2008年03月16日
つい口に出る「微妙」な日本語 その言い方は他人にどう聞こえているか
・つい口に出る「微妙」な日本語 その言い方は他人にどう聞こえているか

著者は、ビジネスパースンや学生を対象に200件の聞き取り取材を行って「耳障りな言葉」と「自分でも言うことがある語句」の両面で「微妙な日本語」を選び出した。たとえば第一章で紹介されているのは、「微妙」、「とりあえず」、「かもしれない」、「一応」、「ちょっと」、「できれば」、「思われます」、「〜なはずですけど」、「〜という可能性も否定できない」。出現度と不快度を5つ星でそれぞれの言葉が評価されている。
後半にでてきた「ある意味」、「逆に言うと」、「要は」。これも私が一日のうちに何度も使ってしまう微妙語である。微妙語のほとんどはそれがなくても意味が通じるばかりか、ないほうが明確になるものが多い。
自分の言葉づかいを振り返って、諸問題の一因となっている言葉が、この本にでていた「難しいですねえ」である。何らかの仕事を「お願いできますか?」と聞かれると「できません」「不可能です」と言わずに、ついつい「難しいですね」と言ってしまうのだ。相手の困った顔をするのを見たくないと思うあまり、完全否定の言葉を出すことができず、とりあえず「難しい」と一応いうのだが...。
「お願いする側は必死ですから「難しい」と言われれば一縷の望みを捨て切れずに食い下がってきます。<中略>それでも、できないことははっきり言って差し上げる必要はあると思います。そうでないと、相手だって代替案の検討など、先に進めなくなってしまいます。また、足元を見て高い条件を吹っかけようとしていると勘繰るかもしれません。」
口に出す言葉というのは短くするとぶっきらぼうな印象を与えがちである。それを回避するために、意味的には不要な言葉を挟んでみるわけだが、NOをYESにすることはできないのだから、それは使い手の優しさとはいえないわけである。はっきり言ってあげた方が仕事では適切なのだ。
逆に長いほどよさそうなのが、ほめ言葉である。この本と同時にこれを読んでいた。
「「マメだね」を「リスク管理、きっちりできてるね」に、「ダンドリがいいね」を「仕事の全体像をイメージできてるね」に…。「ほめる」ことに慣れていない人がつい言ってしまいがちな言葉を、効果的なフレーズに変換して紹介。 」
実用予定なので、あまり中身を紹介したくないのだが(笑)、ほめ上手になるための、褒め言葉長文化テクニックが多数紹介されている。
2008年03月13日
伝説のプラモ屋―田宮模型をつくった人々
世界最大のプラモデルメーカー田宮模型を育てた伝説の2代目社長が語る田宮模型の歴史。この社長自身が模型が好き好きでしょうがない、こだわりを持った人である。だから製品開発で「数字にしたら0.7〜0.8ミリの誤差。私が感じた「何となく厭だ」を是正するのに要する費用は数千万円。時間は丸一年以上だった。」なんてこともよく起きる。
数あるモデルの中でも、社長が「世界に誇れる名プラモデル」というのがこのフェアリーソードフィッシュ。
あの小さな兵士のフィギュアにも物凄いこだわりがあった。「もっとも、35分の1という小さな人形のモデルの表情にこんなにこだわったところで、何人の人が価値をみいだしてくれるか、はなはだ疑問だ。が、たとえ一万人にひとりであれ、違いに気づいてニンマリと笑みをうかべてくれる人がいれば、本望である」。
田宮模型の社史をたどって興味深く感じるのは、これだけ本業のプラモデルに思い入れをもっているにも関わらず、会社の危機を救ったり、急成長の原動力になった製品はプラモデルではないということだ。
昭和30年代に玩具用金型を流用してつくった小さなレースカーが最初の大当たりをだして大赤字の会社を再生させた。そしてラジコンカー、ミニ四駆(1億数千万台も売れた)など、プラモデルを追求していく過程で技術を応用してつくった製品が大ヒットとなっている。そうして儲けたお金をプラモデルの完成度を高めるのに回す。製造現場のクラフツマンシップと経営者のマーケティング発想が、理想的な相互作用をしてきた会社といえるのではないだろうか。クラフツマンシップだけだったら今の田宮模型はなかっただろう。
パッケージの重要性にいち早く気がついたのも田宮模型であった。当時すでに大物の作家だった小松崎茂に頼み込んで箱の絵を描いてもらうことで差別化をはかっている。私も子供時代にいくつか田宮の戦車を作った記憶がある。(その後ガンプラにいってしまうのだが。)。パッケージが本格派っぽくて惹かれた。
この本は決して成功者の昔話に終わっていない。社長は70歳を超えたが21世紀以降も、世界を舞台に不断の挑戦をし続けていることが紹介されている。ホームページの充実ぶりを見ても、いつまたミニ四駆クラスの大ヒットがでてもおかしくないくらい雰囲気を感じる。
・★★TAMIYA INC. 株式会社タミヤ
http://www.tamiya.com/japan/j-home.htm
日本が誇れる会社の中身を知ることができて経営の勉強になった。
2008年01月28日
人ったらし
コミュニケーションやプレゼンテーションのスキル本を読んでいて、ときどき強い違和感を覚えることがある。個性を無視して皆をひとつの理想型に押し込めようとしているように思えるのだ。明るく前向きな性格で、論理的に考えることができて、ハキハキと要領よく喋れる人がエラいという理想。ところが、現実の社会では必ずしもそういう「デキる人」が牛耳ってはいない気がする。個人的な観察では、そういうスキルで成り上がれるのは組織の、中くらいまでのポジションなのではなかろうか、と思う。
この本は「デキる人」の対極の、ダメな「人ったらし」の最強列伝である。桑田佳祐、吉行淳之介、アントニオ猪木、色川武大、希代の詐欺師など、たくさんの人ったらしの実話が紹介されている。
「あの人、いい人ね」。そんなことをいわれて喜ぶのは鈍い人間だけだ。「いい人ね」は「いてもいなくても、いい人ね」の同義語くらいに思った方がいい。「いい人ね」といわれたら、無能の烙印を押されたと思って、「このままじゃ、オレもオシマイだ!」くらいの危機感を持った方がいい。悪い奴とまでいわれる必要はない。しかし、「油断のならない奴だな」とか「一筋縄ではいかない奴」と陰口を叩かれてこそ一人前であり、ようやく「人ったらし」の域に達したといっていいだろう。」
規格化された能力のデキる人というのはリプレイスが可能だが、個性そのものを強みとする、人ったらしは取替え不能なのでもある。「あの人だからしょうがない」と愛され、人が集まってきてしまうのが「人ったらし」なわけである。
この本はそういう人ったらし養成のスキルの本ではない。知らないときは素直に「それ、知りません」と言おう、とか、「オネーさん、お水ね」「やっと会えたね」「女房には負けますよ、エッヘヘヘ」「オレ、死んじゃうよ」「なあんか、やばいらしいよ」なんてフレーズが人ったらしの特徴だとか、「人ったらし」指南も少しはあるのだが、基本的には事例集である。有名人たちの、あー、それをやられたら、確かに心に響くねという話が多い。
うまれつきの性格も大きそうだが、著者曰くサラリーマンより店屋の子供に人ったらしが多いという。親の働く姿を見て自然に、人のこころのつかみ方、あしらい方を身に着けるから、らしい。たぶん、誰しもが人間的な魅力を持っているのだろうけれど、それを愛嬌として表に自然に出せる人というのは稀なのだ。それって研究しても、真似ができるようなできないような。
画一的なコミュニケーション・スキル向上に違和感を持つ人におすすめ。
2007年12月13日
スタッフの夢とやる気に火をつける! てっぺん!の朝礼
昨日の読書術の講演@首都大には、日本実業出版社の編集者の方が一般から参加されていた。イベント終了後に、3冊ほど近刊をいただいたのだが、なかでも「イチオシはこれです」といわれたのがこの本。帰りの電車で読んでみた。面白かった。不覚にもまったく知らない世界を発見した。
「
◆年間1万人を集める「すごい朝礼」の秘密を初公開!
年間1万人の参加者を集める居酒屋『てっぺん』の朝礼は、いまや飲食業界だけでなく企業、学校、マスコミなどからも熱い視線が注がれている。国内4店舗しかないこのお店の朝礼が、なぜそこまで注目されるのか?本書では『てっぺん』の朝礼のノウハウを初めて公開する!
◆15分の朝礼で、スタッフが変わる!店が変わる!夢が叶う!
では、『てっぺん』の朝礼を学べば何が変わるのか?前向きなテーマをお店のみんなに伝える「スピーチ訓練」では、各スタッフに<前向きな思い込み>が身につく!本気の挨拶を繰り返す「あいさつ訓練」を続ければ、店の空気が確実によくなる!「ナンバー1宣言」で、自分がどんな人間になりたいのかを高らかに宣言する習慣をつくれば、夢も叶う!たった15分の朝礼で、プラスの効果がどんどん生まれるのだ!
◆「飲食業界の風雲児」が、日本一の店作り・人づくりを伝授する!
『てっぺん』の魅力は朝礼だけではない。著者の大嶋氏は、2006年には居酒屋業界全体の活性化を目的にNPO法人「居酒屋甲子園」を立ち上げ、初代理事長としても活動。外食アワード2006、ドリームゲートアワード2007も受賞し、「飲食業界の風雲児」と呼ばれる経営者。彼独自の経営・人材育成ノウハウも本書でたっぷり紹介する!
」
スタッフが異様な熱気の中でポジティブなスピーチをしては相互にたたえあう。「根性日本一」「笑顔日本一」「思いやり日本一」など自分が目指すナンバー1を挙手して宣言する。仕切りのも者「スーパー・ハッピー!」→参加者全員「スーパー・ハッピー」という挨拶訓練。「絶好調!」「日本一!」もある。ほとんど宗教のような「すごい朝礼」の世界。
・独立道場「てっぺん」のサイト
http://teppen.info/books.shtml
オフィシャルサイトで朝礼DVDも販売されている。サンプル映像がある。
ちょっと怖い世界だなと思いつつも、楽しそうな参加者の顔を見るとなにかあるのかなと思ってしまう。大きな声を出す、ポジティブな言葉を出す、仲間と笑顔で認め合う。こうした簡単なことでチームの士気はあがるものなのかもしれない。私の会社は、エンジニア中心の組織で普段はこの手の組織風土ではないのだが、まるっきり違う風土から学べることがありそうだと気になっている。
自由が丘と渋谷に店舗があるらしい。巻末には一般に開放している朝礼の案内がある。今度、本当に参加してみようかなあと思っている。
2007年12月04日
人はカネで9割動く
身もフタもなく、いやらしい、実践的な処世術の本。
「「金の価値」は、それをつかう人間の全人格ーいや演出によって何倍もの価値を生めば、捨て金にもなる」というのが著者の持論である。
たとえば同じ金額を誰かに渡すにしても、その渡し方の演出次第で費用対効果は異なる。この本の例では、同じ一万円でも「これで酒でも飲んでくれ」と言えばケチだが「お茶でも飲んでくれ」と言えば太っ腹だと思われるだろうという。チップならば帰り際に渡しても自分はいなくなるのだから無意味だから最初に渡す。しかも、毎回ではなく渡したり渡さなかったりすれば待遇はさらによくなる。といったような、同じ投資で相手にたっぷり恩に着せ、ありがたがってもらう「生き金」の使い方のノウハウを指南している。
とにかく、わかりやすくて、どぎつい。
目次を抜粋すると、
・ああ見えてもいい人なんだと思わせる金づかい
・相手を優位に立たせない接待の受け方
・祝い金は誰よりも早く、援助金は誰よりも遅く
・報酬は折半せず、相手の取り分は三割以下にすること
・落ち目の人間を選び、居酒屋で酎ハイをおごる
・評判をあげたければ礼金に金をかけること
・顔だけ出して、わざわざ来てくれたんだと思わせる
・頼まれ事には即答せず”値打ち”をつける
・カバンや小物へのこだわりが相手の気を呑む
などなど、これでもかとお金の効用最大化の術がある。。
この本には「成功者だけが知っている「生き金」のつかい方」という副題があるが、取り上げられる「成功者」とは、暴力団幹部、売れっ子ホスト、政治家、やり手経営者など、シビアな現実を生き抜く実践の知恵が紹介されている。人の葬式を印象操作の場として利用する方法まである。
投資に対する効用を最大化する経営者的な視点は、万人が知っていてもよいことだと思った。お金のやり取りは言葉や態度で示さないと意図が伝わらず、無用なトラブルをまねいてしまうことがあるのも事実。
だが「感謝の薄い金は死に金」というルールを、一般生活で使いまくると、下心が見抜かれて逆効果にもなるだろう。本来、本当のやさしさや誠意っていうのはメタレベルで伝わるものだよなあ、とも思った。
ベタで実践的な内容はとても面白かった。いわば「汚い大人読本」である。
2007年11月08日
そろそろ本気で継続力をモノにする!
