2006年01月30日
死にカタログ
大人のための絵本。
これは死に方についてのカタログである。
著者はJT広告「大人たばこ養成講座」をてがけた人物。各所の喫煙コーナーにウィットに富んだ喫煙マナーの啓蒙イラストを描いた。少なくとも都内の喫煙者ならば大半がご存知のはず。
すべての人間にとって「いちばん未来の話」である死を、明るく真剣に考えてみよう、がテーマ。
1 死のカタチ
2 死のタイミング
3 死の場所
4 死の理由
5 死のものがたり
という構成で、絵とキャプションで、何百もの死のあり方を一コマ漫画風に描いている。
「それは「情報」ではない」の著者の仕事「Understanding USA」に手法は似ている部分もある。たくさんの参考書籍、統計データをベースに、多様な死のあり方をわかりやすく可視化した。
・それは「情報」ではない
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000510.html
・Understanding USA
http://www.understandingusa.com/
街の中ではどんな死があるか、どんな死に方が多いかを街の絵に織り込む。家の中の死のあり方の絵もある。日本人の死因は8200種類以上もあるそうだ。しかし、実際には80%の人間は病院で死を迎えている。
平均寿命ランキングのグラフがある。日本は1位である。抜粋してみる。
1位 日本 81.9歳
2位 スイス 80.6歳
3位 オーストラリア 80.4歳
5位 スウェーデン 80.4歳
5位 カナダ 79.8歳
〜
20位 アメリカ 77.3歳
〜
30位 韓国 75.5歳
〜
90位 ロシア 64.8歳
〜
100位 インド 61.0歳
〜
120位 ケニア 50.9歳
〜
149位 シエラレオネ 34.0歳
世界の最貧国シエラレオネでは乳児の死亡率が異様に高い。平均寿命の高さはだいたい経済的豊かさに比例する。世界のどこに生まれたかで、死への距離は決まってしまうと言えるだろう。その意味では日本は最も死から遠い国といえるかもしれない。
それでも現代日本人の死への関心は深いようだ。著者は面白い分析をしている。
「
日本の映画配給収入ランキング20位のなかで、人が死ぬ物語の比率を調べてみました。
「およそ9割」
子ども向け映画以外のほとんど全部です。さらに、その5割は、大量に人が死ぬのです。
「人が死なない国では物語のなかで人が死ぬ」
」
イランやインドの映画では人が死ぬ映画はここまで多くないのだとのこと。現実生活で死と直面することが少ない代わりに、物語でそれを体験し、考えようとしているのではないかと著者は考察している。
世界各国の宗教や神話の死生観を描いたイラスト集や、歴史上の有名人の生から死までの道のりを描いたイラスト集など、死のイラストばかりだが、ユーモラスな軽いタッチなので読みやすい。イラストの細部にも結構な情報量が織り込まれているので、考えさせられるページも多い。メメントモリな本である。
自分は何を終わり方の理想としているのだろう?と考えてみました。
すべてを成し遂げて家族に見守られながら一句、
「
願わくば 桜の下にて 春死なん その如月の 望月のころ
」
こんな辞世を詠んでさようならというのが理想、かなあ。
って、まだよくわかりませんね。この句も借り物ですしね。。。
2006年01月29日
原稿用紙に200字書けば自分フォント完成 まるで手書き
1 200文字の付属原稿用紙に指定された文章をペンで書く
2 スキャナーで原稿を読み取る
3 パラメーターを調整する

すると、あら不思議、私の字のフォントセットができちゃいました!というソフトだ。
これが実際につくってみた私の手書き文字フォントである。

似ています。
一般的なフォントセットが生成されるので、Wordやはがき作成ソフトなどフォント設定できる文書作成ソフトならば、自分の手書き文字を使うことができるようになる。手書きのパワーポイントプレゼンもインパクトがありそうだから、今度挑戦してみよう。
3種類のベースフォントを選んだり、くせの抽出度を調整することで、自分のくせをより正確に反映したフォントを作成できる。自分フォントは文書を作成していてとても楽しい気分になる。
・フォント考、印象の良さ、強さ、周辺ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000526.html
2006年01月28日
Webやメールのパスワード一覧を表示する Protected Storage PassView
・Protected Storage PassView
http://www.nirsoft.net/utils/pspv.html

会員認証付のWebサイトを複数使っていると、IDとパスワードの管理が面倒である。 Internet ExplorerはサイトごとにIDとパスワード情報をしばらく保持してくれるので、再度の訪問時は自動入力、自動ログインになることが多い。だが、設定期間を超えるとセキュリティ上、情報が消されてしまうケースがある。
IE以外にもパスワードはある。OutlookなどWindows系のアプリケーションはパスワードを*****という風にアスタリスク表示で安全性を高めてくれる。しかし、パスワードをメモしたい、人に教えたいようなときには、中身がなんだったのか忘れて困ることもある。
Protected Storage PassViewは大変、便利だが、使いようによっては危険でもあるパスワード一覧表示ソフトである。起動すると、その端末が使用したWebサイトのID、パスワード、検索履歴、MS Outlookのメールのパスワードなどを調べて、秘匿情報を平文で一覧表示する。技術的には、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Protected Storage System ProviderというWindowsのレジストリ情報の中身を解析しているらしい。
はじめて使ったとき、便利だなと思うと同時に、ちょっとゾっとした。
WindowsやWebのパスワードをあまり信用してはいけないということだろう。このようなソフトで簡単に全部を取り出せるのだから。
この配布サイトには、ある端末のID、パスワード一覧情報を、他のPCへ移植する手順なども公開されている。日本語化パッチもある。
・パスワードを取り戻す、管理する、生成するツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002133.html
2006年01月27日
優秀起業プランに3000万円出資のネットビジネスコンテスト 第2回
第2回 インターネットビジネスプランコンテスト::アエリア
http://www.aeria.jp/ibpc/

昨年度に続いて、下記、インターネットビジネスプランコンテストの審査員になりました。投資家の方々に混ざって、百式管理人の田口さんと私が入っているのが、このコンテストのユニークなところだなあと思っています。
優秀なプランには主催者関連企業からの最高3000万円の出資と支援があります。インターネット業界は現在好況で追い風が吹いていると感じます。たくさんのご応募をお待ちしております。
審査員の顔ぶれ:
株式会社アエリア 代表取締役会長 長嶋貴之
株式会社ネットエイジグループ 代表取締役社長 西川潔
株式会社ジャフコ 第二投資本部長 渋澤祥行
ZENSHIN CAPITAL PARTNERS 代表 森健
データセクション株式会社 代表取締役 橋本大也
百式 管理人 田口元
ビジネスの収益性という部分では他の審査員に的確な評価をお任せして、私としては、面白いモノ、世の中の役に立つモノ、革新的なモノを発掘するお役に立てたらと思っています。
以下、概要を引用。
詳しくはこちら
第2回 インターネットビジネスプランコンテスト::アエリア
http://www.aeria.jp/ibpc/
【募集テーマ】
・ インターネットを使った新しいビジネス(PC、ケータイを問わず)
・ インターネットをより面白く、便利にする新しいビジネスアイデア
・ インターネットとリアルの接点を取り扱う新しいビジネス
・ インターネットと既存メディアの融合をテーマとするビジネス
【審査基準】
・ 新規性 ユニークで、ほかにない強み・特色があること。
・ 実現性 技術的・あるいはビジネス的な裏づけのあること
・ 収益性 ビジネスとしてうまみのあること
・ 社会的意義 世の中に役立つこと
・ 応募者の技能や経験 もしくは信念・情熱
【応募資格】
・ 18歳以上(国籍・学歴は問いません)
・ Aコースは、今年末までに100%コミットによる創業体制がとれる人。(他の仕事との兼務は不可です)
・ 東京都内でのプレゼンテーションに参加できる人
※ チームでの応募も歓迎しています。
【募集期間】
2006年2月1日〜2006年3月24日(必着)
2006年01月26日
ベルカ、吠えないのか?
