだが、難しいのは発注側が、どんなデザインで制作して欲しいか、イメージを伝えること。うまく伝達できないと、廉価とはいえ、やり直しで予算がかかってしまうし、担当者もストレスを感じる。

やはり、既存のロゴを指して、こんな感じでお願いしますと伝えるのが一番良いような気がしている。ロゴの一覧というのが欲しくなるわけだが、いいサイトがふたつ見つかった。

・Goodlogo.com
http://www.goodlogo.com/

世界中のロゴが300以上登録されている。面白いのは、そのロゴが好きか嫌いかの10段階評価をユーザが投稿できること。その評価ランキングが公開されているので、今どんなロゴが一般に好まれているのかが分かる。

今日現在のロゴの評価ランキングトップ10はこんな感じであった。

Current Top 10

1. Stussy (7.3)
2. Apple (6.2)
3. World Wildlife F... (6.2)
4. Sun Microsystems (6.2)
5. Major League Bas... (6.1)
6. Coca-Cola (6.1)
7. 20th Century Fox (6.1)
8. Disney Entertain... (6.1)
9. Playboy (6.1)
10. Puma (6.1)

・ロゴの杜
http://logomori.hp.infoseek.co.jp/

こちらは日本企業のロゴが、イラストレータなどのグラフィックツールで読み込めるEPS形式やAI形式で多数公開されている。

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2004年04月26日

フリーのセキュリティツール

親戚の家を訪問したところ、いつものように「ちょっとまた教えてよ」と叔父さんから相談を受ける。パソコン先生に大変身して、今日の問題は何ですか?と尋ねると、妙な広告ソフトが表示されるという問題だという。いわゆるアドウェア、スパイウェアである。これがインストールされてしまうと、ブラウザやオフィスのツールバーに、広告表示が追加されてしまったり、ネットサーフィン中に突然ポップアップ広告が表示される。ウィルスのように破壊活動はしないが、ウィルスワクチンでは検出できないし、アンインストール法が不明でやっかい。

叔父さんは引退後に翻訳の仕事を始めていて、海外のサイトによくアクセスしていたり、支援ツールのフリーソフトをいくつかインストールしているが、それらに混入しているのが原因みたいである。

早速、Adawareをダウンロード。このソフトはアドウェア、スパイウェアを検出し、無効化できる。スキャンすると、やはり200以上の該当ファイルが見つかった。即効で削除。

Adaware
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このソフトはフリーなので、便利だ。他にもフリーのセキュリティツールは、いくつかあるので、今日はそのメモ。

AVG
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フリーのウィルスワクチンソフト。フリーのものはいくつかあるが、試してみたところ、検出率と動作の軽さを総合判断するとこれがベストのように思える。

Proximitron
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フリーのプロクシサーバでファイアウォールとして使える。その他応用で、ちょっとした情報フィルタリングツールとして活用できる。

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2004年04月25日

メモが上手になる技術

・メモが上手になる技術
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メモのノウハウ本。著者は成功したコンサルタントで経営者。140冊以上の著書を持つ。1929年生まれということは70歳を超えている。内容は箇条書き的メモから組み立てられた形式で平易な文章で書かれている。分かりやすい。だが、ひとつひとつのノウハウは、数十年間の実践から得て語られているわけで、当たり前の記述にも深さを感じながら読んだ。

・著者の略歴
http://members.jcom.home.ne.jp/yahagi1/Ryakureki.htm著者のプロフィールなど。

私、結構なメモ魔だと思う。毎日、リーガルパッドに4色ボールペンで、こんな風に何枚かメモを取る。A4サイズで大きいので、電車で広げていると、隣から覗き込まれたりもするのだが、気にしているとできなくなるので、構わず書き続ける。このブログが続いているのも、このメモのおかげである。


・私のメモ 機密事項を達筆文字暗号で保護しています。(嘘です)
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クリックで拡大

日常的にメモを多用するにも関わらず、これといって、メモの書式は決めていない。知らないノウハウが何かあるのではないかと期待して、この本を読んだ。いくつか発見できた。

著者は、メモは、忘却、間違い、浅い考えの3つの損を防ぎ、新しい創造のために取るものと考えている。文字、図、グラフなどを多用して立体的にメモを取れ、講演セミナー、読書、インタビューなどシーン別ではこうやるといい、留意すべきポイントはこれだといった感じで、メモ術とその心構えが解説される。

個人的には、7W2Hでメモを取れだとか、どの部分のメモを取れ、といったWhatの部分は勉強にはなったが、そこは人それぞれ違うと思う。むしろ、面白かったのは、ツール的な部分が具体的で非常に参考になった。

著者は、速くメモを取る方法としてオリジナルの速記術を推奨している。速記術には「早稲田式」「中根式」「衆議院式」「参議院式」などのさまざまな方式があるそうだが、どれも習得が大変である。書いたものを速記技術のない他者が読むことが難しい。そこで、著者は、カタカナを崩した略記をつくり、少しの練習で憶えられ、同時に他人も読むことができる矢矧式速記を考案した。PalmのGrafiti入力方式に似ている。試してみる価値がありそうだ。

この本に少しだけ触れられていたミウラ折メモ用紙も興味深い。ネットで調べてみた。この折り方は宇宙で利用する太陽電池パネルなどに採用された特殊な紙のたたみ方で、これを使えば一枚の紙が無駄なく便利に使えるメモ用紙に早がわりする。いつものメモ用紙がないときに、これは活用できそうなノウハウだ。

・宇宙工学に貢献している!ミウラ折とは
http://www.orupa.co.jp/miura/miura.htm

・驚異のコンプレッション・テクノロジー「ミウラ折り」の路線図!
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/todays_goods/12118.html

著者は70歳であるにも関わらず、インターネットやパソコンにも詳しいようで、ページ数は少ないものの、オンラインソフトの一覧表など濃い話もある。実際にやってみせた達人の話を聞くのは面白い。軽めの本で、一本のセミナーを聞いた読後感のする本である。1時間半で読めた。メモについてアイデアが欲しい人におすすめ。

ところで、メモというのは非常に私的な世界でとどまっていて、ノウハウが広く公開されることは少ないと思う。身近な人のメモも、のぞきこむと悪い気がするから、何を書いているのかは知らないことが多いだろう。実は昨日、ある会合で百式管理人の田口さんのメモを見る機会があった。彼は、メモでToDoリストを管理しているのだが、とてもノウハウに満ちたやり方だったので、そこにいた一同、驚いた。多忙な中、2冊同時出版と毎日複数サイトの更新ができる、彼の生産性の高さの秘密はこれか、と思った。彼の許可と機会があればまたここでも紹介したいなあと思う。

関連情報:

・社団法人 日本速記協会
http://www.h2.dion.ne.jp/~sokki/

・電子速記研究会
http://hayatokun.cloverclub.com/index.html

・National Court Reporters Association
http://www.ncraonline.org/

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2004年04月24日

人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室

人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
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回想記やエッセイを書きたい人に向けた指南書とあるが、ビジネス文書以外のほとんどの文章に役立つと思う。著者のビル・ローバックは大学の創作学科教授で、自身も短編小説でO・ヘンリー賞、フラナリー・オコーナー賞を受賞した作家。指導法と実践の実績がある。

この本自体が著者の文章セミナーの回想と、エッセイ風である。生徒の文章が多数引用され、巻末にも著者のお手本も掲載されている。以前、書評した芥川賞作家の「書きあぐねている人のための小説入門」が概念的だったのと比べると、より実践的な内容となっている。

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

いきなり面白かったのが「一般的な言い訳」の話。指導者として長年生徒を観察してきた著者の経験からできたノウハウ。自分の文章をクラスで発表する際に、多くの書き手が「時間がなかった」「疲れていた」「慣れていない」などの言い訳から始めるのだという。そういう言い訳は毎回なのだから、カードに「一般的な言い訳」と書いて、それを最初に一瞬掲げるだけでよろしい、というアドバイス。こうした言い訳は私もここで年中やってしまう。ブログのトップに「一般的な言い訳」と表示しようかとさえ思うくらいだ。

そうした言い訳は読者に関係ないし、条件が良かったら名文を書けたのかと自問しても、意味のある答えはない。書いたからといって読者の評価が下がることはあっても上がることがないので、確かにこれは省いてしまった方がよいのだろう。

各章では、「地図を作る」「画面外の声を取り締まる」「曜日を特定する」「原稿を半分に削る」など、文章修行の上で、効果的な方法と、課題が与えられる。この本は答えは与えてくれないことが多い。自分なりの答えをみつけるための練習方法を教えてくれる。練習をこなしながら読み進めるのが、重要だと感じた。

文体、スタイルについてのアドバイスは思わず唸ってしまう。少し長く引用。


新しい作家が自分の「スタイル」の正当性を主張すると、教師がにやりとする(あるいはうんざりする)のは、ほんとうのスタイルは小手先の工夫ではないからです。ほんとうのスタイル---声---は、作家の特性の延長としておのずと出てくるものなのです。それが意識的に、目的をもって出されると、スタイルはいかにも見えすいた、見せかけのものになります。

紙面にその人となりがあらわれる声の不思議とは、何よりも長い年月書きつづけてきたことの結実であり、自分の媒体に---このばあいは声に---精通するようになった結果、それが表現の障害にならなくなったということなのです。

声はまたやむにやまれぬ気持ちから発するものなのです。情熱からくるものです。自分の主題とそれを読者につたえることに心をくだく、作家のこだわりがはっきりしていることからくるものなのです。

その通りだなと思った。

物書きの仕事をしていると、年に何度かうまく書けて、編集者から「今回の記事は橋本節、全開で良かったですよ」と褒めていただけることがある。私にはその橋本節がなんなのかは分からないのだけれど、そういうときは大抵、寝食を忘れるほど関心のあったテーマの時である。文章技術のことなど考えもせずに、あっという間に書いてしまった文章にこそ、節があるようだ。節=スタイルを、毎回、自然にだせるようなら、ライターとして成功できるのだろうなと思う。早くそうなりたい。

ライターの仕事も長くなってきたが、幾つか教えてもらったり、自分で発見したノウハウがあるので最後に二つ、紹介。

・一行にする

文章が長くてダラダラしてきたときには自分に問いかける。「で、結局、一言でいうとどういうこと?」。言いたい事を一行にまとめる。その一行を残して、他をすべて捨てる。これは間違いなく効果があるように思う。しばしば、捨てるのが惜しいという気持ちが、邪魔をするので、そんな時には、捨てる文章を別のファイルに保存して供養する。この本の「原稿を半分に削る」に近い。

・短く切る

テンポが悪いときには、センテンスを短く切ると躍動感が生まれると思う。言葉を切る。ばっさり斬る。スキップ感覚、言葉のリズム。話す言葉が踊りだす。音の流れとしてスムーズな文章というのは、大抵は読みやすい。書き出しやキメの部分で使うと、形になりやすいのではないか?。


皆さんの文章ノウハウ教えてください。

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2004年04月23日

大人の知恵の輪 キャストパズルシリーズ

最近はまっているものに知恵の輪がある。知恵の輪というとコドモの遊びを連想されると思うが、これは大人向けの難易度の異常に高い逸品。ハナヤマという会社が販売している。この会社は人気ボードゲーム「カタン」の日本の発売元でもあり、この会社が見つけるものに注目している。

・株式会社ハナヤマ
http://www.hanayamatoys.co.jp/castpuzzle/index.html

キャストパズルシリーズは6段階の難易度が設定されている。難易度6は本当に難しいので、難易度4あたりからはじめるのがストレスがなくてよさそう。

私が持っているのは次の3つ。子供向けのおもちゃを買いにトイザラスに行くたびについついレジへ持っていってしまう。

・CAST BAROQ(キャストバロック) 難易度4
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バッハの楽曲「大フーガ」をモチーフに、絡み合うメロディのイメージがモチーフであるとのこと。30分くらい、いじりまわして、なんとか解けた。


・CAST ELK(キャストエルク) 難易度6
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ヘラジカの角をモチーフにした知恵の輪。子供の頃に遊んだ知恵の輪に近いのだが...。妻が長時間の格闘の末、はずすことができたのだが、今度は元に戻せない。

・CAST NEWS(キャストニューズ) 難易度6
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これは未だ解けていない。東西南北の方位が裏表両面に刻印されている。可動部分がないという特殊なパズル。かたむけるとカチカチと音がする。この音に秘密があるようだ。内部構造を想像して、操作を行う必要があるらしいけれど、解明するにはまだ相当の時間が必要なようだ。


キャストシリーズは一個あたり税込み1029円と、通常の知恵の輪と比べると高価なのだけれど、遊べる時間や解けた時の満足感は限りなく高い。机上のオブジェとしてのデザイン性や、真鍮や銅の金属の手触り、重厚感も魅力。

なお、知恵の輪とキャストパズルについては本も出版されているらしい。

知恵の輪読本―その名作・分類・歴史から解き方、集め方、作り方まで
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第1章 知恵の輪とは何か、どこがおもしろいか
第2章 代表的な知恵の輪・名作ベストテン
第3章 知恵の輪には、どんなものがあるか
第4章 構造から分類した4種類の知恵の輪
第5章 知恵の輪にはどんな歴史があったか
第6章 知恵の輪の解き方心得
第7章 知恵の輪の買い方・集め方・整理法
第8章 どうしても作りたい方の(簡単)知恵の輪製作法

第8章は「どうしても作りたい方の...」に驚く。そうか、自作の道というのもあるわけか。

・「日本知恵の輪協会」
http://www2.ocn.ne.jp/~chienowa/
知恵の輪名人。講演。テレビ出演。知恵の輪の奥深き世界をのぞける。

・さだきちの袂屑(たもとくず)
http://homepage2.nifty.com/shikake-ya/self/works/worktop.html
キャストパズルのデザイナーの個人サイト。

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2004年04月22日

帰ってきたアクセス向上委員会議 満員御礼に感謝報告第3弾

報告第3弾です。

今回、私は「先端技術に見るアクセス向上テクノロジーベスト」というプレゼンファイルを用意していました。パネルディスカッションのネタフリや、会議の配布用紙回収時間に、ざっとプレゼンしました。場の活性剤として考えていたので、半分冗談のものも混ざっています。説明は敢えてつけませんので参加されなかった方はご想像で補ってください。