ジョギング、早起き、筋トレ、ダイエット、貯金、ブログ、試験勉強、楽器、英会話など習慣を長く続ける秘訣を、仕事術の研究家でブログ「シゴタノ!」著者の大橋悦夫氏が本にまとめた。脱3日坊主のしかけ満載。
人が習慣化したい物事には、
1 続ける系 早起き、ジョギング、歯磨きなど
2 ためる系 家計簿、ダイエット、ブログなど
3 マスター系 英会話、資格試験、楽器など
の3タイプがあると分類し、それぞれ「例外魔人」「不安小僧」「スランプ仙人」という大敵がいるという。各タイプに応じた傾向と対策が解説されている。要は「やる気の問題」は「しくみの問題」だということである。
私は飽きっぽい性格なので毎日同じことを継続するのが苦手だ。だから、このブログが4年以上も毎日続いているのは自分でも意外である。これに関しては、がんばっている意識はなくて、ただ楽しく続いている。あらゆる物事がこんな風に継続できたらいいのにと思う。
この本で付箋を貼った箇所に、
「毎日必ずする行動に付属させる」
「毎日必ず触れるものを利用する」
「アクションをルーチンに落とし込む」
という太文字箇所があった。とても共感した。
このブログの習慣が続いているのは、
1 通勤電車に乗ったら読書をする
2 寝る前にブログを書く
3 駅近くで時間があったら本屋に行く
という毎日の日課と連動しているからだ。
「毎日必ず触れるもの」として付箋がある。付箋は常に100枚以上をスーツのポケットかカバンにいれて携帯している。読書時に少しでも気になる箇所があれば貼る。付箋を貼った本を机の上に積んでおくと、ブログ執筆に着手しやすい。
この調子でやりたいこと全部を習慣化できればよいのだが、新規のしくみづくりは大変なわけである。この本のタイプ別のノウハウと多数のツールリストは、継続のしくみ設計の部品として大いに参考になりそうであった。
たとえば、ツールのひとつとして紹介されていた朝時間.JPは素晴らしいと思った。
・朝時間.jp
http://www.asajikan.jp/community/sengen/asa.cgi/pickup.html
1 朝、今日一日をどう過ごしたいかを、”ひとこと宣言”として入力する
2 翌朝「どうだった?」がメールで届く
3 ふりかえり日記を舞いページでつける
4 繰り返すと毎日がいきいき
というサービスで、他のユーザの宣言や達成度も見ることができる。朝という時間帯もポジティブで継続の力になりそうだ。
2007年10月04日
たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)
今月末に結婚式のスピーチを頼まれているのでノウハウを研究中。この本はよかった。
「長すぎる話は聞いてもらえません。人が話を聞く限界は3分といわれています。ですから、それ以上の長すぎる話は、最後まで聞いてもらえない可能性があります。「5分で話をしてください」とか、「話す時間は5分準備しております」というのであれば、聞き手もそのつもりで集中するかも知れませんが、それでも内容は3分以内にまとめるべきです。たとえば1時間の講演を頼まれた場合は、持ち時間は60分ですから単純に3分の話を20回すればいいわけです。」
「人民の、人民による、人民のための」で有名な、リンカーンのゲティスバーグ演説も、実際には、たった2分間の演説だったそうである。長い話を、小さなネタの連続としてとらえる発想は目から鱗であった。
そして、無駄を削ること。何を話すかと同じくらい、何を話さないか、が大切なわけである。話し方の「かきくけこの法則」という原則が最初に示される。
か 簡単(短く)・明瞭に
き 起承転結(序論・本論・結論)
く 具体的(体験・実例)に
け 結論をはっきりと
こ 言葉に気配りを
事前に話の材料を集めて、全体構造を設計し、それを意識しながら話しなさいということだろう。準備が十分だと余裕が生まれる。人を笑わせたり、驚かせたり、アドリブで楽しませるということもできるようになる。
「仕事・趣味・特技についてもう少し説明を加えるなら「ユーモアを交えて話す」ということです。たとえば「私は手品を趣味にしておりますが、タネはすぐばれるのが特徴です」と言えば面白くなります。こう言うと、聞き手は「タネがばれる」ということより、「手品をやっている」ということがより印象に残るものです。」」
笑いをとると同時に、聞く人の記憶への定着を促進するという高度な技だなあと感心した。CDに収録されている多数のサンプルも素晴らしい。話し方教室の先生と生徒の実演集で、確かに引き込まれる。本の実践イメージが明確になる。
「4つの箇条書き程度のものをポケットに入れて、どういうふうに話すのかではなく、何を話すのかを頭に入れておけば大丈夫です。」
「一番後ろの人に向かって声をかけるようなつもりで話すことです。そうすると自然に声も前に出ます。」
「ですから、相手の眼をストレートに見ないで、額や口元、目の付近を見るということがポイントです。聞き手側からすれば、それで十分見られているという感じがするのです。」
どれも知りたかったことで、参考になった。
・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004383.html
・「感じがいい」と言われる人の話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004992.html
・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html
・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html
・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html
・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html
・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html
2007年10月03日
究極の会議
「会議とは議事録をつくる共同作業である」という思想をベースにつくられた会議の方法論。著者は会議支援のWebツール「eXtreme Meeting」を開発し販売しているほどの、会議マニア。究極の会議はどうあるべきかを考え続けている人だ。
・会議支援ツールSargasso eXtreme Meeting
http://xm.sargasso.jp/
議事録ドリブン会議支援ツール
アジェンダを書く段階からノウハウがある。よい例、悪い例が示されている。
悪い会議のアジェンダの例
1 次回展示会の開催について
2 予算について検討
3 新しいPCの購入計画
よい会議のアジェンダの例
1 次回展示会開催の課題リストを完成させる
2 予算案の設備投資増額のしわよせ問題を解決する
3 新しいPCの購入の必要性をヒアリングしてリストアップする
さらに「会議のトピックには、「なぜ」とつけるのではなく「どのようにして」とつけるようにしよう。人間は「なぜ」とつけると、責任の追求と擦り付け合いが始まる。」というアドバイスがある。上手なアジェンダ設定によって具体的で前向きの言葉が出やすい雰囲気をつくることができるのである。
議事録ドリブンは、参加者全員で議事録を完成させていく方法論だ。それを成功させるための15のプラクティスが、この本の主な内容である。「結論」「意見」「定義」などを明文化することで、議論がクリアになるというのが基本姿勢である。
この本を読んで、個人的によかったのは、ノートPCの会議での位置づけがよくわかったことだ。これまで私は参加者各自がノートPCを会議に持ち込むのは、本当はよくない、必要悪と考えていた。各自が自分の画面ばかりのぞきこんでいたら、せっかく顔を合わせて話す意味がないからである。それに自分のPCを開くと、ついつい会議と関係のないメールや資料を眺めてしまうものである。みんなが下を向いていたら、司会進行のやる気もでない。
そこで「議事録の共同注視」にPCを使うべきという、この本のやり方は正しいと思った。プロジェクターに投影したPC画面上で、話している内容をWordやExcelを使って議事録に書いていく。誰かが意見を言えば「意見」として記録する。結論がでたら「結論」として書く。こうすれば、ノートPCはみんなの意識をひとつに集中させるツールになる。後から、言った言わないのトラブルも起きない。
ユニークな会議手法で有名な株式会社はてな代表取締役近藤淳也氏と著者の鈴木健氏の対談も収録されている。ネットでは動画でも公開されている。本と読んでから、見ると細かいニュアンスがわかって楽しい。
株式会社サルガッソー代表取締役鈴木健と、
http://www.youtube.com/watch?v=aYqGsLSAgmQ
・議事録ドリブンで会議の効率アップ
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0610/24/news008.html
著者の連載がWebでも読める。
2007年09月12日
人を動かす情報術
「「情報」の力が意思決定させるものであるとするならば、はたして、携帯やパソコンを使って意思決定のために大量の情報を受け取っている人々は、情報の力を享受していると言えるのだろうか。誤解を恐れずに言えば、それは情報の力を利用することではなく、実は情報を受け取る側が、情報の力の対象になっているにしかすぎないと筆者は考える。
「情報の力を利用すること」、それは「情報により個人や組織が意思決定する」ことではなく、「情報に基づき個人や組織に意思決定させること」である。つまり、情報は人々に意思決定を「させる」ことによってこそ、世界を変えてしまう力を持つのである。」
受動的な情報分析ノウハウではなく、人を動かすための能動的な「情報スタイリング」についての本である。情報が伝達される時間的、空間的な範囲「情報ステージ」に応じて、最も影響力のある情報発信は何かを、認知心理学や社会学などの研究成果に触れながら、ポイントを解説している。
ブログなどで情報発信を始めた多くの人が経験から学ぶこととして、著者がいう「大衆は理解できる情報の量が少ないということではなく、本質的に多くの人間が共通して理解できる部分は、人が増えれば増えるほど少なくなるということなのである。」ということがあるなと思う。読者が増えれば増えるほど、読者と共有する前提が少なくなる。読者が少なかったうちは書いても問題にならなかった表現が、しだいに問題になったりもする。
情報発信のスタイリングというのは、個人の情報発信者にとっても大切なノウハウになりつつある。言わば戦略的な情報操作といえるかもしれない。「歪んだ基準を与える」「不確実性を利用する」「レモン一個分というレトリック」「明るい名前、暗い名前」「耳に残るCMソング」など、集団という対象に対する表現法が紹介されている。
他にも読みどころが満載の本である。マクルーハンのメディア論、シャノンの情報理論などの古典から、ここ数十年のメディアの歴史の総括、最新のブログ、ミクシイ、2ちゃんねる論など、とても幅広く現代における情報について話題を網羅している。3冊くらいにわけてもよかったくらい話題がたっぷりである。
「情報社会で確実に増加しているのは、情報そのものではなく、あくまでも情報の表現なのである。決して、情報の意味が増加しているというわけではない」という。情報の表現(たとえばブログの数)が増えれば増えるほど、受け手は混乱する。少数の情報発信者と多数の受信者というモデルから、発信受信ともに多数という状況で、発信者が取るべき戦略とは何かを考える材料が、この本にはいくつかみつかった。
2007年09月04日
アタマにくる一言へのとっさの対応術
言葉の合気道の本。
言われっぱなしはゴメンだが相手と争うのも賢くはない。
「大事なことは、相手の期待どおりに反応しないことです。とくに「相手が失礼な態度をとったのだから、ただじゃおかないわ」といった、ありきたりの復讐気分にひきずられるのは最悪です。そうではなくて、この出来事をひとまず距離をおいて冷静にながめてみましょう。たとえば「相手が私に対して失礼な態度をとったわ。これはなにか新しいことを試してみる絶好のチャンスなんだわ」といったように。好奇心をもつことが、あなたの精神衛生にとってはベストなのです。奇妙な人間を相手にするという新鮮さを発見してください。世界はあなたが実験をするためにあるのです。」
挑発に乗らず、相手を空回りさせることが、よい対処であるという。真正面から言い返してしまっては、相手の思うつぼであるし、心理的にも縛られてしまう。「あなたはちょうど太陽のまわりを回る惑星のように相手を軸にしてぐるぐると振り回されているだけなのです。相手の態度をかえてやろうとすればするほど、あなたはますます敵にしばりつけられていきます。」と著者はその状態を説明している。
そこで、この本では、アタマにくる人ことへの対応術として、
・相手の攻撃に対して黙ったまま身振りだけで対応する。
