2003年11月30日

アウトプット、サブアセンブリ、非マルコフ、Blogの流行の秘密

■知識のサブアセンブリ化と知的作業の効率

何かを考えてそれをアウトプットにする。このBlogもそんな作業のひとつであるが、個人の情報処理プロセスで重要なものとはなんだろうか。考えてみた。

先日、ノーベル賞学者のハーバート・サイモンの著書を読んでこんな記事を日経BPの連載で書いてみた。一般システム論のいうサブアセンブリについて、知識のサブアセンブリとして再発想してみた。

・知識のサブアセンブリ
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031118-01.htm

大雑把に自分で要約をかけると、「知識を再利用できる中間部品(サブアセンブリ)でたくさん持っておくと、効果的なアウトプットを出しやすくなる」という当たり前な話である。具体的には、サブアセンブリを作り、活用するには、以下のような作業をすることになるだろう。

・サブアセンブリ化の作業
    文書化しておく
    要約しておく
    表や図にしておく
    断片をメモに残しておく

・効果を高めるための作業
    共有、再利用しやすくしておく
    すぐに取り出せるようにしておく
    概要を記憶しておく

■アウトプット表出するか、しないかは天地の差

作るものが最終アウトプットとしての文書であれ、中間部品としての知識サブアセンブリであれ、アウトプットとして表出するか、しないかは結果に大きな影響を与える。頭で考えたことがあるだけなのと、メモや文書にまで仕上げたことでは、その結果に天地の差がある

企画書でも論文でもメールでも、何かアウトプットを作成しようとするときに、私たちは、何度も、考えをまとめたり、調べたりする。次のプロセスへ進むか止めるかの判断を繰り返していることになる。もし、思考を途中で止めてしまうと、アウトプットは作られない。(図参照)。

当然のことだが、

・提案されなかった企画は発注されない
・発表されなかった論文は評価されない
・書かれなかったメールは反応が返ってこない

わけだから、以下の図の、赤のライン、アウトプットとして表出するラインを超えるまで、思考プロセスを持続することが重要と言える。「やめる」で放棄してしまうと忘却されてしまう可能性が高い。

img031201_1.JPG
では、このワークフローの赤のラインを超えやすくするにはどんな要素が関係しているかを考えてみる。

■ナレッジベースの充実度=知識サブアセンブリの蓄積量

ナレッジベースとは、知識や情報の集積である。実体は、ポストイットを貼り付けたスクラップ帳であったり、データベースやイントラネット掲示板、メールフォルダやブックマークであったりする。純粋に脳の中にしかない、という人も多いだろう。(私が提案するパーソナルナレッジベースは過去記事参照)。

ナレッジベースの質を決める大きな要素は、そこに蓄積される、サブアセンブリの量と質である。

私の定義では、テンプレートと知識サブアセンブリは異なる。テンプレートは器である。これに対して、知識のサブアセンブリは、もっと相対的に強く文脈に依存したものを私は意図している。数学で言うならば、公理や定理ではなく、実際の数字の入った式のことである。統計白書に書かれている全体の傾向ではなく、新聞の記事になるような、ある町で起きたある特徴的な事件のことである。

文脈に依存した知識には次のような特徴があると考えている。一般的な企業で個人や組織がビジネス用途に活用するという条件を想定している。

・記憶から想起しやすい
    人間の記憶の特性から、細部の記憶があるほど想起しやすいことが以前紹介した本にも書かれている。

・同じ仕事では使いまわしがしやすい
    人や会社は、職業や社会的役割を演じ続ける限り、同じような問題に繰り返し遭遇し、同じような知識を必要とすることが多いはずである。

・意味を汲み取りやすい
    「こういった仕組みは7割の確立で失敗する。」(テンプレート)
    「A社、B社、C社はこういう仕組みで何年度に失敗し何億の損失を出し
た」(サブアセンブリ)

ふたつの形式知識を並べてみると、後者のほうが、意味を汲み取りやすいだろうし、経験のあるビジネスマンならば一般化も容易なはずだ。逆に前者はミスリーディング知識になる可能性がある。

こうしたサブアセンブリを整理しておくことが、アウトプットの赤のラインを超える確率を高めるひとつめの要素と考える。他には思い入れと心理ハードルが関係する。

■思い入れを強める、心理ハードルを下げる

マラソンで息が切れてしまった。体力はぎりぎりだ。さあ、どうしよう?。そんな状況での判断は、現在自分が走っている位置や過去の苦労の量によって大きく左右されるものと思う。走り出して5キロならば棄権することが多いだろうし、40キロまで来ていれば、無理してでもゴールまで走るだろう。

過去に同じことをやりとげた経験も意思決定に関わる。過去の経験からくる自信や蓄積したノウハウは、続けようとする心理ハードルを下げていく。また、既に終盤にいて、途中で何度も、そんな判断を乗り越えてきたのであれば、なおさら、あと一息で完走の判断を下すはずだ。

知識の表出もマラソンに似たところがある。過去の判断の積み重ねの記憶とゴールの近さは、アウトプット実現の可能性を高めていると思う。つまり、次のような思い入れと心理ハードル効果が働くからである。

1 ゴールが見えていて、もう少しで完遂できそうだ
2 過去の経験や知識を使って容易にできそうに思える
3 ここまでの苦労は長かった。諦めたくない。

■知的作業は非マルコフ過程

物理学の概念でマルコフ過程という考え方がある。過去の選択が未来に影響しないプロセスのことを言う。例えば、毎回違う人とじゃんけんをするシーンを思い浮かべてみる。同じ人とじゃんけんをするのと違って、毎回の指し手は、同一人物のクセから学ぶことができないので、何を出すかは過去の経験に依存していない。これがマルコフ過程である。

逆に同一人物と連続してのじゃんけんは、相手の手の内を読めるようになってくるから、指し手の意思決定に経験が影響し始める。将棋や囲碁のように、前の手が次の手に影響する場合はなおさらこの傾向は強くなる。これが非マルコフ過程である。

人間の知的作業は、一見、マルコフ過程のように見えることはあっても、実質は非マルコフ過程のはずである。それ以前のプロセスが、思い入れの強さや、作業を容易にする知識サブアセンブリを準備している。

従来のITの知的作業支援ツールは、人間の思考をマルコフ過程と捉えてしまった設計が多いように思われる。何度も最初から入力しなければならなかったり、過去の努力が再利用しにくかったり、今やっている作業が、あとどれくらいで終わるのか、全体の作業量が見えにくかったりする。

■知識ツールに求められるもの、情報ブリコラージュの技術

こうした仮定の知的作業を支援する知識ツールに必要な要素が分かってくる。

・サブアセンブリが自然に作られやすいこと
    情報収集した内容が低い入力コストで蓄積できる
・蓄積したサブアセンブリを容易に検索できること
    全文検索、概念検索、俯瞰と部分注視の機能があること
・思考プロセスの心理ハードルを下げること
    簡単にできそうだ、あと一歩で終わりそうだという示唆
・アウトプットが見えやすいこと
    WYSIWYG(What You See Is What You Get)的ツールは適している
・思い入れの強化
    今までこれだけがんばってきたじゃないか俺、という念を強める

このBlogでも紹介してきた、Wiki、はてなアンテナ、関心空間、Weblog、紙といったツールは、これらの条件を少し多めに満たしているように思われる。だから、昨今、Blogは流行しているのだとも思う。単に日記アプリが流行しているなあと思って終わらせるのではなく、情報アプリケーション設計者は、この成功例から学ぶことが多いはずである。

手持ちのツールと知識で手早く目的を達成する知的作業のことを私は以前の記事で、情報ブリコラージュと定義した。サブアセンブリとブリコラージュは密接な関係にあるとも考えている。ITツールを使って知的作業を進める上で、デジタルならではの非マルコフ的な人間思考の支援を考えていくべきなのではないか

・情報ブリコラージュの時代
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031007-01.htm

#今日の記事は、伝播型流通貨幣PICSYプロジェクトの鈴木さん、コミュニティアライアンス戦略の佐々木さん、コミュニティエンジンCEOの中嶋さんとの対話から刺激を受けて書きました。サブアセンブリの結晶化と発想拡大を助けれくれる皆さんに感謝。

#毎日書くために、気をつけていること:

・頭の中で文章になるまで諦めずに考えてから、考えるのをやめる。
・考えた文章はとにかくメモする
・本を読んだら必ず要約する

を徹底することが私の今の課題です。文章化やメモ化する以前でやめてしまう思考はほとんどムダになるので、とにかく表出し、デジタル化と検索可能化もしておくといいなあと思っています。自分自身の情報術?らしきものから、企業のナレッジマネジメントへと応用できる理論を模索している中、今日の記事を考えましたが、うーん、まだまとまってないなあ。ご意見求む。

