2008年03月16日

つい口に出る「微妙」な日本語 その言い方は他人にどう聞こえているか

・つい口に出る「微妙」な日本語 その言い方は他人にどう聞こえているか
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著者は、ビジネスパースンや学生を対象に200件の聞き取り取材を行って「耳障りな言葉」と「自分でも言うことがある語句」の両面で「微妙な日本語」を選び出した。たとえば第一章で紹介されているのは、「微妙」、「とりあえず」、「かもしれない」、「一応」、「ちょっと」、「できれば」、「思われます」、「〜なはずですけど」、「〜という可能性も否定できない」。出現度と不快度を5つ星でそれぞれの言葉が評価されている。

後半にでてきた「ある意味」、「逆に言うと」、「要は」。これも私が一日のうちに何度も使ってしまう微妙語である。微妙語のほとんどはそれがなくても意味が通じるばかりか、ないほうが明確になるものが多い。

自分の言葉づかいを振り返って、諸問題の一因となっている言葉が、この本にでていた「難しいですねえ」である。何らかの仕事を「お願いできますか?」と聞かれると「できません」「不可能です」と言わずに、ついつい「難しいですね」と言ってしまうのだ。相手の困った顔をするのを見たくないと思うあまり、完全否定の言葉を出すことができず、とりあえず「難しい」と一応いうのだが...。

「お願いする側は必死ですから「難しい」と言われれば一縷の望みを捨て切れずに食い下がってきます。<中略>それでも、できないことははっきり言って差し上げる必要はあると思います。そうでないと、相手だって代替案の検討など、先に進めなくなってしまいます。また、足元を見て高い条件を吹っかけようとしていると勘繰るかもしれません。」

口に出す言葉というのは短くするとぶっきらぼうな印象を与えがちである。それを回避するために、意味的には不要な言葉を挟んでみるわけだが、NOをYESにすることはできないのだから、それは使い手の優しさとはいえないわけである。はっきり言ってあげた方が仕事では適切なのだ。

逆に長いほどよさそうなのが、ほめ言葉である。この本と同時にこれを読んでいた。

・「ほめ言葉」最強の一発変換!
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「「マメだね」を「リスク管理、きっちりできてるね」に、「ダンドリがいいね」を「仕事の全体像をイメージできてるね」に…。「ほめる」ことに慣れていない人がつい言ってしまいがちな言葉を、効果的なフレーズに変換して紹介。 」

実用予定なので、あまり中身を紹介したくないのだが(笑)、ほめ上手になるための、褒め言葉長文化テクニックが多数紹介されている。

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2008年03月13日

伝説のプラモ屋―田宮模型をつくった人々

・伝説のプラモ屋―田宮模型をつくった人々
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世界最大のプラモデルメーカー田宮模型を育てた伝説の2代目社長が語る田宮模型の歴史。この社長自身が模型が好き好きでしょうがない、こだわりを持った人である。だから製品開発で「数字にしたら0.7〜0.8ミリの誤差。私が感じた「何となく厭だ」を是正するのに要する費用は数千万円。時間は丸一年以上だった。」なんてこともよく起きる。

・1/48 フェアリーソードフィッシュMk.II
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数あるモデルの中でも、社長が「世界に誇れる名プラモデル」というのがこのフェアリーソードフィッシュ。

あの小さな兵士のフィギュアにも物凄いこだわりがあった。「もっとも、35分の1という小さな人形のモデルの表情にこんなにこだわったところで、何人の人が価値をみいだしてくれるか、はなはだ疑問だ。が、たとえ一万人にひとりであれ、違いに気づいてニンマリと笑みをうかべてくれる人がいれば、本望である」。

田宮模型の社史をたどって興味深く感じるのは、これだけ本業のプラモデルに思い入れをもっているにも関わらず、会社の危機を救ったり、急成長の原動力になった製品はプラモデルではないということだ。

昭和30年代に玩具用金型を流用してつくった小さなレースカーが最初の大当たりをだして大赤字の会社を再生させた。そしてラジコンカー、ミニ四駆(1億数千万台も売れた)など、プラモデルを追求していく過程で技術を応用してつくった製品が大ヒットとなっている。そうして儲けたお金をプラモデルの完成度を高めるのに回す。製造現場のクラフツマンシップと経営者のマーケティング発想が、理想的な相互作用をしてきた会社といえるのではないだろうか。クラフツマンシップだけだったら今の田宮模型はなかっただろう。

パッケージの重要性にいち早く気がついたのも田宮模型であった。当時すでに大物の作家だった小松崎茂に頼み込んで箱の絵を描いてもらうことで差別化をはかっている。私も子供時代にいくつか田宮の戦車を作った記憶がある。(その後ガンプラにいってしまうのだが。)。パッケージが本格派っぽくて惹かれた。

・小松崎茂―プラモデル・パッケージの世界
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この本は決して成功者の昔話に終わっていない。社長は70歳を超えたが21世紀以降も、世界を舞台に不断の挑戦をし続けていることが紹介されている。ホームページの充実ぶりを見ても、いつまたミニ四駆クラスの大ヒットがでてもおかしくないくらい雰囲気を感じる。

・★★TAMIYA INC. 株式会社タミヤ
http://www.tamiya.com/japan/j-home.htm

日本が誇れる会社の中身を知ることができて経営の勉強になった。

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2008年01月28日

人ったらし

・人ったらし
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コミュニケーションやプレゼンテーションのスキル本を読んでいて、ときどき強い違和感を覚えることがある。個性を無視して皆をひとつの理想型に押し込めようとしているように思えるのだ。明るく前向きな性格で、論理的に考えることができて、ハキハキと要領よく喋れる人がエラいという理想。ところが、現実の社会では必ずしもそういう「デキる人」が牛耳ってはいない気がする。個人的な観察では、そういうスキルで成り上がれるのは組織の、中くらいまでのポジションなのではなかろうか、と思う。

この本は「デキる人」の対極の、ダメな「人ったらし」の最強列伝である。桑田佳祐、吉行淳之介、アントニオ猪木、色川武大、希代の詐欺師など、たくさんの人ったらしの実話が紹介されている。

「あの人、いい人ね」。そんなことをいわれて喜ぶのは鈍い人間だけだ。「いい人ね」は「いてもいなくても、いい人ね」の同義語くらいに思った方がいい。「いい人ね」といわれたら、無能の烙印を押されたと思って、「このままじゃ、オレもオシマイだ!」くらいの危機感を持った方がいい。悪い奴とまでいわれる必要はない。しかし、「油断のならない奴だな」とか「一筋縄ではいかない奴」と陰口を叩かれてこそ一人前であり、ようやく「人ったらし」の域に達したといっていいだろう。」

規格化された能力のデキる人というのはリプレイスが可能だが、個性そのものを強みとする、人ったらしは取替え不能なのでもある。「あの人だからしょうがない」と愛され、人が集まってきてしまうのが「人ったらし」なわけである。

この本はそういう人ったらし養成のスキルの本ではない。知らないときは素直に「それ、知りません」と言おう、とか、「オネーさん、お水ね」「やっと会えたね」「女房には負けますよ、エッヘヘヘ」「オレ、死んじゃうよ」「なあんか、やばいらしいよ」なんてフレーズが人ったらしの特徴だとか、「人ったらし」指南も少しはあるのだが、基本的には事例集である。有名人たちの、あー、それをやられたら、確かに心に響くねという話が多い。

うまれつきの性格も大きそうだが、著者曰くサラリーマンより店屋の子供に人ったらしが多いという。親の働く姿を見て自然に、人のこころのつかみ方、あしらい方を身に着けるから、らしい。たぶん、誰しもが人間的な魅力を持っているのだろうけれど、それを愛嬌として表に自然に出せる人というのは稀なのだ。それって研究しても、真似ができるようなできないような。

画一的なコミュニケーション・スキル向上に違和感を持つ人におすすめ。

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2007年12月13日

スタッフの夢とやる気に火をつける! てっぺん!の朝礼

・スタッフの夢とやる気に火をつける! てっぺん!の朝礼
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昨日の読書術の講演@首都大には、日本実業出版社の編集者の方が一般から参加されていた。イベント終了後に、3冊ほど近刊をいただいたのだが、なかでも「イチオシはこれです」といわれたのがこの本。帰りの電車で読んでみた。面白かった。不覚にもまったく知らない世界を発見した。


◆年間1万人を集める「すごい朝礼」の秘密を初公開!
年間1万人の参加者を集める居酒屋『てっぺん』の朝礼は、いまや飲食業界だけでなく企業、学校、マスコミなどからも熱い視線が注がれている。国内4店舗しかないこのお店の朝礼が、なぜそこまで注目されるのか?本書では『てっぺん』の朝礼のノウハウを初めて公開する!

◆15分の朝礼で、スタッフが変わる!店が変わる!夢が叶う!
では、『てっぺん』の朝礼を学べば何が変わるのか?前向きなテーマをお店のみんなに伝える「スピーチ訓練」では、各スタッフに<前向きな思い込み>が身につく!本気の挨拶を繰り返す「あいさつ訓練」を続ければ、店の空気が確実によくなる!「ナンバー1宣言」で、自分がどんな人間になりたいのかを高らかに宣言する習慣をつくれば、夢も叶う!たった15分の朝礼で、プラスの効果がどんどん生まれるのだ!