・相手の攻撃に答えず、まったく別の話題を切り出す。
・相手の攻撃をひとことでやり返す。
・相手の攻撃にまったく当てはまらないことわざで受け答えする
・あなたを傷つけた言葉の意味を聞き返す
・褒め殺しで返す
など12の手法が紹介されている。翻訳書なので日本でそのまま使うと怪しいものもある気がするが、大半がかなり有効なのではないかと思った。いや、こういう方法論を知っておくこと、本を読んでおくこと自体が余裕につながるのだと思う。
学生時代に電話受付けのアルバイトをしていた頃、お客からのクレーム電話でいきなり怒鳴られることは日常的だった。罵られることも珍しくなかった。「私は電話受け付けのプロである」と思うことで、これは研修で学んだワザの見せどころだとか、コミュニケーションスキル向上のよい練習だと思えて、むしろ、クレーム処理はやりがいがあったりもした。ある種のゲームとおもえば、心は傷つかず、冷静に対処することができた。
アタマにきたときどうするかの準備をしておくことって、天災に備えるのと同じくらい大切で、それ以上に有効なことなのではないだろうか。
2007年08月01日
ダメな議論―論理思考で見抜く
「人はなぜ特定の考え方を正しいと思うのか」に関する考察。よく考えれば間違いがわかるのに、常識や空気にとらわれて、根拠のないダメな議論を受け入れてしまう理由について、チェックポイントと対策を示す。
一番、気になったのは読書について。
著者はありがちな読書についてこう述べている。
「私たちは、「自分の知らないことを知る」本を探しながら「自分の知っている(漠然と感じている)ことが書いてある」本を購入し、読書を「自分の役に立てる」ことを目標としつつ、「自分の思想・行動に何ら影響のない(読んでも読まなくても変わらない)」本を読んでいます。つまりは、自分が日頃から抱いている「信仰」にお墨つきを与えてくれる、「自分が読んで心地よいと感じる」本を選んでいるにすぎないというわけです。」
たとえば高所得の成功者は、成功するかどうかは自分の才能・努力によって決まるという考え方を支持するが、低所得者層は運によって決まるという考え方への支持が多いという。「実際に成功している人はそれが自分の実力によるものだと思いたがるのに対し、成功していない人はそれが自分の実力のせいだと思いたくないという心理によります。」
科学的に検証が必要な話題でない限り、私たちは信じたいものを信じてしまう。常識や空気によって「まぁ、ホントは間違いかもしれないけど、どっちでもいいや」や「何となく常識なことは何となく正しいと思っておくのが賢い」という経験則、処世術へ流れてしまう。
これは私もよく実感する。ときどき食事や飲み会などでマイ箸を持ち歩いている人がいる。割りばしが環境によくないからという理由なわけである。自治体や企業レベルで割りばしを使わないようにしよう運動もある。しかし、実際には割りばしが環境に与える影響はほとんどないらしいことを、私は知っている。環境を気にするのは良いことだし、マイ箸を持ち歩く害はないから、私が敢えてその人に「それって意味ないですよ」と言う必要はない。だから言わない。そうすると、割りばしは環境に悪いという説は、「常識」のまま残っていってしまう。
保守の力というのは多くの場合、こうした、信じたいものを信じる心理と、「まぁ、どっちでもいいや」の心理によって形成されていくのだろう。こういう決め方をこの本はダメな議論と呼び、
・定義の誤解・失敗はないか
・無内容または反証不可能な言説
・難解な理論の不安定な結論
・単純なデータ観察で否定されないか
・比喩と例話に支えられた主張
などの見抜き方を教えている。有名な評論家たちのダメな議論の実例もたっぷりで、面白く、ためになる本だった。
2007年07月25日
仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本
著者は「バロック」「キングオブワンズ」「ぷよぷよ」「トレジャーハンターG」「魔導物語」等のゲームを監督/脚本/企画した米光一氏。仕事のプロジェクトをロールプレイングゲームの冒険に見立てて、その攻略法を説く。
米光さんはプロジェクトに対する観察眼が鋭いなあと何度も感心した。
「 根本の部分で冒険をデザインできていないと、必要のない苦労をすることになる。そうすると、人は「あのリーダーは人望がない」なんて言う。「人望がない」なんて言われると、簡単にはどうにもならない気がしちゃうけど、そんなことはない。
ぐらぐらした土台の上で、ふらふらしながら、怒鳴ったり、愚痴を言ったり、言い訳しているから「人望がない」と思われる。
冒険の土台をしっかり作れば、それだけで「人望がある」状態になる。かんたんだ。」
これは、自分の経験でも、その通りだよなあと、しみじみ共感する。
いいリーダーになれるかどうかは、能力や性格がどうだという以前に、ちゃんとした土台に立っているか、が問題なのだ。みんなが楽しめる、しっかりした土台の上にいるなら、ちょっとくらい優柔不断だったり横暴だったりしても、愛されるリーダーになったりするものだ。だからプロジェクトのデザインができる人こそ、いいリーダーなのである。
それから、”王様”とのつきあい方。これは他のプロジェクトマネジメントの本にはあまり書かれていない重要な事柄だと思った。若い勇者の冒険には”王様”という存在がつきものだ。会社という王国を率いてきた上司であったり、スポンサー、プロデューサーという人たちのことである。彼らは自分たちの方法論で成功した時代があった。
「新しい冒険では「旧A」という方法は使わない。別の「新B」という方法で行う。
勇者たちは「新B」という方法のよさをわかっている。逆に「旧A」については現場的な知識はないことが多い。古いよな「旧A」は、と思っている(そして実際に古くなっている)。
だけど、「旧A」という方法でがんばってきた人たちにとっては、とても愛着のある方法だ。だから、勇者が「新B」の良さを言えば言うほど、勇者にその気がなくても「旧A」が否定されたように思えてしまう。」
王様の「旧A」に敬意を見せつつ、「新B」をやらせてもらう関係づくりが必要であるという話。この本のノウハウは、昔の言葉でいえば、空気を読み、根回しを怠るな、ということでもあるようなのだが、現代の勇者の気質向けにアップデートされている。
「ギラギラと競争するより、仲間と一緒にレベルアップしたい!
あくせく出世を狙うより、仕事を楽しく、充実させたい!
「オレについてこい!」と言われるより、自分で動きたい!
こう思っている人には、きっと最強の攻略本になります。 」
「ついてこい」式ではない、リーダーシップ論とも言えそう。
それから「ダメな会議の座席表」にバカ受けした。本のデザインやサイズもゲームの攻略本風で、最初から最後まで楽しく読める。
2007年07月22日
思考の整理学
初版は1983年。日本に”マイコン”が登場したころだ。著者は既にコンピュータ普及の影響を見通していた。
「これまでの学校教育は、記憶と再生を中心とした知的訓練を行ってきた。コンピュータがなかったからこそ、コンピュータ的人間が社会で有用であった。記憶と再生がほとんど教育のすべてであるかのようになっているのを、おかしいと言う人はまれであった。コンピュータの普及が始まっている現在においては、この教育観は根本から検討されなくてはならないはずである。」
人間らしい思考法を追求している。たとえば、まず寝かせるのである。
「思考の整理法としては、寝させるほど大切なことはない。」
大作映画の宣伝などで「構想ウン十年」というフレーズがある。あれはたぶん原作者がウン十年前に思いついたには違いないが、ほとんどの間は放っていたもののはずである。それでも、長く寝かされたテーマは発酵して力を持つことがある。人間の記憶とコンピュータの記録の違いだ。
小説などでも子供のころをテーマにした作品に名作が多いのは、それが理由なのではないかと著者はこう述べている。「素材が充分、寝させてあるからだろう。結晶になっているからである。余計なものは時の流れに洗われて風化してしまっている。長い間、心の中であたためられていたものには不思議な力がある。寝させていたテーマは、目をさますと、たいへんな活動をする。人間には意思の力だけではどうにもならないことがある。それは時間が自然のうちに、意識を超えたところで、おちつくところへおちつかせてくれるのである。」
寝かせるということは完全には忘れないようにほどほどに忘れるということだ。それでも強化されていくテーマは本物のテーマなのだ。「これはその人の深部の興味、関心とつながっているからである。忘れてよいと思いながら、忘れられなかった知見によって、ひとりひとりの知的個性は形成される。」
忘れないようにしながら、いったん忘れるために、紙に書き出して記録するのがよいと著者はすすめている。手帳→ノート→メタ・ノートというユニークな著者のメモ術が紹介されている。日常のメモは手帳に、重要なことはノートに転記し、さらに重要に思うことはメタ・ノートへ転記せよ、という手法である。
転記がすすむにつれ、重要度とともに抽象度も上がっていくわけで、究極のメタ・ノートというのは、座右の銘やことわざのようなものになっていくのかもしれない。そうやってメタに上がってくるものを常に見直すことが、思考の整理術として最重要なのだろう。
考えるということについて、本質的な考察がエッセイとして楽しく読める古典。
2007年06月26日
無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法
著者のプロフィール。
「公認会計士二次試験(合格率6%)を史上最年少の19歳で合格 以後、フルタイムの仕事をしつつ、かつ3人の子どもを育てながら、中小企業診断士試験(合格率4%)、オンライン情報処理技術者試験(合格率4%)合格 TOEICは新卒時420点から3年間で900点へ 社会人大学院でファイナンスMBAを取得。その結果、年収を16年間で新卒時の10倍とした著者が初めて公開する、本当に効率的で合理的で楽ちんで、目から鱗の勉強法。 」
文系ビジネスマンに勉強法を語る人として、とても説得力のある経歴。16年間で年収10倍というのは、新卒時から現在まで毎年26%の収入増のペースでやってきたことになるそうだ。
この本を知ったのは書評ブログ仲間の二人のブログで絶賛されていたから。
下記のエントリに内容の詳しい紹介がある。
・マインドマップ的読書感想文 「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」勝間和代
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/50952753.html
・俺と100冊の成功本 社会人版ドラゴン桜!?「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」
http://blog.zikokeihatu.com/archives/001224.html
著者いわく「IT機器を中心に、新しい道具をいかに使いこなして、無理なく続く仕組みを作るかに尽きる」。これはデジタルツールをフル活用した勉強法なのだが、使っているパソコンやMP3プレイヤーの機種名、ダウンロードサイト名まで教えてくれる具体的な記述が参考になる本だ。
「月収の5〜10%を目安に投資し続けることが大事」「しっかりと、いい道具を揃えて、いいコンテンツを買ってきて、うまく続くように、いろいろな仕組みを設計しましょう。」「必要なのは意志ではなく、仕組みや設備への投資です。」
情報収集については、
「本は乱読でいい。量が勝負と、ひたすらインプットする」
「テレビは時間当たりの情報量が少ないので、時間の無駄」
「一般誌を読む時間を減らし、その分、専門誌または書籍を」
というアドバイスがあって、前提として速読技術をまず身につけよとのこと。
目と耳から大量の情報を効率的にインプットするための秘訣が書かれている。「インプットとアウトプットに、勉強時間を半分ずつ使う」「アウトプットしてみてはじめて、ほんとうにわかっているかどうかわかる」。親指シフトによる高速入力、マインドマップによるまとめ作成など、パソコンを使ったアウトプットのノウハウも多い。
文系ビジネスマンのための、ITを活用した勉強法の、最新事情がよくわかって参考になる本だった。
2007年06月21日
「その他大勢」から一瞬で抜け出す技術 過小評価されているあなたを救うスピード・ブランディング
・「その他大勢」から一瞬で抜け出す技術 過小評価されているあなたを救うスピード・ブランディング

なんとも魅力的なタイトル。
初対面の人と会うときには、「すごい人」と錯覚させるために、
1 有名ホテルのラウンジで待ち合わせ
2 「御付きの人」を同伴させる
3 ゴールドカードでテーブル会計
4 直接電話に出ない、携帯番号を名刺に書かない
という演出をしてみよう、相手の評価はまったく違うという実践が紹介されていた。
自分ブランドをゼロから築く上で、こういう技術は、本質ではないが極めて重要な技術だと思う。特に独立して仕事をする場合、まず「見た目」で勝たないと、「実力」の勝負まで進めないことが多いからだ。