2005年度出版の一般小説ではベストだと思う。
1943年、第二次世界大戦下のアリューシャン列島。撤退する日本軍によって、4頭の軍用犬が置き去りにされた。数奇な運命によって海を渡り、世界へ散らばる血統は、人間の歴史に翻弄されながら、人間の歴史を逆に翻弄することにもなる。偉大なイヌの歴史を縦糸に、人間の歴史を横糸に、半世紀に渡る壮大な現代史のタペストリがそこに浮かび上がる。
世界史を総括する大河小説でありながら、テンポのよい筆致で、高い娯楽性もそなえた一大傑作である。鬼気迫る勢いの文体。執筆中、著者は何かに取り憑かれていたのではないか。見事なまでに魂のこもった語り、鬼気迫っているというのがふさわしい形容だろう。
古川日出男という作家の作品はこれが初めてだった。他の作品を知らないのだが、この一冊は世界的に通用する普遍の文学性を持った出来栄えであると思う。壮大な現代史を極めてユニークな手法で語ることに成功している。そこにあるのは、現代の日本人が失いつつある原初的な生命力であり、生きる意志で生きるものたちへの賛歌であると思う。その漲る生命力の前にはイデオロギーも善悪も霞んでしまう。
著者プロフィール:
古川 日出男
1966年福島県生まれ。早稲田大学第一文学部中退後、編集プロダクション勤務等を経て、98年『13』でデビュー。2002年『アラビアの夜の種族』で、第五五回日本推理作家協会賞と第二三回日本SF大賞をダブル受賞
・はてなダイアリー - 古川日出男とは
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C5%C0%EE%C6%FC%BD%D0%C3%CB?kid=1908
2006年01月25日
SFベスト201
SF小説は好きで学生時代から読んできたが、この本で書評されている201冊のうち、読んだことがあったのは50冊程度。この分野で有名な書評者らが、作家の位置づけや作品の魅力を的確にレビューしており、たくさんの発掘があった。グレッグ・イーガンと出会ってからは、イーガン一辺倒になってしまい、いかんなあと思っていたので、これから次々に読んで幅を広げてみようと思う。
さて、この201冊の中で、私が既に読んだ作品の中から、ベスト3を作成してみた。書評本を使って、メタ書評である。これらを読んだのは15年くらい前なので詳細は忘れているが、興奮と感動の大きさだけは覚えている。
「月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。」
私とハードSFとの出会いは思えばこれだった。続編が何作もあるが、これが最高。
「太陽系内に突如現れた謎の小惑星。だが、それは自然の天体ではなく、巨大な金属物体であった。ついに人類は、宇宙からの最初の訪問者を迎えることになるが……。巨匠クラークが<未知の存在>とのファースト・コンタクトを、該博な科学知識を駆使して見事に描きあげた超話題作。」
黙々と読んで気がついたら朝だった記憶がある。SFの魅力満載。
「1952‐2001年。英国ケンブリッジ生まれ。1978年BBCラジオドラマ「銀河ヒッチハイク・ガイド」脚本を執筆。翌年、この脚本を小説化した本書がベストセラーとなり、小説は全5冊のシリーズとなった」
駄作になりやすいナンセンスギャグとSFの融合で、これだけ出来のいい作品を他に知らない。最近映画化されて話題にもなった。小説は私が読んだのは現在絶版の新潮文庫版であった。訳が重要なので入手可能ならば新潮文庫版を薦める。
なお、このSFベスト201は編者によるまえがきが、近年のSFの総括と展望となっていて、読み応えがある。映像SFにおされ気味だが活字SFもインターネットの普及により、新刊とロングセラー以外の作品にも注目がいくようになって、思わぬ活性化につながっているようだ。まさにロングテールによる発掘ということか。
2006年01月24日
ポッドキャスティング入門
米国では2004年末に3000を超えるポッドキャスト・チャンネルが登録され、2005年6月には8000を超え、2010年にはポッドキャストのリスナーが5000万人を超えるという予測があるそうだ。携帯型オーディオ・プレイヤーの普及により、”移動中メディア”の主役になる可能性があると著者は期待している。
この本はポッドキャスト放送の制作者のためのガイド本である。
ただマイクで一発録音するだけでも制作が可能なのがポッドキャストの面白さでもあるが、やはり人気放送局にしたいなら、AMやFMラジオのような演出を施したくなる。たとえば、オープニングの音楽がだんだん小さくなってトークが始まり、音楽はそのまま続いてBGMになる、ような構成はどうやったら作れるのだろうか?一発録音ではなく、個別に録音したパートと音楽を後からつなげるにはどうしたらいいのだろうか?