◆「飲食業界の風雲児」が、日本一の店作り・人づくりを伝授する!
『てっぺん』の魅力は朝礼だけではない。著者の大嶋氏は、2006年には居酒屋業界全体の活性化を目的にNPO法人「居酒屋甲子園」を立ち上げ、初代理事長としても活動。外食アワード2006、ドリームゲートアワード2007も受賞し、「飲食業界の風雲児」と呼ばれる経営者。彼独自の経営・人材育成ノウハウも本書でたっぷり紹介する!

スタッフが異様な熱気の中でポジティブなスピーチをしては相互にたたえあう。「根性日本一」「笑顔日本一」「思いやり日本一」など自分が目指すナンバー1を挙手して宣言する。仕切りのも者「スーパー・ハッピー!」→参加者全員「スーパー・ハッピー」という挨拶訓練。「絶好調!」「日本一!」もある。ほとんど宗教のような「すごい朝礼」の世界。

・独立道場「てっぺん」のサイト
http://teppen.info/books.shtml
オフィシャルサイトで朝礼DVDも販売されている。サンプル映像がある。

ちょっと怖い世界だなと思いつつも、楽しそうな参加者の顔を見るとなにかあるのかなと思ってしまう。大きな声を出す、ポジティブな言葉を出す、仲間と笑顔で認め合う。こうした簡単なことでチームの士気はあがるものなのかもしれない。私の会社は、エンジニア中心の組織で普段はこの手の組織風土ではないのだが、まるっきり違う風土から学べることがありそうだと気になっている。

自由が丘と渋谷に店舗があるらしい。巻末には一般に開放している朝礼の案内がある。今度、本当に参加してみようかなあと思っている。

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2007年12月04日

人はカネで9割動く

・人はカネで9割動く
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身もフタもなく、いやらしい、実践的な処世術の本。

「「金の価値」は、それをつかう人間の全人格ーいや演出によって何倍もの価値を生めば、捨て金にもなる」というのが著者の持論である。

たとえば同じ金額を誰かに渡すにしても、その渡し方の演出次第で費用対効果は異なる。この本の例では、同じ一万円でも「これで酒でも飲んでくれ」と言えばケチだが「お茶でも飲んでくれ」と言えば太っ腹だと思われるだろうという。チップならば帰り際に渡しても自分はいなくなるのだから無意味だから最初に渡す。しかも、毎回ではなく渡したり渡さなかったりすれば待遇はさらによくなる。といったような、同じ投資で相手にたっぷり恩に着せ、ありがたがってもらう「生き金」の使い方のノウハウを指南している。

とにかく、わかりやすくて、どぎつい。

目次を抜粋すると、

・ああ見えてもいい人なんだと思わせる金づかい
・相手を優位に立たせない接待の受け方
・祝い金は誰よりも早く、援助金は誰よりも遅く
・報酬は折半せず、相手の取り分は三割以下にすること
・落ち目の人間を選び、居酒屋で酎ハイをおごる
・評判をあげたければ礼金に金をかけること
・顔だけ出して、わざわざ来てくれたんだと思わせる
・頼まれ事には即答せず”値打ち”をつける
・カバンや小物へのこだわりが相手の気を呑む

などなど、これでもかとお金の効用最大化の術がある。。

この本には「成功者だけが知っている「生き金」のつかい方」という副題があるが、取り上げられる「成功者」とは、暴力団幹部、売れっ子ホスト、政治家、やり手経営者など、シビアな現実を生き抜く実践の知恵が紹介されている。人の葬式を印象操作の場として利用する方法まである。

投資に対する効用を最大化する経営者的な視点は、万人が知っていてもよいことだと思った。お金のやり取りは言葉や態度で示さないと意図が伝わらず、無用なトラブルをまねいてしまうことがあるのも事実。

だが「感謝の薄い金は死に金」というルールを、一般生活で使いまくると、下心が見抜かれて逆効果にもなるだろう。本来、本当のやさしさや誠意っていうのはメタレベルで伝わるものだよなあ、とも思った。

ベタで実践的な内容はとても面白かった。いわば「汚い大人読本」である。

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2007年11月08日

そろそろ本気で継続力をモノにする!

・そろそろ本気で継続力をモノにする!
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ジョギング、早起き、筋トレ、ダイエット、貯金、ブログ、試験勉強、楽器、英会話など習慣を長く続ける秘訣を、仕事術の研究家でブログ「シゴタノ!」著者の大橋悦夫氏が本にまとめた。脱3日坊主のしかけ満載。

人が習慣化したい物事には、

1 続ける系 早起き、ジョギング、歯磨きなど
2 ためる系 家計簿、ダイエット、ブログなど
3 マスター系 英会話、資格試験、楽器など

の3タイプがあると分類し、それぞれ「例外魔人」「不安小僧」「スランプ仙人」という大敵がいるという。各タイプに応じた傾向と対策が解説されている。要は「やる気の問題」は「しくみの問題」だということである。

私は飽きっぽい性格なので毎日同じことを継続するのが苦手だ。だから、このブログが4年以上も毎日続いているのは自分でも意外である。これに関しては、がんばっている意識はなくて、ただ楽しく続いている。あらゆる物事がこんな風に継続できたらいいのにと思う。

この本で付箋を貼った箇所に、

「毎日必ずする行動に付属させる」
「毎日必ず触れるものを利用する」
「アクションをルーチンに落とし込む」

という太文字箇所があった。とても共感した。

このブログの習慣が続いているのは、

1 通勤電車に乗ったら読書をする
2 寝る前にブログを書く
3 駅近くで時間があったら本屋に行く

という毎日の日課と連動しているからだ。

「毎日必ず触れるもの」として付箋がある。付箋は常に100枚以上をスーツのポケットかカバンにいれて携帯している。読書時に少しでも気になる箇所があれば貼る。付箋を貼った本を机の上に積んでおくと、ブログ執筆に着手しやすい。

この調子でやりたいこと全部を習慣化できればよいのだが、新規のしくみづくりは大変なわけである。この本のタイプ別のノウハウと多数のツールリストは、継続のしくみ設計の部品として大いに参考になりそうであった。

たとえば、ツールのひとつとして紹介されていた朝時間.JPは素晴らしいと思った。

・朝時間.jp
http://www.asajikan.jp/community/sengen/asa.cgi/pickup.html

1 朝、今日一日をどう過ごしたいかを、”ひとこと宣言”として入力する
2 翌朝「どうだった?」がメールで届く
3 ふりかえり日記を舞いページでつける
4 繰り返すと毎日がいきいき

というサービスで、他のユーザの宣言や達成度も見ることができる。朝という時間帯もポジティブで継続の力になりそうだ。

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2007年10月04日

たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)

・たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)
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今月末に結婚式のスピーチを頼まれているのでノウハウを研究中。この本はよかった。

「長すぎる話は聞いてもらえません。人が話を聞く限界は3分といわれています。ですから、それ以上の長すぎる話は、最後まで聞いてもらえない可能性があります。「5分で話をしてください」とか、「話す時間は5分準備しております」というのであれば、聞き手もそのつもりで集中するかも知れませんが、それでも内容は3分以内にまとめるべきです。たとえば1時間の講演を頼まれた場合は、持ち時間は60分ですから単純に3分の話を20回すればいいわけです。」

「人民の、人民による、人民のための」で有名な、リンカーンのゲティスバーグ演説も、実際には、たった2分間の演説だったそうである。長い話を、小さなネタの連続としてとらえる発想は目から鱗であった。

そして、無駄を削ること。何を話すかと同じくらい、何を話さないか、が大切なわけである。話し方の「かきくけこの法則」という原則が最初に示される。

か 簡単(短く)・明瞭に
き 起承転結(序論・本論・結論)
く 具体的(体験・実例)に
け 結論をはっきりと
こ 言葉に気配りを

事前に話の材料を集めて、全体構造を設計し、それを意識しながら話しなさいということだろう。準備が十分だと余裕が生まれる。人を笑わせたり、驚かせたり、アドリブで楽しませるということもできるようになる。

「仕事・趣味・特技についてもう少し説明を加えるなら「ユーモアを交えて話す」ということです。たとえば「私は手品を趣味にしておりますが、タネはすぐばれるのが特徴です」と言えば面白くなります。こう言うと、聞き手は「タネがばれる」ということより、「手品をやっている」ということがより印象に残るものです。」」

笑いをとると同時に、聞く人の記憶への定着を促進するという高度な技だなあと感心した。CDに収録されている多数のサンプルも素晴らしい。話し方教室の先生と生徒の実演集で、確かに引き込まれる。本の実践イメージが明確になる。

「4つの箇条書き程度のものをポケットに入れて、どういうふうに話すのかではなく、何を話すのかを頭に入れておけば大丈夫です。」

「一番後ろの人に向かって声をかけるようなつもりで話すことです。そうすると自然に声も前に出ます。」

「ですから、相手の眼をストレートに見ないで、額や口元、目の付近を見るということがポイントです。聞き手側からすれば、それで十分見られているという感じがするのです。」

どれも知りたかったことで、参考になった。

・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004383.html

・「感じがいい」と言われる人の話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004992.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html