「低く値踏みされる可能性があるポイントはあらかじめ取り除いておくべきなのです。」
自分が学生時代にフリーランスで仕事を始めたころのことを思い出した。毎日、必要もないのにスーツを着てネクタイを締めていた。「有名ホテルのラウンジ」もよく使う手であったが、当時の私は何処が高級ホテルか分かっていなかったので、今考えると妙な選択をしていた気もする。相手からは底の浅さを見抜かれていたのかもしれないが、少なくとも他の学生とは違う、頑張っているイメージを相手にもってもらうことはできたなあと思う。
「まず肩書きを作り、次に組織を作り、代表になれ。」
「自分の「キャッチ」を作りそれを名乗り続けるのです」
「実績を正直に話していたら、最初の実績自体が作れません」
「時にはハッタリも必要なのです」
ゼロの自分をゼロのまま見せたら、いつまでもゼロのままなのだ。だからといって、いきなり100ですと詐称するのもまずいわけである。そういう点で、とくに有効な考え方だなと思うのが、この本で紹介されているこの一節。
「今あなたが業界では普通のレベルであっても、視点を(業界の)外と自分よりも下の初心者にターゲッティングすれば、すぐにでもあなたの情報は価値あるものへ変わります。」
誰だって仕事を2,3年もしていれば、普通のプロになれる。業界内では「その他大勢」だが、場所を変えれば立派に専門家の顔を作れるわけだ。社内ではペーペーの営業マンであっても、社外のコミュニティや学生相手に「セールスのエキスパート」を名乗ってもおかしくない。
この本の著者は、セミナー講師になって6カ月で「誰にでもできる「セミナー講師」になって稼ぐ法」という本を出版し、いきなりその他大勢を脱却、セミナープロデューサーになってしまった。ブログやメールマガジンを活用した、ネット時代ならではの実践体験を語っているので、独立を考えている人におすすめ。
・ネクストサービス
http://www.next-s.net/
著者が経営するセミナープロデュース企業。
・パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003528.html
2007年05月28日
「感じがいい」と言われる人の話し方
「若いカップルがデートしたとします。食事に行った先で、
・「僕は中華がいいや」と言って、先に店に行ってしまう男性
・「君は何が食べたい」と、まず女性の意向を尋ねる男性
・「僕は中華がいいけど、君は?」と自分の意見を言って相手の意向も尋ねる男性
さてあなたが女性なら、どの男性が好みでしょうか?」
アンケートを取ると、一番人気は3番目、次が1番目、最も不人気なのが2番だそうである。相手に配慮しながら、引っ張って行ってくれる人が人気があるということだ。
これは私もはじめて女性とつきあった頃に考えた問題だったなあと思いだした。当時は相手を気遣うサービス精神の2番がよいのだと勘違いしていた。実際には女性が食べ物によほどこだわっているのでもない限り、意思決定のリスクを相手に押し付けてしまっていて不親切なのである。
著者は「これからは、「頭がいい人」よりも、「感じがいい人」のほうが重宝される時代なのです。」として、ビジネスや生活シーンで感じよくなるための秘訣を語っている。主に話し方を教えているが「プロっぽい話し方は嫌われる」から気をつけましょうと言っている。
「郵政を民営化したいと思っています」が、「必ず民営化します」となるのが雄弁術です。しかし、「感じがいい人」と思わせたいのなら、あくまで意見は意見として正しく伝えるべきです。そのほうが「誠実」なのです。そして誠実というのが、感じがいい人には欠かせない条件です。」
雄弁術に長けてあまりにテキパキと話す人、話に論理的でスキがない人というのは、好感度という点では必ずしも高得点ではないということである。
やめるべき口癖リストが参考になった。たとえば「ていうか」。「「最近、田中さん頑張ってるよね」「ていうか、努力してますよね」」みたいなのは不快だという指摘。親密さを演出するつもりで「ていうか」を私もつかってしまうことがあるのだが、人にやられると楽しくなかったりする。「ていうか」はやめよう。
「感じのいい人」の極意として「まずはあなた自身が「感じのいい人になろう」とする前に、相手、周囲の人に対してあなたが先に「この人、感じがいいな」と思うことです。」と結論されている。感じのよさとは、他人のいいところに感心する能力のことなのかもしれないと思った。
2007年05月23日
デジタル・ワークスタイル―小さなことから革命を起こす仕事術
・デジタル・ワークスタイル―小さなことから革命を起こす仕事術

ブログブームの仕掛け人の一人、FPNの徳力基彦さんが書いたデジタル時代の仕事術。
「作業時間を半減させるためのルール」がどれもうなずける内容。新しい仕事ツールと発想の切り替えを積極的に導入して、生産性を高めるライフハックのすすめでもある。忙しい中で、ひとり涼しい顔をして、仕事をするためのノウハウがわかりやすい本だ。
1 小さな改善で将来の時間を生み出す
「改善はできるだけ早くとりかかったほうが効果は大きい」。ライフハックの工夫は多くが数パーセントの生産性の違いを生み出すものだ。この係数は時間に対してかかっている。早く導入すればするほど、大きな結果がでてくる。
2 1×100と、100×1は同じではない
「類似の作業はまとめて処理した方が得だ」という。これは私も同感で以前、この書評の中で書いた「「拡散系の思考と収束系の思考を交互に繰り返すと効率が悪い」という考え方と似ている。
・続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003325.html
3 ツールで時間が節約できているかを考える
「ツールに使われていては意味がない」。事例として「メールを定期的にチェックして新着があったらデスクトップに知らせるソフト」で5分おきに仕事を中断させられる本末転倒の例があった。ツールに踊らされては意味がない。
マウスの移動、作業別所要時間、ネットワーク使用量と時間帯などを計測するツールを使って、自分の仕事を客観的に分析してみるのがよさそうだ。この本では「受信したメールよりも、送信したメールの方が後で役に立つ場合が多い」など鋭い指摘もある。改善ポイントをみつけるためのツールとしてこのブログで取り上げたソフトとしては以下のようなものがある。
・マウスの走行距離で旅行気分
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002184.html
・「作業時間計測ツール」でコストを意識する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002581.html
・PCのネットワーク利用量を監視、記録するNetMeter
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003030.html
自分のデスクトップ作業の分析について数年前に、あるサイトに以下の文を寄稿していた。原稿を発掘したので再掲してみる。
「
■580メートル 私の1日のマウス移動距離の平均
私は最近、デスクトップの作業を分析する面白いツールを見つけました。modometerは海外のフリーウェアです。デスクトップに常駐して、アプリケーション別にユーザのマウス、キーボード操作を記録しています。デスクトップの万歩計みたいなものです。
・modometer
http://www.modometer.com/
このソフトで記録を開始してから約50日が経過しました。この期間の走行距離は29000メートル。1日のマウス平均移動距離は、580メートルでした。ずいぶん動かしているんですね。
ログに記録されるのは、マウスの移動距離や左右クリック数、ダブルクリック数、スクロール距離、キーボードの打鍵数などです。これらの項目をリストとしてHTMLやExcelの表に出力できます。私は2週間ほど、このツールで自分の作業ログを記録してみました。使用アプリケーションの上位10位のリストは以下の通りです。
--------------------------------------------------------------------------------
http://web.archive.org/web/20041209064341/www.adnec.com/blog/archives/hashimoto/MouseOdo.html
--------------------------------------------------------------------------------
こうして眺めてみると、一番使っているのは、ネット調査の仕事がメインの私の場合にはWebブラウザーです。次にファイル操作やメールの読み書きに手間をかけているようです。メッセンジャーのチャットや文書作成系が続きます。
何に手間がかかっているかを知れば、それらのシーンを改善すれば、少なくともデスクトップでの作業は負荷が軽減されます。私の場合にはWebブラウザー支援ツールや、メール作成支援ツールを投入すればよいということになります。
実際、ユーザビリティ研究の世界では、計量化アプローチというのがあります。大手のソフトウェアメーカーの開発部門では、マウスの移動距離やクリック数を厳密に計測して、、何が操作コストとして高いかを判断して、高速化しているのです。modometerを使えばそんなプロの調査も簡単にできてしまいますね。
私の場合には、ブラウザー支援ソフトなどを使ってインターネット系アプリケーションの操作を効率化するのが一番効果がありそうです。皆さんも自分のデスクトップで試して、処理の改善を分析してみては?。
」
2007年05月11日
頭がいい人が儲からない理由
サムシンググッド、アドビスシテムズ、ウェブマネー、ソフトウィング、アルファシステムなど、多数のIT企業を創業した業界の風雲児 坂本圭一氏が語る経営哲学。表題を見た時は、コンサルタントが書くありがちなノウハウ本かなと想像していたのだが、まったく違った。序盤は成功の理論をノウハウ風に教えているのだが、章が進むにすれ著者の情熱ボルテージがあがっていき、結局、異常なほどの執念深さと圧倒的な行動力こそ成功の秘訣だ、おまえなんでやらないんだと、アジっている。その語りの迫力に飲まれる。
確かにそうなのだろう。会社を上場させたり、億万長者になった経営者たちを私も身近に何人も見てきたが、あっさりした人なんて一人もいなかった。みな執念深さでは共通していた。なんでもその場で決めようとするせっかちな性格で、課題を次の会議に持ち越すことは決して考えない人たちだった。
著者の批判する「頭のいい人」は、理屈ばかりで行動しなかったり、うまくいった戦術の延長線上に戦略があると考えたり、普遍的な成功の秘訣を探しまわっている。だが、多数のプレイヤーがあの手この手を使って戦うベンチャー市場では、環境変化が激しいから、頭で勉強して身につけた知識が役立つどころか、敗因になってしまうことがあるという風なことを著者は語っている。
「歩が成ってと金になったといっても、しょせん将棋盤の上で威力が増しただけ。盤の外に出れば、まったく違う環境が待っているのである。」
「目の前の百の在庫をさばくというのは戦術のレベルである。だが、いくらその手の目先の戦術を重ねていったところで、三年後にシェア一位を確保するというゴールをクリアするための戦略になりはしない。その時、その時に全力疾走することが、つねに最善の方法論であるはずがないし、そもそも戦略というのはそうやって、演繹的にできあがるものではないのである。」
新しい市場では日々ゲームのルールが変わっているのだから、過去の経験にこだわらず、臨機応変ができる経営者が会社を大きくする。成功の真の秘訣は理屈じゃないんだ、というのが著者の理屈である。だから起業のために学校に行こうという人は起業家に向かないと言い切る。
著者は若い頃、事業に失敗し、大きな借金を背負うが、単身ちり紙交換でトラックを走らせ成功し、短期間で返済して復活した。その時、著者がどういう思いで、どう行動したのか、創意工夫ののエピソードが強烈に印象に残った。肝なのでここには内容を書かないが、発想と行動力で駆け抜ける著者の生き方の原点なのだろう。魅了された。
「ワタシ起業しようかどうか迷ってるんですけど、やったほうがいいと思いますか?」という状況の人はこの本を読んで、諦めたらいいと思う。逆に全力疾走中の人は燃料補給本にいいと思う。理屈を超えた部分が多いが、とてもとてもエキサイティングな本だ。
2007年05月09日
組織を強くする技術の伝え方
2007年問題と呼ばれる団塊世代の大量退職が始まっている。日本企業の屋台骨を作った世代が会社を去ると同時に、蓄積された技術も失われていく。「失敗学」「創造学」で有名な著者は、技術を「知識やシステムを使い、他人と関係しながら全体をつくり上げていくやり方」と定義し、その伝達方法についての成功例や失敗例、ノウハウを語る。
