2005年11月21日

宇宙消失このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・宇宙消失
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グレッグ・イーガンをまた一冊書評。


2034年、地球の夜空から星々が消えた。正体不明の暗黒の球体が太陽系を包みこんだのだ。世界を恐慌が襲った。この球体について様々な仮説が乱れ飛ぶが、決着のつかないまま、33年が過ぎた…。ある日、元警察官ニックは、病院から消えた若い女性の捜索依頼を受ける。だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実につながろうとは!ナノテクと量子論が織りなす、戦慄のハードSF。

「シュレディンガーの猫」という有名な思考実験がある。

要約すると

猫を実験箱に入れる。この箱には一粒の原子とその分裂崩壊を検出できるセンサーが入っている。センサーが原子の分裂を検出すると箱の内部は毒ガスで満たされて猫は死んでしまう。原子がいつ分裂するかはわからない。さて、実験は開始された。今、箱の中の猫は生きているのだろうか、死んでいるのだろうか?。箱を開けないで猫の生死を予測せよ。
常識では、原子の分裂はいつ起きるかわからないのだから、猫は生きているか、死んでいるか、どちらかの状態にあると考えられる。しかし、原子のような小さな世界を扱う量子力学では、観察者が観察したとき(フタを明けた瞬間)に、結果が決まるとされる。観測されていなかった時間は、猫は生きた状態と死んだ状態が重ね合わさった奇妙な状態にあったと量子力学者は考える。

私たちの世界は、多数の可能性の波動が重ね合わさった”拡散”状態から、観察行為によって、ひとつの可能性に”収縮”した状態が選ばれるのだと考えられる。

というような実験である。

そしてこの実験が、この本のメインテーマでもある。

サブテーマとしてマインドコントロール技術がある。もしも人間が意識や思考を制御する技術開発に成功し、自由に使えるようになったら、どうなるのか。主人公は冒頭からこの技術を使っている。本来の自分だったらそうは考えないはずと知りつつ、異なる合理的選択をする人生の物語。

「万物理論」より少し前に書かれたグレッグ・イーガンの名作。

昨年度マイベストSF 大作は「万物理論」、中短編は「あなたの人生の物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002774.html
・祈りの海
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003779.html


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Posted by daiya at 2005年11月21日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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