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2003年11月29日

意識とはなにか―「私」を生成する脳

先日の記事に四家さんから頂いたコメントにヒントを得て書いてみました。

・意識とはなにか―「私」を生成する脳
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著者はソニーCSLの天才研究者茂木健一郎氏。ソニーのブランド名となっている「クオリア」は、本来は哲学用語。本書はクオリアをめぐる、意識と脳に関する深い洞察を、一般向けにやさしく語った本。要約しながらコメント。

■クオリア

「私がみている赤と、他人が見ている赤は同じなのかどうか」

クオリアとは、もともとは「質」を表すラテン語で、私たちが感じるさまざまな質感を表す言葉である。私たちが感じる、考える、ほぼすべての意味や概念はクオリアであるといってよい。(およそ心に思い浮かぶものでクオリアでないものを探すのは難しそうだ)。だから、上の質問は、私の「赤」のクオリアと他者の「赤」のクオリアは「違う」のか?という意味になる。「違う」も「同じ」と対立するクオリアのひとつである。

私たちは交通信号をみて赤なら止まる。科学者なら光の波長を計測してどこからどこまでが、おおよそ赤と定義もできる。社会的な意味での赤、科学的なコンセンサスとしての赤というのは確かに存在している。だが、主観的な感覚としての、私の赤と、あなたの赤は少しずつ違う。過去の経験や現在の脳の状態は一人一人異なっているから、主観的な赤というクオリアの内容は、1人として同じではないことになる。

「同じ」と「違う」はA=B、A≠Bと論理的に片付けられる問題ではないと著者は言う。例えば、私たちがお札を使うとき、「千円札」というクオリアが、買い手と売り手で「同じ」だから取引が成立するが、買い手が偽札業者と知っていれば、彼の出す札は偽札かもしれないと思う。「私」にとってのどんなクオリアも、文脈やプロセスが、二つのクオリアが「同じ」かどうかを決めている。<あるもの>が<あるもの>であるというのは、それをユニークなクオリアとして把握する脳のプロセスに支えられている。

■相手の心の中に、私の心の中と同じ構造の積み木をつくる


私たちの感じることのできるクオリアのレパートリーは、脳の中の自発的な生成のプロセスによってあらかじめ決まっていて、外界からの刺激がきっかけとなってそのうちのあるものが選択されるに過ぎない

私の好きな小説にもこんな例がある。プルーストが「失われた時を求めて」の中で何十ページにも渡って、主人公のマドレーヌの匂いへのこだわり、連想を披露するシーン。あるいはミランクンデラの「不滅」の冒頭のシーン。主人公はパリのプールサイドで見知らぬ女性が、軽やかに手を振るのを見る。その手の仕草にかつての恋人「アニェス」という名前が浮かび、長い物語が始まる。これらの豊穣なイメージは、どこまで説明しても、表現者のそれそのものを伝えきることはできない。クオリア同士が複雑に影響しあっている状態が、表現者にとっての「マドレーヌの匂い」であり、「軽やかに手を振る姿勢」を構成してしまっているからだ。

この一説からは小説のほかに身近なシーンも思い浮かんだ。これは仕事のプレゼンテーションや説得交渉でも日常的に体験することだ。私たちは自分のアタマの中のアイデアを、他人のアタマの中に再現しようと試みる。自分の頭の積み木を他人の頭に再現しようとする。しかし、クオリアは個人的なものだから、似たものを他人に説明しようとしても、完全にはできない。積み木の部品を共有しているわけではないからだ。養老猛の「バカの壁」とも通じる、人間は分かり合えない理由の説明になっている。

■人工知能アプローチ、機能主義、計算主義への批判

科学者は人工知能で人間の心を模倣しようとする。人間だったらこういう刺激を与えるとこういう反応が返ってくるから、そうなるようにソフトウェアを作ろうとする。脳の機能は解明されつつある。人間が思考や感情を思い浮かべるとき、脳のどの場所がどういうふうに活性化するかは分かってきたし、いずれは完全に解明できるかもしれない。

しかし、心を脳の機能としてとらえたり、脳の1000億の細胞同士の関係を、概念同士の関係としてコンピュータ的に計算すれば人間が何かを考えるのと同じ結果が出る、という従来のアプローチでは、クオリアが表現できない。なぜなら、何がクオリアかを決める肝心の「私」はそこにはいないからだ。「私」が無数のクオリア同士の複雑な関係性を作り出している。

クオリア同士の関係性は体験によって変化し続ける。脳の状態は常に変化していて同じではない。しかし個々のクオリアの意味は永続する。一晩眠ったからといって「赤」が「青」にはならないし、何年経っても赤のままである。著者はこのクオリアの同一性を保持する能力こそ、進化の過程で人間が獲得した自然の究極的なテクノロジーなのだと結論している。

これは、むずかしい問題についてのやさしい本である。著者もまだこのクオリアの研究をどう技術的に実用に結び付けるかは分かっていないと告白している。脳や心の科学、そしてコンピュータの科学は哲学と密接に関係する時代になった。クオリアの技術はきっと、現在話題のセマンティックWebの、何世代か先で、私たちの世界を根底から変えてしまうくらいのパワーを持ったイノベーション技術になると私は考える。だからこそ、茂木氏のような現代のベスト&ブライテストたちが今、すすんで取り組んでいるのだ。クオリアの研究からは目が離せない。その分野を俯瞰し、考えてみたい人の入門書として最適の一冊。

評価:★★★☆☆

参考URL:
・茂木氏のクオリアマニフェスト。
http://www.qualia-manifesto.com/index.j.html

・公式メーリングリスト(過去ログ)
http://www.freeml.com/ctrl/html/MessageListForm/qualia@freeml.com
私も何年間も加入はしているけれどもとても発言できないでいます...。

・茂木健一郎 クオリア日記
http://6519.teacup.com/kenmogi/bbsご本人の日記。

・ソニーのブランドとしてのクオリア
http://www.sony.co.jp/QUALIA/

・過去関連記事:茂木氏監訳の脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000134.html

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2003年11月28日

その夢は、いつやるんですか?

今日の話は関心がない人もいるかも。

先日紹介した「夢ある」のサイトにあった言葉「その夢はいつやるんですか?」にドキっとした。

私は起業して4年目に入る(*)。学生時代に独立してからの期間を入れるとその倍くらいの長さ。後輩や知人や研究者の方々から「起業したいのだけれど話を聞かせて」と相談を受けることも結構ある。私自身がまだあらゆる意味で途上なので、他人にアドバイスはまるで自信がない。(というか、聞くべき人はもっと他にいますよ...)だから、そういうことを知りたい人には次のような情報源を薦める。

・起業家というキャリア
http://japan.cnet.com/column/nishikawa

ビットバレームーブメントの中心人物、ネットエイジ社長の西川さんが語るベンチャー起業論の連載。西川さんの長文はこれがはじめて拝見したけれど、作家のような文章力、構成力に驚き。頭が整理されているから書けるんですね、きっと。

・プレジデントビジョン
http://www.president-vision.com/

読者が3万人を超えた人気メールマガジン。運営者の見込んだベンチャー社長に長時間のインタビューした記事が公開される。取材される社長のムービーが毎回公開されていて、それぞれの人柄が如実に分かるのが、いい。

・ドリームゲート
http://www.dreamgate.gr.jp/

メールマガジン登録者に対するプレゼント小冊子「日本の起業家図鑑〜100人の勇気と独立への第一歩」は以前は申込者には無料で配布していて私も一部もらった。写真入りで最近のベンチャー創業者たちの独白が100人分。既に成功している著名人から法人化前の個人事業まで等身大の姿を生々しく読める。

・ビーイング・デジタル − ビットの時代
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創業本ではないのだが、私に企業への就職という選択肢をなくさせ、ITの世界での独立起業へ踏み出させてくれた、決定的な本。内容はAmazonの書評から引用すると、


1995年出版、その年のうちに邦訳、90年代後半を席巻したITバブルの「聖書」となった本が再刊された。著者は米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの創設者。研究者というよりもオーガナイザーとして実力を発揮し、同ラボで数々の先進的な研究プロジェクトを立ち上げた。本書はその経験を基に、デジタル技術が社会に浸透することでどのような変化が起こるかを解説したものだ。解説の口調はあくまで楽観的でデジタル技術に対する明るい信頼にあふれている。なかでも最も象徴的なスローガン「アトム(実体のあるもの)からビット(デジタル情報)へ」が繰り返し引用され、「ドットコム」ブームの呼び水となった。

今読んでも十分新しい、はず。

そして最後に今一番注目している、仕事仲間で友人たちのつくったばかりのホヤホヤベンチャーの紹介。バーチャルコックピットという超ニッチな事業に情熱を燃やしているグループ。とてつもないクリエイティビティを持った集団。

・プロトタイプ
http://www.proto-type.jp/
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・鉄騎も楽しめる? 1/1コクピットがHobbyEXPOに!
http://www.zdnet.co.jp/games/gsnews/0307/28/news10.html

結局、最後の一歩は自分で踏み出すしかないのが起業だなあと思う。「その夢はいつやるんですか?」って質問にどう答えるかということ。さあ、私も、日々のキャッシュ指向の仕事に追われると忘れがちになるけれど、最初に抱いた野心を取り戻そうっと。