「伝える側が最も力を注ぐべきことは、伝える側の立場で考えた「伝える方法」を充実させることではありません。本当に大切なのは、伝えられる相手の側の立場で考えた「伝わる状態」をいかにつくるかなのです。」
これは年配者から技術や人生論を伝えられる側として、ときどき私も感じることがある。大先輩の言うことが、わかるときと全然わからないときがあるのだ。後輩の私のことを考えて「極意」をいきなり伝授されても、ちんぷんかんぷんになる。極意とは、要点のイメージであり純粋エッセンスである。限りなく貴重な情報だが、全体像を把握していない私はその意味が理解できない。野球の長嶋監督から、「バッティングの基本はピューと来たらパーンだ」なんて風に、教わるイメージだ。
「ビュー」「バーン」って何ですか?と聞いて答えをもらってもまだわからない。そうした教えは、自分で何年間も散々の苦労をしてみて、ある日突然わかったりする。でも、大先輩はとっくに現場を去っていて、お礼の言いようもないものだ。そういうチグハグなドラマが、仕事や学問の現場で日々起きているような気がする。
著者は技術を伝えるポイントとして次の5つを挙げている。
1 まず体験させろ
2 はじめに全体を見せろ
3 やらせたことの結果を必ず確認しろ
4 一度に全部を伝える必要はない
5 個はそれぞれ違うことを認めろ
そして伝える相手に「自分が人に伝えるときのことを意識させる」のがいいと言う。伝えた相手が講師になって別のだれかに教える機会を与えると、定着がよいらしい。本気の受け入れ態勢をどう作らせるか、なのである。社外のセミナーに無料参加させる代わりに、会社に戻ったら講師として社内でそれを教える制度などを推奨している。
貴重なプロの技術にマニュアルで伝えられる内容は多くはない。重要な部分は、ベテランの暗黙知であり、境地であり、勘なのだと感じる。それを移転するには、組織内に世代間の濃い関係がないと無理だろう。師弟関係のようなものを、組織内でいかにつくるかが大切なのだなとヒントをもらった。
・畑村式「わかる」技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003968.html
・決定学の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001676.html
・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html
・わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003801.html
・「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000973.html
・「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・「分かりやすい表現」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html
2007年05月06日
魂の文章術―書くことから始めよう
全米ベストセラーの文章術。
第一の思考のエネルギーにまず共感した。
「第一の思考には途方もないエネルギーがある。第一の思考は、心が何かに接してパッとひらめくときに現れるものだ。しかし、たいてい内なる検閲官がそれを押しつぶしてしまい、私たちは第二、第三の思考の領域、思考についての思考の領域で生きている。最初の新鮮なひらめきからは二倍も三倍も遠ざかったところで生きているのだ。たとえば、「私は喉からヒナギクを切り取った」という文句がとつぜん心に浮かんできたとしよう。すると、1+1=2の論理や、礼儀正しさ、恐れ、粗野なものに対する当惑などを仕込まれた私の第二の思考はこう言う。「ばかばかしい。自殺しているみたいじゃない。喉をかき切るところなんて人にみせちゃいけない。どうかしたんじゃないかと人に思われるわ」。こうして検閲官の手に思考を委ねてしまうと、こんどはこんなふうに書くことになるだろう。「喉がすこし痛んだので、私は何も言わなかった」。正確、そして退屈だ。」
ブログでも原稿でも、最初に「とにかくこれは書いておきたい」というフレーズが思い浮かんだら、最後まで書き上げられることが多い。そういったフレーズが思い浮かんだら、いつでもメモしておいて、いざ書くときにはまずそのフレーズを書いてみる。すると、スラスラ筆が進む。どう書くかよりも、書くことがあるか、がいい文章の決め手だと思う。
題材リストの作り方、題材の膨らませ方、一人でもできる文章修業の方法、スランプ脱出法、物書きの心得など、良いライターになるためのノウハウが数十本のエッセイにまとめられている。
「書くことはとても孤独な作業でもある。誰が私の文章を読んでくれるだろう?誰が関心を持ってくれるだろう?ある生徒がこんな質問をした。「先生は自分のために書くんですか?それとも読者のためにですか?」、ものを書くときには、話さずにはいられないという欲求を人と分かち合うようにしてほしい。孤独の深みから手を延ばし、他の人たちに向かって自分を表現するのだ。」」
ブログ時代のライターはこの孤独感は希薄かもしれない。毎日書いているブログには、ほぼ間違いなく、友人知人含めて、いくらかの読者はいるだろう。手元に置いてあるだけの原稿と違って、まったく読んでもらえないということはない。逆に言うと、孤独感が欠如して緊張感を失ってしまうのがブログなのかもしれないと思う。
自分のブログ文章を振り返ってみるに、イイコトを思いついたのだけれど、話す人が周りにいない深夜に、言いたいことを一気に書き上げることができた日のブログは、読者の評価も高い気がする。孤独は、魂の入った文章の原動力ということ、かな。
・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html
・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html
・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html
・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html
・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html
・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html
・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html
・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html
・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html
・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html
・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html
2007年05月02日
仕事は演出力 あなたの「魅力」を引き出す38のヒント
米国で30年暮らした映画プロデューサーが、ハリウッドの成功者たちから学んだ仕事術、処世術を語る本。個人の能力と同じくらい人間関係が重要な映画製作の業界で、有名な監督や俳優が、なぜその地位を築けたのか、わかりやすく教えてくれる。
「ハリウッドで成功している人には共通点がある。それは一言でいうと、自分を魅せる方法、つまり自分の「演出の仕方」を知っているということだ。ハリウッドスターというと、わがままで気難しくて、人の言うことをなかなかきかないというイメージがあるかもしれない。そしてこの業界を裏で取り仕切っている大物たちは、非常にドライで左脳的な発想をする人と思うかもしれない。しかし実際にはそうではない。というより、むしろ逆だ。」
ハリウッドの成功の秘訣は、なんと意外にも「気配り」なのである。
著者が交流したハリウッドのスターたちの、細やかな気配りエピソードが次々に披露される。多くの大物スターやプロデューサーが実際に会ってみると、自分の話をあまりしないで、相手の話を聞く、話を引き出すことに長けている、そうだ。
「会話に参加しているという充実感こそが人を動かす原動力になる。」「私の空間にはあなたしか存在しない」というメッセージは、相手を勇気づけ、感動させる。これこそが「気配り」なのだ。
ここでは、思いやり、気配りは成功の階段を昇るために必要な資質だと分析されている。自分のために人を動かすためには、好意を持ってもらい、やる気になってもらわなければならないからだ。
「素晴らしい さすが君だと こき使い」という川柳がある。これこそ、人間を「その気」にさせる極めつけではないだろうか。「こき使い」という言葉には語弊があるものの、「素晴らしいねえ」といわれてうれしくない人はいない。誰もが自分の仕事や努力を認めてほしいと願っているわけで、褒められるだけでその人のやる気が倍増するのなら、これほど簡単なパワーアップ方法はない。」
自分勝手なスターは長くは生き残れないらしい。
他人から魅力を引き出せる人は、「自分以外の人も、自分と同じ思いを抱いて生きている」という気持ちが原動力になっている。自分だけが「成功物語」や「悲劇の物語」の主人公だと思い込み、自分が舞台に上がって喝采を浴びることだけを考えているうちは、周囲の人から魅力を引き出すことなどできない。」
「野望のためなら何でもするという「クリエーティブ・コンプロマイズ」、つまり「独創性のある妥協」ができる人というのが真の野心家だと思う。」」
これは一言で言うなら「プラグマティックな思いやり」の本である。成功・出世したいなら、自分勝手はやめて思いやりと気配りの能力を持ちなさいと説いている。米国生活30年の日本人らしく和魂洋才風な発想の処世術であった。とても面白くて参考になった。
2007年02月07日
最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
チェルノブイリ原発事故、スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故、スリーマイルアイランド原発事故、エールフランスのコンコルド墜落事故、ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡研磨失敗、アポロ一号の火災事故など、古今東西数十件の世紀の大事故をケースとしてとりあげ、事故の発生メカニズムと人的要因を分析した本。
研究書だが事故の前後の描写がドキュメンタリタッチで生々しく描写されていて、読み物としてスリリングである。現代の大事故は巨大なマシンが引き起こすものばかりだ。それを操る人たちは快適な制御室で計器類の前に座っている。計器上の数値から巨大マシンの状態を読み取る際に、重責のプレッシャーや長時間労働の疲れ、仕事への慣れなどの原因によって、認知や判断に誤りが生じ破滅へ至るケースが多い。
前兆のない大事故は皆無であるという。それにも関わらず事故の例では現場も管理者も、不具合の兆候を見逃してしまう。チャレンジャー号の事故などいくつかの例では、事前に危険の警告を訴えていた人間もいたが、出発の度重なる延期によるプレッシャーによって、上司は大した問題ではないと誤った判断を下してしまう。
これらの大事故をまねく物質の組み合わせがあるという分析がある。水と電気と酸素である。水が電気回路をショートさせ、酸素が火災や爆発を引き起こす。巨大な石油掘削装置オーシャンレンジャーを沈没させたのは、嵐の夜に窓から入ってきて制御室を濡らした少しの海水であった。
最初の小さな障害が複雑なシステムに連鎖的な障害を引き起こしていくことも多い。すると人々はパニックに陥り、手っ取り早い問題解決のためにマシンのスイッチを切ったり、レバーを逆に入れてしまったりする。設計段階で予想できなかった異常な操作は、機能するはずだった安全機構を無効にしてしまう。大事故はほとんどが人災なのである。
最終章には最悪の事故を未然に防いだ人たちの事例が紹介される。彼らは英雄のはずなのだが、事故は起きなかったわけだから報道されることがない。事故防止では、失敗例は多いが成功例は語られないが故に少ないのである。
ベテランの経験を持ち、自ら考えて判断することができる副操縦士的な人が現場にいると、大事故は回避されやすいようだ。マニュアルの遵守も重要だが、大事故の原因はマシンの設計・企画段階につくられて潜在化していることがあるため、マニュアル遵守だけでは防げないのである。
なぜ完璧なはずの巨大システムが破綻したのか、とても明快に説明されていて、失敗学に関心のある人におすすめの本である。
2006年12月20日
「脳の鍛え方」入門―40歳を超えてから頭は良くなる!