この本ではフリーソフトのAudacityを使って、ミキシングなどの編集を行う手順が図解されている。マイクなどの機材選定や録音方法についてのアドバイスもある。
・Podcast編集に使えるフリーのオーディオエディタ・レコーダー Audacity
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003714.html
Audacityは以前、このブログでも紹介した。
他にも気になったツールとしてCastBlasterがある。ポッドキャストの開祖Adam Curry氏が開発した専用編集ソフトである。
・CastBlaster
http://castblaster.com/
ポッドキャストで困るのが音楽の著作権の問題だ。
著作権料を払わない限り一般の放送で流れているようなヒット曲は使えない。そこでPodsafe=ポッドキャストで自由に使ってよいという特別なライセンスの曲を集約しているPodsafe Music Networkがこの本では紹介されていた。
・Podsafe Music Network
http://music.podshow.com/
このほか、ポッドキャストの歴史や、現在放送中の日本のポッドキャストの紹介、キャスターの紹介がある。アマチュアもプロも一緒に試行錯誤していることがよくわかる。いままさに立ち上がろうとしているポッドキャストの世界は熱い。
ところで、2月7日に梅田望夫氏の出版記念イベントでポッドキャスト放送をやる予定です。私はイベントの司会です。がんばります。ポッドキャスト公開したらぜひ聴いてください。
・My Life Between Silicon Valley and Japan
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060112
「
「ウェブ進化論」(ちくま新書)発売日の2月7日(火)夜に、下記の通り、東京で出版記念イベントを開催します。筑摩書房主催「梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」」です。
招待ブロガーとして、「情報考学 Passion For The Future」の橋本大也さんに司会役をお願いし、議論のパートナーに「R30::マーケティング社会時評」のR30さん、「FPN: Future Planning Network」代表の徳力基彦さんらをお招きします。1時間のラジオ番組みたいな感じで録音して、翌8日(水)までにポッドキャスティングで公開します。
」
2006年01月23日
第3回 テレビとネットの近未来カンファレンスを開催します
テレビとネットの近未来カンファレンスも第3回。
今回は新しいサービスやソフトウェアをたくさん紹介する予定です。
私は神田さんとネタ10番対決です。
今回のイベントは無料です。
よろしくお願いします。
第3回 テレビとネットの近未来カンファレンス
「20+αの先端事例でディスカッション 2006」
■第2回 テレビとネットの近未来カンファレンス
http://www.tvblog.jp/event/archives/2006/02/index.html

↑上記バナーをクリックで参加申し込みへ
「テレビとネットの融合」って結局どういうこと?
第3回ではこの分野の最新事例からキーワードを整理してみたいと思います。
テレビでネットを見る?ネットでテレビを見る?全部録画?Eコマース連動番組?携帯電話向けテレビ放送?専門検索エンジン?個人放送局?ビデオ・オン・デマンド?。どんなビジネスモデルがありえるの?何が私にとって便利なの?
海外と国内の「テレビとネット」の最新のサービス、ソフトウェア、デバイスの中から、注目に値すると考えた事例を選び出しました。漠然と未来を考えるのではなく、いまそこにある実現サービスから、これからどんな世界が立ち上がろうとしているのかを、予想してみたいと思います。
今回はデジタルコンテンツのイベント「PAGE」の連動イベントとして、日本印刷技術協会様の協賛を得て、本シリーズ初の参加費無料で開催することができました。
第1部 テレビを”どこでも視聴”するソフトウェア展望
テレビ番組をパソコンで全部録画する時代の到来を前提にサービスを開発しているベンチャー、メタキャスト社のipod/psp対応テレビ視聴アプリのプレビューと、その先に見える展望。
メタキャスト 井上大輔
第2部 テレビ×ブログからトレンド抽出
ブログに登場するキーワードを分析することで最新の話題を発見するサービスkizasi.jp。テレビというマスメディアを連携させた新手法について解説。
・kizasi.jp : 今日、ブログで話題になったことって?
http://kizasi.jp/
株式会社シーエーシー kizasi事業推進室 新谷氏
第3部 テレビ×ネットの先端サービス ベスト20
神田敏晶 VS 橋本大也
ネットリサーチを得意とするKNN神田敏晶とメタキャスト橋本大也が、テレビとネットの近未来をキーワードに先端製、独創性、将来性のベスト10リストを作成しました。交互にベスト10を発表する対決型プレゼンです。
【日時】
2006年02月01日(水)開場17:00 開演 17:30-19:30
【主催】
楽しいTVの未来を考える研究会
【料金】
無料
【申し込み】
イベント参加のお申込み こちらをクリック
http://www.tvblog.jp/event/archives/2006/02/index.html
2006年01月22日
フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
・フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

クライマックスではこみあげてくるものがあって目頭が熱くなった。知的好奇心を満足させる科学読み物でありながら、心をゆさぶる感動のドラマとして成立している。アマゾンの50以上の読者レビューのほとんどが最高点5つ星をつけての絶賛となっている。私は6つ星をあげたいくらいだ。
この本を読むのに数学の知識は要らない。楕円方程式、モジュラー形式、谷山=志村予想、コリヴァギン=フラッハ法、ガロアの群論、岩澤理論。サイモン・シンは極めて難解な解法を、人間ドラマの物語の中で順序だてて、やさしい概略として示してくれる。定理の最終証明は数学の専門用語と先端理論を使った100ページに及ぶ論文だそうだ。
この本には論文の最初の1ページの写しが掲載されるのみである。徹底的に簡単化されている。だが、十分に読者はその解法の概略を理解できるようになっている。著者の並外れた文章力と、構成力にも感動する。
フェルマーの最終定理とは、17世紀にフェルマーが残した難問である。フェルマーはノートに自分は答えを知っていると思わせぶりな書き込みまでつけていた。歴史上、数多くの数学者が全力でこの問題に挑んだ。だが、誰でも理解可能な問題でありながら、350年の間、誰もそれを解くことができなかった。学会においても解けないものだと思われていたが、1995年、現代の数学者ワイルズが8年の歳月をかけて研究し、ついに完全証明を達成した。