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これで一応報告を終わるのですが、今回の会議のアイデアを発想させてくれた一冊の本があります。特に会議部のディスカッション内容はこの本にヒントを得ました。

思いつきをビジネスに変える「ノート術」―発想力を鍛えるアイデアマラソン
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これは以前、紹介させていただいた「企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法」著者でアイデアマラソンの創始者の樋口 健夫氏の近刊です。各章でさまざまな発想ノウハウが語られ、最後に問題が提示されます。シーンの説明と共に「新種の孫の手を考えてください」や「忘れ物を防ぐ方法を考えてください」といった具合に。とにかく、生活のあらゆるものを、自分の目的に応じたアイデアへ変換するパターンが大量に解説されています。

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

この会議では、

事前投稿「10年後のトップサイトのコンセプト」 130件
個人発想 アクセスアップのためのアイテム 130件
個人発想 アクセスアップのための3文字略語コンセプト 130件
グループ発想 20件

で合計400件以上のアイデアを参加者全員で創出しました。ある意味130人でアイデアマラソンを体験したことになるのではないかと思っています。

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ゲストの方々のお話を聴いていて、共通することは、皆さん、あらゆることを自分のサイトの改善やアクセス向上に結び付けて、発想するのが得意ということでした。結局、究極のアクセス向上技術とは、SEOやデザインやシステム開発力ではなく、アイデア、企画力、そしてその持続的な実行力なのだと、イベントを終えて思いました。

無敵会議シリーズは今年一杯は毎月開催予定です。毎回、アイデアマラソンが続きます。この本は、そのサブテキストとしておすすめさせていただきます。

それでは会議報告終了です。ありがとうございました。来月もよろしくお願いします。

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2004年04月21日

帰ってきたアクセス向上委員会議 満員御礼に感謝報告第2弾

さて、会議の部では、こんなインタラクションを行いました。

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事前申し込み時にWebからに投稿された「10年後のトップサイトのコンセプト」をまずレビューしました。

主宰の独断と偏見で面白かったものをピックアップして以下のパワーポイントにまとめてあります。

Download file

こうして頭がほぐれたところで会議開始です。

◆会議1 個人発想

全員に以下の紙が配布されました。ひとりひとり赤丸がついているアイテムが違います。
----------------------------------------------------------------

指示内容:指定されたアイテム(下記参照)を使ってホームページのアクセスをアップさせるための方策(技)をクリエイティブに考えてください。

アクセスアップのためのアイテム(赤丸がついているものがあなたのアイテム)
30秒 / 3回 / 3年前のメール / SF短編集 / UCLA出身 / あったかいの / あなたの名刺 / アルファベット / いい女 / いきなり最終回 / いっしょにいた人 / いつも心に「オムライス」 / イライラするぐらい下手 / うそつき / えびぞり / おもしろい髪型 / こめかみ / さかな屋 / さだまさし / さりげない奇跡 / サングリア / サンバのリズム / サンマ / シマ模様 / じゃんけん / スイッチ / スイッチ / ずいぶんコミカル / すし職人 / スタンフォード大学 / ストップウォッチ / スパムメール / タクシーの運転手 / つまようじ / ティッシュをおいてないラーメン屋 / デジタルハリウッド(ココ) / テレビ会議 / テロリスト / トイレ / パソコンのキーボード / パロディ / ひきこもり / ピラミッドパワー / ぶーぶークッション / プール / ふとん / ブラジャー / フロッピーディスク / ミラクル / もう一泊 / モッズコート / やたら無邪気 / よく分からない巨大なもの / ラップ / リムジンと理不尽 / ロールプレイングゲーム / 挨拶 / 悪い癖 / 握手 / 意外な展開 / 椅子 / 一個師団の軍隊 / 一世風靡 / 印鑑 / 引き出しの奥 / 隠れキャラ / 駅のホーム / 家紋 / 歌舞伎町 / 火星 / 会員登録 / 怪しい光線 / 韓国ドラマ / 期限切れ / 逆おれおれ / 逆回転 / 宮本武蔵きどり / 泣き言(愚痴) / 究極の選択 / 牛丼 / 巨大スピーカー / 巨大なロボット / 怯えあうふたり / 橋本大也と百式管理人 / 経済効果 / 結婚式 / 結婚式の二次会 / 言い訳 / 語録 / 交番 / 好みのカクテル / 合いの手 / 豪華客船 / 左右反転 / 左手 / 再生産 / 再放送 / 昨日の新聞 / 司会のアナウンサー / 子供の夢を壊す / 思い出の断片 / 紙くず同然の株券 / 自分の背中 / 失恋 / 社員研修旅行 / 車のタイヤ / 借りた3億円(1年後に返す) / 呪い / 十字架 / 初対面 / 女の子、大爆笑 / 女の涙 / 植草教授の手鏡 / 真昼の衝撃「かつカレー」 / 親子水入らず / 人気のないサイト / 刃物の持ち込みは禁止 / 世界の中心 / 制服の胸のボタン / 絶滅した部族 / 替え歌 / 大きなボタン / 大人の事情 / 滝修行 / 誰もいないはずのオフィス / 地球最後の日 / 朝5時 / 爪 / 鶴の恩返し / 締め切り / 投げやりな地図 / 謎のインド人 / 入社試験 / 入浴剤 / 脳波 / 派手なカップル / 半魚人 / 非公開 / 貧乏 / 変換した履歴 / 暴れん坊チャーハン / 夢オチ / 無駄遣いの総額 / 友達100人 / 立ち入り禁止 / 隣に座っている人 / 牢屋 / 話があわない上司 / 拉致監禁 / 猥談(Hな話)


130人分のアクセス向上技が開発されました。実はこれをすべてデジタル化して紹介しようと予定していたのですが...していたのですが...。達筆な方が多く極めて難しいので、幾つか面白かったものをご紹介します。

・呪い
1万回転送されると関係者全員に功徳が

・非公開
全国の会社のグループウェアのスケジューラにある非公開の中身を自動的に集めてキーワードランキングなど。みんな何を非公開にするのか興味あると思うので。

・再放送
スポーツ選手の試合が終わった後に実際に試合をした人の視点から見える映像を再放送する。

・地球最後の日
これを地球最後の日まで続けたらどうなるか数字を出す

・巨大ロボット
1クリックあたり1ミリずつ歩く巨大ロボットを作りみんなでクリックしまくり動かして楽しむ。

・ブラジャー
ブラジャー→薄いTシャツ→透ける→サイト名浮き出す→男が注視→アクセス

・ピラミッドパワー
#絵が面白いです。
ピラミッドパワーサイトをつくり、画面内のピラミッドの内部に他のサイトのスクリーンを表示して紹介する。紹介されたサイトはちょっとはアクセスがあがるかもしれない。

・植草教授の手鏡
この場所はヤバイぞランキング。ここなら大丈夫ランキング。みわけかたランキング。ヤバイ場所アラート。ミラーマンFlashコンテストとアニメ化。あの人も?。

・タクシーの運転手
タクシー運転手は客の話題から判断して最適なWebページをお薦めする。無事客がそのサイトを気に入ると成約。サイトから運転手にアフィリエイト収入。

・いつも心にオムライス
オムライスを食べるときにケチャップをチューとやると必ずURLがかかれるケチャップを開発する。または全国のオムライス屋さんと定型詩オムライスにケチャップでURLを書いてもらう。URLは1目で覚えられるもの。通称ちゃっぷURL。→***.chp

・スパムメール
SPAM懸賞サイト。全スパム業者がメール中にユニークなIDを入れておきゴージャスな賞品が当たる懸賞サイト。スパムをもらう方も送る方も幸せになれます。

・借りた3億円
3億円をみんなで株で投資に。投資銘柄はサイトへの参加者を投票で行う。1年後にポートフォリオを売却し売却金を参加者で山分けする。ただし利益の20%はサイトの収入になる。つまり1年後に5倍の15億円以上に株が値上がりしていればサイトは黒字。

----------------------------------------------------------------
◆会議2 個人発想

グループでそれぞれのアイデアを持ち寄ると、不思議なことに2004年に大ヒットするであろうアクセスアップのためのコンセプトが浮かんできました。SEO、DBM、CRM、MLM、SEMに続くそのコンセプトを三文字略語で表し、コンセプト図で説明してください。

□□□

説明:□□□は(       )

の略で、概念としては次の図のようになる。


ここでは、アクセス向上の技に対して3文字略語をつけてコンセプトを明確にしてもらいました。これも130件ありました。実用的なものから、ぶっとんだ発想まで。

----------------------------------------------------------------
◆会議3 グループ発想

グループ発想では会議2の内容をグループレベルで行います。

最終的には以下のような新しい発想が生まれました。

SEX Somebody Encounter X-men Webでどこかにいる指名手配された人を見つける
CFM Click For Myself クリックすること自体が気持ちいい。リズムでクリック。
RMM Roujin to Mago Marketing 子供から老人へ
TTT タイガース!タイガース!タイガース 弱者でも継続で勝利
NUG Nugu(脱ぐ) クリックで異性が脱ぐ
HWP ハートウォーミングプラン 全行動ログの共有とマイニング
NBM Neo Buzz Marketing ???
SEX サーチエンジン エモーショナル クロスフェード 検索エンジンの結果にクレームをつける)
KRM Kako wo Revival Marketing 初期Googleなど昔の版をだす?
STM Spare Time Management 1人の時間、みんなの時間、どっかとつながる?
NBO Now Blog Optimaization
RNM Realtime Neuron Marketing 脳とWebの接続
RRC リアルタイムソリューションコンテンツ
EOM Edge on Mass
UFO Ultra Focus Optimize サイトをコミュニケーションしながら少しずつみせるLAO Love Affair Optimaization

OOM オレオレサギマーケティング(橋本)
HKM 人質解放マーケティング(百式管理人)

優秀作にはニフティのココログ提供のトラックバック野郎Tシャツが贈呈されました。

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2004年04月20日

帰ってきたアクセス向上委員会議 満員御礼に感謝報告第1弾

130人以上もの方々にご参加いただきまして、ありがとうございました。

なんといきなり、デジハリ杉山校長にご挨拶いただいてしまいました。Webとマルチメディアの最先端の学校で、前の日曜日に民間初の大学院を設立されたばかりのホットな学長のご挨拶。おまけに、日記にも書いていただきました。
DSCF1506.JPG
http://www.dhw.co.jp/school/diary/top.html

「東京校セミナールームでは、なんと「帰ってきたアクセス向上委員会」というイベントが開催されていて、名だたるWEBマスターを中心に150人近くのプロたちが集まって、真剣に勉強会をしていた。素晴らしいことである。」

ハイ、素晴らしいことでした。

さて、報告ですが、

後で昼間にこのエントリに書きます(笑)

報告を書かれた方ぜひトラックバックをお願いします。


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で、追記しようと思いましたが...。トラックバックに大量の素晴らしいレポートが集まりましたのでご紹介させていただき報告に代えさせていただきます。

え?参加者のブロッガーが書いてくださるのを良いことに最近レポートをサボっていないかって?。いえいえ、これもアクセス・シェアリング・マネジメント(ASM)という高等な技術なんですよ!。

謎の表彰です。

【恐らく最速にして最適で賞】

・帰ってきたアクセス向上委員会 (たつをのChangelog)
http://nais.to/~yto/clog/2004-04-20.html#2004-04-20-1

【とりまとめが網羅的で賞】
・帰ってきたアクセス向上委員会参加者リスト
http://cgi.f28.aaacafe.ne.jp/~toku/pukiwiki/pukiwiki.php?%5B%5B%B5%A2%A4%C3%A4%C6%A4%AD%A4%BF%A5%A2%A5%AF%A5%BB%A5%B9%B8%FE%BE%E5%B0%D1%B0%F7%B2%F1%BB%B2%B2%C3%BC%D4%A5%EA%A5%B9%A5%C8%5D%5D

【ドキュメンタリっぽくて生々しいで賞】
帰ってきたアクセス向上委員会!生ログ1。ひたすらメモってきました
http://www.salesaid.jp/mt/archives/000331.html

【感動ドラマがありましたで賞】

・無敵会議「帰ってきたアクセス向上委員会」レポート その1
http://www.enatural.org/archives/001101.html

【番外:相変わらずツイてるで賞】

・無敵会議(帰ってきた)アクセス向上委員会に行って来ました。
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000226.html


なお今回の豪華ゲストは、以下の通りでした。貴重な体験と知恵に満ちたお話ありがとうございました。

・伊藤将雄さん
http://www.nikki.ne.jp/
就職活動の巨大掲示板、「みんなの就職日記」を運営。コミュニティを活性化
する秘訣、コミュニティをビジネスにする秘訣を聞き出した。

・たなかよしかずさん
http://gree.jp/
一ヶ月で一万人を集めた驚異的なソーシャルネットワーキングサイトを一人で構築、運営、管理。なんでそんなことができるの?を聞き出した。

・宮川達彦さん
http://blog.bulknews.net/mt/
いわずと知ればBulknews/Bulkfeedsの運営者。天才ハッカー。Livedoor執行役
員。技術面、アイデア面から人気サイト作成のコツを聞き出した。

・AllAboutほかプロデューサ 粟飯原理沙さん
http://www.adnec.com/blog/archives/aihara.html

・@コスメ 吉松徹郎さん
http://www.istyle.co.jp/

・株式会社エンジン タノミコム プロデューサー 内田研一
http://www.tanomi.com/

・カフェグロープ 矢野さん
http://www.cafeglobe.co.jp/

・ニフティ ココログ 伊藤さん
http://cocolog.nifty.com/

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2004年04月19日

再掲:成功するインターネットソフトウェアエージェント論

昨日に続いてアクセス向上委員会の話で恐縮ですが、私がこのコミュニティで書いた最も長い文章がこの「成功するインターネットソフトウェアエージェント論 〜 分類と分析、戦略と未来〜」でした。1999年4月の時点の様々なWebサービス、ソフトウェアを、擬人化したエージェントとして分類して、ネットワークの将来を考えた内容でした。