雑誌「プレジデント」の特集記事を集めた本。当時、表紙をみて気になっていた記事がまとめて読めたので満足。できる経営者の仕事術や脳科学者が効率のいい頭の使い方について次々に語る。
脳科学者の池谷裕二氏の「仕事は区切りの「悪いところ」でやめたほうがいい」にまず納得。仕事はキリのいいところで休むなという。中途半端でやめておくというのではなく、区切りまでやって、そこから一歩だけ進めてやめるのが脳に良いそうである。
これは実践していて、その通りだなと思った。
私は更新できない日のストック用に、このブログの記事をまとめ書きすることが多いのだが、まず書けるだけ書く。数本を完成させる。そして最後にひとつ、数行だけ書いて未完成の記事を残して終わる。そうすると、次回に書くときに滑り出しがいいのだ。
斉藤孝の「四字熟語力」はこれから活用させてもらおうと思った。何でも良いから四字熟語+力と言ってみろ、行動力が高まっていくから、という実践家らしいアドバイス。「朝令暮改力」「自画自賛力」「風林火山力」など例がある。四字熟語にネガティブな意味があっても、なんだかそういうポジティブな能力もありそうな気がしてくる。「無知蒙昧力」とか「駅前留学力」「記念受験力」「優柔不断力」とかもあり?。どういう力か考えてみること自体が楽しい。
ベテラン勢の意見を聞いていると、30代、40代を超えても脳の能力は高まっていくものなのだなと感心、安心させられる。「それでもなおかつ記憶力は落ちたと言い張る人は、学生時代に自分がどのようにして英単語や歴史の年表を暗記したかを思い出してみるといいでしょう。単語帳をつくったり、年表をつくったり、悪戦苦闘しながら取り組んでいたはずです。あなたは、そのような努力を現在も行っているでしょうか?」。確かに言われてみればその通り。記憶力だって落ちていないのかもしれない。
2006年11月25日
「続ける」技術
英会話、試験勉強、日記、手帳術、禁煙、ダイエットなどの習慣を続けるための方法論。
「物事が長続きすることやすぐに挫折してしまうこととあなたの「意志」とは、何の関係もありません。」
ポイントは、
「1 ある行動を増やす 2 ある行動を減らす」
にあるという。根性精神論ではなく行動科学で継続を達成するノウハウである。
継続したい行動(ターゲット行動)が起きやすく、その行動を阻害するライバル行動を起きにくくすることで、自然に継続できる、ということだ。行動のヘルプ(補助)を作る、動機づけ条件を作る、行動のハードルを低くするなど、具体的なケース例が多数提示されており、どうこのメソッドを生活に取り入れるべきかに詳しい。
周囲に継続を宣言し、日々ほめてもらう環境を作るというアイデアはかなり使えそうだ。特に家事労働などのシャドウワークは、ビジネスとしての仕事と違って褒める人がいないのでこの方法論が使えそうだ。
最近、家事や料理の内容をミクシイに頻繁に写真でアップしている主婦をみかけるが、友人知人の主婦が相互にコメントしている。継続のための環境としてネットコミュニティは使えそう。
米国のサービスの43 Thingsは、目標(10キロ痩せたい、恋人を作りたい、早起きしたいなど)を宣言した上でブログを書くコミュニティだ。みんなの目標がタグクラウドで表示されている。同じ目標を持つ人が多いと大きな文字で表示される。同志を簡単に発見して励ましあいながら、ブログを書くことができる。
・43 Things
http://www.43things.com/
仕組みづくりが重要という、この本のシンプルな方法論には共感した。毎日○○したい人におすすめ。
2006年11月23日
「書ける人」になるブログ文章教室
ブログの書籍化に取り組むアメーバブックスの取締役編集長で小説家の山川健一著。
ブログはしょせん日記だけれども日本の文学史は土佐日記や徒然草、枕草子などの日記、随筆に母胎を持つという分析からこの本は始まる。近代になって知識人が大衆に教え諭す上位下達式の難解な文学が流行ったこともあったが、今はその近代文学が力を失い、再び「女子供が平仮名でだらだら書く日記。オヤジのグチ。身辺雑記」の伝統に戻りつつある、ブログの爆発的広がりはその表れなのだと著者はいう。
ブログは高飛車に書くと炎上するし、謙虚すぎても嫌味になる。普通の人間である書き手が、どういう態度でのぞむべきか、作者のアドバイスがいい。
「大切なのは、自分の立ち位置をはっきり決め、優越感と劣等感の両方から自由になり、「普通の人間」として心を込めて文章を書くことではないだろうか」。
私もブログを日々書いていて大切と思うのは自意識をどうコントロールするかである。自意識を前面に出した文章は反発を買いやすいし、しばらくして自分が読み返して恥ずかしいものだ。逆に自意識を殺しすぎると、温かみがなく、懐の深さが感じられない文章になってしまう。著者は「暖かな無意識」という言葉を使っているが、書き手の人柄が、故意に押し出されるのではなく、自然とにじみ出るような自意識のバランス調整が重要なのだと思う。
このブログが長く続いているのは書籍やソフトウェアという他者の著作にコメントする形式だからだと思う。もし今日個人的に考えたことや政治経済や社会について時事評論を書くというテーマのブログだったら続いていなかったのではないかと思う。主観的過ぎるものも、客観的過ぎるものも、自意識の自己崩壊がおきやすいと思うからだ。
それでも個性の手触りこそ表現の核である。
「もっとも個別的なものこそが普遍にたどり着く。それこそが表現が持つ錬金術の秘密なのである。」
読者が1万人になっても特定のターゲット層10人や100人に向けたスタンスで書くのがよいと著者はアドバイスしている。
プロの小説家として文章術も語っている。接続語や語尾のバリエーションを豊かにし、改行や文章のリズムを工夫せよ、など。だが、この本の中心テーマは、小手先の文章術ではない。うまい文章を書くよりも、面白い内容を書き続けるための考え方が主体となる。
そして、編集者の視点でブログを書籍化するためのアドバイスが最後にある。プロフィールをできるだけ公開せよ、ブログ全体レベルに起承転結的な構造を意識せよ、より大きな作品のためのノートとしてブログを位置づけよ、など。
編集者の目からどう見えているか、が重要なのである。私はちょうどブログの書籍化という目標を達成したばかり。3年半かかってしまったが、この本のアドバイスを知っていたら、もうちょっと早かったかもしれない。
2006年11月16日
詩人少年、社長になる ぼくが出版社をつくったわけ
毎月読む書評雑誌「ダ・ヴィンチ」には後ろのほうに、新風舎の新刊紹介コーナーがある。私は最近このコーナーで社名を知った。まだ一般知名度は高くない新風社だが、実は、年間に2700点を超える書籍を出版しており、2005年に新刊の点数で日本一の出版社になった。
・自費出版が進化した!新風舎 本にする原稿いつでも募集しております
http://www.shinpusha.co.jp/
もともとは、15歳の少年が自分で書いた詩を世に出したくて立ち上げた小さな会社だった。従来の商業出版では作品を出しにくかった無名の表現者を支援したいという情熱で、出版不況の中で異例の急成長を遂げている。
出版点数が多いのは、著者と出版社が資金を出し合って本を作る「共同出版」というビジネスモデルをベースにしているから。地方にも直営店舗ネットワークも展開している。数年前に皇室で読まれているという報道で、人気に火がついた絵本「うしろにいるのだあれ」は新風舎の代表作である。
この本は新風舎社長のマツザキヨシユキの自伝。著者の出版への関わりは、8歳の頃に盗作でつくった絵本に始まる。詩や小説を書いたり、ラジオ番組を作ったり、同人誌を作ってみたりと、少年期から大学時代までを、さまざまな表現活動に取り組んだ。
こうしたプロフィールだけ見ると、学生時代に立ち上げた音楽雑誌の出版事業から、成り上がったヴァージングループの社長に似ているが、まったく違うのは、上昇志向が感じられないこと。会社を大きくしようとか、売れ筋ベストセラーを出そうとは、考えない人のようだ。いい本を作りたいの一心で仕事をしている。だからこそ1万人の著者が共同出版のコンセプトに賛同してこの会社から本を出したのだろう。
IPOやM&Aをゴールにしない起業物語がすがすがしい。
無名の著者の本をたくさん出版する。インターネットの話は出てこないが、ロングテール市場の先駆けベンチャーだったと言えそうだ。自分史を出したい、作品集を出したい、ブログを本にしたいというアマチュア表現者は増えているはずだから、目利きとプロデュース能力次第で、自費出版、共同出版の市場にはまだまだチャンスが広がっているのかもしれない。
8歳のときに盗作した絵本の作者の谷川俊太郎、イラストレーターの和田誠と新会社トピスカインクを立ち上げるところで自伝が終わる。この会社が具体的に何をするのか書いていないが、ヌイグルミの販売を始めているようだ。おかしな取り合わせに注目である。
・トピスカインク
http://www.shinpusha.co.jp/wahhahai/
面白い本だったが、ひとつだけ疑問が残った。なんで著者は自分の出版社ではなく、日経BP社からこの本を出したのだろう?。
著者が少年時代に書いた詩集。新風舎が復刊。
・ワッハワッハハイのぼうけん: 本: 谷川 俊太郎,和田 誠

著者が少年時代に盗作した絵本。新風舎が復刊。
2006年10月01日
好かれる方法 戦略的PRの発想
PRの仕事に40年。その道のプロの(株)プラップジャパン(2005年ジャスダック上場)社長が語るPR論。自民党の選挙アドバイザーとして2005年の総選挙を圧勝に導いたことで有名になった。パブリックリレーションズとは「大衆や公衆、ひいては社会との関係を向上させて、良好なものにする行為」であると著者は定義している。
PR会社はクライアント企業をメディアに売り込んで記事にしてもらうパブリシティの仕事が主体である。広告をメディアに掲載する仲介料ビジネスである広告代理店とは異なる。自民党のほか、キシリトール、タマちゃん(アザラシ)、宮崎シーガイア、六本木ヒルズ、避妊用ピル、ヴィダルサスーン(シャンプー)など、著者の会社が関わった成功事例が次々に挙げられる。
成功事例はそれで楽しいのだが、第4章の「危機管理のエッセンス」が飛びぬけて面白くて、参考になった。同社は記者会見での対応訓練サービスを法人向けに提供している。言ったことを、メディアにちゃんと取り上げてもらうというのは平時のリリースでも難しいのだが、危機管理においてはさらに困難になる。
危機に際して記者会見する際の心構え。
1 記者から逃げない
2 情報開示の姿勢と誠意を示す
3 クイックレスポンスを心がける
4 答えは簡潔に
5 企業の論理を主張しない
という大きな方針が示される。これらの詳細なアドバイスが勉強になる。
たとえば、4の答えは簡潔になら「ポイントは三つ以内に絞るべきです。これはマジック・トライアングルと呼ばれている方法ですが、非常に有効です。「それについてはまず三つポイントがあります」と答えると記者はメモ帳に、1,2,3と番号をつけて、順番に聞こうとします。ですから、先方に話を聞く姿勢を作ってもらえるのです。しかも、ポイントが三つあれば、記者はそれを勝手に省略して記事にはしづらいので全部書かざるを得ません」。なるほど。
「ご承知のように」「言うまでもなく」「先ほども申し上げましたように」や、相手の言葉のオウム返しや「ノーコメント」はダメ。こういう手ごわい質問にはきをつけろリストがある。偉大なコミュニケーターのレーガン大統領の切り返し方「いやあ、その質問にはこんなふうに答えさせてもらおうかな」などノウハウが多い。
私はライターをしていたので、インタビューする側、つまり攻撃側のノウハウはだいたい知っている。この本では、逆に、防戦側のやり方が書いてあって新鮮だった。
2000年の雪印乳業の食中毒問題で社長が記者会見後、エレベータ前で記者にもみくちゃにされ、怒って「私は寝てないんだ」と怒鳴ってしまった失敗例。著者曰く、怒鳴った社長も論外だが、エレベータ前で記者に囲ませるような会見現場の「仕切り」の悪さを批判している。プロは視点が違うなと勉強になった。
経営トップ、役員補佐、広報、秘書の仕事をしている人に特におすすめ。
2006年09月19日
王様の速読術
「王様の速読術は、まず一冊の本と付き合う時間を30分と決めてしまう。」
30分を3段階に分ける。
第一段階では、プレビューを5分間行う。
第二段階では、5分間で全ページを写真読みしていく。
第三段階では、残りの20分を使ってスキミング法で読んでいく。
という方法の詳細が書いてある。
この速読法は、
・80%の理解でいいから20%の時間で読む
・とにかく速く読むのではなくて、短時間に必要な情報を獲得すること
・50冊から10冊を選んで1週間以内にレポートを出す
などをねらいとしている。
内容を味わうのではなく、情報という栄養分を摂取するタイプの読書術といえる。
表紙、カバー、目次、見出し、図表などをざっと見るのが第一段階のプレビューだ。実際にやってみるとこの5分間はかなり長いし忙しい。次の写真読みでは見開き2秒で、全ページを眺めて、読むべき箇所を探す。そして20分間でその箇所中心に読む。
大量の情報をさばかねばならない時に向いていそうだ。
個人的には「飛ばし読み」はポリシーに反する。読む本を選んでいるので、もったいないと思うのだが、こうした読みが必要なことは仕事や勉強ではよくある。
仕事で必要に迫られ、私も速読法はいくつか試したことがある。いわゆる「飛ばし読み」でおおざっぱに大意をつかむだけなら、練習次第で、一冊30分は可能だと思う。ごく簡単なメモは作れる。締め切りの近い調査や原稿の仕事における情報収集に、飛ばし読み的な速読は役立つ。それができるのは、やさしいビジネス書か自分が専門としている分野の専門書などに限られてしまう気はするが。