フェルマーの定理は、
「
3以上の自然数nに対して
Xn + Yn = Zn
を満たすような自然数、X、Y、Zはない
」
というもの。
この式はn=2ならば、ピュタゴラスの定理である。
ピュタゴラスの定理は「直角三角形において、斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい」という義務教育で習うおなじみのものだ。もちろん解がある(たとえば3,4,5)
。解があることは簡単に証明が可能だ(本の巻末に証明法がある)。
しかし、n=2を三乗(n=3)に変えると解はみつからなくなる。実は解がないのだ。この証明はn=2のときほどやさしくはないが、すぐに研究者によって証明された。そしてn=4のときも、n=5のときも、解がないことが証明されていく。フェルマーの定理を解くということは、nを無限に増やしていっても、解がないことを証明することだ。
そんな証明の話のどこが面白いんだと思われる人が多いだろう。私も読む前にそう思ったが、約400ページのこの本には純粋数学の面白さが詰まっていた。生まれ変われるなら、一度は数学者になってみたいとさえ思った。だから、この本がきっかけで未来の数学者を志す、何百人、何千人の若者がいたに違いない。
・暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004028.html
・ヴォイニッチ写本の謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004123.html
2006年01月21日
WebページをPDFにキレイに変換するIE Snapshot ACCALIA
・IE Snapshot ACCALIA - capture your web
http://www.limperex.com/snapshot/

仕事でWebページを印刷したいと思っても、綺麗に紙のサイズに合わせて印刷するのは実はコツと手間がいる。普通にWebブラウザの印刷ボタンを押しただけでは、端がかけてしまったり、背景色が抜けてしまったりする。
IE Snapshot ACCALIAはWebページをキャプチャするツールである。画像ファイル(GIF、BMP、JPG)での出力だけでなく、PDFでの出力にも対応している。PDFは画面で見たままをファイル化する、印刷するのに適したフォーマットだから便利である。
2画面、3画面以上に渡るタテの長いWebページもキャプチャが可能だ。領域選択した範囲のみを出力させたり、紙のサイズ(A4,A3など)に調整することもできる。PDFならあらゆる環境に同じ見栄えで表示できるから、Webの仕事をしている人間にとっては、プレゼンの強い味方になる。
作成したPDFの例1: http://www.tvblog.jp/
http://glink.jp/files/IES_06-01-11_16-40-49.pdf
作成したPDFの例2: http://www.yahoo.co.jp/
http://glink.jp/files/IES_06-01-11_16-29-22.pdf
ファイル名が標準設定では、自動的に取得時刻になるというのもアーカイブ目的での使用上、便利な仕様だ。
2006年01月20日
お年玉付き年賀葉書(切手)当選確認ツール
・お年玉付き年賀葉書(切手)当選確認ツール(v平成18年版)
http://park15.wakwak.com/~yu-ki/software.htm

お年玉付き年賀はがきの当選番号が発表された。
・平成18年「お年玉付郵便葉書」及び「寄附金付お年玉付年賀切手」の当せん番号
http://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/info/2006/nenga/index.html
4等お年玉切手シートは50人に1人当選だが、3等の地域の特産品小包(1個)は5000人に1人という計算になる。狭き門だ。
さっそくチェックしていたのだが、目視で一枚一枚照合するには結構な時間がかかる。
何十枚かやっているうちに、効率的なやり方を考案した。
今年の当選番号は末尾が1,2,6,7,8,0である。だから最初に末尾が3,4,5,9のはがきは除外できる。これで作業量は4割になる。その上で、当選番号に含まれる下二桁8種類を暗記しておき、残りのはがきは下二桁の照合で済ませることができる。
え、もしかしてこのやり方、これ常識ですか?(汗)。
この作業を支援するソフトを開発している人もいるのではないかと、勘が働いて検索したところ、すぐに見つかった。さきほどの私の発想は全部実装されており、さらに先に行っていた。さすが。
このソフトは下二桁を片手で数値入力していくだけで、当選番号をチェックできる。二桁目を入力した段階で自動的に照合結果(ハズレ、アタリ)が表示され入力確定を省いているのが使いやすい。もうその次に押した数字は次の照合プロセスの一桁目になるのである。アイデアだ。
別のソフトを見つけた。こちらは下二桁が当選番号に含まれる場合、続いて上4桁の入力を促すインタフェースになっている。リストを登録して一括チェックも可能。
・年賀はがき当選チェッカー
http://fsoftware.xrea.jp/soft/ntousen/

当選発表に限らず、こういうリアルの大きなイベントに連動して、専用ソフトをタイムリーにリリースするのは結構需要がありそうである。”時事ソフト”などというジャンルを確立できるかもしれない。
・ダウンロードサイト ベクターで「当選」を検索
http://search.vector.co.jp/search?query=%93%96%91I
ジャンボ宝くじやロトくじなど、多数、当選確認と予想ソフトウェアが公開されている。
2006年01月19日
10年後の日本
この新書は、同じ編集部による820ページ超の「日本の論点」の簡易版といえる位置づけ。
論客雑誌「論点」はサイトも充実している。
・文藝春秋編 日本の論点PLUS
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/so-net/
ただ、14年の歴史のあるこの大作は読破するには手ごわい。個別の問題を深く掘り下げたいのでなければ、大局を知る上にはこちらの方が簡潔にまとまっている。取り上げられた論点は次の10個。
各章をタイトルとともに一言で説明してみる。
1 変わる日本社会のかたち
格差の拡大と治安の悪化、見直し迫られる消費税、老朽化するインフラ。
2 鍵をにぎる団塊世代
700万人の無職老人。危ない退職金、年金制度。
3 ビジネスマンの新しい現実
ものづくりの力の減退と外国人労働者増。
4 漂流する若者たち
フリーター500万人時代、ニート100万人。
5 世代が対立する高齢社会
保険料引き上げと、のしかかる介護問題
6 家族の絆と子どもの未来
増える虐待、教員不足、子どもの学力、体力低下
7 男と女の選択
出生率の更なる低下、専業主夫20万人
8 地球環境の危機