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2007年10月03日

究極の会議

・究極の会議
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「会議とは議事録をつくる共同作業である」という思想をベースにつくられた会議の方法論。著者は会議支援のWebツール「eXtreme Meeting」を開発し販売しているほどの、会議マニア。究極の会議はどうあるべきかを考え続けている人だ。

・会議支援ツールSargasso eXtreme Meeting
http://xm.sargasso.jp/
議事録ドリブン会議支援ツール

アジェンダを書く段階からノウハウがある。よい例、悪い例が示されている。

悪い会議のアジェンダの例
 1 次回展示会の開催について
 2 予算について検討
 3 新しいPCの購入計画

よい会議のアジェンダの例
 1 次回展示会開催の課題リストを完成させる
 2 予算案の設備投資増額のしわよせ問題を解決する
 3 新しいPCの購入の必要性をヒアリングしてリストアップする

さらに「会議のトピックには、「なぜ」とつけるのではなく「どのようにして」とつけるようにしよう。人間は「なぜ」とつけると、責任の追求と擦り付け合いが始まる。」というアドバイスがある。上手なアジェンダ設定によって具体的で前向きの言葉が出やすい雰囲気をつくることができるのである。

議事録ドリブンは、参加者全員で議事録を完成させていく方法論だ。それを成功させるための15のプラクティスが、この本の主な内容である。「結論」「意見」「定義」などを明文化することで、議論がクリアになるというのが基本姿勢である。

この本を読んで、個人的によかったのは、ノートPCの会議での位置づけがよくわかったことだ。これまで私は参加者各自がノートPCを会議に持ち込むのは、本当はよくない、必要悪と考えていた。各自が自分の画面ばかりのぞきこんでいたら、せっかく顔を合わせて話す意味がないからである。それに自分のPCを開くと、ついつい会議と関係のないメールや資料を眺めてしまうものである。みんなが下を向いていたら、司会進行のやる気もでない。

そこで「議事録の共同注視」にPCを使うべきという、この本のやり方は正しいと思った。プロジェクターに投影したPC画面上で、話している内容をWordやExcelを使って議事録に書いていく。誰かが意見を言えば「意見」として記録する。結論がでたら「結論」として書く。こうすれば、ノートPCはみんなの意識をひとつに集中させるツールになる。後から、言った言わないのトラブルも起きない。

ユニークな会議手法で有名な株式会社はてな代表取締役近藤淳也氏と著者の鈴木健氏の対談も収録されている。ネットでは動画でも公開されている。本と読んでから、見ると細かいニュアンスがわかって楽しい。

 株式会社サルガッソー代表取締役鈴木健と、
http://www.youtube.com/watch?v=aYqGsLSAgmQ

・議事録ドリブンで会議の効率アップ
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0610/24/news008.html
著者の連載がWebでも読める。

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2007年09月12日

人を動かす情報術

・人を動かす情報術
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「「情報」の力が意思決定させるものであるとするならば、はたして、携帯やパソコンを使って意思決定のために大量の情報を受け取っている人々は、情報の力を享受していると言えるのだろうか。誤解を恐れずに言えば、それは情報の力を利用することではなく、実は情報を受け取る側が、情報の力の対象になっているにしかすぎないと筆者は考える。
「情報の力を利用すること」、それは「情報により個人や組織が意思決定する」ことではなく、「情報に基づき個人や組織に意思決定させること」である。つまり、情報は人々に意思決定を「させる」ことによってこそ、世界を変えてしまう力を持つのである。」

受動的な情報分析ノウハウではなく、人を動かすための能動的な「情報スタイリング」についての本である。情報が伝達される時間的、空間的な範囲「情報ステージ」に応じて、最も影響力のある情報発信は何かを、認知心理学や社会学などの研究成果に触れながら、ポイントを解説している。

ブログなどで情報発信を始めた多くの人が経験から学ぶこととして、著者がいう「大衆は理解できる情報の量が少ないということではなく、本質的に多くの人間が共通して理解できる部分は、人が増えれば増えるほど少なくなるということなのである。」ということがあるなと思う。読者が増えれば増えるほど、読者と共有する前提が少なくなる。読者が少なかったうちは書いても問題にならなかった表現が、しだいに問題になったりもする。

情報発信のスタイリングというのは、個人の情報発信者にとっても大切なノウハウになりつつある。言わば戦略的な情報操作といえるかもしれない。「歪んだ基準を与える」「不確実性を利用する」「レモン一個分というレトリック」「明るい名前、暗い名前」「耳に残るCMソング」など、集団という対象に対する表現法が紹介されている。

他にも読みどころが満載の本である。マクルーハンのメディア論、シャノンの情報理論などの古典から、ここ数十年のメディアの歴史の総括、最新のブログ、ミクシイ、2ちゃんねる論など、とても幅広く現代における情報について話題を網羅している。3冊くらいにわけてもよかったくらい話題がたっぷりである。

「情報社会で確実に増加しているのは、情報そのものではなく、あくまでも情報の表現なのである。決して、情報の意味が増加しているというわけではない」という。情報の表現(たとえばブログの数)が増えれば増えるほど、受け手は混乱する。少数の情報発信者と多数の受信者というモデルから、発信受信ともに多数という状況で、発信者が取るべき戦略とは何かを考える材料が、この本にはいくつかみつかった。

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2007年09月04日

アタマにくる一言へのとっさの対応術

・アタマにくる一言へのとっさの対応術
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言葉の合気道の本。

言われっぱなしはゴメンだが相手と争うのも賢くはない。

「大事なことは、相手の期待どおりに反応しないことです。とくに「相手が失礼な態度をとったのだから、ただじゃおかないわ」といった、ありきたりの復讐気分にひきずられるのは最悪です。そうではなくて、この出来事をひとまず距離をおいて冷静にながめてみましょう。たとえば「相手が私に対して失礼な態度をとったわ。これはなにか新しいことを試してみる絶好のチャンスなんだわ」といったように。好奇心をもつことが、あなたの精神衛生にとってはベストなのです。奇妙な人間を相手にするという新鮮さを発見してください。世界はあなたが実験をするためにあるのです。」

挑発に乗らず、相手を空回りさせることが、よい対処であるという。真正面から言い返してしまっては、相手の思うつぼであるし、心理的にも縛られてしまう。「あなたはちょうど太陽のまわりを回る惑星のように相手を軸にしてぐるぐると振り回されているだけなのです。相手の態度をかえてやろうとすればするほど、あなたはますます敵にしばりつけられていきます。」と著者はその状態を説明している。

そこで、この本では、アタマにくる人ことへの対応術として、

・相手の攻撃に対して黙ったまま身振りだけで対応する。
・相手の攻撃に答えず、まったく別の話題を切り出す。
・相手の攻撃をひとことでやり返す。
・相手の攻撃にまったく当てはまらないことわざで受け答えする
・あなたを傷つけた言葉の意味を聞き返す
・褒め殺しで返す

など12の手法が紹介されている。翻訳書なので日本でそのまま使うと怪しいものもある気がするが、大半がかなり有効なのではないかと思った。いや、こういう方法論を知っておくこと、本を読んでおくこと自体が余裕につながるのだと思う。

学生時代に電話受付けのアルバイトをしていた頃、お客からのクレーム電話でいきなり怒鳴られることは日常的だった。罵られることも珍しくなかった。「私は電話受け付けのプロである」と思うことで、これは研修で学んだワザの見せどころだとか、コミュニケーションスキル向上のよい練習だと思えて、むしろ、クレーム処理はやりがいがあったりもした。ある種のゲームとおもえば、心は傷つかず、冷静に対処することができた。

アタマにきたときどうするかの準備をしておくことって、天災に備えるのと同じくらい大切で、それ以上に有効なことなのではないだろうか。

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2007年08月01日

ダメな議論―論理思考で見抜く

・ダメな議論―論理思考で見抜く
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「人はなぜ特定の考え方を正しいと思うのか」に関する考察。よく考えれば間違いがわかるのに、常識や空気にとらわれて、根拠のないダメな議論を受け入れてしまう理由について、チェックポイントと対策を示す。

一番、気になったのは読書について。

著者はありがちな読書についてこう述べている。

「私たちは、「自分の知らないことを知る」本を探しながら「自分の知っている(漠然と感じている)ことが書いてある」本を購入し、読書を「自分の役に立てる」ことを目標としつつ、「自分の思想・行動に何ら影響のない(読んでも読まなくても変わらない)」本を読んでいます。つまりは、自分が日頃から抱いている「信仰」にお墨つきを与えてくれる、「自分が読んで心地よいと感じる」本を選んでいるにすぎないというわけです。」

たとえば高所得の成功者は、成功するかどうかは自分の才能・努力によって決まるという考え方を支持するが、低所得者層は運によって決まるという考え方への支持が多いという。「実際に成功している人はそれが自分の実力によるものだと思いたがるのに対し、成功していない人はそれが自分の実力のせいだと思いたくないという心理によります。」

科学的に検証が必要な話題でない限り、私たちは信じたいものを信じてしまう。常識や空気によって「まぁ、ホントは間違いかもしれないけど、どっちでもいいや」や「何となく常識なことは何となく正しいと思っておくのが賢い」という経験則、処世術へ流れてしまう。