*4年目というのは私が代表をつとめるデータセクション社の話。このサーバの置いてあるリンゴラボ社(加藤代表)はまだ初年度。産学連携や研究開発のお手伝いのお仕事はぜひこちらへ!。(宣伝)。

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2003年11月27日

非言語(ノンバーバル)コミュニケーション

・非言語(ノンバーバル)コミュニケーション
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「二者間の対話では、ことばによって伝えられるメッセージ(コミュニケーションの内容)は、全体の35%にすぎず、残りの65%は、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間のとり方など、ことば以外の手段によって伝えられる。」

私は大学時代に電話秘書代行センターの夜勤スタッフとして4年間働いていた。大小の企業や通信販売から、メーカー各種メンテナンス窓口、占い師事務所、葬儀屋、果てはSMクラブまで、夜間の電話受付を、顧客企業の社員のフリをして、代行する業務である。私たちは何十台も並んだ電話から聴こえる、顔の見えない相手と毎晩、声と声だけで格闘する日々を続けていた。

夜勤二人体制。だいたい一晩で100本程度の電話を1人のスタッフが応答することになる。新米アルバイトは、厳しいクレーム電話や緊急時対応に(夜間に企業にかかる電話なんてそんなものだ)、男でも本当に泣き出す。堅気でない方だとか酔っ払い、入退院を繰り返すノイローゼの患者、プロのクレーマー、いたずら電話の連続だ。回線の向こうから、怒声が当たり前のように聞こえてくる。ほとんどのアルバイトは一ヶ月の研修期間を終わらずに辞めていくが、私は適性があったのか、長く続き、ベテランスタッフとして社長に認められていた(と思う)。タイムカードの社員ナンバーは社長に次ぐ2番が少し誇らしかった。

1日100本として、勤務頻度は週2,3回。仮眠は3時間程度暇な夜は取れるものの、そのまま眠い頭で大学へ行き部室で寝るの繰り返し。年間120日程度。4年間だから、最低でも5万本以上の、電話対応をやったことになる。数年の経験のあるベテランスタッフなら、電話を受けた相手の第一声で、内容やその後の展開を読めた。電話の電流が壁の配線を流れるのを察知して、電話が鳴る前に受話器を取り上げ、隣の研修生を不思議がらせることもできた。秘書センターの電話が鳴る段階では、顧客の回線からの数コール分の転送時間が既にかかっているので、鳴ったらワンコールで取るのがプロなのだ。電話機との非言語コミュニケーションといったところか。

クレーム対応の現場の厳しさと接客技術をその道数十年の社長から躾けられた。会社にはまだCTIシステムによる支援などなかった。プロのオペレータになるべくマッチ棒を数えての何百回の復誦訓練。大変だったが楽しかった。激怒して怒鳴り込んできたお客に、何時間もつきあい、問題を解決し、朝方には「キミの名前は?会ってお礼を言いたい」との電話をもらったときの感動ドラマの体験は、その後もずっと覚えている。夜勤は二人体制。戦場のような職場で数年を共にした友人たちからは結婚式に招待される仲になった。長い月日が経った今もメールが時々届くのを楽しみにしている。

すこし話はそれたが、声には言葉以外のコミュニケーションが豊富に含まれていることを私はこの体験から知った。声の微妙な揺れや強弱、背景の雑音、電話の切り方、ウエイトメロディの種類や待機時間の長さ、沈黙、訛り。感情的になったお客のことばは、その内容よりも、周辺言語にこそ意味があった。冒頭のそういったことを、もっと知りたいと思って読んだのがこの本だ。

興味深い実験結果が続々と解説される。米コロンビア大学の実験では、8人の被験者に特定の感情を起こさせながら、アルファベットを読ませた。喋っている内容に意味がないわけだが、それを聴いた30人の判定者が、話し手の感情をどれだけ識別できるかを試験した。その結果は以下のようになったという。

感情     識別率
怒り      65%
不安     54%
悲しみ    49%
幸福     43%
同情     38%
満足     31%
愛情     25%
恐怖     25%
嫉妬     25%
誇り      21%

もしも判定者による判断がまぐれ当たりであったなら識別率は10%になるはずだ。判定者のうち最もよく当てた人の識別率は49%に及んだという。私たちは、話されている内容とは別に、声の抑揚や表情(周辺言語)から多くのことを読み取っている証拠だ。

非言語コミュニケーションは周辺言語だけではない。各種調査により、影響力の強い9種類の非言語コミュニケーションは次の9つであるとこの本では述べられ、各章が割り当てられている。世界中の心理学者や社会学者の実証例を根拠に、興味深い事例が続く。

1 人体(性別、年齢、体格、肌の色) 
2 動作(姿勢や動き)
3 目
4 周辺言語(話しことばの音声上の特徴)
5 沈黙
6 身体接触
7 対人的空間
8 時間
9 色彩

意外な事実も多かった。例えば最後の色彩では、実験で映画に1000秒に一コマの割合でポップコーンとコーラの写真を混ぜて客に見せたら、意識では見えなかったはずなのに、ポップコーンの売り上げが57.7%、コカコーラの売り上げが18.1%伸びたという話。これは結構有名なサブリミナル効果実験の話だと思う。しかし、この実験が行われたのは1950年代のことだそうで、その後の調査では、この種の効果では人間に行動を起こさせる理由になるという裏づけがとれていないそうだ。よくプロモーションの会議などで、この話は持ち出されるのだが、マーケティングのツールとしては弱いものなのだな、と勉強になった。

対面して話すということは、きっとテラバイトクラスの回線で、目の前の相手と情報通信を行うことだと思っている。コミュニケーションに占める非言語メッセージの率は65%。私たちはメールや電話やバーチャルリアリティや、Webページを使って、意思疎通をしているけれど、デジタルコミュニケーションで失ってしまっている情報は多いのだ。届くのはきっと数パーセントのメッセージ。対面と比べると、糸電話並みのナローバンドかもしれない。

どこまで非言語のメッセージを、センサーが吸い上げてビット化できるか、ソフトウェアが分析し補完できるか、伝えられるか。今後のコミュニケーション技術の課題は多そうだ。

評価:★★★☆☆

最後に参考URL:

・Truster
http://www.truster.com/24progpack.htm

心理分析ソフト。マイクに向かってしゃべると音声の波形から、ソフトウェアが嘘を話しているかどうかの度合いを判定する。99ドル。

・日立スーパーSHフォーラムのプレゼン「ビジョン技術とフレンドリーボット」
http://www.renesas.com/jpn/products/mpumcu/32bit/sh/forum/archive/gifudai_yamamotosensei.pdf
nonverbalcom02.JPG

人の表情を真似る、「ペンギン型人物表情自動認識システム」。そして写真は人間の真似をする「見よう見真似ロボットYAMATO」など。

・仮想世界におけるアバタの形状・様相・距離感に関する調査研究
http://www.dj.kit.ac.jp/seminar/1999/abstract/ja/98630030-ja.txt

短いアブストラクトだけれど面白い。仮想空間ゲームの中でも、親しさと立ち位置は相関するらしい。電車の横長い席が端から埋まって行くのと同じ原理。この本でも取り上げらた、いわゆるプロクセミックス(近接学)のバーチャル版。仮想世界でも親しくない異性にくっつくのは抵抗あるのだ。

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2003年11月26日

「情報共有とコラボレーション支援のためのソフトウェア」

今日は2本(この金曜日のイベントご案内と、続く通常のエントリ)記事があります。よろしくです。

なぜか各種MLに流しながら自分のBlogにこのイベント案内を出していなかった(汗)。
直前で恐縮ですが、ご都合のつく関西方面の方、ぜひいらっしゃってください。

IPA 2003年度未踏ソフトウェア創造事業
情報共有とコラボレーション支援のためのソフトウェア
         中間発表会

私はIPA(情報処理振興事業協会)未踏プロジェクトの京都大学石田教授PMのアドバイザとして微力ながら、お手伝いさせていただいております。11月28日に、未踏に選ばれた日本のトップクラスの若手研究グループによる「情報共有とコラボレーション支援のためのソフトウェア」というテーマの発表会が京都であります。

内容はBlogあり、セマンティックWebあり、モバイル&ユビキタスありで、今後のインターネットのサービス動向に大きな影響を与えるかもしれないグループがたくさん参加されています。

私も最後にコメンテータとして登場させていただきます。審査時より、すべてのプロジェクトの方々とお話をしていますが、内容的にこのBlogで話される話題にマッチしているなあと思いましたので、ご案内させていただきました。特に関西方面の皆様、新しいビジネスチャンスの発見に、最新技術動向の把握に、どうかご参加よろしくお願いいたします。

詳細は以下。
http://www.ipa.go.jp/NBP/15nendo/15mito/seminar.html

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    IPA 2003年度未踏ソフトウェア創造事業
「情報共有とコラボレーション支援のためのソフトウェア」
         中間発表会