ただ、速読は味気ないし疲れる。日常的には普通に読みたいと思う。大切なのは、毎日読むこと、と、読む本を選ぶこと、だと思う。毎日の時間の積み重なりはとても大きい。私は往復2時間半の通勤時間に愚直に読んでいるが結構たくさん読める。
長距離通勤者は恵まれている。所要時間が1日1時間なら365時間、2時間なら730時間ある。1冊に4時間かかっても、前者なら90冊、後者なら180冊以上は読めるのである。(実際には休日は通勤がないのだが。)
面白い本を選ぶことも大切と考える。内容にひきこまれて夢中で読んでいるときの速度は結構速いものだし、中断や放棄がないから、結果的に中長期で、大量の本を読むことになる。途中まで読んで、面白くない本は、時間の無駄だから、そこで止めることにしている。思い切りが重要だと思う。
そうやって毎日読んでいると、日常が練習になって、読書はある程度、速くなるものではないだろうか。速読法は万能ソリューションではないと思うが、試してみるのは悪くないのだと思っている。速く読めるんだけれども、ペースを落として読んでいるんだと思える余裕はあったらいいと思うから。
内容の構造やキーワードに集中して30分読んでみるといい、というこの本のアドバイスは、短期集中で情報を集めたいときには、ちょうどいいくらいの速度だなと思った。
2006年08月31日
知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ
「
1 複眼思考とは、ありきたりの常識や紋切り型の考え方にとらわれずに、ものごとを考えていく方法のこと。
2 常識にとらわれないためには、何よりも、ステレオタイプから抜け出して、それを相対化する視点を持つことが重要。
3 知識も大切だが、「正解」がどこかにあるという発想からは複眼思考は生まれない。」
全国3万人の大学生が選んだ「ベストティーチャー」が語る多角的な視野の持ち方、考え方論。創造的読書法、考えるための作文技法、問いの立て方・質問の仕方、関係論的なものの見方など、学生だけでなく社会人にとっても大切な「自分の頭で考える」方法論をわかりやすく説く。
私の場合、調子よくしゃべっているうちに自論に惚れこんで、大局を忘れてしまうことがあるなあと思う。今日もあった。私は午後、「革命的に素晴らしい検索サービス」を思いついたので、社内会議で延々としゃべった。内容に矛盾はなかったのでロジックはしっかりしていたと思う。事業プランとして社内で合意を得た。
そこで勢いに乗った私は、師匠にも話に行った。ところが師匠曰く「橋本さん、それ、やってもいいけど、ずいぶんニッチなサービスだよねえ」という評価をもらって、少し我に返った。神は細部に宿るという言葉がある。面白い細部に夢中になると、大局を忘れてしまう。この本のいう複眼思考も、全体と部分という二つの角度から見直せという話でもある。(それでも、そのプランは実行するつもりだが...)。
ものごとの二面性に注目する、関係のなかでものをとらえる、メタを問う。
概念はサーチライトであり個別具体を照らし出す道具だが、強すぎる概念には気をつけろという注意は参考になった。たとえば「構造」「個性」「権力」というビッグワードが強すぎる概念である。それは構造的な問題だ、とか、個性が大切だとか、権力に立ち向かえという言葉は、考えてみるとサーチライトとして照らし出す意味が広すぎる。そういうときは言い換えてみよと教えている。
「画一的な校則の強制は生徒の『個性』を育てない」
は、
「画一的な校則の強制は『生徒ひとりひとりが自分なりによいところと思っている特徴(=個性)を伸ばすことを難しくする』」
といった具合に置き換えてみれば、何を言っているのかはっきりする。
IT業界のコンサルタントも気をつけないといけない。
「ネットの『クチコミ』で広めましょう」 < 企画の万能最終兵器「クチコミ」キター
「『コンテンツ』が重要なんです」 < というか、それがすべてではないのか?
「『ロングテール』に『最適化』した『ビジネスモデル』」 < 決め手がないということか?
2006年08月20日
15秒でツカみ90秒でオトすアサーティブ交渉術
叩きのめさず、叩きのめされずに、すがすがしく自己主張するのがアサーティブ交渉術。「話し上手」になるのではなく、「聞いてもらい上手」になりましょう、というのがこの本の趣旨。
相手が聞きたい話をして、YESをもらう方法として、
1 言い訳をしない
2 優先順位をつける
3 時間を区切る
4 きちんと言い切る
というポイントが挙げられている。
× 「今日はとりあえず、ごあいさつということで」
○ 「新製品のメリットをお伝えしたい」
というわけだ。
そして、相手が聞きたいことは何かを考えて、
× 「社運を賭けた新製品を、ご紹介したい」
○ 「御社のコスト削減に役立つ新製品の特徴をご理解いただきたい」
というように、最初の説明で、Win-Winの関係を作れば、言いたいことを言っても、YESがもらえる。
アサーティブ交渉のために、、
15秒のインパクトを与えるスピーチ
90秒の納得感を与えるスピーチ
の2つのスキルを強化せよ、と著者は説く。
・「昨今のビジネス環境」を語るべからず
・「自己アピール」と「自慢」をしっかり区別する
・「がんばります!」ですまさない
など、やってしまいがちなポイントの具体例と、こう直すとよくなるという模範例に、納得する。
90秒スピーチは、あいさつ、名乗り、アイスブレイク、予告、本論、結びの6パートで構成せよ、としている。いくつかの選択肢を選ぶだけで、自分版の90秒スピーチの台本ができあがる「プリフィックスメニュー」はとても参考になった。
・一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003895.html
・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html
・ワルに学ぶ「実戦心理術」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003180.html
・NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003031.html
・トップに売り込む最強交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000324.html
・心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000609.html
・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html
・悪の対話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002109.html
・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html
・パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000150.html
・ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000145.html
・外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003381.html
・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html
2006年08月16日
説明上手になれる「らくがき」の技術
著者はグラフィック・ファシリテーションの専門家である。
「グラフィック・ファシリテーションの手法は「集団によるエネルギー」「学習のためのセオリー」「イメージマップ」という三つの要素の微妙なバランスによって成り立っています。これらの要素を組み合わせることによって、反対意見の応酬でちっとも意見がまとまりそうにない会議をアイデアを生み出す場に変えることができるのです。」
これは検討課題を絵図で表現することで、円滑に議論する方法論である。ホワイトボードや配布文書に描かれた絵図は、文章よりも、参加者の関心を確実に集める。効果的に絵図を活用できれば、具体イメージを喚起させたり、話をまとめやすい。
「ユーザー」や「電話」、「サーバ」や「データベース」を絵にする。☆や○など基本図形を使う。飾り文字を書く。図形をレイアウトしてクラスター図を描く。価値基準の軸を持つグリッドに図形を配置して整理する。らくがきをグループ思考ツールとして役立てるためのコツが紹介されている。
基本図形の例が、絵描き歌のような筆順付で、大量に収録されている。人や車やパソコンの簡単な図形。これをいくつか覚えるだけでも、ホワイトボード上手になれそうだ。上達のための訓練法が「やってみよう」演習として各章で用意されている。
たとえば「テレビを見て視覚的な比喩を書き取りましょう。まず、ほかのことは何もしないで聞いてください。次に、聞き取った視覚的な比喩を書き出します。その後、その言葉を絵にします」。傘下に入る、水に流す、雀の涙、峠を越す、話がどうどう巡りをする、話が飛躍する、などの比喩を絵図で表現するという練習だ。
直線や円のキレイな描き方、レタリング(文字)、水平に描く、高さをそろえる、フキダシやフレームなどのアイデア、系図やダイアグラム、遠近法など、初級者から上級者まで、ホワイトボードの達人への道が語られている。
わかりやすい図をスラスラと描く人は、創造的なアイデアマンに見えるし、紛糾した議論の内容をグリッドや系図、関係図で鮮やかに整理する人は、知的なリーダーに見える。らくがき思考のらくがきは、会議中でも独りで練習できるわけだから、ちょっと取り組んでみようと思った。練習中。
・パワーポイントは不要?ドローエディタ ディスカス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003485.html
・ビジネス図解に強力なSVGcats
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000827.html
・フォント考、印象の良さ、強さ、周辺ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000526.html
・最強の戦略は「図」で立てる
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000490.html
・デジタルとネットワークで会議は踊る?
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003244.html
2006年08月15日
「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法
・「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法

人を論理で説得する。その難しさは誰だってわかっている。実際には人は論理だけでは納得しないのだ。この本はビジネスのコミュニケーションやマーケティングにおいて、物語の力を活用せよと説く。
「モノを売り込むには、論理で攻めるよりも、相手を共感させ、感情移入させる「物語」のほうが効果的」。従来の「ロジカル・シンキング」の落とし穴は、人間が純粋にロジカルな存在ではなく、感情を持った非ロジカルな存在だという事実を見落としていることにある。
物語には、単なる論理の理解ではなく、共感、感情移入、想起、想像というプロセスがあるから強いと著者はいう。人類史上最大の説得力を持った聖書は、事実や論理ではなく、物語という形式をとっているではないかという。
「現在」から入り、いったん「過去」にさかのぼり、再び「現在」に戻ってくる「V字型のストーリー」が効果的だとする。失敗や挫折を乗り越え、主人公が出発点からどこまで到達できたのかの遠近感に人は感動するのだという。誘因、紛糾、危機、山場、解決の構造。NHKの番組「プロジェクトX」など成功物語のほとんどは確かにこの形式を取っているなと思う。具体的なV字型ストーリーの構成法が語られる。
物語法は製品開発においても効果があるという。従来の製品開発形式には、明確な市場ニーズを満たす製品を作る「需要プル型」と、明確な技術シーズを適用するための市場を探す「技術プッシュ型」の2種類があるが、近年、どちらでもない「芸術型製品開発」が増えているのだという。消費者のニーズも、技術シーズもはっきりせず、両者を対話させながら、開発が進行していくケースのこと。
多くのインターネットの「Web2.0」なものの開発がその例だと思う。市場ニーズも技術シーズもはっきりしないが、断片的な情報に予兆を読み取り、こうしたサービスを消費者は使うようになるに違いないという「意味」をみつけていく。まさに物語をみつけるプロセスである。
物語は組織を率いるリーダーの言葉としても効果を発揮する。リーダーシップとは、チームで物語を作り、共有することでもあるからだ。
「
リーダーは自分の物語を追及するだけではダメ。チーム内のひとりひとりを主人公に見立てた物語を本人たちと共有し、つねにプロジェクト全体に目配りできることが大切です。」
利点を図や箇条書きにしただけではダメで、相手を主人公にした利用シーンを語ったら、わかってもらえた、ということはビジネスシーンでよく経験する。過去の成功を伝説や神話にすることで長く繁栄している企業もある。論理で戦略を立てて、物語で人を動かす方法について、とても参考になる一冊だった。
2006年08月13日
ホワイトハウスの超仕事術―デキるアシスタントになる!