これは私もよく実感する。ときどき食事や飲み会などでマイ箸を持ち歩いている人がいる。割りばしが環境によくないからという理由なわけである。自治体や企業レベルで割りばしを使わないようにしよう運動もある。しかし、実際には割りばしが環境に与える影響はほとんどないらしいことを、私は知っている。環境を気にするのは良いことだし、マイ箸を持ち歩く害はないから、私が敢えてその人に「それって意味ないですよ」と言う必要はない。だから言わない。そうすると、割りばしは環境に悪いという説は、「常識」のまま残っていってしまう。

保守の力というのは多くの場合、こうした、信じたいものを信じる心理と、「まぁ、どっちでもいいや」の心理によって形成されていくのだろう。こういう決め方をこの本はダメな議論と呼び、

・定義の誤解・失敗はないか
・無内容または反証不可能な言説
・難解な理論の不安定な結論
・単純なデータ観察で否定されないか
・比喩と例話に支えられた主張

などの見抜き方を教えている。有名な評論家たちのダメな議論の実例もたっぷりで、面白く、ためになる本だった。

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2007年07月25日

仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本

・仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本
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著者は「バロック」「キングオブワンズ」「ぷよぷよ」「トレジャーハンターG」「魔導物語」等のゲームを監督/脚本/企画した米光一氏。仕事のプロジェクトをロールプレイングゲームの冒険に見立てて、その攻略法を説く。

米光さんはプロジェクトに対する観察眼が鋭いなあと何度も感心した。

「 根本の部分で冒険をデザインできていないと、必要のない苦労をすることになる。そうすると、人は「あのリーダーは人望がない」なんて言う。「人望がない」なんて言われると、簡単にはどうにもならない気がしちゃうけど、そんなことはない。
 ぐらぐらした土台の上で、ふらふらしながら、怒鳴ったり、愚痴を言ったり、言い訳しているから「人望がない」と思われる。
 冒険の土台をしっかり作れば、それだけで「人望がある」状態になる。かんたんだ。」
これは、自分の経験でも、その通りだよなあと、しみじみ共感する。

いいリーダーになれるかどうかは、能力や性格がどうだという以前に、ちゃんとした土台に立っているか、が問題なのだ。みんなが楽しめる、しっかりした土台の上にいるなら、ちょっとくらい優柔不断だったり横暴だったりしても、愛されるリーダーになったりするものだ。だからプロジェクトのデザインができる人こそ、いいリーダーなのである。

それから、”王様”とのつきあい方。これは他のプロジェクトマネジメントの本にはあまり書かれていない重要な事柄だと思った。若い勇者の冒険には”王様”という存在がつきものだ。会社という王国を率いてきた上司であったり、スポンサー、プロデューサーという人たちのことである。彼らは自分たちの方法論で成功した時代があった。

「新しい冒険では「旧A」という方法は使わない。別の「新B」という方法で行う。
勇者たちは「新B」という方法のよさをわかっている。逆に「旧A」については現場的な知識はないことが多い。古いよな「旧A」は、と思っている(そして実際に古くなっている)。
 だけど、「旧A」という方法でがんばってきた人たちにとっては、とても愛着のある方法だ。だから、勇者が「新B」の良さを言えば言うほど、勇者にその気がなくても「旧A」が否定されたように思えてしまう。」

王様の「旧A」に敬意を見せつつ、「新B」をやらせてもらう関係づくりが必要であるという話。この本のノウハウは、昔の言葉でいえば、空気を読み、根回しを怠るな、ということでもあるようなのだが、現代の勇者の気質向けにアップデートされている。

「ギラギラと競争するより、仲間と一緒にレベルアップしたい!
あくせく出世を狙うより、仕事を楽しく、充実させたい!
「オレについてこい!」と言われるより、自分で動きたい!

こう思っている人には、きっと最強の攻略本になります。 」

「ついてこい」式ではない、リーダーシップ論とも言えそう。

それから「ダメな会議の座席表」にバカ受けした。本のデザインやサイズもゲームの攻略本風で、最初から最後まで楽しく読める。

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2007年07月22日

思考の整理学

・思考の整理学
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初版は1983年。日本に”マイコン”が登場したころだ。著者は既にコンピュータ普及の影響を見通していた。

「これまでの学校教育は、記憶と再生を中心とした知的訓練を行ってきた。コンピュータがなかったからこそ、コンピュータ的人間が社会で有用であった。記憶と再生がほとんど教育のすべてであるかのようになっているのを、おかしいと言う人はまれであった。コンピュータの普及が始まっている現在においては、この教育観は根本から検討されなくてはならないはずである。」

人間らしい思考法を追求している。たとえば、まず寝かせるのである。

「思考の整理法としては、寝させるほど大切なことはない。」

大作映画の宣伝などで「構想ウン十年」というフレーズがある。あれはたぶん原作者がウン十年前に思いついたには違いないが、ほとんどの間は放っていたもののはずである。それでも、長く寝かされたテーマは発酵して力を持つことがある。人間の記憶とコンピュータの記録の違いだ。

小説などでも子供のころをテーマにした作品に名作が多いのは、それが理由なのではないかと著者はこう述べている。「素材が充分、寝させてあるからだろう。結晶になっているからである。余計なものは時の流れに洗われて風化してしまっている。長い間、心の中であたためられていたものには不思議な力がある。寝させていたテーマは、目をさますと、たいへんな活動をする。人間には意思の力だけではどうにもならないことがある。それは時間が自然のうちに、意識を超えたところで、おちつくところへおちつかせてくれるのである。」

寝かせるということは完全には忘れないようにほどほどに忘れるということだ。それでも強化されていくテーマは本物のテーマなのだ。「これはその人の深部の興味、関心とつながっているからである。忘れてよいと思いながら、忘れられなかった知見によって、ひとりひとりの知的個性は形成される。」

忘れないようにしながら、いったん忘れるために、紙に書き出して記録するのがよいと著者はすすめている。手帳→ノート→メタ・ノートというユニークな著者のメモ術が紹介されている。日常のメモは手帳に、重要なことはノートに転記し、さらに重要に思うことはメタ・ノートへ転記せよ、という手法である。

転記がすすむにつれ、重要度とともに抽象度も上がっていくわけで、究極のメタ・ノートというのは、座右の銘やことわざのようなものになっていくのかもしれない。そうやってメタに上がってくるものを常に見直すことが、思考の整理術として最重要なのだろう。

考えるということについて、本質的な考察がエッセイとして楽しく読める古典。

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2007年06月26日

無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法

・無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法
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著者のプロフィール。

「公認会計士二次試験(合格率6%)を史上最年少の19歳で合格 以後、フルタイムの仕事をしつつ、かつ3人の子どもを育てながら、中小企業診断士試験(合格率4%)、オンライン情報処理技術者試験(合格率4%)合格 TOEICは新卒時420点から3年間で900点へ 社会人大学院でファイナンスMBAを取得。その結果、年収を16年間で新卒時の10倍とした著者が初めて公開する、本当に効率的で合理的で楽ちんで、目から鱗の勉強法。 」

文系ビジネスマンに勉強法を語る人として、とても説得力のある経歴。16年間で年収10倍というのは、新卒時から現在まで毎年26%の収入増のペースでやってきたことになるそうだ。

この本を知ったのは書評ブログ仲間の二人のブログで絶賛されていたから。

下記のエントリに内容の詳しい紹介がある。

・マインドマップ的読書感想文 「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」勝間和代
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/50952753.html

・俺と100冊の成功本 社会人版ドラゴン桜!?「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」
http://blog.zikokeihatu.com/archives/001224.html

著者いわく「IT機器を中心に、新しい道具をいかに使いこなして、無理なく続く仕組みを作るかに尽きる」。これはデジタルツールをフル活用した勉強法なのだが、使っているパソコンやMP3プレイヤーの機種名、ダウンロードサイト名まで教えてくれる具体的な記述が参考になる本だ。

「月収の5〜10%を目安に投資し続けることが大事」「しっかりと、いい道具を揃えて、いいコンテンツを買ってきて、うまく続くように、いろいろな仕組みを設計しましょう。」「必要なのは意志ではなく、仕組みや設備への投資です。」

情報収集については、

「本は乱読でいい。量が勝負と、ひたすらインプットする」
「テレビは時間当たりの情報量が少ないので、時間の無駄」
「一般誌を読む時間を減らし、その分、専門誌または書籍を」

というアドバイスがあって、前提として速読技術をまず身につけよとのこと。

目と耳から大量の情報を効率的にインプットするための秘訣が書かれている。「インプットとアウトプットに、勉強時間を半分ずつ使う」「アウトプットしてみてはじめて、ほんとうにわかっているかどうかわかる」。親指シフトによる高速入力、マインドマップによるまとめ作成など、パソコンを使ったアウトプットのノウハウも多い。

文系ビジネスマンのための、ITを活用した勉強法の、最新事情がよくわかって参考になる本だった。

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2007年06月21日

「その他大勢」から一瞬で抜け出す技術 過小評価されているあなたを救うスピード・ブランディング

・「その他大勢」から一瞬で抜け出す技術 過小評価されているあなたを救うスピード・ブランディング
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なんとも魅力的なタイトル。