学校の授業をさぼっていた私にとっては、これが卒業論文みたいなものだったのかもしれないと思いました(笑)。これもまた拙い文章で気恥ずかしい限りですが、この文章については、内容の水準はともかくとして、Webサービスを擬人化して分類するという着眼点だけは悪くなかったと自己評価しています。これから5年、ビジネスや技術についてたくさんの先輩、先生方に教えていただき、少しですが私も成長しています。このスタイルで、近い将来、もう一度、最新情報をまとめてみたいものだと思っています。

全文はここからダウンロードしてください。

Download file

このブログには目次のみ表示します。なお、多くのURLは5年前のものですから大半はNotFoundです。

概要:
【タイトル】

● 成功するインターネットソフトウェアエージェント論
〜 分類と分析、戦略と未来〜

作者(Copyright): 橋本大也(アクセス向上委員会)
日時 : 1999年4月2日
バージョン : 1.0
オリジナル URL : http://www.access.or.jp/agent/index.html
連絡先 : hasimoto@sf.airnet.ne.jp
ICQ Number : 5907526

【このドキュメントの目的】

このメールはアクセス向上委員会メーリングリストへの投稿です。

ではなくて、

インターネット上にはさまざまなサービスを実現するエージェントが存在しています。そもそもWebブラウザやメールソフトがエージェントですし、コンピュータ自体がエージェントです。情報技術において、エージェントと言うのは非常にありふれたものなわけですね。これを今分析してみたいのは、インターネット上に単純なアクセスカウンタや掲示板CGI以上のインテリジェンスを持ったプログラムが増え始め、人気のエージェントが出現してきている現状、Webサイトやサービスの成功を考えるにあたって欠かせない重要な要素に成り始めたと考えるからです。

そもそも私は成功するWebサイトコンテンツもまたエージェント的要素をはっきりさせると良いものだろうと常々考えてきました。何のサイトか分からないサイトは失敗し、ユーザにとって何をしてくれるサイトか、をはっきりさせることが重要であると思うのです。

ユーザに知識を与えてくれるサイト、楽しませてくれるサイト、議論の場を提供してくれるサイト、計算してくれるサイト。単純にテキストや画像オンリーのサイトであっても、エージェント要素はあるし、その要素を明確に打ち出すことこそ成功の秘訣でもあると考えました。

このエージェント要素を高度化し、何らかのインテリジェントな振る舞いを持たせたものが以下で分類、分析、議論したいインテリジェント・ソフトウェア・エージェントです。既存のエージェントを分析することによって、今後どんなエージェントを作ったら成功するか、またはエージェントの活動によってインターネット利用がどのように変化していくかを考えるのは、Webサイト成功戦略を考える上で有益な議論になるのではないかと思います。

以上の目的を持ちまして以下の文章をすすめたいと思います。大変長文になりますが、みなさんのお考えを聞かせてください。

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【このドキュメントの構成】

長文である為目次を作成します。

・【タイトル】
|
・【このドキュメントの目的】
|
・【このドキュメントの構成】
|
・【インターネットエージェントの分類】
|
+■Trail Finder 成功した先人の検索経路をたどる
+■Expert Finder 欲しい情報を持っている専門家を探す
+■Friendship Manager オンライン友人関係を築き、そして維持する
+■Nodes Activator 情報ネットワークの接点を強化する
+■Collaborative Rating Server 協調型レイティングサービス
+■Relatives Finder 類似した情報をみつける
+■Auction Applicant&Auctioneer オークションの代理人となる
+■Push Information Agent 情報をユーザの手元まで届ける
+■Anonymous Proxy 匿名での情報交換を可能にする
+■Political Organizer 賛同者を集めてパワーを作り出す
+■Associated Link Maker 関連性を発見しハイパーリンクを結ぶ
+■Multiple Searcher 複数の検索システムへ問い合わせ、結果をまとめる
+■Knowledge Engine データを知恵に変換する
+■Geographical Information Mapper 雑多な情報を地図上に配置する
+■Real-time Monitor&Alert リアルタイムに状況を監視しユーザの注意を喚起する
+■Trail Finder 成功した先人の検索経路をたどる
+■Expert Finder 欲しい情報を持っている専門家を探す
+■Friendship Manager オンライン友人関係を築き、そして維持する
+■Nodes Activator 情報ネットワークの接点を強化する
+■Collaborative Rating Server 協調型レイティングサービス
+■Relatives Finder 類似した情報をみつける
+■Auction Applicant&Auctioneer オークションの代理人となる
+■Push Information Agent 情報をユーザの手元まで届ける
+■Anonymous Proxy 匿名での情報交換を可能にする
+■Political Organizer 賛同者を集めてパワーを作り出す
+■Associated Link Maker 関連性を発見しハイパーリンクを結ぶ
+■Multiple Searcher 複数の検索システムへ問い合わせ、結果をまとめる
+■Knowledge Engine データを知恵に変換する
+■Geographical Information Mapper 雑多な情報を地図上に配置する
+■Real-time Monitor&Alert リアルタイムに状況を監視しユーザの注意を喚起する
+■Language Translator 異なる言語を翻訳する
+■Conflicts Mediator 衝突を解決、回避する仲裁者
+■Document&Software Compiler 文書やソフトウェアを自動生成する
+■Instant Contact Manager リアルタイムコミュニケーションを支援する
+■Download Manager ダウンロードを管理する
+■Context Abstractor ユーザの置かれたコンテクストを抽出する
+■Virus&vaccine ウィルスとワクチン
+■Search Engine Submitter サーチエンジン一括登録
+■Brain Storm ブレインストーミングを支援する
+■Mail Magazine Publisher メールマガジン発行代行システム
+■Advertising Controller オンライン広告配信の管理とマーケティング情報抽出
+■Remote Sensor&Worker 遠隔操作で五感情報を取得する
+■MUD ChatterBot バーチャルコミュニティ内のノンプレイヤーキャラクタ
+■Proof reader&code Validator 文章の校正チェック、コードの正当性チェック
+■Accessibility Helper アクセッシビリティ支援エージェント
+■Price Agent 価格比較エージェント
+■WebSpider&UpdateChecker Webリソースのモニターエージェント
+■Super Agent Decision Maker 自律的意思決定を行う
|
・【インターネットエージェント周辺のテクノロジー】
|
+■Web Spiderに見る代表的なインターネットエージェント
+■分散処理するエージェント
+■WebサーバにプラグインするServlet型モバイルエージェント
+■エージェント言語、開発環境、フレームワーク
|
・【成功するインターネットエージェントとWebコンテンツに関する考察】
|
+■インターネットで愛されるGUIキャラクタエージェントを考える
+■ブラックボックスよりも半透明なボックスがしばらくは有効か
+■エージェント時代に純粋なコンテンツ指向のWebサイトの取るべき戦略
|
・【そしてどうなっていくのだろうか。勝手な未来予測】
+■インターネットは記憶の遺伝子を継承するミーム型エージェントのプールとなる
+■ゲーム理論からドラマ理論へ進化、高度化する戦略アルゴリズムへスポットライト
+■感情を持ち始めるエージェントと人間の生命観、社会経済システムへの影響
|
・【参考文献】
|
・【最後に:もしも全部読んでくださったら大感謝!】

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2004年04月18日

再掲:アクセス向上委員会通信1997-1999ログ

さて、20日開催の帰ってきたアクセス向上委員会議ですが、ご参加いただくみなさんは何が「帰ってきた」のか、ご存知でない方の方が多そうです。当日に説明するのも手間ですので、ここで一応補足させていただきます。

アクセス向上委員会は1996年〜2000年にかけて、学生だった私が主宰していたウェブマスタのコミュニティです。現在は活動していません。ホームページのアクセスをいかに増やすかをテーマに、1000人以上のウェブマスタが、メーリングリストで討論していました。

私は討論のネタを提供するために、定期的に「Clips」と題して、インターネットの最新動向やマーケティングTipsを毎日のように、そこに投稿していました。そのTipsは1997年からまぐまぐ(正確にはその前身のX-mail)を使って登録者に「アクセス向上委員会通信」として流し始めたところ、3万人の読者が集まりました。まだメールマガジンが日本に100誌もない時代でした。

その後、この活動は本になったり、新聞や、テレビ、ラジオなどで紹介されました。できたばかりのYAHOO!JAPANでもメガネマークで推奨サイトに選ばれました。学生が主宰していたにも関わらず、企業のウェブマスターにも多くご参加頂いて、活発でした。さまざまなドラマがありました。私はこのコミュニティを通じて、ネットビジネスの世界へ飛び込みました。

当時、私の活動を応援してくださった方々の名前を挙げたら、きりがありません。いつかそうした方々や、ネットのコミュニティに、自分も一人前になって、ご恩返しをしたいと思って、インターネットの活動や仕事をしてきました。まだまだ力が及ばずなのですが、アクセス向上委員会は、本当に私の人生にとって、大切なコミュニティでした。

が、2000年ごろ、ネットバブルも華やかな頃に、個人的にビジネスを開始してしまったことや、議論のネタが尽きたこと、同種の専門的コミュニティがいくつもできて役割を終えたと思ったことなどが理由で、勝手ながら、コミュニティとメールマガジンは自然消滅する形で休止させていただきました。

イントラネットを整理していたら、1997年〜1999年にかけてのアクセス向上委員会通信の一部がみつかりました。ビジネスやマーケティングをまるで知らない学生時代の私が背伸びをして書いた文章なので、面映いのですが、「帰ってきた」と題するイベントを主宰するに当たり、アーカイブを公開しておこうと思います。間違った知識と拙い文章力のオンパレードですが、当時としての私の最先端のつもりの情報でした。

Download file

アクセス向上委員会は正式には終了のアナウンスをできておりません。休止も私の身勝手での告知無しのことでしたので参加されていた方々には申し訳なく思っています。余裕が出来たら再開したいと、実は今でも思っていますが、経営者として未熟なせいか、実世界の余裕はなかなかできません。また、時代の移り変わりにより、単純な「アクセス向上」も、テーマとしては再考の余地ありです。

いつか、またネットの変革に関われるようなコミュニティ活動として再開できたらいいなあと思っています。20日のイベントは一瞬だけ、再開気分を味わさせていただきたいと思います。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (2)

2004年04月17日

情報モニタリング環境のツール

昨日の続き。特定の情報を長期間調べたいときには、情報モニタリング環境を構築すると便利である。私が普段使っているツールを覚書的に紹介。

・【書籍新刊】ブックスケジューラー
booksch01.jpg

デスクトップに新刊データをネットワークからダウンロードして、検索が可能なフリーウェア。キーワードにマッチした新刊があると、Outlookスケジューラーに登録したり、携帯にメールさせることができる。常時電源をオンにしたWindowsPCがある場合は、常駐させておくことで、書籍情報の強力な監視が可能になる。


・【書籍新刊】めるくるブックナビ
http://www.gimix-web.com/bknavi/

こちらは、常駐不要なWebの無料サービス。キーワードを登録しておくと、その単語を含む新刊の発売をメールでお知らせしてくれる。


・【2ちゃんねる】Live2ch
live2ch_s.gif

2ちゃんねるビューアのひとつ。リアルタイムモニタリング機能が強い。監視したい2ちゃんねるのスレッドを指定しておくと、書き込みがあった時にポップアップ表示される。


・【商品価格】カカクコム
http://kakaku.com/

購入予定の電化製品やPCの価格に変動があると、メールで教えてくれる機能がある。


・【IT業界動向】インターネットウォッチ iモード版
imodewatch01.JPG

インプレスのInternetWatchのimode版には、登録したキーワードにマッチするニュースが掲載されるとメールでお知らせしてくれる機能があり、愛用している。


・【テレビ番組】OnTVJapan
http://www.ontvjapan.com/

Webでキーワード指定したテレビ番組の放映をメールで通知してくれる。


・【ディスカバリーチャネル】ディスカバリーチャンネル
http://japan.discovery.com/

ディスカバリーチャンネルのサイトの個別番組評にはリマインダーメール機能がある。

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2004年04月16日

Blogサイトのモニタリング環境にパラボラミニとBulkfeeds

無敵会議シリーズの参加者動向をまとめていただいているページがある。

・(帰ってきた)アクセス向上委員会参加者一覧
http://tokuhirom.tdiary.net/?date=20040415#p04

このイベントを今年は毎月開催予定なのだけれど、いつも手間がかかるのが開催後にレポートしてくださった方のBlogサイト一覧を作ること。BlognavibulkfeedsfeedbackMyblogなどのBlog検索サイトで会議名や「無敵会議」、「Passion For the future」「Project-on.com」「橋本大也」「百式管理人」などのキーワードで何度も検索して漏れなく探すのが一苦労。

そこで、幾つかツールを試して、落ち着いたのがこのふたつの組み合わせによるBlogサイトのモニタリング環境。他のRSSリーダーよりも画面占有面積が小さく、使用メモリも少ないので動作が軽い。これでBlogウォッチが楽になった。

・パラボラミニ
http://www.kumalab.com/soft/000001.html
paraboramini01.JPG

RSSリーダー。常駐型で指定した時間間隔で自動的にRSSを取得し、一覧を表示する。常に画面トップにティッカーとして表示させることもできる。

・Bulkfeeds
http://bulkfeeds.net/
・無敵会議の検索結果
http://bulkfeeds.net/app/search2?q=%E7%84%A1%E6%95%B5%E4%BC%9A%E8%AD%B0&sort=date

Blogサイトの検索エンジンであるが、検索結果のRSSを取得することができる。「無敵会議」での検索結果を表示させ、そのページのRSSボタンのデータをパラボラミニへ登録すると、30分おきに「無敵会議」で検索した最新情報が表示されることになる。

・RSS
http://bulkfeeds.net/app/search2.rdf?q=%E7%84%A1%E6%95%B5%E4%BC%9A%E8%AD%B0

この組み合わせは自分のBlogサイトについて言及されているBlogをリアルタイムに把握しておきたいときに便利。

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2004年04月15日

コンピュータはどれほど賢いのか―知の可能性を広げるコンピュータ数学への招待

・コンピュータはどれほど賢いのか―知の可能性を広げるコンピュータ数学への招待
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根本的に書名と内容が一致していないという、問題はあるのだが、日曜プログラマとしては楽しめた部分も多くあり、書評。

まず書名の「コンピュータはどれほど賢いのか」というテーマについてはほとんど書かれていないので期待してはいけない。「知の可能性を広げるコンピュータ数学」の「知」や「コンピュータ数学」はあるといえばあるのだが、その言葉の持つ深さには至っていない。この書名は変えるべきで「できるかな?JavaScript 数学アルゴリズム編」あたりが適当。

この本は、主にJavaScriptを使って、たくさんの数学理論を実装する。アルゴリズムは図表を使って丁寧に解説されるのでわかりやすい。知りたかった理論の幾つかが明確になった。

例えば円周率πを計算するプログラムを作る。円周率の求め方はそもそもご存知だろうか?私は知らなかった。文系人間なら9割以上知らないのではないか。幾つか発見されている計算方法が紹介された後、JavaScriptで、そのうちのひとつ「ライプニッツの公式」を実装している。

ライプニッツの公式では、

π/4 = 1/1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 .....