30年以内に70%確率で起きる首都圏直撃大震災、エネルギー危機、食糧危機、温暖化
9 グローバル経済の奔流
国債の破綻とふたたび景気停滞、中国とBRICs諸国台頭。
10 不安定化するアジア
北朝鮮統一と中国共産党の崩壊、テロの脅威拡大
経済と社会の観点では、2007年から一斉に引退が始まる、団塊の世代の老後の過ごし方が、日本の10年後に大きな影響を与えることが確実のようだ。4人に1人が老人の社会。彼らの資産がどのように使われるか、その消費が若い世代の経済活動とどう結びつけられるかが、日本経済復活の鍵になりそうだ。若者が創意工夫で作り出すサービスで、団塊の世代が喜んでカネを出し、豊かな老後を過ごせるのが理想。
危機という観点では、犠牲者1万3000人が想定される関東大震災よりも、64万人が死亡すると推計された新型インフルエンザの方が怖いように思えた。SARSは専門家の国際協力により、大規模な感染を未然に防いだ実績がある。予防する手段がある危機と言う点で、エマージングウィルス対策こそ重要かもしれない。
勝ち組、負け組の格差の問題はやはり最大の論点のようだが、思うに格差は相対的なものである。世界でみたら日本は相対的にとても豊かな国だ。世界レベルの格差を国民的な論点にして、その解決を国内の勝ち組も負け組も一緒に考えた方が、「世界の100年」という大論点では、有益なのではないだろうか。
2006年01月18日
人は「動き」だ!―なりたい自分を演出する40の方法
注目していたサイトが書籍になった。
・人の動き探偵団
http://www.hitonougoki.com/
「動きで見るニュース」では、メディアに登場する人物の動きに着目して分析を重ねている。最近ではこんな感じだ。面白い。
・第56回 NHK紅白歌合戦を盛り上げた「みのもんた」のアクションの秘密
http://www.hitonougoki.com/text/geinou6.htm
・耐震強度偽装問題証人喚問・証人
http://www.hitonougoki.com/text/shakai1.htm
この書籍はこちらのコーナーがベースになっている。項目はほぼ同じなのだが、もちろん大幅に加筆されている。
・なりたい自分を演出する10の動き方
http://www.hitonougoki.com/text/naritai.htm
人は動きのノウハウを知るだけで、大幅に人に与える印象を変えられる。
人の動作には次の3つの法則があるという。指を指したり、着席したり、振り向いたりといった動作に応用できる。
1 動きの方向
内側に閉じる動きは、わかりやすさや、地味さを表す
外側に開く動きは、華やかさや、アバウトさを表す
2 動きの圧力
圧力を入れる動きは、意志の強さや、激しさを表す
圧力を抜く動きは、意志の弱さや、やさしさを表す
3 動きの速度
速い動きは実行力や、機敏さを表す
ゆっくりした動きは、穏やかな行動力や、控えめな様子を表す
「堂々としたいとき」「相手を立てたいとき」「好かれたいとき」「お詫びやお礼がしたいとき」など10項目に、イラスト入りの動作のアドバイスが詳しい。
なるほどねと感嘆し実践してみようと思ったのは、
お願いするとき「十秒長くやるだけで粘り強く見える」
親切な印象を与えたいとき「相手をよく見る人は親切な人」
断りたいとき「手のひらを突き出せばはっきり断れる」
といった項目。
動作というのは、他者に与える印象を変えるだけでなく、自己イメージまでも変えてしまうものだと思う。堂々と振舞っているうちに自信がでてくるし、力強く腕を突き上げてみればやる気が湧いたりもする。最初は演技でも、繰り返すことで、自己イメージが変わって、自然な習慣になってしまえば、それが本当の自分になってしまうものだ。
形から入ることの有効性を知る一冊。
2006年01月17日
ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング
・ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング

ブログの総本山シックスアパート社によるブログのビジネス活用のすすめ。ブログの運用システムの世界標準を策定した会社であるため、企業活用の豊富な事例が収録されている。そして、ブログ運用の”常識”が濃縮されている。
「ブログはコミュニケーションの道具」であると関社長がまず宣言する。不特定多数の人たちとコメントやトラックバックを通じて情報交換ができる。企業はこのコミュニケーションを通じて、ちゃんと対応することで、お客さんにシンパシーを抱いてもらい、まずはブログの、そして会社のファンになってもらうことを目標とせよと説いている。その先に業績の向上が見えるのだ。
個別のコンサルティング事例公開も面白い。結婚式のプランニング企業、プランドゥシー社の例。クレームがあったら、そのやりとりをブログ上で公開して進めることで、”おもてなし”の心が、読むものに伝わり、好意的なクチコミにつながるという。コミュニケーションの基本は誠実さ、なのだ。
ラジオ放送局J-Waveの例では担当者の自主性に任せて、番組ごとにブログを勝手に公開できるようにしたところ、20以上のブログが立ち上がって、Webの活性化と番組宣伝につながった。出版社の柴田書店では、自社ブログで書籍を紹介することで、新刊以外の本がロングテイルで売れて、Webの売り上げを10倍にした。リクルートではフリーペーパーと連動したクロスメディア展開が花開いた。
巻末には100社の事例カタログがスクリーンショットと概要説明つきで載っている。これから自社でブログを始めたい担当者は、上司説得の材料を見つけることができそうだ。
ところで、この本を読んで私はブログの怖さも感じた。
ブログは企業にとって、その価値が白日の下に晒される試金石である。
必要とされる誠実さ、尊敬される経営哲学、人気を呼ぶ社員のパーソナリティ、コミュニケーション能力、無論、組織の持つ社会常識や教養までがブログを通じて露出してしまう。つまりブログを活用できるのは裸になっても魅力的な素性の良い会社に限られるのではないか、ということ。
たとえば社長がブログを勝手に書いて公開する。それで問題が起きない必要がある。担当者が自由裁量でサービスを語っても営業と開発の揉め事が起きない整合組織である必要がある。サポートがクレーム対応のやりとりを公開してもボロがでない商品・サービスを売っている必要がある。
ブログができない会社って、いまどきダメな会社かもしれませんよ。
・このブログがすごい! 2006
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004106.html
・図解 ブログ・マーケティング
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004097.html
・できる 100ワザ ブログ アフィリエイトも楽しめるアクセスアップの実践テクニック
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004087.html
・アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003916.html