初対面の人と会うときには、「すごい人」と錯覚させるために、

1 有名ホテルのラウンジで待ち合わせ
2 「御付きの人」を同伴させる
3 ゴールドカードでテーブル会計
4 直接電話に出ない、携帯番号を名刺に書かない

という演出をしてみよう、相手の評価はまったく違うという実践が紹介されていた。

自分ブランドをゼロから築く上で、こういう技術は、本質ではないが極めて重要な技術だと思う。特に独立して仕事をする場合、まず「見た目」で勝たないと、「実力」の勝負まで進めないことが多いからだ。

「低く値踏みされる可能性があるポイントはあらかじめ取り除いておくべきなのです。」
自分が学生時代にフリーランスで仕事を始めたころのことを思い出した。毎日、必要もないのにスーツを着てネクタイを締めていた。「有名ホテルのラウンジ」もよく使う手であったが、当時の私は何処が高級ホテルか分かっていなかったので、今考えると妙な選択をしていた気もする。相手からは底の浅さを見抜かれていたのかもしれないが、少なくとも他の学生とは違う、頑張っているイメージを相手にもってもらうことはできたなあと思う。

「まず肩書きを作り、次に組織を作り、代表になれ。」
「自分の「キャッチ」を作りそれを名乗り続けるのです」
「実績を正直に話していたら、最初の実績自体が作れません」
「時にはハッタリも必要なのです」

ゼロの自分をゼロのまま見せたら、いつまでもゼロのままなのだ。だからといって、いきなり100ですと詐称するのもまずいわけである。そういう点で、とくに有効な考え方だなと思うのが、この本で紹介されているこの一節。

「今あなたが業界では普通のレベルであっても、視点を(業界の)外と自分よりも下の初心者にターゲッティングすれば、すぐにでもあなたの情報は価値あるものへ変わります。」

誰だって仕事を2,3年もしていれば、普通のプロになれる。業界内では「その他大勢」だが、場所を変えれば立派に専門家の顔を作れるわけだ。社内ではペーペーの営業マンであっても、社外のコミュニティや学生相手に「セールスのエキスパート」を名乗ってもおかしくない。

この本の著者は、セミナー講師になって6カ月で「誰にでもできる「セミナー講師」になって稼ぐ法」という本を出版し、いきなりその他大勢を脱却、セミナープロデューサーになってしまった。ブログやメールマガジンを活用した、ネット時代ならではの実践体験を語っているので、独立を考えている人におすすめ。

・ネクストサービス
http://www.next-s.net/
著者が経営するセミナープロデュース企業。

・パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003528.html

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2007年05月28日

「感じがいい」と言われる人の話し方

・「感じがいい」と言われる人の話し方
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「若いカップルがデートしたとします。食事に行った先で、

・「僕は中華がいいや」と言って、先に店に行ってしまう男性
・「君は何が食べたい」と、まず女性の意向を尋ねる男性
・「僕は中華がいいけど、君は?」と自分の意見を言って相手の意向も尋ねる男性

さてあなたが女性なら、どの男性が好みでしょうか?」

アンケートを取ると、一番人気は3番目、次が1番目、最も不人気なのが2番だそうである。相手に配慮しながら、引っ張って行ってくれる人が人気があるということだ。

これは私もはじめて女性とつきあった頃に考えた問題だったなあと思いだした。当時は相手を気遣うサービス精神の2番がよいのだと勘違いしていた。実際には女性が食べ物によほどこだわっているのでもない限り、意思決定のリスクを相手に押し付けてしまっていて不親切なのである。

著者は「これからは、「頭がいい人」よりも、「感じがいい人」のほうが重宝される時代なのです。」として、ビジネスや生活シーンで感じよくなるための秘訣を語っている。主に話し方を教えているが「プロっぽい話し方は嫌われる」から気をつけましょうと言っている。

「郵政を民営化したいと思っています」が、「必ず民営化します」となるのが雄弁術です。しかし、「感じがいい人」と思わせたいのなら、あくまで意見は意見として正しく伝えるべきです。そのほうが「誠実」なのです。そして誠実というのが、感じがいい人には欠かせない条件です。」

雄弁術に長けてあまりにテキパキと話す人、話に論理的でスキがない人というのは、好感度という点では必ずしも高得点ではないということである。

やめるべき口癖リストが参考になった。たとえば「ていうか」。「「最近、田中さん頑張ってるよね」「ていうか、努力してますよね」」みたいなのは不快だという指摘。親密さを演出するつもりで「ていうか」を私もつかってしまうことがあるのだが、人にやられると楽しくなかったりする。「ていうか」はやめよう。

「感じのいい人」の極意として「まずはあなた自身が「感じのいい人になろう」とする前に、相手、周囲の人に対してあなたが先に「この人、感じがいいな」と思うことです。」と結論されている。感じのよさとは、他人のいいところに感心する能力のことなのかもしれないと思った。

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2007年05月23日

デジタル・ワークスタイル―小さなことから革命を起こす仕事術

・デジタル・ワークスタイル―小さなことから革命を起こす仕事術
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ブログブームの仕掛け人の一人、FPNの徳力基彦さんが書いたデジタル時代の仕事術。

「作業時間を半減させるためのルール」がどれもうなずける内容。新しい仕事ツールと発想の切り替えを積極的に導入して、生産性を高めるライフハックのすすめでもある。忙しい中で、ひとり涼しい顔をして、仕事をするためのノウハウがわかりやすい本だ。

1 小さな改善で将来の時間を生み出す
 「改善はできるだけ早くとりかかったほうが効果は大きい」。ライフハックの工夫は多くが数パーセントの生産性の違いを生み出すものだ。この係数は時間に対してかかっている。早く導入すればするほど、大きな結果がでてくる。

2 1×100と、100×1は同じではない
 「類似の作業はまとめて処理した方が得だ」という。これは私も同感で以前、この書評の中で書いた「「拡散系の思考と収束系の思考を交互に繰り返すと効率が悪い」という考え方と似ている。

・続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003325.html

3 ツールで時間が節約できているかを考える
 「ツールに使われていては意味がない」。事例として「メールを定期的にチェックして新着があったらデスクトップに知らせるソフト」で5分おきに仕事を中断させられる本末転倒の例があった。ツールに踊らされては意味がない。

マウスの移動、作業別所要時間、ネットワーク使用量と時間帯などを計測するツールを使って、自分の仕事を客観的に分析してみるのがよさそうだ。この本では「受信したメールよりも、送信したメールの方が後で役に立つ場合が多い」など鋭い指摘もある。改善ポイントをみつけるためのツールとしてこのブログで取り上げたソフトとしては以下のようなものがある。

・マウスの走行距離で旅行気分
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002184.html

・「作業時間計測ツール」でコストを意識する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002581.html

・PCのネットワーク利用量を監視、記録するNetMeter
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003030.html

自分のデスクトップ作業の分析について数年前に、あるサイトに以下の文を寄稿していた。原稿を発掘したので再掲してみる。


■580メートル 私の1日のマウス移動距離の平均

私は最近、デスクトップの作業を分析する面白いツールを見つけました。modometerは海外のフリーウェアです。デスクトップに常駐して、アプリケーション別にユーザのマウス、キーボード操作を記録しています。デスクトップの万歩計みたいなものです。

・modometer
http://www.modometer.com/

このソフトで記録を開始してから約50日が経過しました。この期間の走行距離は29000メートル。1日のマウス平均移動距離は、580メートルでした。ずいぶん動かしているんですね。

ログに記録されるのは、マウスの移動距離や左右クリック数、ダブルクリック数、スクロール距離、キーボードの打鍵数などです。これらの項目をリストとしてHTMLやExcelの表に出力できます。私は2週間ほど、このツールで自分の作業ログを記録してみました。使用アプリケーションの上位10位のリストは以下の通りです。

--------------------------------------------------------------------------------
http://web.archive.org/web/20041209064341/www.adnec.com/blog/archives/hashimoto/MouseOdo.html
--------------------------------------------------------------------------------
こうして眺めてみると、一番使っているのは、ネット調査の仕事がメインの私の場合にはWebブラウザーです。次にファイル操作やメールの読み書きに手間をかけているようです。メッセンジャーのチャットや文書作成系が続きます。

何に手間がかかっているかを知れば、それらのシーンを改善すれば、少なくともデスクトップでの作業は負荷が軽減されます。私の場合にはWebブラウザー支援ツールや、メール作成支援ツールを投入すればよいということになります。

実際、ユーザビリティ研究の世界では、計量化アプローチというのがあります。大手のソフトウェアメーカーの開発部門では、マウスの移動距離やクリック数を厳密に計測して、、何が操作コストとして高いかを判断して、高速化しているのです。modometerを使えばそんなプロの調査も簡単にできてしまいますね。

私の場合には、ブラウザー支援ソフトなどを使ってインターネット系アプリケーションの操作を効率化するのが一番効果がありそうです。皆さんも自分のデスクトップで試して、処理の改善を分析してみては?。

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2007年05月11日

頭がいい人が儲からない理由

・頭がいい人が儲からない理由
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サムシンググッド、アドビスシテムズ、ウェブマネー、ソフトウィング、アルファシステムなど、多数のIT企業を創業した業界の風雲児 坂本圭一氏が語る経営哲学。表題を見た時は、コンサルタントが書くありがちなノウハウ本かなと想像していたのだが、まったく違った。序盤は成功の理論をノウハウ風に教えているのだが、章が進むにすれ著者の情熱ボルテージがあがっていき、結局、異常なほどの執念深さと圧倒的な行動力こそ成功の秘訣だ、おまえなんでやらないんだと、アジっている。その語りの迫力に飲まれる。

