2005年12月30日

ディアスポラこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサード リンク

・ディアスポラ
4150115311.01._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

今年のベストSFも、やはり、イーガンの最新の邦訳。

めまいがするほど壮大な物語。現代SF作品の最高峰。グレッグ・イーガンと同時代に生きている幸運に心から感謝したくなる。こんな作品には一生で、あと何冊めぐりあえるだろうか。邂逅である。

正直、今回は圧倒的に難解だった。この本を読む行為は作家の創造力の極限と読者の想像力の極限の知的格闘とも思える。これは極端に読者を選ぶ本だ。最新の宇宙論や量子論、先端科学の概要を予備知識として把握しておく必要がある。できればイーガンの過去の主要作品も読んでから挑戦すべきだ。そうでないと序盤から物語の意味を理解できないかもしれない。

書評したイーガン作品:

・万物理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002774.html

・祈りの海
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003779.html

・宇宙消失
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003824.html

・しあわせの理由
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003869.html

イーガンの大ファンの私でも、この本だけは序盤で何度も放り投げそうになった。しかし、イーガンが意味のない作品を書くはずがないと信じて粘ってみた。中盤で世界観を理解した後は、いっきにひきこまれた。驚愕のストーリー。もう無我夢中で読みすすめた。読後は圧倒されて、しばらく何も手につかなかった。

西暦2795年。人類は肉体を捨てソフトウェアとして仮想空間に”移入”する道を選んでいた。あらゆる物理法則から自由な世界で、人類の存在様式は過去とはまったく様相の異なるものに進化している。この世界では人は永遠に生きることができる。他者の精神と融合することもできる。自らの複製をつくって偏在することや、時間の感じ方を制御して自分の時間軸で生きることもできた。

情報ネットワークの中で生成された人工生命も、人類と同じように生きている。情報化された存在は変幻自在である。外観は好きな形態をとることができるし(外観などなくてもいいのだが)、言語を超えた超越的なコミュニケーション方法が当たり前になっている。
不老不死とあらゆる束縛から逃れたかのように思えた人類を襲う宇宙規模の危機。外宇宙への大移住計画「ディアスポラ」が始動する。人類は自らの存在の意味を探して、銀河に散らばっていく。何千年にも及ぶ果てしない旅の果てに、人類が知るこの宇宙の真理とは?。

ウルトラスーパー・ハードSFという宣伝文句がついているこの大作。本当にウルトラでスーパーハードである。イーガンはいったいこの先どこまで想像力の跳躍を続けるのだろう。読者として次の作品もなんとかついていける範囲であることを祈ろう。


スポンサード リンク

Posted by daiya at 2005年12月30日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
Daiya Hashimoto. Get yours at bighugelabs.com/flickr
Comments
Post a comment









Remember personal info?