・Blog Hacks ―プロが教えるテクニック&ツール100選
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002121.html
・ウェブログ超入門!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001771.html
・アルファブロガーを「もっと」探せ-2005 - Alphabloggers.com
http://alphabloggers.com/

私のブログに限らず、いいと思うブログを投票してあげてください。ブログの活性化につながる企画だと思います。また選ばれるように私もブログを強化していこうと思っています。
2006年01月16日
偽薬のミステリー
プラセボ(プラシーボ)効果の徹底研究。
かつて医薬は魔術、心理学、身体の治療の3本柱から成り立っていた。実証主義科学の勝利と物質還元主義の時代の到来によって、西洋医学では魔術要素はすべて消し去られた。心理学要素も一度は消えたが、精神医学、行動心理学によって部分的に現代医療に蘇っている、と著者は医薬の歴史を総括した。
一般的に、医薬は服用することで、薬学的に活性な分子が身体に作用し、患者の病気を治すものと考えられている。しかし、薬学的には何の効果も持たない薬(偽薬)を使っても、本物の薬と同じか、それ以上の効果を発揮するケースが多々あることを、この本は紹介している。医者、患者、薬の3者の相互作用する空間に強力な治癒効果が生まれる。
不安、うつ病、月経前症候群、癌性腫瘍、術後疼痛、頭痛、咳、リューマチ、結核、腫瘍の成長などの分野で、偽薬効果は研究され、平均して30%の(かなり高い)効果が認められた。分野によって強弱は異なるが、あらゆる病気の治療過程で偽薬効果があるようだ。古代の呪術や中世の錬金術も、当時、それを信じた人々には効果をあげていた。
「この薬を飲めば直りますよ」は、看護婦がいうより医者が告げたほうが、さらには”名医”と呼ばれる権威が告げたほうが、投薬効果が高まるという。患者が医者の言葉を信頼していればいるほど、効果がてきめんになる。興味深いのは、患者だけでなく、医者自身もそれを信じている方が効果が高まるという事実だ。医者がその言葉を自信を持って告げられるからだと考えられる。
錠剤の色や薬の名前も医薬の効果に影響する。精神安定剤には緑色の錠剤がよく使われる。効きそうな薬の命名法というのも存在する。効きそうな薬は本当に効いてしまう。医師である著者は豊富な臨床経験から、プラセボ効果は、意識的にせよ、無意識的にせよ、現代医療の背後に不可欠な存在になっていることを指摘する。
そもそも、薬学辞典に含まれる多くの薬が、臨床試験で効果があったというだけで認定されており、実際の薬学的な活性は怪しいものが多いのだという。その事実を医師は知りつつも、処方すれば効果があるので利用されている。特に治療方法がわからない病気、手のつけようのない病気、放っておいても治る病気の際の投薬は偽薬的な内容であることが多いらしい。
偽薬は医学の表舞台では長く無視されてきた。医師の権威を損なうものであるからだ。しかし、軽い病気では、副作用など危険のある古典医療よりも、偽薬を使った方が、安全に病気を治せるのではないか、と、著者はその意義を積極的に評価している。
市販の風邪薬を選ぶ際に、私はついつい効能の記述が多い、高い製品を買ってしまう。実際に効果が高い気がする。この本に紹介される事例でも、同じ医薬が、高いコストを支払っているという意識がある場合に、そうでない場合に比べて高い治癒効果をあげている。何でも安ければいいというものではないらしい。信憑性が重要なのだ。
日本には「病は気から」という言葉がある。薬ではなく、コミュニケーションや信心で病が本当に治せるなら、偽薬効果の科学はもっと研究されていっていいと思った。
2006年01月15日
日本奥地紀行
こんなに面白い紀行記があったのかと発見に喜んだ一冊。
今から128年前。明治11年6月から9月の3ヶ月間東京から北海道までを、一人の英国人女性がお供の”伊藤”を連れて旅をした記録である。著者が妹に送った44通の手紙をもとにして書かれている。世界中を旅行し紀行本を何冊も著した彼女は、人類学者のように細やかで冷静な観察眼と小説家並みの文章能力を持っている。この本は、当時の日本の貴重なスナップショットになっている。
イザベラ・バードは船上から見えた富士山の美しさを絶賛しながら横浜港に到着し、東京でしばらく奥地旅行の準備をすすめた。何人も面接を行った上で、狡猾そうだが、機転が利きそうで英語のできる少年”伊藤”を旅のお供に選ぶ。そして陸路で北上し、各地で寄宿しながら、目的地の北海道を目指す。美しい自然や、素朴な農村の人々とのふれあいを綴っている。北海道に入ってからは念願のアイヌ人との共同生活体験も実現させる。途中には何度か危険な難所越えもあり、冒険譚としても読みどころ満載である。
著者の日本の印象をまとめてみると、
・外国の女性が旅行しても安全な国
・こどもをやたらと可愛がる国
・農村の生活は貧しいが自由な国
・悪臭、蚤や蚊に悩まされる国
・プライバシーがない国
ということを、繰り返し強調している。
プライバシーがない国というのは、住居の様式の問題もあるのだが、著者が当時は珍しい外国人だったことにも起因している。東北の村は滅多にない欧米人の訪問に大騒ぎである。
「二千人をくだらぬ人々が集まっていた。私が馬に乗り鞍の横にかけてある箱から望遠鏡を取り出そうとしたときであった。群集の大逃走が始まって、老人も若者も命がけで走り出し、子どもたちは慌てて逃げる大人たちに押し倒された。伊藤が言うには、私がピストルを取り出して彼らをびっくりさせようとしたと考えたからだという。」
人間が好きで、日本人の生活に深く入り込もうとする著者なので、人とのふれあいエピソードには事欠かない。人々の礼儀正しさや、自然の美しさには何度も感嘆する。日本は大好きであったようだ。
「
米沢平野は、南に繁栄する米沢の町があり、北には湯治客の多い温泉場の赤湯があり、まったくエデンの園である。「鋤で耕したというより鉛筆で描いたように」美しい。<中略>自力で栄えるこの肥沃な大地は、すべて、それを耕作している人々の所有するところのものである。彼らは葡萄、いちじく、ざくろの木の下に住み、圧迫のない自由な暮らしをしている。これは圧政に苦しむアジアでは珍しい現象である。
」
通過地点の村や町の記述は、いまそこに住んでいる人にとって、昔を知る興味深さがある。私の場合は、横浜や東京の当時の街の記述が勉強になった。紀行のクライマックスで記述量の多い東北や北海道の人ならなおさらだろう。もちろん、外国人旅行者の視点からの誤解もあるが、それは巻末の解説などで正されている。彼女自身の素描イラストが多数あるのも魅力である。
もうひとつの日本を、日本人が体験できる名著。
2006年01月14日
GoogleでBecky!を検索するGoogle Desktop プラグイン for Becky!
・Google Desktop プラグイン for Becky!