という計算方法で、計算を続ければ続けるほど値がπに正確に近づいていく。

この式は、


1 分子は1に固定されている
2 分母が2ずつ増えていく
3 足し算/引き算が交互に入れ替わる

であり、それをプログラムで書けば円周率計算プログラムができるというわけである。

この本を読みながら、最近、頭を使ったプログラミングをいかにやっていなかったことに気がつかされる。現代のプログラミングは、予め用意された関数やクラスを呼び出すやり方ばかりを学ぶことが中心である。開発環境の使い方のマスターといってもいいかもしれない。誰かが作ったものをゼロから作る=車輪の発明をしないということが、コンポーネント指向、オブジェクト指向、オープンソースという時代の潮流であるから、それを回避するのが賢いという風潮もあるような気がしている。

だけれども、車輪の発明も仕事でなければ考える楽しさがある。概念レベルのアルゴリズムをプログラムに翻訳するには、どうしたらいいか、自分で工夫を試す楽しさにこそ、プログラミング本来の面白さがあったはず。この本はそこを突いてくる。

8QUEEN問題や騎士巡回問題、素数の発見、カオス、フラクタルの計算など、実用性はともかく、アルゴリズム自体に面白さのあるサンプルが次々にでてくる。JavaScript自体の文法解説はほとんどないので、JavaScriptを既にある程度書ける人におすすめ。


ところで、最近、Lightweight languageという言葉がプログラマのコミュニティでは少し流行っている。Perl、PHP、Python、RubyなどWeb開発でもおなじみのスクリプト言語の総称。JavaScriptもこの範疇に入るだろう。複雑な文法を持つC言語やJava言語と違って、これらの言語は比較的とっつきやすい仕様で、初心者にもやさしい言語である。

Lightweight language magazine―ライトな言語でプログラミングを楽しもう!
lwm01.jpg

こんな本も出ていて楽しめた。

私は今、あるプログラミングコンテストの企画書を書いている。アルゴリズムを考える楽しさが参加者に共有されるようなルールを考える日々である。このコンテスト、実現できれば、夏頃には、表舞台にだせると思うので、ちょっとご期待ください。プログラミングの苦手な人でもアルゴリズムを考えることができれば参加できるようにしたい。

(えー。加藤さん、すいません。草稿の金曜提出、間に合ってません。え、言い訳をここに書くなよって?。)

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2004年04月14日

天才はなぜ生まれるのか

天才はなぜ生まれるのか
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■天才を生むもの

知的障害が天才の秘密であると言う、先日書評を書いた本と極めて似たテーマ。6人の著名な天才の人生について一章ずつ語られる。この6人には脳に何らかの異常が認められ、その結果、

トマス・エジソンは注意欠陥障害でいつもうわの空
アルバート・アインシュタインは読み書きと計算ができず
レオナルド・ダビンチも同様で
グラハム・ベルは他人の気持ちが理解できない
クリスチャン・アンデルセンは文法が理解できず、
ウォルト・ディズニーは多動症で落ち着きがない

という機能障害を抱えて生きていたという。だが、脳は、その欠陥をカバーするために他の能力が異常に発達した。注意が狭いことが逆に人並みはずれた集中力につながったという説。だから、天才たちを語る上で、「障害があったにも関わらず」という表現は正しくなくて、「障害があったからこそ」天才になったのだという仮説を著者は展開する。


障害というのは必ずしも能力が劣ることだけを意味するわけではない。機能が不全の箇所が生ずると、それを代償して機能の亢進も起こる。生涯を持ったゆえに、障害を持たない場合には、生じえなかった能力が開花することを、無視してはならないだろう。それは個性にほかならない。

弱さが強さの秘密という見方は勇気付けられる半面で、障害を持つ人のうち、天才になる人の数は圧倒的に少ない現実もあるだろう。多くは日常生活や社会参加が難しくて苦しんでいると思う。その事実が分かっただけでは、状況は変わらない。だが、仕組みがわかれば、いずれは障害を天才に変える魔法を、医学は作り出すかもしれないことに期待したい。

著者は、知的障害と天才の仮説を述べるだけでなく、同時に天才たちの本当の姿を、丁寧に資料にあたって調べ上げた。天才たちの伝記には事実を捻じ曲げた表記が多い。私たちが子どもの頃に聞かされた内容がいかに間違っているかがわかって、とても面白かった。

エジソンは研究の人ではなく、他人の成果の横取りも辞さない、かなり強引な戦術を使うビジネスマンであること。レオナルドダビンチは万能の天才と言われるが、実は読み書き計算もままならず、言葉にもなじめず村八分状態だったこと。ディズニーが多動症をごまかすために園内のゴミ拾いをしていたことが、清潔なディズニーランドにつながったことなど。なぜ彼らの伝記は、ねじまげられたのかの秘密。

読み終わって気になったのは、天才の彼らは幸せだったのだろうか?という疑問。真実の伝記を読む限りは総じて、他人に理解されず寂しい内面を抱えて生きていたように見える。

天才の遺伝子を発見することも重要だけれど、幸せを感じる遺伝子を発見することの方がもっと価値があることのような気がしてきた。幸福についての研究は大昔からあまり進んでいないと別の本で読んだ。肝心のことがわかっていないのだ。天才もお金持ちも、結局は幸福でなければ意味がない。

人類史上、誰が一番幸福だったのだろうか?

私たちはその疑問にはまだ答えられないが、恐らく能力や財産の量に正確に相関するわけではないように思える。少なくとも天才たちは孤独で悩み多い人生を送ったのだから。

人を幸福にする技術が次世代のテクノロジー進化の方向性になって欲しい、と思った。

そういう科学をなんと呼ぶだろう?○○の科学か。

そういえばあったなそういうの(笑)

オチがついたところでまた明日

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2004年04月13日

セミナーで出会った韓国ITベンチャー起業家たち

日韓学生アントレプレナーの会議が無事終わりました。

韓国と日本の精鋭学生起業家が集まって、お互いのビジネスを話し合う国際会議@早稲田大学国際会議場。

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私は情報通信部会の座長を仰せつかったのですが、この部会が最大人数の大所帯。4時間はあっという間に過ぎました。今回は事務局からの要望で英語でなく、お互いが母国語で話してくださいとのこと。逐次通訳者を介してのコミュニケーション。この方式はコミュニケーションに2倍以上の時間がかかる。でも、言いたいことを言えるし、分かりやすい。参加者も長丁場で大変でしたが、何よりも技術用語飛び交う内容で、4時間ふたつの言語を双方向に訳してしゃべり続けた通訳の女性に感謝。あなたが一番すごかった。

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フリーディスカッションで意見交換をしながら感じたのは、韓国メンバーは皆、

・IT技術では日本を既に追い越しているという前提意識
・日本はまだブロードバンドじゃないんでしょう?

と考えていそうだったこと。日本のITベンチャーとしては、ムムムと思うところもあるのだけれど、彼らの話を聞いていると本当にそうかもしれないと思い始める。韓国の学生生活へのネットの浸透ぶりは日本とは比較にならないようだ。海の向こうでは、空気のようにネットワークがあるのだなと思った。ハイ、生活への浸透度では白旗を掲げましょう。

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彼らがまだ学生が多かったのもあるけれど、ネットのビジネス利用という点ではまだ日本が進んでいる面もあるようだが、うかうかしていると追い抜かれそう。私たちも頑張らないといけないなと思った次第。競争と共創の関係になるといいです。

通訳がいない2次会以降は英語、韓国語、日本語のチャンポンで盛り上がりました。終電近くで帰宅。仲良くなった韓国のみなさんは写真をメールするからね、とのことで楽しみにしています。

参加者は多数でしたが、時間の関係上、あらかじめ選ばれた起業家たちが10分程度のプレゼンを順番に行いました。

■プレゼンした韓国の精鋭ベンチャーたち

・YETOO.com
http://www.yetoo.com/

映画やCD、演劇など文化芸術に対するオンライン投資サイト。作り手と予約購入者をオンラインで募集し、集まった予約資金でコンテンツを制作する。そのコンテンツが大ヒットすれば儲けを投資家に配分する。この分野は日本では失敗例もあったりするけれど、もう少し仕掛けが洗練されれば、十分ありえるビジネスモデルだと思う。元本割れリスクをどう扱うかが課題。

・Bram
http://www.callbaram.com/

マウスの左右のボタンを同時にクリックすることで、選択中の文字列を検索エンジンで検索するWindowsアプリケーション。RSSリーダー機能なども搭載している。将来はP2P機能も加えたいとのこと。「デュアルクリック」はいいアイデアだし便利。でも、どうやって収益化するかが課題と思う。Leeさんのプレゼンは話し方も文書の作りこみも一番上手。丁寧。

・NE Media
http://www.nemedia.co.kr/

携帯電話ゲーム制作。韓国の携帯電話上で、Brewベースで動くストリートファイター風のゲームを見せてもらった。私も日本のiアプリを見せてあげたら大喜びされた。ゲームも面白かったけど、社長のparkさんと、かなり意気投合。抜群の社交性とバイタリティを持つ彼なら成功するかも。

・Archispace
http://da2003.digital-architecture.or.kr/archispace/

感性認識を活用した感性パターンの色彩視覚化。簡単に言えば、音楽を色彩パターンに変換するソフトウェアの開発。特許技術を保有。人間の感性とメロディを脳科学などの成果をもとに音階と紐づけた、らしい。らしいというのは、来日したプレゼンターはデザイナーで、「理論はウチの先生がやられてます」とのこと。理論部にツッコミ多数。謎も多いが、商業空間での音楽(BGM)と同期する色彩照明は美しかった。

・L2IMALL
3D仮想空間でのショッピングを実現するためのミドルウェア。韓国の大きなECサイトでの採用が決まっているらしい。どうやら皆の話を聞く限り、マルチメディアや3Dに対する一般ユーザの抵抗感は韓国の方がずっと低い。日本ではちょっとビジネス的には難しそうに思うのだけれど、韓国ではいけるのかもしれません。サービス開始に期待しましょう。

■プレゼンした日本のベンチャー

日本側の起業家は、私がこの会社はスゴイと思った友人でもある3社の社長に、お声をかけさせていただきました。皆さんお忙しい中、参加いただいて本当に感謝です。日本側の社長は、学生が多かった韓国側と比べると年齢は少し上で、億単位のビジネスをされている点でも少し先をゆく方々です。

・コミュニティエンジン
http://www.ce-lab.net/ja/

頭の回転速度が異常に速くて圧倒される社長の中嶋さんは、カジュアルな感じで登場。簡潔ながら、分かりやすいプレゼンで、開発中のオンラインゲーム「Gumonji」の魅力のさわりを話されました。スクエア・エニックスから出資を受けて法人設立後、ひたすらの開発。現在水面下で着々と作っている彼らの新しいコンセプト作品が、近いうちに表舞台で踊るのは確実。注目。

・みんなの就職活動日記
http://www.nikki.ne.jp

日本最大級の新卒就職情報交換コミュニティ。新卒の人数は50万人程度と言われるが、ここには30万人以上の登録があると言う。先日、古巣の楽天に買収されたばかり。次に打つ一手のベータサービスや、データマイニングサービスの概要など、ここに書いていいのか分からないビジネスの裏側までお話いただきました。社長の伊藤さんは大学の後輩ですが、いつの間にか私は経営者として抜かれてました。今度は、私にそのビジネス手腕を教えてください。

・KBMJ
http://www.121r.com/

日本側3人のうちで最も経営者らしい経営者の社長の木村さん。若い学生が多かった今回の会議に本物のビジネスの話が注入されてムードが引き締まります。感性ナビゲーションシステムの説明は、言葉で説明すると難しそうだけど、木村さんはどうされるんだろうと思っていたら、杞憂でした。韓国側参加者をひとり指名しての実演ショウ形式で展開されて、極めて効果的なプレゼン内容。理論を言葉で説明しなくても、あれなら全員分かりました。さすがと思いました。


その後はアルコールも入っての2次会、3次会。団長熱い。

参加者のホテルの部屋にお邪魔しての交流会で「韓国ではアバターチャットが大流行なんでしょう?」と聞いたら「そんなのはもうやってるひといないけどね」あれれ?。「韓国でも検索はGoogleですか、やはり?」という質問には「Naverの方が有名、次がYAHOO!かなあ」とのこと。おお、違う。「(名詞など見ながら)韓国の方ってインスタントメッセンジャーはMSNが多いですね。YAHOO!メッセンジャーとかICQとかは使わないの?」「っていうか、それはなんだ?メッセンジャーはMSNだろう?」

本当に話してみないと分からないことってありますね。

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2004年04月12日

1分間ですべてが決まる!