■日時:2003年11月28日(金)10:00〜17:00

■場所:コープイン京都 中会議室
     京都市中京区柳馬場蛸薬師上ル井筒屋町411
     TEL 075-256-6600 FAX 075-251-0120
     http://hawk2.kyoto-bauc.or.jp/coop-inn/kyoto/

■参加費:無料
どなたでも参加できます。特に、未踏への応募を検討されている
方はぜひ見学においでください。


■スケジュール(予定)

  ○司会 中西英之(アドバイザ:京都大学 助手)

10:00-10:10 開会の辞
           プロジェクトマネージャ 石田亨(京都大学 教授)

10:10-10:50 「個人に適応した情報オントロジに基づくコミュニティ支援システム」
            小田 朋宏(コロラド大学 博士課程)

10:50-11:30 「ハイパーリンク型経験共有システムの構築」
            坂本 竜基(ATR知能ロボティクス研究所 研究員)
 
11:30-12:10 「異なる言語の環境で知的触発を引き起こす発想支援ソフトウェア」
            吉野 孝(和歌山大学 助手)

12:10-13:00  (休憩)


13:00-13:40 「位置情報を用いた都市型空間情報ハイパーリンクシステム」
            須之内 元洋(東京大学大学院 修士課程)

13:40-14:20 「Semblog: セマンティックウェブ技術を用いたスモールコンテンツの
           再編集・共有プラットフォーム」
            大向 一輝 (総合研究大学院大学 博士課程)

14:20-15:00 「不正者追跡・排除可能な匿名認証ライブラリシステムの開発」
            繁富 利恵(東京大学大学院 博士課程)


15:00-15:30  講評
          中小路久美代(アドバイザ:東京大学 特任教授)
          橋本大也(アドバイザ:データセクション(株)代表取締役CEO)

15:30-15:40 閉会の辞
          プロジェクトマネージャ 石田亨(京都大学 教授)

15:40-16:00  JSTデジタルシティ研究センターに徒歩で移動

16:00-17:00  JSTデジタルシティ研究センター見学
http://www.digitalcity.jst.go.jp/

■参加申込み

参加お申込みは以下までお願いします。
 e-mail: yoko@kuis.kyoto-u.ac.jp

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          参加申込書

IPA 2003年度未踏ソフトウェア創造事業
「情報共有とコラボレーション支援のためのソフトウェア」
中間発表会事務局宛て


お名前:
所属機関名:
役職又は学年:
e-mail:

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あなたもいままでの10倍速く本が読める

・あなたもいままでの10倍速く本が読める
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今日はあまり本気にならずにお読みいただきたく...。

本を速く読みたい。1冊読むところを3冊とか10冊読みたい。何十枚のビジネス文書を配布された直後に即効で把握してしまいたい。私もそう思っている1人である。教養や娯楽分野の、ノンフィクションや小説ならば、ゆっくり味わって読みたいが、ビジネスや研究の仕事に必要な知識は、高速に吸収したいものだ。

私は多分、読書ペースは遅くないほうだ。だいたい常に5冊程度を平行で読んで、週に1,2冊を読み終わる。最近はBlogにも書評を書く。ほとんどは往復3時間の通勤時間と就寝前の夜中の作業である。カバンには内容の硬い本と柔らかい本の2冊を入れている。枕元に重い本を1冊。技術実用化コンサルタントとしての知識レベルを維持したいと思うので、そんな生活をずっと続けている。しかし、進化の早い業界、知識の不足感はつきまとう。

だから、もっと速く読めればなあ、の想いは人一倍強い。そこで、全世界で20万人が使っている(らしい)、フォトリーディングのメソッドに手を出して見た。

フォトリーディングは次のプロセスで進める。

1 準備
     読む価値の事前判断と「ミカン集中法」で理想的な状態形成

2 プレビュー
     文書の持つパターンを把握し読書方針を検討する。キーワード把握。

3 フォトリーディング
     ここが重要。フォトフォーカスという周縁視野を意識してページを画像イメージとして記憶へ写し取る。

4 アクティベーション
     意図的、自然発生的に内容を想起する。そのためのマインドマップ等ツール類

5 高速リーディング
     従来型の速読。必要な箇所を斜め読みする。多くの人が普通にできる。

フォトリーディングでは、1ページを1秒で視覚的に読む。250ページの本であれば、5分程度で読む計算だ。ただし、この異常な高速さを、誤解してはいけないのは、他の速読法(読むのを高速化する)と違って、内容を詳細に理解することは目的ではない。つまり、読書ではない。要点抽出と概要把握が目的で、フォトリーディング後、必要な部分は、普通に読むことになるのである。

本の中では、「要点がかかわる重要なことがらが書かれているのは文書中の4-11%に過ぎない」という調査が紹介されていた。これは納得できる。もし、要点の場所を発見できて、連続して読めるならば、10倍高速化は理論的には可能なはずだ。

このメソッドはそれなりの説得力を持っている。練習が必要なプロセスが幾つかある。最初はできないが、少しずつできることもある。ページのつなぎ目に幻のページが浮き上がるブリップページ体験は私はできた。それが意味することは分からないが、もしかして、自分の能力が開発されているかもしれない感は感じる。本当にせよ、嘘にせよ、本気でなければ十分、楽しめる本だった。ホームページや電子文書の速読の記述もある。

なお、巻末の速読に関する海外参考文献のリストは、いい。少しずつ原文を取り寄せて、本書の科学的根拠も判断していきたい。

評価:★☆☆☆☆(現段階)

そして、読了後、一ヶ月間、10冊程度で実践してみた。

結論としての素直な感想。

できなーい(笑)。い、いや、できているのか?。

できたのかどうか判断は難しい。身近に完全にできるひとがいれば信憑性は高まるが、とりあえずいない。本書の通りにやって1週間もすれば、本のキーワードを書き出したり、簡単な要約はつけられる。ただ、その後、ゆっくりと同じ本を読み、その読み方で正しかったか、正確さを検討すると、100点満点で30点から40点といったところだ。また昔の私でも、集中力次第でそれができていたのかもしれない。

メソッドの有効性は否定もしない。ただただ判断不能なのだ。漠然と視線を動かして斜め読みするならば以前から日本語、英語の論文系資料のチェックではやっていた。それとの違いが仕事上の効果として、まだ明確にならない。30分程度でその本が分かったつもりには慣れるのは確かだ。

私の練習が足りない可能性がある。諦めていない。また2ヶ月程度して進展があれば、このBlogで報告させていただきたい。

なお自動要約の技術の情報(主に研究)や変わった取り組みを参考として最後に紹介。機械が勝つのか人間が勝つのか、速読メソッドビジネスの行方や如何に。

・要約機能付き市販ソフト
http://www.lr.pi.titech.ac.jp/pub/research/summarization/software.html
北陸先端科学技術大学院大学自然言語処理学講座による。自動要約機能のついた市販ソフトの紹介や、MS Wordなど各製品の要約の仕組み、要約度による変化の例など。

・テキスト自動要約に関する研究
http://www.lr.pi.titech.ac.jp/pub/research/summarization/
東工大奥村研究室による研究とガイド

・Webの要約研究
http://research.nii.ac.jp/ntcweb/index-ja.html国立情報学研究所、NCTIRのWeb研究。

・ニュース文の自動要約
http://www.nhk.or.jp/strl/results/activity/pdf/rd60-1.pdf
NHK技研がニュース要約技術を一般向けにさらっと説明。言いかえで短縮。

・動きに基づく料理映像の自動要約手法
http://www.mtl.t.u-tokyo.ac.jp/Research/paper/2002/J02-kenkyukai-reiko-1.pdf
愉快。料理番組を圧縮し、手順理解を妨げずに8分の1サイズの要約映像を作る。

・沖電気、メールを自動的に要約するサーバー
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/6215.html
「「早解サーバー」は自動でメールの要点を抽出し、携帯電話などに送信するメールサーバー。冒頭や文末のあいさつ文などの文脈を判断した上で不要と思われる部分を省略し、携帯電話などに送信する。」必要なのか?90万円〜。

付記:
私はこの本に書かれていることが科学的に真なのか知りません。またこの種の内容で、高額なプログラム教材やセミナーが存在しますが、特に推奨するものではありません。読者は大人ばかりとは思いますが念のため。同時に「速聴」に取り組む物好きで野心的な男より。


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2003年11月25日

共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人

・共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人
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この本によると、10万人に1人(最新調査では2万5千人に一人)の割合で共感覚という特殊な感覚を持った人が、存在している。彼らの大半は何の生活の支障もなく、普通に暮らしているが、私たち通常感覚者とは、別の世界を体験している。大抵は話しても理解されないので、そのことを黙っている。

彼らは、食べ物を舌で味わうと指先にカタチを感じてしまう。この味はとんがっている、だとか、まるいだとか、手に取るように感じる。ある人は、音を聴くと色が見えてしまう。共感覚者が「このチキンはとんがった味がする」「これは赤くてまぶしい音楽ね」と言う時、それは比喩ではない。実際にそう感じている、という。