http://d.hatena.ne.jp/shintarou3/20051108#1129278992

デスクトップの検索エンジン Google DesktopはVersion2になってサイドバー機能も追加され、一層便利に使っている。サイドバーの機能は標準では下記の通り。プラグイン機構をもち、ユーザは開発キットを使って自作アプリをつくることが可能。
・Google デスクトップ - ダウンロード
http://desktop.google.co.jp/
画面写真あり。
A. ニュース: カスタマイズされたニュースの見出しが表示されます。
B. ウェブ クリップ: ウェブ サイトの RSS/Atom フィードが表示されます。
C. スクラッチ パッド: 簡単なメモとして使うことができます。
D. 天気予報: 各地の天気予報をチェックできます。
E. 写真: ウェブやコンピュータ上にある写真のスライドショーをお楽しみいただけます
F. 株価情報: 登録した銘柄の最新の株価を確認できます。
G. メール: Outlook や Gmail などの新着メールをすぐに確認できます。
H. クイック ビュー: よく使用するウェブ ページやファイルに簡単にアクセスできます
サイドバーの「ウェブクリップ」機能は一見、RSSリーダーなのだが、ユーザがRSSを登録する必要がない。ブラウザで閲覧したWebにRSSが含まれている場合、自動的にリストに登録されるからだ。
手放せないツールになっているのだが、ひとつだけ不満があった。標準では私が愛用しているメールソフト Beckyに対応していないため、メールの検索ができなかったのだ。それを前述のプラグインで解決するソフトが見つかった。
この個人作成のGoogleDesktopプラグインは、Beckyのメールを検索対象に含めることができる機能を提供する。設定画面で指定したフォルダだけを検索対象にすることも可能なため、機密事項は検索結果にでないようにすることもできる。
メールの検索結果からは、1クリックで、直接Becky!から開く、返信、全員に返信、作成を行えるのが大変便利だ。これで体感的にはGoogle Desktopが2倍はパワーアップした気がしている。
2006年01月13日
サムネイルで視覚探索強化型タブブラウザ Picea
・Picea 配布ページ
http://www6.plala.or.jp/nyk/picea/index.html

Piceaは画像ビューアのソースコードを改造して開発されたという、ユニークなタブ型ブラウザ。通常のタブブラウズに加えて、閲覧したページのサムネイルをブックマーク保存し、ナビゲーションを支援する機能がある。
オンラインヘルプによると特徴は以下の通り。
・Picea にできること
Web ページのタブ切り替えながらの閲覧
お気に入りのサムネイルの生成
Web ページのサムネイルをキャプチャーし、ブックマークとして利用可能
進む・戻るボタンの代替インターフェイスとしてグラフ表現を用いた「グラフウィンドウ」を実装(実験中)
閉じたタブをあとから閉じた時点のサムネイルを参照して開くことが可能です(最近閉じたタブウィンドウ)
ブックマークの検索・閲覧機能が豊富です(URL、閲覧日時、閲覧回数、タイトルなどをキーにソート、検索が可能です)
ブックマークのサムネイルイメージ自身をキーとして類似するサムネイルイメージを検索することが可能です
キーワードの HTML パースによる自動抽出
マウスジェスチャ
URL によるポップアップブロック
多段ダブ
RSS フィード受信
最近閉じたタブ機能
タブのロック
64ビットネイティブコードによるx64環境での高速動作(x64版)
とても面白い機能としてグラフウィンドウがある。これはWeb閲覧履歴のページのサムネイルを、ページ移動のリンクで結び、どのページからどのページを訪問したかを一目瞭然にする。情報探索のログを残しておくことができるので、複数人数で調べる際にも、中間の調査状況を共有できて便利そうだ。

また最近閉じたタブのサムネイル一覧であるとか、配色が似た画面を探す類似検索機能など、他のブラウザにはない独自の機能を搭載している。実験色が濃いソフトであるが、今後の発展が楽しみなソフトである。
2006年01月12日
音楽する脳
著者は認知学者でミュージシャンというこのテーマにうってつけの人物。音楽と脳の共進化仮説を提唱し、音楽の本質とは何かを、生物学的、文化的、社会学的に分析していく。音楽が単なる娯楽ではなく、人類とその社会にとって、いかに重要な役割を果たしているかを、膨大な情報量で語る。
私たちの音楽の感動体験の中身とは何なのか、演奏する喜びはどこからくるのか、
この本ではいくつかの法則が提唱され、事例や比喩を使って説明されていく。重要度の高い法則を、それぞれ抜き出して、私なりのひとこと説明でまとめてみた。
「
人間社会の法則:
人間は、その神経系が相互作用の同時性を通して結びつくとき、人間固有の社会的空間を作りだす。
」
「皆で拍子を合わせること」はチンパンジーにはできない。音楽は人類の文化だ。
「
二つの環境:
中枢神経系は、外部世界と体内環境という二つの環境で役目を果たしており、体内環境に代わって、外部世界と体内環境のあいだの関係を調節している。
」
身体は中枢神経系を通じて他者の神経系とも同調できる、ひとつになれる。
「
等価の法則:
一人の身体にある複数の振動子(指や足など)が結びついて起こるリズミカルな動作は、二人以上の異なる身体にある振動子の結びつきで起こる動作と、同じ力学にもとづいている。
」
独奏も合奏も背後にある原理は同じである
「
アンサンブルの状態は縮小する:
音楽しているアンサンブルの、集合的な神経系の状態空間の大きさはそのアンサンブルの代表的な一人の状態空間に近づく。
」
人はたくさんの演奏者の合奏をひとつのゲシュタルトとして認知する
著者によると、こうした法則を持つことで、人と世界、人と人を結びつけるのが音楽の機能であり社会的役割である。こうした音楽の才能は、生物学的な適応として生じた脳の機能モジュールもあるが、文化的、社会的に発達し、個人が後天的に習得する部分も大きい。
人は演奏でリズムを刻むとき、振動子を使うのか、カウンターを使うのかという興味深い研究もあった。たとえばトン・トン・タというリズムを刻む場合、演奏の習得時には意識的に数えるからカウンター的な脳の機能を用いている可能性が高い。技能が身につくと数えなくても自然に身体が動くようになる。身体には振動子が内蔵されていて、技能者の複雑なリズム演奏は、振動子の周期を組み合わせて実現されているようである。これはドラム演奏などをちょっとかじれば体感できるところだ。
西洋の音楽は、リズム、メロディ、ハーモニーの3要素に還元される。この中で反復するリズムを著者はグルーブの流れ、メロディをジェスチャーの流れと命名した。反復するグルーブは時間の流れを止め、音楽が生まれる精神的空間をつくりあげる。その空間の中でジェスチャーの流れが感情を揺り動かす物語的な意味を語っていく。脳にはこのふたつの音楽要素を感受するモジュールがあることを脳科学や認知科学の実験から説明している。
音楽空間における感情体験はバーチャルなもので、日常生活における感情体験とパラレルだがイコールではない。音楽を聴くことで高揚したり、メランコリックになったりする。脳の動きも実際にその感情を感じているときと似た動きをしている。だが、物悲しい音楽を聴いた気分は本当の悲しみとは明らかに異なる。感情が音楽によって捏造されている。音楽で感動した際の言葉にしようのない気持ちは、バーチャルな感情生成の原理に起因するものなのだろう。