確かにそうなのだろう。会社を上場させたり、億万長者になった経営者たちを私も身近に何人も見てきたが、あっさりした人なんて一人もいなかった。みな執念深さでは共通していた。なんでもその場で決めようとするせっかちな性格で、課題を次の会議に持ち越すことは決して考えない人たちだった。

著者の批判する「頭のいい人」は、理屈ばかりで行動しなかったり、うまくいった戦術の延長線上に戦略があると考えたり、普遍的な成功の秘訣を探しまわっている。だが、多数のプレイヤーがあの手この手を使って戦うベンチャー市場では、環境変化が激しいから、頭で勉強して身につけた知識が役立つどころか、敗因になってしまうことがあるという風なことを著者は語っている。

「歩が成ってと金になったといっても、しょせん将棋盤の上で威力が増しただけ。盤の外に出れば、まったく違う環境が待っているのである。」

「目の前の百の在庫をさばくというのは戦術のレベルである。だが、いくらその手の目先の戦術を重ねていったところで、三年後にシェア一位を確保するというゴールをクリアするための戦略になりはしない。その時、その時に全力疾走することが、つねに最善の方法論であるはずがないし、そもそも戦略というのはそうやって、演繹的にできあがるものではないのである。」

新しい市場では日々ゲームのルールが変わっているのだから、過去の経験にこだわらず、臨機応変ができる経営者が会社を大きくする。成功の真の秘訣は理屈じゃないんだ、というのが著者の理屈である。だから起業のために学校に行こうという人は起業家に向かないと言い切る。

著者は若い頃、事業に失敗し、大きな借金を背負うが、単身ちり紙交換でトラックを走らせ成功し、短期間で返済して復活した。その時、著者がどういう思いで、どう行動したのか、創意工夫ののエピソードが強烈に印象に残った。肝なのでここには内容を書かないが、発想と行動力で駆け抜ける著者の生き方の原点なのだろう。魅了された。

「ワタシ起業しようかどうか迷ってるんですけど、やったほうがいいと思いますか?」という状況の人はこの本を読んで、諦めたらいいと思う。逆に全力疾走中の人は燃料補給本にいいと思う。理屈を超えた部分が多いが、とてもとてもエキサイティングな本だ。

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2007年05月09日

組織を強くする技術の伝え方

・組織を強くする技術の伝え方
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2007年問題と呼ばれる団塊世代の大量退職が始まっている。日本企業の屋台骨を作った世代が会社を去ると同時に、蓄積された技術も失われていく。「失敗学」「創造学」で有名な著者は、技術を「知識やシステムを使い、他人と関係しながら全体をつくり上げていくやり方」と定義し、その伝達方法についての成功例や失敗例、ノウハウを語る。

「伝える側が最も力を注ぐべきことは、伝える側の立場で考えた「伝える方法」を充実させることではありません。本当に大切なのは、伝えられる相手の側の立場で考えた「伝わる状態」をいかにつくるかなのです。」

これは年配者から技術や人生論を伝えられる側として、ときどき私も感じることがある。大先輩の言うことが、わかるときと全然わからないときがあるのだ。後輩の私のことを考えて「極意」をいきなり伝授されても、ちんぷんかんぷんになる。極意とは、要点のイメージであり純粋エッセンスである。限りなく貴重な情報だが、全体像を把握していない私はその意味が理解できない。野球の長嶋監督から、「バッティングの基本はピューと来たらパーンだ」なんて風に、教わるイメージだ。

「ビュー」「バーン」って何ですか?と聞いて答えをもらってもまだわからない。そうした教えは、自分で何年間も散々の苦労をしてみて、ある日突然わかったりする。でも、大先輩はとっくに現場を去っていて、お礼の言いようもないものだ。そういうチグハグなドラマが、仕事や学問の現場で日々起きているような気がする。

著者は技術を伝えるポイントとして次の5つを挙げている。

1 まず体験させろ
2 はじめに全体を見せろ
3 やらせたことの結果を必ず確認しろ
4 一度に全部を伝える必要はない
5 個はそれぞれ違うことを認めろ

そして伝える相手に「自分が人に伝えるときのことを意識させる」のがいいと言う。伝えた相手が講師になって別のだれかに教える機会を与えると、定着がよいらしい。本気の受け入れ態勢をどう作らせるか、なのである。社外のセミナーに無料参加させる代わりに、会社に戻ったら講師として社内でそれを教える制度などを推奨している。

貴重なプロの技術にマニュアルで伝えられる内容は多くはない。重要な部分は、ベテランの暗黙知であり、境地であり、勘なのだと感じる。それを移転するには、組織内に世代間の濃い関係がないと無理だろう。師弟関係のようなものを、組織内でいかにつくるかが大切なのだなとヒントをもらった。

・畑村式「わかる」技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003968.html

・決定学の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001676.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003801.html

・「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000973.html

・「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・「分かりやすい表現」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html

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2007年05月06日

魂の文章術―書くことから始めよう

・魂の文章術―書くことから始めよう
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全米ベストセラーの文章術。

第一の思考のエネルギーにまず共感した。

「第一の思考には途方もないエネルギーがある。第一の思考は、心が何かに接してパッとひらめくときに現れるものだ。しかし、たいてい内なる検閲官がそれを押しつぶしてしまい、私たちは第二、第三の思考の領域、思考についての思考の領域で生きている。最初の新鮮なひらめきからは二倍も三倍も遠ざかったところで生きているのだ。たとえば、「私は喉からヒナギクを切り取った」という文句がとつぜん心に浮かんできたとしよう。すると、1+1=2の論理や、礼儀正しさ、恐れ、粗野なものに対する当惑などを仕込まれた私の第二の思考はこう言う。「ばかばかしい。自殺しているみたいじゃない。喉をかき切るところなんて人にみせちゃいけない。どうかしたんじゃないかと人に思われるわ」。こうして検閲官の手に思考を委ねてしまうと、こんどはこんなふうに書くことになるだろう。「喉がすこし痛んだので、私は何も言わなかった」。正確、そして退屈だ。」

ブログでも原稿でも、最初に「とにかくこれは書いておきたい」というフレーズが思い浮かんだら、最後まで書き上げられることが多い。そういったフレーズが思い浮かんだら、いつでもメモしておいて、いざ書くときにはまずそのフレーズを書いてみる。すると、スラスラ筆が進む。どう書くかよりも、書くことがあるか、がいい文章の決め手だと思う。
題材リストの作り方、題材の膨らませ方、一人でもできる文章修業の方法、スランプ脱出法、物書きの心得など、良いライターになるためのノウハウが数十本のエッセイにまとめられている。

「書くことはとても孤独な作業でもある。誰が私の文章を読んでくれるだろう?誰が関心を持ってくれるだろう?ある生徒がこんな質問をした。「先生は自分のために書くんですか?それとも読者のためにですか?」、ものを書くときには、話さずにはいられないという欲求を人と分かち合うようにしてほしい。孤独の深みから手を延ばし、他の人たちに向かって自分を表現するのだ。」」

ブログ時代のライターはこの孤独感は希薄かもしれない。毎日書いているブログには、ほぼ間違いなく、友人知人含めて、いくらかの読者はいるだろう。手元に置いてあるだけの原稿と違って、まったく読んでもらえないということはない。逆に言うと、孤独感が欠如して緊張感を失ってしまうのがブログなのかもしれないと思う。

自分のブログ文章を振り返ってみるに、イイコトを思いついたのだけれど、話す人が周りにいない深夜に、言いたいことを一気に書き上げることができた日のブログは、読者の評価も高い気がする。孤独は、魂の入った文章の原動力ということ、かな。

・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html

・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html

・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html

・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html

・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html

・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html

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2007年05月02日

仕事は演出力 あなたの「魅力」を引き出す38のヒント

・仕事は演出力 あなたの「魅力」を引き出す38のヒント
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米国で30年暮らした映画プロデューサーが、ハリウッドの成功者たちから学んだ仕事術、処世術を語る本。個人の能力と同じくらい人間関係が重要な映画製作の業界で、有名な監督や俳優が、なぜその地位を築けたのか、わかりやすく教えてくれる。

「ハリウッドで成功している人には共通点がある。それは一言でいうと、自分を魅せる方法、つまり自分の「演出の仕方」を知っているということだ。ハリウッドスターというと、わがままで気難しくて、人の言うことをなかなかきかないというイメージがあるかもしれない。そしてこの業界を裏で取り仕切っている大物たちは、非常にドライで左脳的な発想をする人と思うかもしれない。しかし実際にはそうではない。というより、むしろ逆だ。」

ハリウッドの成功の秘訣は、なんと意外にも「気配り」なのである。

著者が交流したハリウッドのスターたちの、細やかな気配りエピソードが次々に披露される。多くの大物スターやプロデューサーが実際に会ってみると、自分の話をあまりしないで、相手の話を聞く、話を引き出すことに長けている、そうだ。