・1分間ですべてが決まる!
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著者の吉田たかよし氏のプロフィールがひとつのコンテンツである。


日本で初めてNHKアナウンサー、医師、衆議院議員・公設第一秘書を歴任。灘中学、灘高校、東京大学卒業。東京大学大学院を修了し、NHKアナウンサーとして活躍。医師免許を取得後、元自由民主党幹事長・加藤紘一衆議院議員の公設第一秘書として科学技術政策の立案に挑む。現在東京大学大学院。医学博士課程に在籍中。医師の立場から日本健康教育振興協会・理事長として予防医学の普及活動に取り組む一方、自由民主党神奈川県連・常任顧問として連立与党、小泉政権を支えている。

無節操なまでに上昇指向の高学歴、高キャリア。財前教授も真っ青である。

秀才児がそのままスクスクと育つとこうなるのだろうか。いわゆるデキル人の代表選手。
次は国会議員を狙っているのは間違いなく、いずれはその夢も適って大臣程度にまで登りつめるような気はする。

この本は、著者が数々の難試験を合格し、社会で華々しく働く間に身につけた、1分間の勉強法を語る。例えば次のようなノウハウが紹介される。

1分間記憶法
1分間読書法
1分間報告法
1分間ブロック法
1分間自己アピール法
1分間スピーチ法
1分間決断法
1分間休憩法
1分間で人を見抜く法
1分間自己改造法

1 時間はないという前提を意識せよ
2 とにかく1分間で集中して○○をせよ
3 工夫はいくつかある

ということが大意に読める。

この人は基本的に頭の回転が異常に速いタイプであるから、集中できれば1分間で、いろいろなことが、とても高いレベルでできるのだろう。ただ集中の内容は記述が薄い。常人にはもう少しその集中力のプロセスを書いて欲しい部分もあった。

ただ、この著者のやり方は正統で正論なのだと感じるし、それで実際、うまくいくのだという、やってみせた人の正解として再認識できるのは良かった。

目の覚めるような工夫、アイデアがあるかというと、2つくらいはあった。だが、大半の記述は、かなり当たり前のことを言っている。もう少し圧縮して書いても良かった気がするが、わかりやすく、早く読める(電車片道50分で読めた)。こういう本を読みたい人は時間がないのだろうから、この書き方で正解かもしれない。

NHKアナウンサー時代の番組放送における秒単位での時間管理の話。多忙な議員にいかに1分間で報告を行うかの話。灘中の難しい試験でも実は勝負は1分間であったという話。など、著者ならではの貴重な実体験にもとづく記述は、興味深い。そこが一番面白く読めた。世の中には本当に忙しい人たちがいて、彼らがいかにタイムマネジメントに留意しているかが良く分かる。自分は忙しいと思っていたが、ここに出てくる登場人物と比較すると、私などぜんぜん忙しくない部類なのだと思った。

ひとつ私もやってみようとその気になったのは決断法。とにかく1分間で決断せよ。その代わり、なぜその意思決定をしたのか、メモを残し、後で評価して、次の判断に活かせというノウハウ。即断即決は難しいが、これならできるかもしれないと思った。

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2004年04月11日

(帰ってきた)アクセス向上委員会議

無敵会議シリーズ第4回の開催が決まりました。次は人気サイトの秘密を共有し共創する会議でです。

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(帰ってきた)アクセス向上委員会議

人気サイトの秘密をこっそり、ごっそり共有する会議です。

お金をかけず、発想や感性、個人の能力で、月間何十万、何百万、何千万ページビューの人気サイトを作ることは、どうしたらできるでしょうか?実際にそれを「やってみせた」作者をゲストスピーカーにお呼びしながら、皆で、未来の人気サイトの作り方を考えてみましょう。

会議ですから全員参加です。

まずは以下の質問「10年後のトップサイトのコンセプト」に必ずお答えください。これは当日、全員の投稿を印刷して共有します。100人集まれば100通りのトップサイトのコンセプトが集まります。
質問


2014年4月20日。

あなたは高層インテリジェントビルの最上階の、社長室で葉巻を吸いながら、自らの成し遂げたことを振り返っています。

それは長いようで短かった10年間でした。

まさか、片手間にはじめた個人Webサイトが、雲の上の存在だったYAHOO!や2ちゃんねるを抜く人気サイトになり、日本のトップサイトに成長するなんて、あなた自身が思ってもみなかったことでした。

思えば最初の発想が良かったのです。資本もブランドも不要の、あのアイデアがあなたの人生を変えたのです。

さて、質問です。あなたはどんなサイトを作ったのですか?。サイトの名前と内容を簡単に教えてください。

投稿内容はすべて印刷して参加者全員で共有します。どうですそれだけでも面白そうでしょう?。それだけじゃないんです。

主宰の一人の橋本のブログ「Passion For The Future」は月間10万ページビュー程度のサイトです。もうひとりの主宰の田口は月間50万ページビューの「百式」と13万人超のメールマガジンを一人で運営しています。少なくとも二人はこのレベルは語れます。

しかし、ゲストスピーカーはさらに強力です。

月間7500万ページビューのサイトを個人で始めた運営者や、先端技術を独力で実装して人気サービスを作ったエンジニア、日本のトップサイト運営の裏側を支える管理者も次々に登場する予定です。

■ 実施要綱

日時 2004年04月20日(火) 19:15-22:00(19:00受付開始)
場所 デジハリ東京本校 (地図)
千代田区神田駿河台2-3 DH2001 Bldg.
費用 3,000円(税込、当日現金払)
定員 限定70名(先着順)
持ち物 筆記用具
協賛 デジタルハリウッド株式会社
主催 橋本大也(Passion for the Future)
百式管理人(百式)

■ プログラム

 第一部 主催者、ゲスト入り乱れてのフリートーク

人気サイト作者が語る、表のワザ、裏のワザ
コンサルが明かす検索エンジン表示順位向上 SEO技術の秘密
先端技術に見るアクセス向上テクノロジー ベスト5
百式管理人が語る次世代トップサイトと外野のつっこみ
 第ニ部 会議

人気サイト構築術について参加者とともに会議します。
 第三部 名刺交換と交流会

名刺とそれ以外のあらゆるものを交換。
■ 投稿・お申込みはこちらから

会議への参加お申込み、投稿は下からどうぞ。

→ お申し込みはこちらから

■ お問合せ

このイベントに関するお問合せ、取材のお申込みは info@project-on.com までお願いいたします。

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2004年04月10日

天才と分裂病の進化論

天才と分裂病の進化論
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権威ある医学者による、大胆な仮説の発表。学術論文ではなく一般向けの著書として噛み砕かれた文章で、それをリアルタイムに読めるのはワクワクする。

■天才と名門家系に共通するもの

問題:次の天才たちに共通するものを挙げよ

ニュートン、アインシュタイン、エジソン、コペルニクス、メンデル、ダーウィン、カント、ヴィトゲンシュタイン、ハイネ、カフカ、プルースト、ベートーベン。

わかるだろうか。

答え:近親者に精神分裂病の患者がいる

この本には、精神分裂病(以下、現代的に言い換えて統合失調症と呼ぶ)を発病させる遺伝子こそ、知能を持つ人類の進化の原因である、という独創的な仮説が書かれている。

統合失調症の発病率は、世界のどの民族でも変わらず、およそ1%という興味深い事実がある。多くの病気が風土や人種によって発病率が異なるものらしい。これに対して、統合失調症は人類にとって普遍的な病なのだ。幻覚や幻聴、異常な行動がなくとも、分裂気質や軽い躁鬱病の人間ならば、もっと高い確率で誰の周囲に普通に暮らしている。また双極性障害(いわゆる躁鬱)もほぼ同じように発症するとも書かれている。

この1%という数字が、歴史上の天才や名門と呼ばれる家系では、何倍もの数字に跳ね上がっていることに著者は着目した。目立つところではノーベル賞受賞者の近親者に、患者がいることが多いと言う。稀にであるが映画「ビューティフルマインド」のモデルにもなった数学者ジョン・ナッシュのように、受賞者本人が患者と言うケースも複数ある。

■人類の進化と統合失調症の遺伝子と脂肪原因説

統合失調症の遺伝子を持つ人間に共通するのは、精神異常や知的後退と同時に、そのうちの何パーセントかに、独創的なアイデアや芸術的才能(音楽が多いらしい)、神をも恐れぬ強い意志や行動力があることにある。彼らは、凡人には不可能な偉業を精力的に成し遂げてしまう。その反面、奇行が目立ったり、社会生活が破綻したり、ひどければ犯罪を犯してしまうこともある。良くも悪くも、世の中に変化と革新をもたらす。

著者は人類の起源に強い関心を持ち、類人猿から分かれたホモサピエンスが、どのように地球上に分布を広げて、その文化を進化させて行ったかを、フィールドワークで調べた。そして、人類の脳が大きくなり二足歩行をはじめた時期と、技術や芸術と言う文化が花開く時期があまりに離れていることに気がついた。100万年前から20万年くらい前までの時期は文化的にはほとんど進歩しておらず、地域による同質性も高かったのに、20万年から5万年くらい前の時期になって、突然、高度な道具を作ったり、埋葬のような精神文化が地域ごとに多様に展開しているという事実である。

その時代に人の精神に何が起きたのかを探る。この仮説では、まず突然変異で統合失調症の遺伝子ができる。その時点では発病しないか、社会的に問題にならない時代が何十万年も長く続く。そして訪れた地球規模の気候の変動による食糧事情の変化。農業中心による穀物中心の食文化に移行すると、摂取する栄養の内容が変わる。発病の引き金となる脂肪酸の代謝が悪化する。それまでは発病しないか、軽症で済んでいた遺伝子ホルダーたちが顕著に発病をはじめる。それが社会に大きなインパクトを与えることになる。

そして、現れた異端者が、神の声を聞くシャーマンの役割や、真似のできない発明家の役割、あるいはカリスマ的政治指導者の役割を担った。狂気と天才が、急速に技術を革新させ、芸術を花開かせ、宗教を普及させた。ゆるやかな100万年間を急激な進歩の歴史に変えたのは、統合失調症の遺伝子であったというのだ。

■仕組みの解明と、コントロールの可能性

統合失調症は遺伝要因が強いとされ、その遺伝子の組み合わせ持った子どもは、35歳くらいまでの間に発病することがある。遺伝の発現には環境要因も絡んでいるとされる。環境しだいでは発病しないことも多いからだ。この遺伝子を持つ家系や、異環境で育った一卵性双生児、外部から長く隔絶されていた歴史を持つアイスランドの人たち、などを調べた結果、遺伝と環境の関係と同時に、やはり、顕著な業績をあげた家系に多く発生することが確認される。

著者は、ある種の脂肪酸の代謝能力を制御できれば遺伝子を持った人間を、狂人ではなく、創造性の豊かなイノベーターに変えられると考えている。マウスの実験レベルでは、既に天才マウスは誕生している。この病気は今は不幸な障害だが、やがてコントロールが可能になり、人類を豊かにする存在なのではないか、という。今は人生の破綻につながる素因が、人類の希望に見えてくる。

この仮説は、現在の科学では検証できていないが、ヒトゲノム解析はいままさに進んでいる話だ。数年というレベルの近い将来でも、根拠となる遺伝子が特定される可能性もあるかもしれないと著者は述べている。そうなれば、次はコントロールへの第一歩が進められるかもしれない。

私たちは、種の進化スピードをコントロールする技術までも手にすることになるのだろうか?

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2004年04月09日

インターネット的

・インターネット的
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コピーライター糸井重里が人気サイト「ほぼ日」の運営の中で考えたインターネット表現論。なにかネットで面白いことをやってやろうという人に考えるための材料としておすすめ。

著者が言う「インターネット」と「インターネット的」は違う。インターネットの新しさ、オモシロさの部分を「インターネット的」と表現している。だから、パソコンやThe Internetがなくても「インターネット的」なことはありうる。

インターネット的は、リンク、シェア、フラット、グローバルといった属性があるという、ある意味、当たり前の部分もあったが、表現者としてさらに本質に切り込んだ箇所があるように思えて、最後までいっきに読んでしまった。

■銀と毛、機械情報と生命情報

糸井重里氏は、さすがに言葉のプロであり、言い当てるのが難しいことを簡潔に表現してみせる。

未来人のイメージには毛と銀の全身服をきたやつがあるという話。

・ほぼ日 ダーリンコラム <銀と毛>
http://www.1101.com/darling_column/archive/1_0508.html
この部分はオンラインでも全文を読める


だいたい、テクノ音楽系のものが好きなやつは、銀。
ドクターペッパーが好きだったり、
ゲームがすごく好きだったりする人が多いわけ。
一方、毛のやつは、8ビート系というか、
言葉づかい乱暴だったり、飲み物でもコーヒーとかお茶。

(中略)

たとえば、椎名林檎は銀を飾りにつけた毛、でしょうか。宇多田ヒカルは毛がついた銀かなあ。北島三郎は毛で、藤あや子は、うすい毛?パンチョ伊東さんは......これが、なんと毛なんですねえ。何言ってるんだ、オレは?