人類進化において音楽の果たした役割、脳の諸機能と音楽、音楽の天才たちの脳のはたらきや、労働における音楽の社会的役割、音楽文化の未来などテーマは多彩。演奏者の視点も多いので、プレイヤーにとっても勉強になる科学がたくさん紹介されている、実に面白い本。
2006年01月11日
「特攻」と日本人
昨日の「自爆テロリストの正体」と一緒に読んでいた本。
9.11の自爆テロリストと第二次世界大戦の日本の特攻隊員は、まったく異なる心理で死んでいったはずだとする本。昭和史研究の功績で菊池寛賞を受けた専門家による、特攻の意味を再考する本。
戦没学生の手記をまとめた「きけわだつみのこえ」は戦争評価に大きな影響を与えたが、この本が編集されたのは昭和24年の占領下日本であった。だから、占領政策による制約や編集者の意向もあって、あまりに情緒的過ぎるもの、軍国主義的なものは省かれていた。この本には、わだつみに収録されなかった遺稿が多数紹介されている。
書かれたのは戦時中であるから、表面上は特攻隊員に選ばれたことは名誉だというものが多い。しかし、残される家族への思いを吐露する部分では、その死を栄光と自発的に考えていたものなど、ほとんどいなかったのではないかと思える。
行間に滲み出てくるのは、それを名誉とでも思わなければ、目の前に突きつけられた自爆死に、しらふでは向き合えなかったこころの防衛機制である。「お国のために」死にたいというのは、職業軍人はともかく、特攻の7割を占めた学徒出陣組の本望ではなかったはずだと著者は書いている。
「
私は安田や吉田の世代ではないから、とうてい同じ姿勢で遺稿を読むことはできない。死者と同一化して読むことはできない。逆に客観化して読むことができる。客観化とは何か。特攻で逝った戦没学徒の遺稿を歴史の目で読むことである。彼らはこのような時代にあって、何を求めたのかというあたりまえのことを確認することができるのだ。そのことは、いささか大仰に言うなら、<予定された死>と向きあうときに知性や理性はどのように解体されたかを私たちは学ぶことができるのだ。
」
特攻を祖国愛に燃えての行為とみなしてはならないと著者は説く。英霊とまつりあげたり、犬死にと意味づけたりするのは間違っている。彼らは、感性を軸にしたナショナリズムで戦略もなく戦った国家の犠牲になった、尊い命だったと考えるべきだ著者は結論する。
著者は息子に特攻を語り継ぐ意義を問われ、「でも、特攻隊因が体当たり攻撃をすることによって、アメリカの海兵隊員も何百人も死ぬわけだろう」と言われて、愕然としたと書いている。海外のジャーナリストは9.11の自爆テロリストとどう違うのかと著者に質問したらしい。戦後60年が経過した。特攻隊員の行為の解釈はもはや常識ではない。歴史的な意味の説明が今、求められている。
極限下の状況で、お国のための名誉の戦死を死ぬことにしか、自らの死の肯定的な意味づけを見出せないようにまで追い込んだ、国家の責任を追及することはできる。しかし、戦後60年の今、犯人探しと責任追及はほとんど無意味である。
当時の特攻戦術を軍部が何度も却下しながら、戦況の悪化と共に徐々に肯定ムードへ傾いていく時代の空気の変化がこの本にはまとめられている。誰か大悪人の司令官が特攻で若者は死ねといったわけではないのである。このじわじわとなし崩しになっていく部分が怖いのだろうと思った。
私たちの世代に日本がまた戦争に巻き込まれないとは断言できない。社会の空気がじわじわと変わっていくとき、私たちはそれに気づけるだろうか。知性や理性の解体に有効な阻止の手立てを打てるだろうか。著者の言う「戦没学徒の遺稿を歴史の目で読むこと」は、過去を裁くためというより、未来に備えるために必要な歴史学なのだと考えた。
2006年01月10日
自爆テロリストの正体
9.11同時多発テロの実行犯の実像を追ったドキュメンタリ。実行犯家族への取材や原理主義指導者への直接インタビューなど、実地の取材で肉付けしていて興味深く読めた。自爆テロは自らの命を犠牲にする行為であり、無宗教の日本人にとっては理解しがたい境地である。その心理状態がどのように形成されていったのかを著者は分析していく。
「神の道のために殺された者を、けっして死者と考えてはならない。いな、主のみもとで扶助を賜って生きているのである」(コーラン)
「神とこの使徒たちの言いつけを守る者は、神が恩恵を垂れたもうた預言者たち、誠実な人たち、殉教者たち、善行者たちの仲間にはいる」(コーラン)
9.11テロは、過激なイスラムの聖戦というイメージが、メディアを通して印象づけられている。しかしイスラム教自体は平和を愛する温和な宗教である。イスラムの経典コーランには上のような殉教の意義についての記述はあるものの、飽くまで歴史的文脈の中での記述に過ぎない。決して現代において殺人を肯定しているわけではない。
テロを正当化しているのは一部の過激な原理主義者たちに過ぎない。しかも、原理主義の真のリーダーたちは自爆テロを指示しただけであった。自らの命を捧げたのは生粋のイスラム原理主義エリートではなく、改宗者が多かったという。
テロの実行犯には欧米での生活や留学経験のあるものが多い。フランスなどヨーロッパ国籍のものもいる。彼らは生まれついてのイスラム教徒ではなく、欧米文化とイスラム文化の狭間で育ち、差別やアイデンティティの問題に悩まされた若者であった。
「貧困の中で世の中の不平等に絶望し、テロに走った」という見方は誤りで、「彼らがテロを起こした決定的な理由は貧困ではなく、自己の内面に起きた変化だ」と著者は分析する。
実際、実行犯の多くは貧困な家庭に育ったわけではなく、比較的恵まれた環境に育ったものが多かったようだ。大卒も多い。だが何らかの自身の弱さに起因する挫折や、欧米社会からの差別的待遇への絶望を募らせたものが多かった。俗世間的な意味での成功者がいない。「そこそこの教育は受けたものの、その後社会で進むべき道を失った人々」であった。著者のことばでは「大卒の出来損ないこそがテロリストになる」。
若者に共通の「自分探し」の悩み、アイデンティティの悩みを抱いた彼らに、システマチックな布教と洗脳を施したのがアルカイダであったとされる。感受性の強い若者を選び、巧妙に心の弱さにつけこんで、殉教の意義を信じさせる。
実行犯は、にわかづくりのテロリストなので、ゴルゴ13のようにはいかないと著者は批評している。事実、9.11前に捕まってしまったものもいれば、他のテロでは自爆前に逃亡したものもいた。
9.11テロは単なる犯罪なのであって、イスラム教世界とキリスト教世界の宗教戦争などと、大騒ぎすると、原理主義者の思うつぼであると著者は警告している。オウム真理教のテロを「仏教徒のテロ」と呼ぶのと同じくらい的外れな視点だという。
9.11テロを宗教と切り離して考えるべきなのかは、私にはまだよくわからない。宗教が根源的にもつ危うさは別に考えるべき問題である気がする。だが、実行犯の出自や生育環境を取材した情報を見る限り、一部の原理主義指導者に、若気の至りがうまく利用されたのが、あのテロの現場レベルの実状であることがうかがえる。オサマ・ビン・ラディンやブッシュがいう聖戦や悪の帰結によるものではないことがわかる。
実行犯の妻たち、親や兄弟への積極的取材なども生々しい。