「会話に参加しているという充実感こそが人を動かす原動力になる。」「私の空間にはあなたしか存在しない」というメッセージは、相手を勇気づけ、感動させる。これこそが「気配り」なのだ。

ここでは、思いやり、気配りは成功の階段を昇るために必要な資質だと分析されている。自分のために人を動かすためには、好意を持ってもらい、やる気になってもらわなければならないからだ。

「素晴らしい さすが君だと こき使い」という川柳がある。これこそ、人間を「その気」にさせる極めつけではないだろうか。「こき使い」という言葉には語弊があるものの、「素晴らしいねえ」といわれてうれしくない人はいない。誰もが自分の仕事や努力を認めてほしいと願っているわけで、褒められるだけでその人のやる気が倍増するのなら、これほど簡単なパワーアップ方法はない。」

自分勝手なスターは長くは生き残れないらしい。

他人から魅力を引き出せる人は、「自分以外の人も、自分と同じ思いを抱いて生きている」という気持ちが原動力になっている。自分だけが「成功物語」や「悲劇の物語」の主人公だと思い込み、自分が舞台に上がって喝采を浴びることだけを考えているうちは、周囲の人から魅力を引き出すことなどできない。」

「野望のためなら何でもするという「クリエーティブ・コンプロマイズ」、つまり「独創性のある妥協」ができる人というのが真の野心家だと思う。」」

これは一言で言うなら「プラグマティックな思いやり」の本である。成功・出世したいなら、自分勝手はやめて思いやりと気配りの能力を持ちなさいと説いている。米国生活30年の日本人らしく和魂洋才風な発想の処世術であった。とても面白くて参考になった。

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2007年02月07日

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか

・最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
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チェルノブイリ原発事故、スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故、スリーマイルアイランド原発事故、エールフランスのコンコルド墜落事故、ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡研磨失敗、アポロ一号の火災事故など、古今東西数十件の世紀の大事故をケースとしてとりあげ、事故の発生メカニズムと人的要因を分析した本。

研究書だが事故の前後の描写がドキュメンタリタッチで生々しく描写されていて、読み物としてスリリングである。現代の大事故は巨大なマシンが引き起こすものばかりだ。それを操る人たちは快適な制御室で計器類の前に座っている。計器上の数値から巨大マシンの状態を読み取る際に、重責のプレッシャーや長時間労働の疲れ、仕事への慣れなどの原因によって、認知や判断に誤りが生じ破滅へ至るケースが多い。

前兆のない大事故は皆無であるという。それにも関わらず事故の例では現場も管理者も、不具合の兆候を見逃してしまう。チャレンジャー号の事故などいくつかの例では、事前に危険の警告を訴えていた人間もいたが、出発の度重なる延期によるプレッシャーによって、上司は大した問題ではないと誤った判断を下してしまう。

これらの大事故をまねく物質の組み合わせがあるという分析がある。水と電気と酸素である。水が電気回路をショートさせ、酸素が火災や爆発を引き起こす。巨大な石油掘削装置オーシャンレンジャーを沈没させたのは、嵐の夜に窓から入ってきて制御室を濡らした少しの海水であった。

最初の小さな障害が複雑なシステムに連鎖的な障害を引き起こしていくことも多い。すると人々はパニックに陥り、手っ取り早い問題解決のためにマシンのスイッチを切ったり、レバーを逆に入れてしまったりする。設計段階で予想できなかった異常な操作は、機能するはずだった安全機構を無効にしてしまう。大事故はほとんどが人災なのである。

最終章には最悪の事故を未然に防いだ人たちの事例が紹介される。彼らは英雄のはずなのだが、事故は起きなかったわけだから報道されることがない。事故防止では、失敗例は多いが成功例は語られないが故に少ないのである。

ベテランの経験を持ち、自ら考えて判断することができる副操縦士的な人が現場にいると、大事故は回避されやすいようだ。マニュアルの遵守も重要だが、大事故の原因はマシンの設計・企画段階につくられて潜在化していることがあるため、マニュアル遵守だけでは防げないのである。

なぜ完璧なはずの巨大システムが破綻したのか、とても明快に説明されていて、失敗学に関心のある人におすすめの本である。

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2006年12月20日

「脳の鍛え方」入門―40歳を超えてから頭は良くなる!

・「脳の鍛え方」入門―40歳を超えてから頭は良くなる!
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雑誌「プレジデント」の特集記事を集めた本。当時、表紙をみて気になっていた記事がまとめて読めたので満足。できる経営者の仕事術や脳科学者が効率のいい頭の使い方について次々に語る。

脳科学者の池谷裕二氏の「仕事は区切りの「悪いところ」でやめたほうがいい」にまず納得。仕事はキリのいいところで休むなという。中途半端でやめておくというのではなく、区切りまでやって、そこから一歩だけ進めてやめるのが脳に良いそうである。

これは実践していて、その通りだなと思った。

私は更新できない日のストック用に、このブログの記事をまとめ書きすることが多いのだが、まず書けるだけ書く。数本を完成させる。そして最後にひとつ、数行だけ書いて未完成の記事を残して終わる。そうすると、次回に書くときに滑り出しがいいのだ。

斉藤孝の「四字熟語力」はこれから活用させてもらおうと思った。何でも良いから四字熟語+力と言ってみろ、行動力が高まっていくから、という実践家らしいアドバイス。「朝令暮改力」「自画自賛力」「風林火山力」など例がある。四字熟語にネガティブな意味があっても、なんだかそういうポジティブな能力もありそうな気がしてくる。「無知蒙昧力」とか「駅前留学力」「記念受験力」「優柔不断力」とかもあり?。どういう力か考えてみること自体が楽しい。

ベテラン勢の意見を聞いていると、30代、40代を超えても脳の能力は高まっていくものなのだなと感心、安心させられる。「それでもなおかつ記憶力は落ちたと言い張る人は、学生時代に自分がどのようにして英単語や歴史の年表を暗記したかを思い出してみるといいでしょう。単語帳をつくったり、年表をつくったり、悪戦苦闘しながら取り組んでいたはずです。あなたは、そのような努力を現在も行っているでしょうか?」。確かに言われてみればその通り。記憶力だって落ちていないのかもしれない。

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2006年11月25日

「続ける」技術

・「続ける」技術
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英会話、試験勉強、日記、手帳術、禁煙、ダイエットなどの習慣を続けるための方法論。

「物事が長続きすることやすぐに挫折してしまうこととあなたの「意志」とは、何の関係もありません。」

ポイントは、

「1 ある行動を増やす 2 ある行動を減らす」

にあるという。根性精神論ではなく行動科学で継続を達成するノウハウである。

継続したい行動(ターゲット行動)が起きやすく、その行動を阻害するライバル行動を起きにくくすることで、自然に継続できる、ということだ。行動のヘルプ(補助)を作る、動機づけ条件を作る、行動のハードルを低くするなど、具体的なケース例が多数提示されており、どうこのメソッドを生活に取り入れるべきかに詳しい。

周囲に継続を宣言し、日々ほめてもらう環境を作るというアイデアはかなり使えそうだ。特に家事労働などのシャドウワークは、ビジネスとしての仕事と違って褒める人がいないのでこの方法論が使えそうだ。

最近、家事や料理の内容をミクシイに頻繁に写真でアップしている主婦をみかけるが、友人知人の主婦が相互にコメントしている。継続のための環境としてネットコミュニティは使えそう。

米国のサービスの43 Thingsは、目標(10キロ痩せたい、恋人を作りたい、早起きしたいなど)を宣言した上でブログを書くコミュニティだ。みんなの目標がタグクラウドで表示されている。同じ目標を持つ人が多いと大きな文字で表示される。同志を簡単に発見して励ましあいながら、ブログを書くことができる。

・43 Things
http://www.43things.com/

仕組みづくりが重要という、この本のシンプルな方法論には共感した。毎日○○したい人におすすめ。

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2006年11月23日

「書ける人」になるブログ文章教室

・「書ける人」になるブログ文章教室
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ブログの書籍化に取り組むアメーバブックスの取締役編集長で小説家の山川健一著。

ブログはしょせん日記だけれども日本の文学史は土佐日記や徒然草、枕草子などの日記、随筆に母胎を持つという分析からこの本は始まる。近代になって知識人が大衆に教え諭す上位下達式の難解な文学が流行ったこともあったが、今はその近代文学が力を失い、再び「女子供が平仮名でだらだら書く日記。オヤジのグチ。身辺雑記」の伝統に戻りつつある、ブログの爆発的広がりはその表れなのだと著者はいう。

ブログは高飛車に書くと炎上するし、謙虚すぎても嫌味になる。普通の人間である書き手が、どういう態度でのぞむべきか、作者のアドバイスがいい。

「大切なのは、自分の立ち位置をはっきり決め、優越感と劣等感の両方から自由になり、「普通の人間」として心を込めて文章を書くことではないだろうか」。

私もブログを日々書いていて大切と思うのは自意識をどうコントロールするかである。自意識を前面に出した文章は反発を買いやすいし、しばらくして自分が読み返して恥ずかしいものだ。逆に自意識を殺しすぎると、温かみがなく、懐の深さが感じられない文章になってしまう。著者は「暖かな無意識」という言葉を使っているが、書き手の人柄が、故意に押し出されるのではなく、自然とにじみ出るような自意識のバランス調整が重要なのだと思う。