野球選手は、全体的に毛の人が多いんだけれど、イチローはけっこう銀系です。サッカーの中田英寿選手はかなり銀でしょう。飲み物でも、ビールは毛だけれど、ライトビールは銀ですよね。ごはんはもちろん毛だけれど、パンもけっこう毛。スナック菓子は銀です。


毛=野生度であり、「毛もの=獣」度のバロメーターなのではないか。それで毛の方が意味が豊かだから、「「ほぼ日」は、インターネットという、非常に銀に思われやすいメディアを、毛に使っていくという意志を持って作ってます。」とサイトの表現方針を説明している。

何かを感じて、それが毛であるとか、銀であるということは、私も直感的に判断できるが、それは生きている人間だから分かる意味作用の結果であって機械で判断するのは難しそうだ。

■WHOLEでつながる毛ものの世界

インターネット的な世界では、WHOLE(全体)で渡せる、つながることが魅力とも著者は言う。WHOLEでつながるというのは、機能だけで部分的につながるというのではなくて、全体でつながること。雑多な部分も含めて全人的につながるという意味だ。


一般的に「定義」された夫婦というものは、経済と性を共用する共同体ということになるのかもしれませんが、それで表現できるはずがないことは、誰もがわかっていたことでしょう。もっと、わけのわからない謎のような時間や経験が絡み合っています。

そのとおりだと思う。デジタル化した情報のつながりは、あまりに部分的だ。例えば最近流行のソーシャルネットワーキングサービスでは、恋人同士のA君とBさんを「恋人」という関係でリンクする。二人のデータは登録した趣味項目の2,3個でもつながっていると表示されるかもしれない。だが、そこまでである。

毛もの、ケモノ的な男女のつながりは、それだけではないはずだ。もっと有機的で全体的で、ドロドロしていたりして、とてもビットで表現できる情報量を超えている。大恋愛関係にある場合なら、リンクが切れたら、刺すの死ぬのの騒ぎになるかもしれないわけだ。割り切れないのだ。だが、そういった濃密で多重で全体的なつながりは、デジタル化された段階で、必ずそぎ落とされてしまう。

機械情報、デジタル情報が作ろうとしているのがセマンティックウェブだとすると、糸井氏が言いたいのは、生命情報の織り成す「毛ものウェブ」の方がインターネット的で面白いよということかなと思う。

■豊かな意味をひきだすもの

考えたこと。

生命情報の視点に立てば、銀の世界は意味作用が貧困な世界である。身体性だとか全体性だとか、情動やら情念やら、不条理やら、そういう人間の持つ、むせかえるほど濃密な意味が、先端デジタルエンジンでフォーマットされると抜け落ちてしまうと思う。糸井氏はそれを避けて、もっと豊かな表現を指向しているのだと読めた。

茂木健一郎氏の「クオリア」は毛の世界の情報の表現形式を言い当てた概念なのではないかと思う。それに触れた人間のこころは、化学反応を起こして、自分自身の内側から、新たな情報を生み出し始める。記憶を再構成して、A=B以上の全体的な世界とのつながりの意味を取り戻す。ちょっとした簡潔な言葉に、心から笑ったりするのは、まさにそんな現象だろう。

言うならば、どうしようもなく豊潤で、ある意味「エッチ」な毛ものに触れて、「意味をもよおす」ということだと思う。銀の世界の情報に私たち生物は、決してもよおさないのだ。銀の世界には、それを成立させる再生の場がないからだ。意味作用のためのエネルギーが弱すぎるということだ。もよおさないのはつまらないよ、と糸井氏は考えたのではないか。

近代化、デジタル化、IT化の流れの中で、私たちの表現が生命力を失っているとすれば、そういう意味作用発生の場とのつながりが薄れてきているからに違いない。毛の世界は、物が腐って発酵して匂いがムンムンするけれど、そのるつぼからは、新しい意味と差異が、再生して現れる場である。

ただ、ツールをスマートに使いこなして、かっこよくホームページをつくっただけでは、インターネットであって、インターネット的ではないから、インターネット的な感動をもよおさせることができない。

この本は、ネットの表言論として、本質に迫っている面白い作品だと思う。糸井氏のポリシーどおり「話すように書かれた」本だが、それをわかりやすく書評できない自分の技量の差がちょっと悔しい。

#最近、とあるコミュニティで、とある先生から、あなたはセンスは悪くないが、他人から意味作用をひきだす表現が下手という意味のことをずばり言われ、そのとおりだなあと自分の表現方法を反省。毛の表現方法を修行中。

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2004年04月08日

確率的発想法~数学を日常に活かす

確率的発想法~数学を日常に活かす
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■ベイズ推定

最近、ベイズ理論がインターネット技術でクローズアップされている。

・グーグル、インテル、MSが注目するベイズ理論
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20052855,00.htm

18世紀にトーマスベイズが発案した統計理論。この本の前半で大きく取り上げられていた。

サイコロを振って1がでる確率は6分の1。2回目も連続して1がでる確率は36分の1で、3回連続は216分の1である。実際に何度か振ってみると、その確率と違ったりする。だが、100回や1000回繰り返せば、正確にその数字に近づいていく(大数の法則)。であるから、100回も繰り返せば、次に1がでる確率はかなり正確に予想できるようになる。

では、無差別に選んだ大量のホームページを連続して見て回る時、次のページが面白いページである確率はいくらだろうか?。

この確率を計算するのがベイズ推定である。

ベイズ推定では次に開くページが面白い確率、あるいは面白くない確率を、最初にエイヤっと適当に決めてしまう。例えば2分の1で面白いページが見られるとしたら、初期値=先入観を0.5として与える。そして、実際にホームページを1ページ見て確認する。面白かったならば、その次のページも面白いとする先入観が強くなり、そうでなければ低くなる。これを繰り返すことで、0.5が上下し、ホームページの面白い確率が次第に、正確に予想できるようになる。

私たちは、サイコロの構造について知識があり、1が出る確率は6分の1だと事前に知っている。もし、知らなくてもサイコロを振るのは簡単だから実際に100回も1000回も振ってみれば6分の1だと分かる。

だが、結婚相手の幸福な選択だとか、儲かる株式投資だとか、企業の重要な戦略意思決定は、事前に構造を知らないし、100回も1000回もやってみるわけにはいかない。結婚ともなれば、一般的な統計の値がどうであれ、自分の一回限りの人生である。自分の少ない経験からであっても、自身の気持ちで決めたい。そういうときに、主観的な確率を求める計算方法として、ベイズ推定は実用性がある。

ベイズについての詳しい解説をしているサイトがある。

・入門者向け解説 - ベイジアンってどういう考え方なんだろう
http://hawaii.aist-nara.ac.jp/~shige-o/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?%c6%fe%cc%e7%bc%d4%b8%fe%a4%b1%b2%f2%c0%e2

テクノロジーの世界では、スパムフィルタリングや情報の分類サービスに応用されている。メールに含まれる単語のパターンから、スパムらしさを計算する。実際に分類しながら、学習によって、フィルタリングの精度が向上していく。

・POPFILE
http://popfile.sourceforge.net/manual/jp/manual.html
スパムメールをベイズ推定で発見するソフトウェア。

・コメントを用いた書籍の分類
http://www.tokuyama.ac.jp/IE/Pages/sotu2003/paper/fujitomi.pdf
ベイズを使って書籍を分類する

・コメントを用いた映画の分類
http://www.r.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/~nakagawa/academic-res/abebe0207.pdf
映画を分類する

・The International Society for Bayesian Analysis
http://www.bayesian.org/国際ベイズ推定協会

■人間的な確率論

この本は、経済学者が書いた確率論の本であるが、著者はもともと企業人であり、消費者や経営者の人間心理と関わる確率論を重視している。

例えば、普通のサラリーマンならば、次の二つの選択肢のうち、

A 五分五分の確率で100万円かゼロ万円の給与がもらえる会社
B 固定で40万円の給与がもらえる会社

Bを選ぶ、という。数学上は期待値50万円のAの方が得であるにも関わらず、安定した生活という、外部の要素を求めているからだと分析している。

あるいは、ひとつボールを取り出して色を当てる賞金ゲームにおいて、

C 赤と黒のボールが50:50で100個入っている箱
D 赤と黒の比率はわからないがとにかく100個入っている箱

のふたつでは、多くの人がCを選ぶという。本当はどちらを選んでも戦略に優劣がないにも関わらず。何かが起きる確率と起きない確率を足しても100%にならないような計算を、人間のこころは行っている。そんな具体例を多数引き合いに出して、数学モデルとこころのモデルの違いを、丁寧に説明している。(エルスドールのパラドクス)

こうした不条理な考え方もする人間の織り成す社会や経済を、どう確率論でモデル化していくか、がテーマである。

この本は、確率のトリビア本のような宣伝文句が書かれていたが、まったくそうではない本だった。もっと志が高い。後半では、確率というキーワードを使って、正義や社会的平等、理想的な経済や政治という大きな問題にまで言及し、政策の矛盾や統計経済学者から見た、あるべき姿までを提案する。

数学については文系でも理解できる範囲に抑えられていて、確率論の本にしては読みやすい。統計理論を俯瞰する入門書としておすすめ。

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2004年04月07日

創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク

創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
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この本は粘菌の話から始まる。南方熊楠も粘菌の研究者であったが、時代の先端はいつも粘菌的なのかもしれない。

粘菌というアメーバ状の原始生物を人工的な迷路に閉じ込めて、一定の訓練を与えると、思考能力のないはずのこの奇妙な生き物は、入り口から出口までの最短ルートに広がる。粘菌を構成しているのは、何千、何万もの独立した単細胞である。細胞そのものは、思考する脳はおろか、高等動物レベルに発達した知覚器官さえ持ち合わせていない。

・粘菌が迷路を最短ルートで解く能力があることを世界で初めて発見
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2000/000926/
理研の研究発表。

この粘菌の高度なふるまいは、近隣の細胞同士が化学物質による信号を出し合っていて、お互いが連鎖反応を起こすことを通じて実現されていることが分かったという。だが、不思議なことに司令塔やペースメーカーとなる特別な細胞がいるわけではない。ほぼ同質の単細胞が、自分の周辺の細胞の動きにあわせて、単純なルールで反応を返すだけなのだ。最短経路をみつけよという指示を出したリーダーはいないのだ。

周囲の他者の反応に対する自己の反応が、他者の次の反応を決め、さらに未来の自己に跳ね返ってくる。多重のフィードバックネットワーク。これが膨大な数の細胞の群れによって作動すると、その群れ全体は、観察する人間からみて、一見知的な振る舞いを見せることがある。

「一見」と書いたが、人間の脳の神経ネットワークもまた同じ構造であることが解明されてきている。ローカルな相互作用からグローバルな秩序を生む創発。それは一見どころか、それこそ知性そのものである可能性もある。この本では、アリの群れ、都市、ワールドワイドウェブ、オンラインコミュニティなどにも、粘菌と同じ創発性を見出して、未来の世界での応用可能性を探る。

■スティーブン・ジョンソン+山形浩生の最強タッグで挑む複雑性への挑戦

著者は、FEEDマガジン創設者で、ニューズウィークが「インターネットで最も重要な50人」に選んだオンラインの論客として著名なスティーブン・ジョンソン。訳者は日本にオープンソース概念を紹介した山形浩生。未来のネットワーク論を語る上でこの著者と訳者は最強の取り合わせ。訳者が内容を完全に理解できているおかげなのか、訳文が非常に読みやすい。

・stevenberlinjohnson.com
http://www.stevenberlinjohnson.com/
・山形浩生はいかにして作られたか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000141.html

米国ではネット論壇的存在のコミュニティ型情報発信サイトがいくつかある。Salon、Slate、TheWellなど。著者もこうしたネット発のコミュニティの流れを汲む人物で、このテーマをインターネット論と結びつけて語るにはうってつけ。

・Salon
http://www.salon.com/
・Slate
http://www.slate.com/
・TheWell
http://www.thewell.com/

当然、後半はインターネット、ウェブ、コミュニティも大きなテーマとなる。ネット論については、権威の学者にありがちな、実情を知らない的外れ感や、過度に理念的で空疎な論議は出てこない。長年ネットを使っているユーザなら共感しながら読める土台がしっかりとある内容。

ニューラルネットや複雑系の話は、難しくなりがちである。それはこうした系が要素還元的でない性質の系であることに起因していると思う。自然言語は、比較的単純な要素同士の関係、特に二項の関係を記述するのには向いているが、全体性や多重フィードバックモデルを語るのには論理的説明の語彙が一般に不足していると感じる。

言葉と言葉が、直線的、階層的、論理的に結びついて、部分が全体を構築するのが科学の言葉。むしろ、創発のキー概念と成る全体性や多重フィードバックモデルは文学や詩の言葉が得意とする分野だろう。

要素と要素が響きあい全体として作品を織り成す世界を、科学の言葉で説明しようとすると、よほどの技量のある書き手であっても、細部まで読者に伝えることは難しいことだと思う。美しいが、わかったようなわからぬような読後感を与えてしまいがちだ。

■5つの原則

この本は中盤までは、粘菌、アリ、プログラム、歴史上の都市など実験や観測可能なデータを論拠にして書かれている。わかりやすい言葉に意味をうまく圧縮している。

例えば、創発の起きるネットワークには次の5つの原則があると著者はまとめた。

1 多いとは違うことだ
2 無知は役に立つ
3 ランダムな出会いに期待しよう
4 記号の中のパターンを探せ
5 ご近所に注意を払え

細胞の数が多く、それぞれは全体が見えておらず無知で、ある程度ランダムにつながりが起き、パターンを認知することができ、そして近隣の細胞と密接な相互反応をする。そのような性質を持つネットワークは全体として、知性があるかのように動く、ということになる。

最後の第3部は、創発の分散知性の技術が、政治、経済、社会にどのような革新をもたらすかについて語る。階層がなくフラットで、ゆるやかに繋がる個人がローカルな判断をし、それが全体とのフィードバックを起こして発展していく組織、世界。この未来論は美しいが、さすがに、文章が詩的な印象は否めない。この詩をどう味わうか、でこの本の評価は分かれるかもしれない。

無論、聡明な著者も気がついていて、こんな感慨を述べている。


... 創発システムの予測不可能性は、本の推薦やゲームには理想的名プラットホームになるが、突然、何のはっきりした理由もなく中間管理職を大量にクビにしたりするような企業をほしがる人はいない。コントロールされたランダムさは、都市生活やアリのエサ集めにはすばらしい方式だが、CEOのかわりにそんなものをおいて株主たちが納得するとはなかなか思えない。(... 中略... )自分の投資が、何百万のランダムなビジネスプランの中から長期戦略を育ててくれるまで、じっと待とうなどという投資家はいない

■ウェブはグローバルブレインになりえるのか?