著者は、医師で共感覚の第一人者。偶然、友人が共感覚者であることが分かり、80年代ほとんど未解明だった領域の研究を開始した。18世紀からの文献調査に始まり、他の共感覚者も集めての臨床実験を繰り返して、遂にその実態を学会へ発表し、話題になった。今では、共感覚者の存在は広く認められている、ようだ。

著者の友人であり研究対象であるマイケルの料理は恐ろしく変わっている。彼は料理をレシピにしたがって作るのではなく、「おもしろい形」の料理をするのが好きだ。砂糖は味を「丸く」し、柑橘類で「とがり」を加え、調味料や香辛料で「線の傾斜を急に」したり、「角を鋭く」したり、「表面をひっこめ」たりする。すべて比喩ではない。触覚で感じている。

五感のどの感覚とどの感覚が結びついてしまうかは人によって異なる。視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚の二つ同士で一方向に発生する組み合わせが考えられるが、視覚と聴覚の結びつく例が多いらしい。珍しいケースでは単語の音と身体の姿勢感覚が結びついていて、特定の単語が特定の姿勢を感じさせる14歳の少年の例が報告されている。

最初は著者は、これは脳内の配線が混乱していることから生じる異常な現象と考えていた。しかし、緻密な研究を進めるにつれ、意外な事実が分かってくる。実は、共感覚は人間(哺乳類)の誰でも持っている根本的な感覚で、脳の正常な機能だが、その働きが意識にのぼるひとが一握りしかいないもの、ということが分かったのだ。

共感覚は、脳の皮質の下にある海馬を中心に、いつでも誰にでも起こっている神経プロセスだが、通常は脳の最終処理を行う器官である、辺縁系の正常な処理を通過すると、意識から失われてしまう。ヒトの進化の過程でそういう仕組みになったのだが、共感覚者は原初的な神経プロセスをありのままに感じてしまう人たちであり、「認知の化石」と言えると結論される。歴史に登場する天才的芸術家にも共感覚者がいた可能性もあるらしい。

この本は2部構成になっており、第1部が共感覚の解明ドキュメンタリ、第2部は「情動の重要性についてのエッセイ」集。単なるおまけにしてはボリュームがあるなと思っていたが、こちらも素晴らしいできばえだった。脳や感覚、情動を長年観察、研究してきた著者が説く人間の意識や精神に関する独白。私たちがとらわれている合理性批判。

感覚とそれに起因する情動こそ、人間の精神の支配者であり、意識する心は私たちが自己と呼んでいるものの運転者ではない、という最小合理性(C.チャーニアク)の立場から、情動がいかに私たちの高い意識レベルでの意思決定や行動に強く関与しているかを、一般向けに分かりやすく語る。話題は、認知論から人工知能の限界、宗教、科学とスピリチュアリティにまで総括していく。第1部を読んで著者の科学者としてのスタンスを知っていると、すべてが頷ける。著者は医師であるが、科学者であり、哲学者として生きている。

評価:★★★☆☆

この本を読んだ動機は私が考えている未来技術「トランスモーダルメッセンジャー」に関連する事柄が書かれていないか期待した。微妙に違ったようだが参考にはなった。ここで、この私のおかしな空想技術をついでに説明すると、

・サンクスコーラ(感謝飲料)
飲むと「今日は来てくれてありがとう」というメッセージが伝わるソフトドリンク「サンクスコーラ」
・ワンダーウォール(嘆きの壁)
触ると「人生大変だよね、お疲れ様」というメッセージが感じられる壁
・告白フレグランス
匂いをかぐと「私はあなたを愛しています」と伝わる香水

意図しているのは、単なるサブリミナル効果ではない。もっと強くて複雑で、言語的な強いメッセージを人間の脳へ、非言語感覚を通して送り込めないか、ということ。映画未知との遭遇で宇宙人と人間が光と音でメッセージを交換したように、非言語を使った言語的なやりとりを作れたら異文化コミュニケーションがさらに深まると思うのだ。新しい感性の開発といってもいいかな。

経営者仲間の焼肉パーティーで話したら、「橋本さんも相変わらず妙なこと考えてますねえ」で一笑に付されてしまったが、結構本気である。この本は、共感覚について知るだけでなく、意識や感覚の仕組みを知って、新しい感性の技術を模索したい、こんな私のようなタイプの人間にも、とても参考になる。

参考URL:
・著者のサイト
http://cytowic.net/
・言葉や音に色が見える――共感覚の世界
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20020325306.html
・脳の構造と共感覚および意識
http://www.ccad.sccs.chukyo-u.ac.jp/~mito/yamada/chap2/
・共感覚とセレンディプティと知識流通
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030630-01.htm
・意識についてのオンラインマガジンPSYCHE(共感覚やその他の興味深い記事満載)
http://psyche.cs.monash.edu.au/

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2003年11月24日

フォント考、印象の良さ、強さ、周辺ビジネス

■印象が強く、良いイメージを与える文字とは?

編集・出版業界以外のビジネスマンにとって、フォントは予めPCに入っているものを使うという意識が強いと思う。プレゼンテーションや、印刷時に、どのフォントにしようかな?と迷うくらいのつきあいのものだ。フォント自体の表現力について普段は詳しく考えないことが多い。字は人を表すともいうから、そこには何か科学があるんだろうなと思っていた。

そこを研究している認知心理学の論文があった。図形や文字のパターンには、視覚をひきつけるエネルギーの誘導場が存在していることが、認知心理学の分野で証明されているとのこと。

・視覚の誘導場
http://www13.0038.net/~nagaishi/
・視覚の誘導場による感性評価
http://www13.0038.net/~nagaishi/cog2003.pdf

このひきつけるエネルギーは、実験結果から、この概念図のように、文字の内側が一番エネルギーが強く、外側へ行くほど弱くなる、そうだ。

myfonts02.JPG

↑(a)がここでいう誘導場

この実験の感性評価では、図形と文字の「パターンの良さ」「印象の強さ」が計測された。ここでは、誘導場の形状が円形に近いほど「良い」印象を与え、パターン全体の潜在エネルギーが多いほど「強い」印象を与えると考えられている。

図形ではこんな説明がある。


交通標識でよく使われる正方形と円のポテンシャルエネルギ−が大きい.正三角形のポテンシャルエネルギ−は,正方形や円ほど大きくないが,複雑度が非常に大きい.したがって,正三角形は図形としての印象はやや弱いが,「良さ」は低く背景との違いが目立つと推測される.実際,正三角形は注意や警告を発する交通標識に使われている

一方,正方形や円は,ポテンシャルエネルギ−が大きいので図形の印象は強いが,複雑度が小さく図形の良さが高い.実際,速度や方向など数字や矢印などで細かな情報を伝える交通標識に使われている

この論文は文字について結論していないが、私の理解では、整っていて、すっきりした筆跡が、印象が良く、強い文字であるということになりそうだ。ということは、フォントの工夫によって、目に留まりやすかったり、書いてある文章が好意的に受け取られる可能性があるわけだ。

フォントの研究というと、見易さの研究が多いけれど、好き嫌い、目立つ、説得力がある、信用できるなどの感性と結びつけて考えるのは面白い。応用すると、

・愛の告白フォント
・謝罪フォント
・イベント呼びかけフォント
・威圧クレームフォント
・ごますりフォント

など、適性のあるフォントを用意して、メールの本文に応じて自動的に最適なフォントが選ばれるメールソフト、なんてできたら、買う人いないだろうか。

■自筆のフォントをつくる

自筆フォントを作成してくれるビジネスやソフトウェアがある。テクノアドバンスのMyFontは、指定された用紙に200文字程度の文字を書いて郵送すると、その筆跡パターンから4000文字分のフォントを合成して、PCで使えるフォントファイルを作成してくれる。納期1ヶ月程度で29800円。なお、メールやWebの利用なら、相手が同じフォントを持っていなくても自動ダウンロードさせるWebFonts技術も採用されている。

イーストのおれん字はパッケージソフトで、自分で200文字程度の文字を用紙に書いてOCRで読み込むと、自宅で6524文字を合成できる。9800円。

3つ目の手書きフォントメーカーは、既存のフォントを読み込んで手を加えることができるフォントエディタ。フリーソフト。

・自筆フォントMyFont(テクノアドバンス)
http://www.techno-advance.co.jp/

・おれん字(イースト)
http://www.est.co.jp/orenji/index.html

・自分流フォントを作るときの道具「手書きフォントメーカー」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2003/11/05/dogubako106.html

活用例としてこれは良いなと感動したのが、兵庫県のとある小学校の6年生全員の自筆フォントを作成した「ぼくらのフォント」プロジェクトだ。子どもたちに1200字の文字を書かせて、それを印章を扱う会社が手でフォント化したとのこと。このクラスの子供同士のコミュニケーションは、メールに自分の色が出せて、きっと楽しいだろうな。