大学で担当している前期授業が終了。今年は有能な学生アシスタントのM君に毎回とても助けてもらった。彼はまだ2年生だが放送部部長で、FMラジオ局で番組制作のアシスタントのアルバイトもしたりしているらしい。道理で現場アシスタントの役割を熟知しているなあと感心し、仕事のイベント業務も手伝ってもらったが完璧な動きをしてくれる。若いけれども、プロだと思った。
彼がいると、授業というフライトの「自動操縦」ができる。
「前列から席が埋まってほしいんだよね」とぼやくと、私に代わって「前から座ってね」と授業前に学生に呼びかけをしてくれる。それでも効果がないとわかると、次回から、入場時に教室の後列の照明を消しておく手法を編み出した。自然と前列からの着席になり、効果があった。
私の授業はパワーポイント資料を大きなプロジェクタースクリーンと、後列のモニターに投影して進める。ワーキンググループ活動の時間には課題内容を画面に投影している。このときに、私がプレゼン用PCで他の作業をしようとすると、「画面をフリーズさせますね」と確認してくる。最初、何のことかわからなかったのだが、プロジェクターの画面固定機能のことだった。これは便利だ。
ゲスト講師のいるときは、私がゲスト紹介を始めている後ろで、ゲストのPCの機器設定を手早く進めている。紹介が終わる頃には、ゲストがスムーズにプレゼンを開始できるようになっている。マイクの音量や照明、ドアの開閉に常に気を配っており、頼まないでも最適化してくれる。
こうしたことを、彼は、私を質問攻めにしないで遂行する。目で合図できるアシスタントは珍しい。私にはない機材知識や現場経験からの提案は有効なことが多い。授業やイベントの最初から最後までをイメージしている人間が、私以外にももう一人いるというのは、大変な安心感があり、自分の仕事に集中できる。
信頼関係ができて、いろいろな問題を話しかけたり、相談を受けたりするようになった。私が彼の主張に異論を唱えることもあるが、その場では反論しないで、いったん飲み込んでくれる。そういう彼の態度から、逆に自分が間違えたかもしれないと、私の方が内心気になり始める。アシスタントとしての彼の「飲み込み」は、私に対して反論以上の効果をあげている。
さて、この本は、大統領補佐官のアシスタントとして働いた後、クリントン大統領再選時のテキサス州選挙対策事務局長、ポロ・ラルフローレンIR担当役員などを歴任した女性アシスタントの仕事術である。
・ボスのためにどんな情報リストを管理すべきなのか
・書類整理、電話対応、スケジュール管理、出張手配などの技術
・ホワイトハウスで使われているブリーフィングメモの実物公開
・アシスタントのキャリア(いつかボスになるために)
・ボスとのコミュニケーション術
など、アシスタントの仕事について現場の経験をベースにたっぷり書いている。学生や新入社員はまずアシスタント業務につくことが多いはず。経営トップのマネジメント論も大切だけれど、アシスタントとしてプロになることが、トップへの近道であったりするかもしれないと思った。
2006年07月23日
企画書は1行
一枚企画書を超えて、企画書は渾身の一行に賭けよ、と説いた本。
(文字通り一行の企画書を書けという意味ではない。)
コンサルタントの仕事をしていると、分厚くビジュアルな企画書を書くのが仕事だと思い込んでしまう時期がある。コンサルを専門とする会社では、特に若手はたくさん書かないと企画書として認めてもらえない雰囲気もある。それで何十ページや何百ページの豪華版を作ってしまうわけだが、最終決定者が企画にGOサインを出す判断は、やはり企画書の長さではなくて、渾身の一行の精度なのである。
有名な経営者、プロデューサたちの企画立案の心構えと、彼らの代表作の一行が読める。
「一生屋台を引くことはできない」という覚悟の一行メッセージで、投資家から出資を引き出し、お好み焼きチェーンを創業した成功者。「彼女の部屋で遅めのランチ。パスタを食べながらグビグビ」でヒット商品の缶チューハイを開発したキリンビール。「人の命をどう考えるのか」で救急ヘリコプターのネットワークNPOを設立した元警察庁長官。現状と理想像を合成写真で並べて「この二枚の写真を見てください」と役所を説得した地域活性化のリーダー。
「企画書は内容のまとめではない」
「つまり、企画書の一行とは読んだ人の脳裏に風景を映し出すことなのだ」
聞いた相手の心に鮮明な映像をむすぶような一行が企画書の本質であって、それ以外はおまけに過ぎない。実現に結びつく企画書の共通点はその一行があるかどうか、というのがこの本の要旨である。それを伝えるために多数の企画者の事例が紹介されている。
私も思い当たる経験がある。必死に書いたWeb構築の企画書でプレゼンし大きな仕事をもらって喜んでから、数年後、GOを出してくれた経営者と飲んでいた席で、こんな風に言われた。「あのとき、橋本さんの企画書はどうでも良かった。それより、あなたが、あらゆる手段でアクセス数を上げて見せますって本気で言っていたから通したんですよ」。
私は当時、アクセス向上委員会と言うコミュニティを運営していて、ホームページのアクセス数を高める仕組みを研究し、本を書いていた。その経営者は、もともとそういう背景を評価して私に提案させていたのだから、企画の趣意が「本気であらゆる手を使って人気サイトつくります」でよかったのである。何ページ後ろについていようと、特定の方法論が書いてあろうと、それはおまけだったのだ。
プロの専業コンサルはともかく、フリーランスやベンチャーの場合、大手企業から企画提案を要請されるということ自体に、二者の関係性が確立されているということでもある。そこを認識しないで、一行のない、小手先でたくさん書いた企画書を出したら逆効果ということもあるだろう。企画書をさあ書くぞと気負っているとき、意外にその前提を忘れがちだと思う。本来相手の方が専門家であるビジネスについて、一般的な市場分析から入って、的を外してしまったりする。仕事を始めた頃、書いた企画書は今思い出すとそうした恥ずかしい失敗が満載だった。
ズバリの一言で意思決定者の合意を得て、必要ならば後から長大な企画書を作るというのが正しい企画マンの仕事なんだなと思った。
・鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
2006年07月11日
かけひきの科学―情報をいかに使うか
情報をいかに扱うかについての軽めのエッセイ集。”かけひき”については実は内容が少ない。情報とは何か、考察がある。
気になった部分を抜書き。
・冗長性
日本語の一般的な会話における冗長な言葉(それがなくても意味が伝わる言葉)は42%もあるそうだ。しかし、この冗長度はうまく使うと、情報を伝える媒介となる。
「講義の上手な先生の話には、じつは冗長な言葉がいっぱい入っている。しかもあちらこちらに余分な話が入っている。講義の内容はだいたいわかる。つまり、私たちが相手にメッセージを送るときに重要なのは、冗長度のサジ加減なのである」。「セールストークであまり冗長度が少ないと、どういう商品かがわからないし、だいいち客はとっつきにくいから、とたんに購買意欲が失せる」。
確かに、電報や業務連絡のような冗長性がないメッセージは、文脈を完全に共有した人以外では伝えるのが難しい。
・現状維持の仮説
「現状は維持される」という仮説は結構当たる。たとえば今日の天気が晴れなら明日も晴れ、雨なら雨というように、「今日と同じ」仮説の的中率は年間60%だそうである。同じ天気が2日続いたら3日目も同じとする「傾向が維持される」仮説は東京だと70%近くなるらしい。冬場に3日間寒い日が続くと4日間暖かい日が続く三寒四温の「周期性がある仮説」もかなり当たる。
これと同様に、市場に投入される製品にも規則性がある場合が多く、各社の製品に基本的な型がn種類あって、型ごとにランク付けがされていて、製品同士が競合関係にある電化製品の市場などでは、過去の新製品出荷のペースを調べれば、将来の新製品の型や販売時期、価格までかなりの精度で予想できると著者は述べている。最近では、携帯電話やパソコン、テレビではこうした予測が成り立ちそうである。
・二つの知性
米国のエイジング研究によると、人間には二つの発達する知能がある。
フルーイド・インテリジェンス 流動性知能
柔らかいひらめきや創造する能力 10代後半から20代でピーク
クリスタル・インテリジェンス 結晶性知能
長い間の経験や学習によって培われる総合判断力 30代からゆっくり上昇
前者が創造力で後者が経験則といえる。年齢を重ねるに従い、驚きが減って好奇心が弱くなる。若いときに創造力を発揮しておかないと経験則にならない。達成したことの感動が次のステップの努力につながる。
2006年06月19日
ビジョナリーカンパニー【特別編】
全米200万部のベストセラー「ビジョナリーカンパニー2」の付属論文。
前著で語られた偉大な企業組織とは何かというテーマを、医療、教育、役所、NPOなどの社会セクターに適用する。非営利組織においてもビジョナリーカンパニーの「偉大な」組織への飛躍の法則ははたらいていることを説明する。
目次
一 偉大さの定義 経営指標が使えないなかで、偉大さを判断する
二 第五水準のリーダーシップ 分散型組織構造で成功を収める
三 最初に人を選ぶ 適切な人をバスに乗せる
四 針鼠の概念 利益動機のないなかで、経済的原動力を見直す
五 弾み車を回す ブランドを構築して勢いをつける
社会セクターの偉大さは金銭的指標では測れない。企業にとってはコストや利益の数字が偉大さを測るインプットであり、アウトプットであるが、社会セクターでは金銭はインプットではあってもアウトプットではないからだ。
社会セクターでは、投資した資本に対しどれだけの利益が得られたかではなく、使った資源に対してどれほど効率的に使命を達成し、社会に際立った影響を与えたかで偉大さを測るべきだという。たとえば楽団であれば、年間のスタンディングオベーションの数、演奏できる高度な演奏技術を必要とする楽曲の数、音楽祭に招かれた回数、チケットの需要。社会セクターの実績測定は、経営指標のように数量化できる必要はなく、厳然たる質的事実を集めて証拠とする弁護士のような仕事となる。
人材の流動性が企業組織よりも小さい社会セクターでは何より、優秀な人材を選別し「バスに乗せる」ことが大切になる。重要なのは報酬をどう支払うか(あるいは、いくら支払うか)ではなく、だれに支払うのか(誰がバスに乗っているのか)なのである。偉大な社会セクターがどのようにして、意識が高く能力のある一級の人材を集めているかの実例がいくつか示される。
そして志の高いビジョンと経済的原動力の関係、組織を際立たせるブランド構築法など、ビジョナリーカンパニーのやり方を、社会セクターの経営に最後まで翻訳していく。偉大な組織のあり方は、どちらの世界にも共通であり、普遍性を持つということがわかる。
ドラッカーの「非営利組織の経営」にも通じる部分が多くあった。要するに高い志と優秀さが鍵なのだ。こちらも学生時代にNPOの支部代表をしていたとき、読んで感銘した。NPO活動に従事する人にはどちらもおすすめ。
私が所属している団体がNPO法人になって、法人の理事になるので、読み直した次第。
・非営利組織の経営―原理と実践





