私たちは自らが高度な知覚能力、意識、自由意志を持っていると考えている。個のレベルでは、粘菌の単細胞のふるまいとまったく同一の反応パターンをしているわけではないと思っている。どこまで、このアナロジーが有効なのかが、当然、疑問も生じる。

だが、都市やネットワークを分析するとマクロレベルでは、粘菌と同じような反応モデルが顕れる。都市はマスタープランがなくとも(いや、むしろない方が)自然に機能的に最適化されたレイアウトになる。管理者が不在のコミュニティも、仕組みによっては秩序ある組織になることがある。そもそも、私たちの知性の宿る身体が単純な細胞の集合で作られている。

知性は個にあるだけでなく、ある条件下では全体にも現れる。それがより広い分野に適用できるなら、、無数のノードがつながって、ユーザが反応しあうワールドワイドウェブやコミュニティもひとつの大きな脳=グローバルブレインとみなせることになる。それにはまだ足りないパーツが幾つもあるし、検証できていない部分も残されているが、歴史は創発ネットワークの方向に向かっていると著者は考えているように読めた。

知的エージェント、セマンティックWeb、ソーシャルネット、先端コミュニティシステム、自律コンピューティング、分散グリッド。そうした最先端の技術とそれを使う人間が、ネットワークを変容させていく。その先に何があるのかを、考えてみたい人にこれは自信をもって薦められる本である。

ああ、面白かった。

物凄く「今が旬」な本だと思う。興味のある人はいつか、ではなく、今、読むべき。
評価: ★★★★☆

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2004年04月06日

人と人との快適距離―パーソナル・スペースとは何か

人と人との快適距離―パーソナル・スペースとは何か
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■電車、トイレ、路上、近接学は至る所に

通勤で東京駅から電車に乗ることが多い。始発駅なので席は自由に座ることができるのだが、いきなり真ん中に座る人はまずいない。端の席から埋まっていく。端が埋まると二人分くらいの距離を置いて中間に人が入っていく。隣に座らざるを得なくなって、やっと隣に人が座る。

著者は、日常の行動を実際の電車で観察し、数値化して分析した。電車が空いている場合には出来るかぎり、他人と距離を置いて座る習性が確認された。この当たり前の現象の奥にある、人間のパーソナルスペースのはたらきを深く考察していくのがこの本である。

プロクセミックス(proxemics、近接学)とも呼ばれるパーソナルスペースの研究は、人類学者のエドワード・T・ホールによって1960年代に始まり、異文化の混在する米国で特に発展した。

冒頭、男子トイレを観察対象にし、前客がいる場合にどの位置の便器を選ぶかや、排尿までの時間、排尿の所要時間を計測するという、噴出しそうなテーマも真面目に解説している。米国の学者による実験であったが、前客がいない場合、出口から最も遠い便器が選ばれやすく、隣に人がいる場合は排尿の時間が全体的に長くなる傾向が分かったという結果が報告される。心理のみならず生理レベルで影響を与えるということか。

通路での通行を観察した報告。邪魔になるように二人の人間が通路にいる場合、通行人はどうよけるかを繰り返し実験した。すると、通路を塞ぐペアの組み合わせが、男女>女性同士>男性同士の順で、よける距離が大きくなったという。また、ペアが話をしているとさらに回避行動が顕著になる。パーソナルスペースは、1人のときより2人のときの方が大きくなり、話をしているとさらに大きくなるということだと解説される。美人は大きく迂回されたりする。

このような興味深い、日常の実験の数々から、目に見えないパーソナルスペースの形状やサイズや特性が明らかになっていく。パーソナルスペースは、人の前後に長い楕円形で、5種類があり、状況に応じてサイズが変化する特性が判明する。

        近接相            遠方相
密接距離 0〜15センチ     15〜45センチ
個体距離 45〜75センチ      75〜120センチ
社会距離 1.2〜2.1メートル      2.1〜3.6メートル
公衆距離 3.6から7.5メートル      7.5メートル〜

こうして具体的な大きさが分かることで、快適なコミュニケーションや空間の設計が可能になる。

■近くの人を好きになる

パーソナルスペースは個人の心理を表すと同時に、心理に影響を与える。恋愛関係を分析したデータも数多い。例えば、つきあっている二人が結婚する確率は住んでいる家の距離に反比例するという。家が近いほどデートのコストが削減され、平均的にはゴールインの確率も高まる。遠距離恋愛は統計的には不幸な結果に終わるらしい。

近くに座る異性に好意を持つというデータもある。同性では距離と好意に変化がないという。年齢によっても異性との快適距離は異なっていて、成熟していない段階では逆に好きな異性には、近づけない傾向も見られるという。これらも具体的に何センチという実証データが多数取り上げられていて、傾向と対策的に読むこともできる。

社会的役割、年齢、権威、制服、視線、匿名など、さまざまな要素がパーソナルスペースに与える影響があることが分かる。モテる人というのは、こうした近接学のノウハウを自然に使いこなせる人ということができる気がする。(失敗するとセクハラになる?)。

学生時代に、自然に女友達に近づいて、頭をなでたり、肩に手を回しつつも嫌らしさを感じさせない、同級生がいたりしたけれど、彼の行動などを今冷静に考えると、パーソナルスペースのプロだったのだなと納得する。

■パーソナルスペースの実用

パーソナルスペースについて、もうひとつ思い出が蘇る。

学生時代に私はNGOで委員として活動していた。学生にしては結構な予算を動かす団体で、大きなプロジェクトは審査が厳しかった。その年、私はプロジェクト審査委員会メンバーになっていて、後輩の女性のプロジェクトリーダーを面接することになった。そのプロジェクトは準備が悪く、失敗の可能性があった。だが、やる気はある女性なので、委員会としては厳しく詰問するが最終的にはGOサインを出すことになっていた。

審査委員会のリーダーの先輩が「ここは圧迫面接でいこう」と言い出した。綿密に考えた我々は、机と椅子の配置を動かすことになった。

・面接者と審査員の机の距離を離す
・正面から対面する配置にする
・面接者には机を与えないで椅子だけにする
・面接者の椅子を入り口ドア、壁から離す
・窓を背にして面接者に対して逆光のレイアウトにする
・面接者を廊下でしばし待たせる
・ノックに答えず入るのを待つ
・審査委員はリーダーの発言を待つ
・リーダー以外は面接者と目を合わせない

といったいじわるな演出を徹底してみた。

そして、実際に面接に臨んだところ、10分もしないうちに面接者の女性は泣き出してしまった。あーあ、やりすぎである。質問項目はまだ軽めな序盤だったから、泣き出した理由は、孤独感と威圧感の空間演出によるものに間違いない。

机と椅子の配置とコミュニケーション内容の分析も、この本に出てくるが、当時の私たちの戦略を裏付ける内容だった。会議で演じたい役割によって座るべき位置が異なること、会議内容によって異なる最適な机の形、崩壊しやすい家庭の部屋の配置など、紹介されるデータは、仕事や家庭でも実用性のある情報が多くて楽しめる。

評価: ★★★☆☆
・現代の「縄張り」−パーソナルスペース
http://www2.athome.co.jp/academy/psychology/psy02.html

・パーソナル・スペースからみた被虐待児の家族関係
http://ibuki.ha.shotoku.ac.jp/library/HP-bak/kiyo/kyoiku/kyoiku42/imagawa.pdf

パーソナル・スペースと女子学生の対人関係について
http://www.soc.shukutoku.ac.jp/chiba/kyouken/personal.html

・非言語コミュニケーション
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000549.html

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2004年04月05日

宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待

宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待
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■人類は最も繁栄している生物ではない?

宇宙人が地球を探査したとき、「この惑星を支配しているのは昆虫である」と結論する可能性があると何かの本で読んだことがある。動物種の中では昆虫の個体数が一番多く、生命として最も繁栄しているのは人間ではないからである。

ダーウィンの進化論以降、私たちは適者生存という考え方に支配されがちだが、何十億年間、ほとんど進化も絶滅もしていない生物もいる。バクテリアのような単細胞の原核生物は、30億年以上そのままの形を保持するものもいるらしい。生存環境の幅が広いため、とにかく生き残りやすい。生物としての繁栄という視点で見ると、高度に組織化、複雑化した高等動物が必ずしも、競争の勝者というわけではないことになる。

人類は増えて生き残るために生きているのではない、と考えた方がよいとこの本は言う。
人類とはそれではいったい何者で、どこへ向かおうとしているのだろうか?。それを天文学、地質学、物理学、歴史学、社会学などを総合して、大きなスケールから語ってみようというのがこの本の試み。

著者は東大の教授。

・東京大学大学院新領域創成科学研究科 松井研究室
http://ns.gaea.k.u-tokyo.ac.jp/~matsui-lab/

■地球(知求)学

ビッグバンによる宇宙の始まりからの150億年というスケールで、宇宙や地球、そして人類とは何か、を考えようとするのがこの本のメインテーマ「アスロトバイオロジー」であり、著者の言葉では知求学である。ビッグバン、地球の誕生、生物、人類の登場、そしてこらからをひとつのダイアグラムに描いてみせる。

なぜ人類は人口が増えて繁栄したのか?。大きな理由として、言語の存在と共に「おばあさん仮説」を著者は提唱している。生殖年齢を超えて生きる雌の個体、つまり、おばあさんは、自然状態の哺乳類では存在していない。人間にはこのおばあさんがいることで、お産の知識や育児の支援が可能になり、お産の回数や生存確率が飛躍的に高まった、とする説。

しかし増えたことで人間は自然のままにいきることはできなくなった。20世紀の人口増加率を続けると、2千数百年で地球の重さと人間の体重の総和が同じになってしまうそうだ。「生物圏」としてみた場合、10億人程度が地球の養える人類の数。それ以上は地球に何らかの影響(=汚染)を及ぼさずには生きることができない。既に60億人いる人口を支えるには、自らが環境自体を農耕に始まる技術と知恵で作り出す「人間圏」にしか、人間が生きていく場所はない。「自然にやさしい」「環境にやさしい」は、とんでもない誤解であると著者は述べている。そうではなく「人間にやさしい」を目指すしか選択の余地はないのだ。

■時間加速システムとしての人間圏

この人間圏の本質は時間の加速にあると著者は考えているようだ。例えば移動手段の発達により、鉱物資源は世界中にいきわたる。地殻変動による移動とは比較にならない速度である。遺伝子操作の技術は生命進化さえも加速する。

地球環境に与える影響という観点で見ると、20世紀の質量変化は、およそ地球の歴史の10万年分に相当すると見積もられている。人類は1万年生きてきたが、さらに1万年生きるとすると環境には10億年分の影響を与えてしまう。

この加速の根本には「右肩上がり」の進歩、拡大という共同幻想が存在しているのだという。人類は人間圏は成長していると現状を認識している。だが、宇宙人の視点で、人間圏をとらえなおした場合、この幻想では行き止まりが近いことが分かる。

■今考えるべき問題の存在と材料の提示

著者はいくつか面白い提案をしている。人間圏が環境に求めているのは「物」ではなく「機能」なのだから、所有するのではなく自然から借りる、レンタル思想というコンセプト。長寿命型文明と短寿命型文明という選択肢。未来に理想を求めるユートピア思想と、過去に求めるアルカディア思想。知的生命は環境を認識することができると同時に破壊もするという文明のパラドクス論。均質な世界から分化していく過程が歴史の本質とする分化論など。この大きな視野で考えるための素材を提供してくれる。

著者は決して明確な答えを書いてくれるわけではない。語られる内容も厳密に検証した科学でも、統合された哲学でもない。ただ、我々の生きる世界がより大きな階層システムに何重にも取り囲まれていて、本当の問題は上のスケールから考えないといけないという事実に気づかされる。政治や宗教で対立するよりも、世界全体で宇宙人としての行き方、行く末を考えるべきだというメッセージのような気がする。詳細がもっと読みたい。

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2004年04月04日

駅ナンバリング考

東京の営団地下鉄が、4月1日より東京メトロに生まれ変わった。といっても、車両デザインや駅のデザインに大きな変わりはないので地味な変化である。毎日、東京メトロを使う人間として、唯一、眼に見える、分かりやすい変化は「駅ナンバリング」である。

都内12路線274駅で駅名表示がすべてこのようなマークで置き換えられている。
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東京メトロの解説によると、

・〜わかりやすい東京の地下鉄をめざして〜
路線名、駅名に記号・番号を併記した「駅ナンバリング」を始めます。
http://www.tokyometro.go.jp/news/2004-s04.html

(1) 路線記号を下記のアルファベット1文字で表示します。
  都営地下鉄 浅草線A、三田線I、新宿線S、大江戸線E
  営団地下鉄 銀座線G、丸ノ内線M・m、日比谷線H、東西線T、千代田線C、有楽町線Y、半蔵門線Z、南北線N
  ※ 丸ノ内線のmは「方南町駅〜中野新橋駅」間です。

(2) 駅番号は、2桁の数字で表示します。
  原則として西または南から順に01、02、03、・・・と付番します。
  ※ 路線カラーのリングを使用する場合、アルファベットと番号は縦に並べ、これによらない場合には、アルファベットと番号をハイフンで結びます。


これはこれで便利な面もある。外国人にとっては日本語の駅名は覚えにくいから、銀座線新橋駅=「G08」の方が分かりやすそうだ。また、G02(表参道)からG08(新橋)までは北(または東)方向へ向かって、6つの駅があるという距離と方角も把握できる。(新橋には某R社の「G8ビル」があるが最寄は新橋でこれは出来すぎ(笑))

ただし、この設計思想にすこし疑問もある。

新橋は銀座線のG08であると同時に浅草線のA10なのだ。大手町にいたっては、5つの線が交わるのでI09、C11、M15、T09、Z08である。同じ駅に複数の記号があるのは間違いを招きそうな気がする。

そして駅の新設、廃止にはどう対応するのか?。駅が新たにできた場合、最もナンバリングが大きな数字の駅から先へ延長した場合には+1すれば問題がないわけだが、始発駅の前にできた場合、

G-01

になったり、既存の駅の中間にできた場合、
 
G05.5

とかになるのだろうか。一度定着した番号をずらすのは大きな混乱を招くだろう。ここらへんはいったいどうするつもりなのか気になる。

とはいっても、海外で同種のナンバリングが多いようで、わかりやすさと記号の整合性という点で、これ以上に良いやり方というのはないのかもしれないのだが。

■駅ナンバリングに新サービス発想の余地を探す

さて、ベンチャー起業家としてはこのナンバリングをどうにかビジネスにつなげられないかをつい考えてしまう。

携帯電話での駅指定が簡単になるのは確実である。アルファベット+数字二桁で指定するので3文字で駅名の入力が可能になる。路線+駅ナンバーのボタン選択にすれば簡単に入力ができるだろう。駅についての情報サービスが作れそうだ。

出口の記号と連携した利用も面白そうだ。G08A2で銀座線の新橋駅A2出口であるというように出口名までをも記号で表現、指定できる。この記号ベースで駅の出口を使った待ち合わせ掲示板サイトも考えられそう。(逆に出口名と駅名が混乱しそうでもあるが...)