・クラス全員フォント化計画「ぼくらのフォント」
http://www.hakusyu.com/bokura/index.html

ここからは関連リンクの紹介。

■高級なフォントと書体ビジネスの世界、リンク集

・大日本スクリーン 千都フォントライブラリー
http://www.screen.co.jp/ga_product/sento/products/pr_TrueType.html

高級フォントの代名詞であるらしいヒラギノフォントの販売会社。見てみると結構普通ですね。高いからって字体が高級感があるわけではないのだなと結論。

でも、高いフォントはもっとあるらしい。

・クリエイターズ・フォント「有矢無哉」金6万円也
http://www.windam.co.jp/ariya-nashiya/index.asp
・有矢無哉の筆文字フォント「大和撫子」金6万円也
http://www.windam.co.jp/product/jbox/index.asp

2003年10月販売開始予定。第一水準3600文字に対応。とのこと。ぜひクリックして見てください。素晴らしい日本の筆致。こんなフォントでお礼や挨拶を書いたら、気が引き締まりますね。

・今昔文字鏡
http://www.mojikyo.org/html/index.html

収録文字数は約12万字で日本最大のフォント。諸橋轍次著『大漢和辞典』(大修館書店刊)に収録される約5万の見出し漢字がすべて収録。価格 28000円也。

・フォント千夜一夜物語
http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?storyID=1476
・書体と文字のWebMagazine
http://www.jiyu-kobo.co.jp/mm/mojimaga.html

「フォント千夜一夜物語」はフォントとそのビジネスの世界について、エキスパートが語っているコラム集。フォントの発祥や戦争、技術の進歩や作成のノウハウについて、読み応えのある記事が並ぶ。書体と文字のWebMagazineには書体の大家の昔話。

■こんなフォントもある、リンク集

・トンパ文字
http://www.chokanji.com/cktompa/
一時流行した象形文字のトンパ文字。TRONのOS超漢字上で使える。「超漢字メールをつかえば、「超漢字トンパ書体」を使う人どうしで、トンパ文字を含む文章をそのまま電子メールとして送ることができます 」とのこと。そもそも、そういうユーザが存在すれば、ですが...。

・かなヒエログリフ変換
http://ueno.tv/~moji/php/kana_hrg.php

かなを入力すると古代エジプト象形文字に変換してくれる。「はしもとだいや」はこんな感じになるそうだ。
hrg.png

・MyFonts.com
http://www.myfonts.com/Search?searchtype=adv_fonts

3万種類以上のフォントを検索できサンプル表示が見られる。価格で検索できるのが面白い。なお自作フォントを販売することもできる。販売価格の35%がMyFonts.comの利益になるビジネス。

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2003年11月23日

三色ボールペン情報活用術

・三色ボールペン情報活用術
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情報との出会いも一期一会だと思うことだ。「この情報とは、この瞬間を逃したらもう会えない、今日を限りにもう一生出会うことはない、そのくらいの気持ちで接する。

情報術の売れっ子作家である著者の言葉。これって大事なことだと思う。たまに、会議の直前になって「じゃあ、今日は橋本さんが最初に全体のレクチャーしてね」と頼まれたりする。慌てて配布予定の書類に目を通すのだが、そういう、時間が限られていて緊張感のある時の方が、同じ文書から、たくさんの量の情報を読み取れることがある。

この本の提唱する三色ボールペン情報活用術は至ってシンプルな方法論である。

「客観的に最重要なものは赤、まあ大事なものは青、主観的に大切だと感じたものは緑で、線を引いたり、丸で囲ったりする、それだけだ。

ただそれだけ。細かい公式ルールはほとんどない。そして基本的に自分の読解のための、色分けである。他人のために色分けするのではないのがポイントのように思った。

著者は情報と向き合う術について、聞きなれない3つのノウハウを語っている。自分なりに要約してみると恐らく、こういうことになる。

1 くぐらせる
   外側にある情報を内側へ自分のフィルターで取り組み記憶に残す
2 立ち上がらせる
   文章の中の重要な部分、キーワードを意識して浮き上がらせる
3 編み出す
   緑で色分けした自分なりの発想、着想からアイデアを生み出す

2週間ほど実践してみている。効果は結構あったなあと思って続けている。3色に分けようという目的意識があるために、普段は頭を素通りしてしまう文書が、記憶に残りやすくなっていくのだ。著者の言う、情報との一期一会感、緊張感が強まるということだと思う。

この本の著者は大学の教授である。情報活用術の本はたくさんあって、学者の先生や、それ自体のノウハウを売るのが仕事みたいな人の著作は、どうも一般ビジネスマンのノウハウとずれていると感じることもある。この本も、ビジネスの具体的なワークフローや特定の業界の情報術にはあまり触れられていない。若干、そういう面もあるのだが、方法論と効果の分かりやすさ、実践のしやすさがそれを補っている。いい本。

ところで、一本に赤、青、緑の「3色ボールペン」は実はあまり売られていない。普通はこれに黒が入って4色ボールペンが多い。文房具屋で何本か試したが、ゼブラの4色ボールペンが使いやすかったのでそれにした。決して3色の3本のボールペンを使ってはいけないらしいので注意。

3colors03.gif

評価:★★☆☆☆

■メールの色分けは便利

個人的に実践している色分けはメールである。Beckyというメールソフトは、登録したキーワードがメール本文にあると色分けで表示してくれる。3色にできると便利なのだが今のところ一色のみ。自分や知人の名前、興味のあるキーワードを登録しておくと、メールマガジンなどを流し読みしていても見逃さないので便利。(きっと他のメールソフトにも色分け機能はあるのだろうけどあまり利用者は少ない?)


クリックで拡大3colors02.JPG

■色のバリアフリーという視点

色と情報について調べていたときに以下のサイトを見つけて、普段気がつかなかったことを教えてもらった。色分けで情報を見やすくするつもりが、何パーセントかの人には逆に見えにくくなってしまうことがある。気をつけたい。

・色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション
http://www.watsonkun.com/shujunsha/barrierfree.html
日本人の20人に1人は色覚異常であるとのこと。色のバリアフリーについて書かれたページ。

・色覚に障害を持っていたとしたら、あなたのサイトは見えるでしょうか ?
http://www.microsoft.com/japan/msdn/columns/hess/hess10092000.asp
Webのアクセシビリティは浸透しつつあるけれど、色の問題に気をつけようという話はあまり聞かない。このページは実例があって勉強になる。マイクロソフト提供。

#本記事のメールサンプルは、お手伝いさせていただいている、デジハリ卒業生で構成するプロタマの内部MLにコンサルタントの安藤氏が流している濃いクリッピングメールから勝手にパクらせて頂きました。リンク張ったから許して>安藤氏。

#記事自体も3色で色分けしてみました。赤と青だけ読めば要旨が分かり、緑を読めば、私の個人的、主観の意見が伝わっていたら成功といえそう。

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2003年11月22日

プチ情報テロとSmall World Technology

先日の「つながりの科学」続編。

■「情報テロしたくなるときがあるんですよ」:プチ情報テロの誘惑

先日、あるブレインストーミング会議で、女性の参加者がこんな意見を話した。「私、ときどき、インターネットで情報テロってしたくなるんですよ。」。私も同じようなことを考えたことがあるので言いたいことはすぐに分かった。

プチ情報テロをしたいのである。思い入れの強い企画やイベントを計画したときに、この情報を、とても広く伝えたいと思うことがある。何万人、何十万人かそれ以上の人数、つまり世界中にこのメッセージを伝えたいというときだ。年に1回くらいは誰しもあるのではないだろうか。

人は日常は、小さな世界、つまり知人・友人のネットワークの中に暮らしている。自分でメディアを持ったり、マスメディアに意見を書く人は少数である。大抵は、多くて数人の親友と数十人の友人、100人くらいの知り合いという小さな世界と向き合っている。

プチ情報テロは、誰しも、できないこともない。例えば、2ちゃんねるに「これってどうよ?」とスレッドを立てるとか、ゴシップ風記事に仕立てて大規模なMLに投稿するような手法だ。

■突発大規模オフ、FlashMobs現象

日本では「突発大規模オフ」、英語で言うなら「FlashMobs」現象はまさにそんなプチ情報テロの例だろう。特定の日時と場所でまったく同じ行動を起こそうという約束を、匿名コミュニティで行って、実際に実施する行動である。

数百人規模で成功した事例として私が知っているのは、

・江の島清掃
あるテレビ番組で江の島(神奈川の観光地)の浜を清掃する企画を察知した2ちゃんねる住人たちが、その番組の前の日に現地に大集合して、浜をキレイに清掃してしまった。テレビ側は、撮影当日ゴミのない浜を掃除しているフリをせざるを得なくなった。

・牛丼屋で大集合
これも2ちゃんねるで、示し合わせた集団が特定の牛丼店舗に同時集合してまったく同じややこしい注文を行った。その結果、店舗はマヒしてしまい、「2ちゃんねるお断り」の店も現れたとか。

・広島折鶴
広島の平和公園で数十万羽の折鶴が不届きな学生によって放火で消失。これを嘆いた2ちゃんねる住人らが、日本中に呼びかけて折鶴を100万羽くらい集めて寄付。あっという間の出来事に公園側も嬉しく驚くが、最後のオフ会で主催者らが公園で悪ふざけ。賛同者たちからつるしあげをくらう。

だが、現状は上記のような、情報テロを普通の人が仕掛けるにはリスクがある。やみくもにやれば社会的信用を失うかもしれないし、確実に意図が伝わる保証もない。それに情報テロを仕組む人が、社会に増えてしまうと、膨大な数のテロメッセージの中に埋もれてしまい機能しなくなる。

・同じサーバの同居人Shima氏の関連記事(この記事のアイデアはこの記事から発想しました。感謝。)
http://www.ringolab.com/note/shima/archives/000433.html

・Flashmobs(海外での事例)
http://www.flashmob.com/

■小さな世界とはどんな世界か

Stanley Milgramというアメリカの社会心理学者(故人)がいる。「小さな世界」について研究した最初の学者で、知人に荷物を適当に郵送しあって目的の人物にたどり着く確率を調べる、そんな実験をやっていた研究者だ。1960年代の彼の業績が最近、ネットで注目されている。

・インターネットは「狭い世界」を検証できるか
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20020131206.htmlここでは「狭い世界」と訳されている。

・ Stanley Milgram
http://www.stanleymilgram.com/

Hotwired記事で紹介されているようにネットワーク上の小さな世界についてはコロンビア大学で研究されているプロジェクトがある。参加者がメールを知り合いに送ることで、予め決めた世界の19人(Hotwiredの記事の20人は恐らく間違い、論文が正しいはず)にどれだけ伝達されるかを計測する実験をしている。171カ国、6万人で試した結果、19人に伝わるまでに、国内なら5人、国外では7人経由して到達することが分かった。まさにSixDegreesだ。

・Small World Research project
http://smallworld.columbia.edu/

次のNASAにおけるレクチャー資料が小さな世界を考える上で参考になる。極めて的を得た要約。以下私の超訳。

・Networks, Search, and TheSmall-World Problem
 ネットワーク、検索、小さな世界問題
http://shemesh.larc.nasa.gov/Lectures/OldColloq/WattsColloquium.pdf

1人に100人の知り合いがいれば、100×100で1万人とつながっている。5人をたどると100の5乗だから100億人、世界人口をカバーする。5人の友人をたどれば、全世界の人間が知り合いといえる。

しかし、Milgramの推測はランダムに人間がつながっていると仮定していたから単純すぎる。現実の人間のつながり方にはふたつの特性があると指摘する。

1 Homophily
類は友を呼ぶ。似たもの同士がつながっている。
2 Triadic closure
あなた、私、第3者の3人の関係がランダムよりは近いということ。

つまり、人脈のつながり方は、均等にランダムではなくて、大小のありがちなパターン(超意訳、詳細は原文参照)で存在しているということだ。有名人同士は意外に知り合いだったり、異業種でも関心の近い人が群れる会があったり、人脈の広い人徳者を介して多数の人がつながっていたりする。だから名刺交換をしながら共通の知り合いを発見して「世界は狭いですねえ」というのだ。

この論文では、「社会的距離」を数学的に計算する方法と、戦略を提案している。地域と職業は特別なパラーメータとして見ているようだ。地域が近い、同じ業界の会社だ。いろいろな次元での近さがあるけれど、そういう多次元のネットワークの中で最小の距離こそ、社会的な距離である。純粋に数学的なネットワークと比較して、人間のネットワークは、かなり異なっているのではないか、と検証されているが、まだ完全な結論は出されていない。インターネットの人脈は、規模が拡大しても通信コストが変わらない「スケールフリー」なネットワークなのかどうか、だとか、人はネットワークをどれくらいグローバルに知ることができるのか、といった仮定が討論されている。

■宛先は「それを必要としている人」へ

小さな世界で最もうまく機能する戦略、つまり「情報テロ」活用術が分かれば、私たちはやみくもに見知らぬ他人にメッセージを送ったり、2ちゃんねるに不確実な爆弾投稿をしかける必要はなくなる。

世界中の「それを必要としている人」へ、信頼できる人同士のネットワークで情報を送ることができるようになる。受け取る側も信頼できる人から、そのメッセージを受け取ることになる。次世代のメールは個別の宛先に送る以外に、To:「それを必要としている人」という宛先オプションが現れるかもしれない。

そうすると、(最近の私の悩みでもある)以下のような問題が解決できる。

・告知したいプレスや関係者のリストをメンテナンスする手間
・小規模なメーリングリストにたくさん参加しないといけない状況
・毎日たくさんのスパムメール
・メールでの紹介(照会)のやりとり
・ビジネスアイデアを思いついても誰に送ればいいか分からない状況
・情報テロをやりたいだけやっても怒られない、むしろ褒められる

■アプリケーション

小さな世界の現実的な応用を考えてみる。私の案としては、以下の二つではないかと考えている。

1 メールサーバ+FOAF = 企業人脈サーバ
企業のメールサーバのやりとりから、社内の誰と社外の誰がどの程度の頻度でつながっているかのデータベース化。アドレス帳から役職や名前データを取り出し統合。営業、広報、提携先探し、メール配信など渉外業務に役立てる。(FOAFは過去記事参照)

2 名刺+RFID(ICタグ)= 個人人脈サーバ
ICタグの埋め込まれた名刺を会社の専用名刺入れに入れると、リーダーが読み取って、個人の人脈データベースを構築する。その前後で交わしたメール内容も一緒に保存されるので、何の案件や関心を持った人なのか、記録も残る。この人脈データベースを使えば、必要なときにTo:「それを必要としている人」メールができる。

また、現実には小さな世界に投資を始めた人もいる。人材紹介会社に応用している事例だ。名門のベンチャーキャピタルが動いたのは興味深い。

・信頼を紹介する会社、米LinkedInに米Sequoia Capitalが470万ドル投資
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/11/13/1114.html

その他、小さな世界は、SARS対策や文書からキーワードを抽出する技術、Webからトレンドを発見する技術にも応用されつつある。非常にトレンディなテーマだ。他にどんなアイデアがおもいつくだろうか。

・「狭い世界」現象をSARS対策に応用する研究者たち
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030603305.html

・Small World 構造に基づく文書からのキーワード抽出
http://www.miv.t.u-tokyo.ac.jp/papers/matsuoIPSJ02.pdf

・Webの“トレンド”を発見する新手法をコーネル大学教授が提案
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0219/trend.htm

・過去関連記事:つながりの科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000406.html

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2003年11月21日

それは「情報」ではない

・それは「情報」ではない。―無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン
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情報デザインの世界で著名なリチャード・S・ワーマンの代表作。独自の情報哲学を提唱し、あらゆる情報をデザインしては世界をアッと言わせてきた、Information Architect(情報建築家)の先端を走る人物。

ワーマンは情報を構造化する方法は5つしかないと定義している。5つは頭文字をとってLATCHと呼ぶ。位置、アルファベット、時間、カテゴリ、階層。あらゆる情報はこの5つとその派生形の構造化手法で説明、分類できるという。

LATCH
Location位置地図として表現
Alphabetアルファベット順番、順序で表現
Time時間時間軸で表現
Category分野カテゴリで表現
Hierarchy階層程度で表現

確かにこの5つで表現できない情報は探すのが難しい。地図ならば位置だし、電話帳はアルファベットだし、スケジュール帳は時間、YAHOO!は分野、通知表なら階層である。それだけでは意味がないデータの集積を、5つの手法を駆使して、理解に結びつける形にする。データと情報は別次元であり、理解できないものは「それは情報ではない」のだ。

ワーマンはこの方法論で、カリフォルニア州のイエローページを再デザインした。2300以上ある職業別分類の見出し名を、より大きなレベルで少数の、利用者視点のカテゴリへ統合し、「目的検索ページ」を追加した。電話帳の形(データ)は変えずに、検索方法を整理するだけで、飛躍的に便利になった。その結果、ワーマンは世界中の電話帳のデザインを依頼されるようになり、次々に新しいアイデアを考えている。この本にも多数事例が紹介されている。

ところで、この本の目次や構成はさぞや整理されているのかと思いきや、まったく逆である。雑然としている。アジアの中華街みたいだ。うまい店がカオスでありながら最適化された配置で並んでいる感じがする。一章ごとに前章と連続しないテーマが、一見脈絡なく並べられ、すべてのページの下部には注釈として長い関連情報が大量に書かれていたりする。何ページおきかに挟まれるコラムやビジュアル資料も、本文を説明して収束させるのではなく、そこからつながる情報へと拡散させていくように仕向けられている。計算された雑然さが、心地よい。発想を刺激される。