他には乗り換え案内サービスに、駅の出口から出口までの所要時間という項目を追加すると便利だろう。G08A2からG02B3までは徒歩+地下鉄で何分というような情報を教えてくれる補完サービス。駅名と出口名が続けて入力しやすくなったので使われやすくなったと言えるかも知れない。

他には...どんなものが考えられるだろうか。発想のネタとしては楽しそうだ。毎日乗るたびに考えてみよう。

関連情報:

東京メトロは組織変更と同時に公開ブログライクなサービスを開始した。

・Let's Enjoy Tokyo
http://www.enjoytokyo.jp/OD001Top.html

誰でも特派員になって携帯から写真+コメントを送信することができるある種のブログサービス。同サイト内で公開されるスポット・イベント情報・特集ページに、投稿を「ひもづけ」することもできる。

・帝都東京・隠された地下網の秘密
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4896916808/daiya0b-22/

「ふと地図から浮んだ疑惑が疑惑を呼び、達した結論は「戦前に既に東京には地下網が完備していた」というものだった…。可能な限りの資料と徹底した地図の読み込みを駆使し、国民に伏せられてきた東京の地下網の真実に迫る試み。」。東京のレイアウトはさまざまな陰謀がうずまいてできたという噂は良く聞きますが、その地下鉄版の話。Amazonのユーザ書評に少し内容の情報アリ。(すみません、これ私は読んでいません、がオモシロそう。読んだ人感想を教えて)

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2004年04月03日

二十年後―くらしの未来図

二十年後―くらしの未来図
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■現場主義の未来予測 先端製品の開発者に聞くアプローチ

20年後の未来にはどのような技術、製品が出現して、私たちの生活をどのように変えているかを予想する本。著者は、今日の時点で市場に出ている最新の製品の開発者に対してインタビューして回る。

観測テーマとして選ばれたのは、トイレ、バスルーム、洗濯機、ベッドルーム、防犯、エネルギー、ロボット、テレビ、生ゴミ、冷蔵庫、クルマ、キャッシュ、キッチン、ペット、葬式、の15分野。

著者は学者でもシンクタンクのリサーチャでもなく、社会問題や教育など幅広く取材をしてきたフリーライター。その自由な立場であることが、この本の面白さ。

この本の最終章「未来予測」では過去の政府や研究者が発表した20年前の未来予測がどれだけ当たってきたか、的中率を調べている。しかし、その結果は惨憺たるもの。つまり、詳しい専門家が予想したところで20年後の予想は当てにならない。

この本は、専門家に聞くのではなく、現場の開発者やマーケターに聞くことで最低限の根拠を築き、生活者である著者自身がその上で身近な視点で考えたことを書く、という戦略を取っている。自然と著者の筆は軽くなり、20年後だったら、こうなるんじゃないかな?、こんなものが欲しいな、という自由発想が多くなる。どうせ専門家でも当たらないのだから、未来予測は分かりやすく、面白い方がいい。この本はその点、成功している。

■市場ニーズと技術イノベーション

各分野の現状や未来予測を読んでいて思ったのは、家電や生活者向けサービスにおいては、

1 技術的には可能だが市場ニーズがないから実現されない製品・サービス
2 市場ニーズはあるが技術的に不可能だから実現されない製品・サービス

のパターンがあり、前者が圧倒的に多いということ。

開発者が「基本機能を備えた製品は存在していたが○年前では需要がなかった」と語るケースが多い。携帯電話もThe Internetも20年前に存在していたが、それらは決して今の「ケータイ」「インターネット」ではなかった。今のレベルまで生活と社会に浸透させたのは技術革新というよりは、それを必要とする生活者の需要の方だっただろう。

製品が普及する順番や連関も重要なポイントであるようだ。洋式便所が普及したからウォシュレットが人気だし、パソコンやプリンタが普及したからデジカメが人気なのである。先行する製品が、市場ニーズを大きく変容させてしまう。ひとつの分野でいきなり20年後を考えることは困難だ。

企業のマーケターは目の前の市場を見るのは得意だが、その2歩、3歩先を見ているわけではない。今売れる商品を考えているだけである。シンクタンクや学者は技術的に可能な未来のパターンは把握できても、目の前の市場がわかっていない。誰にとっても、未来予測が難しいのは、これらの事情があるからだろう。

・技術予測 文部科学省 科学技術政策研究所科学技術動向研究センター
http://www.nistep.go.jp/achiev/abs/jpn/rep071j/idx071j.html
リーフレット「未来への旅」が読みやすい

政府はこんな予測を出しているが、果たして、今度はどこまで当たるだろうか。

■先端製品をじっくり味わう

この本で紹介されている先端商品は、どこかで耳にしたけれど、詳細はよく知らなかった製品というものが多くて、勉強になる。

例えば、

・洗剤不要の洗濯機
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0106news-j/0622-1.html
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消耗品の○○が不要というコンセプトはいいかもしれない。個人的にはインク不要のプリンタが欲しい。

・ゆっくり喋るラジオ
http://www.jvc-victor.co.jp/audio_w/product/radio/ra-bf1/
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聴く時間は同じなのにゆっくり聞こえる秘密を内蔵。

・夢をコントロールするドリームボイジャー
http://www.shinchosha.co.jp/books/html/4-10-610053-3.html
このページはこの本の内容が少し読める。

このほか、割れないガラス、太陽熱発電、IHクッキングヒーターなど比較的地味な先端から、空飛ぶクルマ、パーソナルロボットまで出てくる製品は幅広い。それぞれ、どのくらい売れていて、メーカーは次にどうしようと考えているか、一般人に分かるように噛み砕いた説明がある。

関連情報:先端製品を見ながら未来生活を考えるサイト

・Popular science
http://www.popsci.com/popsci/
先端デジタル製品を中心にレビュー。同名の雑誌のサイト。日本語版もある。

・T3
http://www.t3.co.uk/
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英国の最先端技術製品紹介の雑誌。携帯やクルマ、PCなどコンセプトモデルも含めてこれから市場に出回る製品が多数取り上げられる。T3はTommorow's Technology Todayの略で同名の雑誌がある。私は洋書屋で買っているが、大きなカラー写真中心で楽しめる。

・Extreme Computing
http://www.extremecomputing.com/
コンピュータ周りの先端製品がレビューされる。

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2004年04月02日

知の教科書 批評理論

知の教科書 批評理論
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これで100冊目の書評になる。読んだ本について書くという作業を、100回も繰り返していると、書評とは何か?、批評とは何か、と考えてしまう。大辞林 第二版によると、批評とは「事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること。」と定義されている。分かったような分からないような気になる。

「この本は面白い」「面白くない」。そう書くだけなら感想に過ぎない。けれども、本について、それ以上の何かを書こうとすると、何が面白かったのか、何故面白かったのか、どのように面白かったのか、と続けることになる。これが批評行為が発生する瞬間であると思う。そして批評を書くプロセスの中で、本当の読解が始まり、書評が書けてはじめてその本を読んだ気になれる。

冒頭の章に「批評理論というのは、テクストの可能な読み方を創出していくものなのです。」という一文がある。読むためには観察しなければならないから、光を当てるということでもある。テクストに対しての様々な光の当て方が考えられる。この本では文学批評を題材に、近代〜現代の代表的な光の当て方が紹介される。題材は文学であるが、よく考えると、それ以外のテクストに対しても同様のアプローチができることに気がつく。

この本には7人の批評家が登場して、以下の7つの批評理論をまず解説する。

・読者反応論
・精神分析批評
・脱構築批評
・マルクス主義批評
・フェミニズム批評
・ポストコロニアル批評
・ニューヒストリズム批評

ユニークなのは、解説の後、それぞれの書き手がその理論を使って、実際に文学作品を批評してみせる実践の章がついているとことである。古典や現代の作品に批評理論を適用し、背後にある歴史・社会状況や、書き手の心理やイデオロギーがあぶりだされる。それぞれの理論は実践としてはどう書けば良いのかが明白になる。

例えば、脱構築批評では、デリダ、ソシュールらのロゴス中心主義や構造主義などのパーツを説明した上で、脱構築の批評が実践される。ここでは映画「地獄の黙示録」の原作である、ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」が題材になる。狂人カーツ大佐が支配するアフリカ奥地に向かう若者マーロウの引用符だらけの独白の小説。俎上に上げられた素材は、解説の通りの道具で解体されて、新しい意味が創出される。この本の本当のテーマは、文明/野蛮、西洋/非西洋という二項対立の脱構築であり、その構造に19世紀の小説技法の挑戦的取りくみがあるのだ、などということになる。

その意義は分からないが、新しい意味が立ち現れる場として批評の空間はおもしろい。

簡単な書評を書いているに過ぎない私でも、ときどき「テクストの可能な読み方を創出していく」ことにどんな意味があるのか?。という疑問に陥る。この本の監修者も前半では批評の必要性はわからないとしている。しかし、そのおもしろさは全面的に肯定し、まずは感じよと書いている。

国語教育、受験教育的な考え方の世界では、テクストには「正解」があってそれを正しく読むことが大切だとされているが、そこにおもしろさはないと思う。これは、テクストをもっと面白く読むために、批評の意味や意義を考えてみるための本。

未消化な部分もあるが、この本を読んで考えたことを101冊目以降の書評に活かしていけたらいいなと思った。

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2004年04月01日

Mindsphere 未来の指標の可視化実験スタート

付記:この記事は、後半部はエイプリルフールのネタでした。おつきあいありがとうございました。

■Mindsphere 未来の指標の可視化実験スタート

NTTデータ社が未来のWeb情報可視化の実験プロジェクトを開始した。大変、光栄なことに、このPassion For The Futureブログも、このプロジェクトに「未来の指標」情報を提供することとなった。

Mindsphereプロジェクトの概要はNTTデータのサイトにあるように、

MindSphere
http://www.nttdata.co.jp/index_mindsphere.html
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インターネットがつなぐ、広大な情報世界。ITの進化によって、その世界は日々拡大して行く一方です。毎日、毎時、毎分、どこかで何かが書き込まれ、どこかで誰かがそれを読んでいます。ひとつの書き込みが、それを読んだたくさんの人々に知らず知らず影響を及ぼしながら、互いに進化していくさまは、まるで生命の進化の歴史を見るようです。

Mindsphereプロジェクトは、未来への指標となりうるいくつかのインターネット上のサイトを選んで、その情報の変化を、質と量の両面から俯瞰して観察してみようとする試みです。

最初にランダムに幾つかの情報提供サイトが5つほど表示される。ここでもしこのサイトが表示されていなかったら、クリックでSwap Site Infoを選択して、このサイトに入れ替えていただきたい。次に時間軸を選ぶ。1日のサイトの情報の変化を追うTodayモードと1ヶ月の動きを追う「History」モードがある。Histroyモードは歴史が長く見られておすすめ。これで準備は完了。

スタートをクリックすると、時間経過とともに各サイトの内容の変化が、水の波紋的表現と色彩変化によって見事に可視化されていく。これが未来の指標であり、ネットワーク上のクオリアの輝きそのものと言える。これを元に投資や新規事業開発の基礎データに役立てることができるだろう。

関連:クオリアについて
・意識とはなにか―「私」を生成する脳
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000561.html

■プロジェクトの裏側 脳内のクオリアの可視化

実は私は今日から毎日24時間少々不恰好なヘッドギアを被らされることになった。NTTデータの先端技術開発センターから、厳重な相互守秘義務契約書とともに、私の年収レベルの報酬オファーがあり、ヘッドギア装着契約書にも同意することになった。

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(装着するヘッドギアと、データの蓄積及び解析を行う無線ステーション)

NTTデータの技術陣曰く「これからはWebではなく、それを書く人の方に注目しているのです。橋本さんは頭で考えてからブログに書くわけですよね。そこにはタイムラグもあるし、漏れもある。私たちは橋本さんの脳から直接未来の指標データを取り出して、Webで可視化してみたいのです」と言うのだ。このヘッドギアにはeMRIという装置が内蔵されている。

eMRIという言葉をご存知でない方もいらっしゃると思う。脳科学の実験でよく登場するfMRIならよく知られているものだ。山口大学の説明によると「MRIとは,強力な磁場のなかに人体を置き,それに電波を加え,水および脂肪の構成原子である水素原子核を共鳴させることで画像化するものです.このMRI検査によって,脳のどこにどのようなタイプの病変(梗塞,出血,腫瘍,委縮,変性など)があるかを確認できます.ファンクショナルMRI(fMRI)は,このMRI装置を使って,脳の“機能(function)”を画像化しようというもので」とある。

・functional MRIについて
http://www.neurol.med.yamaguchi-u.ac.jp/fMRI.htm
・fMRI 磁気共鳴画像
http://www.baic.jp/fmri_j/main.html
・理化学研究所 脳科学総合研究センター(最新のMRIや脳科学データに詳しい)
http://www.brain.riken.go.jp/index_j.html

今回のヘッドセットに採用されたのはfMRIの後継で、セマンティックBrain技術とネットワークとが融合した次世代版の、eMRI装置である。これは脳の思考内容、クオリアの発生と変容を解読する機能を持つ。つまり、私が今何を考えているのか、その内容までを読み取る機械である。

Mindsphereの波紋や色は私や他の指標サイトの作者たちの脳とつながっている。熱いアイデアを思いついたときにはオレンジ色に、冷めたアイデアは青く、大きなアイデアなら大きく、小さければ小さく波紋が広がるようになっている。eMRIをフル機能モードにすると、私の思考内容を言語化してテキストでWeb表示することも可能なのだそうだが、さすがにそこまではプライベートを明かしたくないので、今回はお断りした。私以外の作者も断ってしまったようでNTTデータの担当者は残念がっていた。

そういうわけで、今日からこの最先端技術を使った未来指標提供サービスには私も心身を捧げてまさに「献身的」努力で望む所存である。読者諸氏も、この可視化アプレットから、深い意味を読み取り、ビジネスに生活に役立てていただきたい。

関連:脳科学、ブレインマシンインタフェース
・言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000718.html


この記事はエイプリルフールのネタでした。おつきあいありがとうございました。

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