私は最初から最後まで順番に読んだが、好きなところから読むほうが正解の本なのかもしれない。パラパラめくったページに書いてある参考文献やURLが、のぞいてみると深い底なし沼だったりする(経験者は語る)。骨の髄までしゃぶれる本なのだ。私は全部読了したけれどもまだ全部読めていない気がしている。

ワーマンはインターネットにも意欲的だ。彼の監修した代表的なWebサイトには、Understanding USAがある。オンラインと書籍が連動した作品。米国の政治や経済や社会の複雑な事象を一目瞭然で理解させるというコンセプトに結集した、一流の情報デザイナーが彼の指揮のもとで作り上げた情報ビジュアライズの見本市。このサイトは、書籍と同じ350ページすべてがダウンロードできる上に、著作権がない、そうだ。複製して配って構わないらしい。米国の統計情報を企画資料に使いたい場合などにも使えるわけだ。

・Understanding USA
http://www.understandingusa.com/

ワーマンは意図的に著作権フリーの戦略を取ったことも解説している。コピーが出回っても、350ページ印刷するよりは、25ドルの本を購入した方が安上がりだし、宣伝効果と高い評価につながるというわけだ。ネットでの情報伝播の特性やノウハウもこの本には重要なことが、書かれていて参考になる。

誰か意欲的な日本人デザイナーさん、同じライセンスで、「Understanding Japan」を作ってくださいませんか?。

この本に出てきたか関連する無数のURLのうち面白かったURLを5つ。

・テキストを三次元で表示するMITのベンジャミンフライ
http://acg.media.mit.edu/people/fry/valence/

・ライターのための情報リソース
http://www.writerswrite.com/

・斬新な工業デザインの会社FrogDesign 見るだけで楽しい(IDEOのようだ
http://www.frogdesign.com/index.html

・ワーマンが主催するテクノロジー、エンタテイメント、デザイン会議
http://www.tedmed.com/

・ワーマン自身のオフィシャルサイト
http://www.wurman.com/

評価は高い。ワーマンは情報を押し付けるのではなく、読者の創造性を刺激して各自なりの情報哲学を持て、とメッセージを送っていると感じる。そういった意味では長い付き合いのできる、私の情報デザインのバイブルと言える。

評価:★★★★☆

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2003年11月20日

「信頼性と説得力のあるWebサイト」の科学

■Webの信頼性を説明するPI理論

今日もWebの話題。米国スタンフォード大学の説得技術研究所(Stanford Persuasive Technology Lab)という、奇妙な名前のグループが、信頼性のあるWebサイトとは何か、説得力のあるコンテンツとは何か、を研究している。延べ6500人以上の被験者を動員した数年間の研究成果として、PIという理論を彼らは構築した。

・Prominence-Interpretation Theory:
Explaining How People Assess Credibility Online
突出と解釈理論:
ユーザはどうやってオンラインで信頼性を評価するのか
http://credibility.stanford.edu/pdf/PITheory.pdf

この研究では、ユーザはWebページを読んで、それが重要で信頼できる、と考えるまでに次の2つのプロセスを踏むと仮定している。

1 ユーザは目立つものを見つける(際立っているという評価度)
2 ユーザはそれを解釈する(解釈による評価度)

そして得られた二つの度合いを掛け算した結果、信頼性の大きさが決まるというのが、このPI(Prominence-Interpretation)理論である。以下、要約していく。

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突出度 × 解釈 = 信頼性

目立っている、際立っている、突出しているというユーザの判断には次の5つの要素が大きく影響する。その後の解釈には、その次の3つの要素が関係する。

突出度の主な要素
    1 ユーザの熱意と能力(Involvement)
    2 Webサイトのトピック(Topic)
    3 ユーザの目的とする作業(Task)
    4 ユーザの背景知識や経験(Experience)
    5 ユーザ個別の事情(Individual differences)

解釈の主な要素
    1 ユーザの推量、思い込み(Assumptions)
    2 ユーザのスキルと知識(Skill/Knowledge)
    3 ユーザの置かれた状況(Context)

これらはユーザごとに異なる個人的な評価である。

例えば、熱意と能力あるユーザは同じサイトを見ても、より多くの情報を見つけていく。ユーザにとって、それが今探しているトピックであるかどうか、目的とする作業に必要かどうか、背景知識があるかどうか、も、サイトの突出度の印象を左右する。

解釈の方では、例えばページに聖書の引用があるとき、信者はそれを信頼性のあるものと考えるが、逆に否定的に捉える人もいる。または切れたリンクがあった場合、ある種のユーザはこのサイトはきちんとメンテナンスされていない信頼できないサイトという烙印を押す。

■Web信頼性ガイドライン

そして成果として彼らは「スタンフォード Web信頼性ガイドライン」を作成して公開している。一読すると、呆れるほど当たり前に思えるが、理論的に考えて、これで必要を網羅していると思えば、実は作るのが大変な、貴重なリストなのである。すべての項目についてその根拠となる論文がリンクされている。このページ自体がリストの第1位である正しさの根拠を示せを体現している。

・Stanford Guidelines for Web Credibility
http://credibility.stanford.edu/guidelines/index.html

1 サイトの情報の正確さを分かりやすく立証せよ
2 サイトの裏側に実世界の組織の存在を示せ
3 組織と提供するコンテンツやサービスの専門性を強調せよ
4 誠実で信頼できる人間が裏側にいることを示せ
5 あなたにコンタクトできるようにせよ
6 プロライクなデザインにせよ
7 使いやすく便利なサイトにせよ
8 サイトをよく更新せよ
9 宣伝要素には節度を持て
10 あらゆる意味で小さなエラーも起きないようにせよ

さて、このPI理論という前提から、彼らは膨大な量の、ユニークな研究を多数展開している。そのひとつがWebの信頼性の数値化である。

■信頼性の認知向上チェックリスト

・Stanford-Makovsky Web Credibility Study 2002
Investigating what makes Web sites credible today
http://captology.stanford.edu/pdf/Stanford-MakovskyWebCredStudy2002-prelim.pdf

彼らは1999年度の信頼性研究の結果、重要とみなされた要素について55の質問を設定した。この質問に対して7段階の度数で答えるようにフォームを作ってオンラインでユーザに答えさせた。具体的には、「このサイトではコンテンツと広告が区別できる」「このサイトには有名企業の名前がリストにでてくる」「このサイトは滅多に更新されない」といった質問だ。

企業の協力で1500人以上から収集したデータを解析し、Webの信頼性に対して、どの要素がどの程度、影響力を持っているかを数値化したのだ。素晴らしい。ここまでいけば企業で使えるツールと言える。

・信頼性の認知向上リスト
独自にリストを訳してみた。原文にはさらに信頼性や専門性、スポンサーシップ(広告や協賛)要素がどの程度の重みを持っているか詳細に数値化されている。

0が中央値。プラス数値は信頼性に対して、ポジティブ要素、マイナス数値はネガティブな要素。

2.0以前に利用して有益だと分かっていた
運営組織は広くレスペクトされている
1.8顧客の質問に迅速に答えてくれる
1.7実世界の物理的住所を表示している
以前の訪問から更新されている
1.6電話番号を表示している
1.5プロフェッショナルなデザイン
電子メールアドレスを表示している
内容がよく分かるように構成されている
情報ソースに基づいた包括的な情報を提供している
1.3記事ごとに著者の表示がある
引用や参考文献を表示している
あなたが信頼するサイトからリンクされている
1.2個人情報保護ポリシーが明示されている
デザインがサイトのテーマにふさわしい
取引時に電子メールによる本人確認が実施されている
検索機能がある
外部のサイトやリソースへリンクしている
1.1ニュースメディアで推薦されている
1.0友人に推薦された
競合サイトへリンクしている
印刷しやすいページデザインである
複数の言語で提供されている
0.8ラジオやビルボードや他のメディアで広告が出ている
ユーザの意見やレビューが掲載されている
0.7その記事自体にレイティングやレビューがつけられている
著名な企業の名前が顧客リストに含まれている
非営利団体によるものである
0.6代表者とライブチャットができる
サーチエンジン検索結果の最初のページに表示される
あなたの好みに応じたコンテンツが選ばれている
0.5サーチエンジンのディレクトリのトップに表示される
0.4以前訪問したことを覚えている
0.3受賞した賞を表示している
URLのドメインが「.org」で終わる
0.2読んでいる記事にマッチした広告が表示されている
eコマースサイトとしてデザインされている
0.1あなたとは異なる意見がある
0.0
-0.1登録やログインが必要
-0.3商業目的のサイトである
-0.4第3者にホスティングされている(AOLやGeocitiesなど)
-0.5情報ソースの根拠のない情報を提供している
-0.6各ページに一つ以上の広告がある
-0.9有料サービスである
-1.0ダウンロードに時間がかかる
-1.1会社の名前とドメイン名がマッチしていない
財政的困難や法律上の問題を抱える企業である
-1.3タイプミスがある
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