このブログが長く続いているのは書籍やソフトウェアという他者の著作にコメントする形式だからだと思う。もし今日個人的に考えたことや政治経済や社会について時事評論を書くというテーマのブログだったら続いていなかったのではないかと思う。主観的過ぎるものも、客観的過ぎるものも、自意識の自己崩壊がおきやすいと思うからだ。

それでも個性の手触りこそ表現の核である。

「もっとも個別的なものこそが普遍にたどり着く。それこそが表現が持つ錬金術の秘密なのである。」

読者が1万人になっても特定のターゲット層10人や100人に向けたスタンスで書くのがよいと著者はアドバイスしている。

プロの小説家として文章術も語っている。接続語や語尾のバリエーションを豊かにし、改行や文章のリズムを工夫せよ、など。だが、この本の中心テーマは、小手先の文章術ではない。うまい文章を書くよりも、面白い内容を書き続けるための考え方が主体となる。

そして、編集者の視点でブログを書籍化するためのアドバイスが最後にある。プロフィールをできるだけ公開せよ、ブログ全体レベルに起承転結的な構造を意識せよ、より大きな作品のためのノートとしてブログを位置づけよ、など。

編集者の目からどう見えているか、が重要なのである。私はちょうどブログの書籍化という目標を達成したばかり。3年半かかってしまったが、この本のアドバイスを知っていたら、もうちょっと早かったかもしれない。

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2006年11月16日

詩人少年、社長になる ぼくが出版社をつくったわけ

・詩人少年、社長になる ぼくが出版社をつくったわけ
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毎月読む書評雑誌「ダ・ヴィンチ」には後ろのほうに、新風舎の新刊紹介コーナーがある。私は最近このコーナーで社名を知った。まだ一般知名度は高くない新風社だが、実は、年間に2700点を超える書籍を出版しており、2005年に新刊の点数で日本一の出版社になった。

・自費出版が進化した!新風舎 本にする原稿いつでも募集しております
http://www.shinpusha.co.jp/

もともとは、15歳の少年が自分で書いた詩を世に出したくて立ち上げた小さな会社だった。従来の商業出版では作品を出しにくかった無名の表現者を支援したいという情熱で、出版不況の中で異例の急成長を遂げている。

出版点数が多いのは、著者と出版社が資金を出し合って本を作る「共同出版」というビジネスモデルをベースにしているから。地方にも直営店舗ネットワークも展開している。数年前に皇室で読まれているという報道で、人気に火がついた絵本「うしろにいるのだあれ」は新風舎の代表作である。

この本は新風舎社長のマツザキヨシユキの自伝。著者の出版への関わりは、8歳の頃に盗作でつくった絵本に始まる。詩や小説を書いたり、ラジオ番組を作ったり、同人誌を作ってみたりと、少年期から大学時代までを、さまざまな表現活動に取り組んだ。

こうしたプロフィールだけ見ると、学生時代に立ち上げた音楽雑誌の出版事業から、成り上がったヴァージングループの社長に似ているが、まったく違うのは、上昇志向が感じられないこと。会社を大きくしようとか、売れ筋ベストセラーを出そうとは、考えない人のようだ。いい本を作りたいの一心で仕事をしている。だからこそ1万人の著者が共同出版のコンセプトに賛同してこの会社から本を出したのだろう。

IPOやM&Aをゴールにしない起業物語がすがすがしい。

無名の著者の本をたくさん出版する。インターネットの話は出てこないが、ロングテール市場の先駆けベンチャーだったと言えそうだ。自分史を出したい、作品集を出したい、ブログを本にしたいというアマチュア表現者は増えているはずだから、目利きとプロデュース能力次第で、自費出版、共同出版の市場にはまだまだチャンスが広がっているのかもしれない。

8歳のときに盗作した絵本の作者の谷川俊太郎、イラストレーターの和田誠と新会社トピスカインクを立ち上げるところで自伝が終わる。この会社が具体的に何をするのか書いていないが、ヌイグルミの販売を始めているようだ。おかしな取り合わせに注目である。

・トピスカインク
http://www.shinpusha.co.jp/wahhahai/

面白い本だったが、ひとつだけ疑問が残った。なんで著者は自分の出版社ではなく、日経BP社からこの本を出したのだろう?。

・童女M
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著者が少年時代に書いた詩集。新風舎が復刊。

・ワッハワッハハイのぼうけん: 本: 谷川 俊太郎,和田 誠
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著者が少年時代に盗作した絵本。新風舎が復刊。

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2006年10月01日

好かれる方法 戦略的PRの発想

・好かれる方法 戦略的PRの発想
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PRの仕事に40年。その道のプロの(株)プラップジャパン(2005年ジャスダック上場)社長が語るPR論。自民党の選挙アドバイザーとして2005年の総選挙を圧勝に導いたことで有名になった。パブリックリレーションズとは「大衆や公衆、ひいては社会との関係を向上させて、良好なものにする行為」であると著者は定義している。

PR会社はクライアント企業をメディアに売り込んで記事にしてもらうパブリシティの仕事が主体である。広告をメディアに掲載する仲介料ビジネスである広告代理店とは異なる。自民党のほか、キシリトール、タマちゃん(アザラシ)、宮崎シーガイア、六本木ヒルズ、避妊用ピル、ヴィダルサスーン(シャンプー)など、著者の会社が関わった成功事例が次々に挙げられる。

成功事例はそれで楽しいのだが、第4章の「危機管理のエッセンス」が飛びぬけて面白くて、参考になった。同社は記者会見での対応訓練サービスを法人向けに提供している。言ったことを、メディアにちゃんと取り上げてもらうというのは平時のリリースでも難しいのだが、危機管理においてはさらに困難になる。

危機に際して記者会見する際の心構え。

1 記者から逃げない
2 情報開示の姿勢と誠意を示す
3 クイックレスポンスを心がける
4 答えは簡潔に
5 企業の論理を主張しない

という大きな方針が示される。これらの詳細なアドバイスが勉強になる。

たとえば、4の答えは簡潔になら「ポイントは三つ以内に絞るべきです。これはマジック・トライアングルと呼ばれている方法ですが、非常に有効です。「それについてはまず三つポイントがあります」と答えると記者はメモ帳に、1,2,3と番号をつけて、順番に聞こうとします。ですから、先方に話を聞く姿勢を作ってもらえるのです。しかも、ポイントが三つあれば、記者はそれを勝手に省略して記事にはしづらいので全部書かざるを得ません」。なるほど。

「ご承知のように」「言うまでもなく」「先ほども申し上げましたように」や、相手の言葉のオウム返しや「ノーコメント」はダメ。こういう手ごわい質問にはきをつけろリストがある。偉大なコミュニケーターのレーガン大統領の切り返し方「いやあ、その質問にはこんなふうに答えさせてもらおうかな」などノウハウが多い。

私はライターをしていたので、インタビューする側、つまり攻撃側のノウハウはだいたい知っている。この本では、逆に、防戦側のやり方が書いてあって新鮮だった。

2000年の雪印乳業の食中毒問題で社長が記者会見後、エレベータ前で記者にもみくちゃにされ、怒って「私は寝てないんだ」と怒鳴ってしまった失敗例。著者曰く、怒鳴った社長も論外だが、エレベータ前で記者に囲ませるような会見現場の「仕切り」の悪さを批判している。プロは視点が違うなと勉強になった。

経営トップ、役員補佐、広報、秘書の仕事をしている人に特におすすめ。

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2006年09月19日

王様の速読術

・王様の速読術
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「王様の速読術は、まず一冊の本と付き合う時間を30分と決めてしまう。」

30分を3段階に分ける。

第一段階では、プレビューを5分間行う。
第二段階では、5分間で全ページを写真読みしていく。
第三段階では、残りの20分を使ってスキミング法で読んでいく。

という方法の詳細が書いてある。

この速読法は、

・80%の理解でいいから20%の時間で読む
・とにかく速く読むのではなくて、短時間に必要な情報を獲得すること
・50冊から10冊を選んで1週間以内にレポートを出す

などをねらいとしている。

内容を味わうのではなく、情報という栄養分を摂取するタイプの読書術といえる。

表紙、カバー、目次、見出し、図表などをざっと見るのが第一段階のプレビューだ。実際にやってみるとこの5分間はかなり長いし忙しい。次の写真読みでは見開き2秒で、全ページを眺めて、読むべき箇所を探す。そして20分間でその箇所中心に読む。

大量の情報をさばかねばならない時に向いていそうだ。

個人的には「飛ばし読み」はポリシーに反する。読む本を選んでいるので、もったいないと思うのだが、こうした読みが必要なことは仕事や勉強ではよくある。

仕事で必要に迫られ、私も速読法はいくつか試したことがある。いわゆる「飛ばし読み」でおおざっぱに大意をつかむだけなら、練習次第で、一冊30分は可能だと思う。ごく簡単なメモは作れる。締め切りの近い調査や原稿の仕事における情報収集に、飛ばし読み的な速読は役立つ。それができるのは、やさしいビジネス書か自分が専門としている分野の専門書などに限られてしまう気はするが。

ただ、速読は味気ないし疲れる。日常的には普通に読みたいと思う。大切なのは、毎日読むこと、と、読む本を選ぶこと、だと思う。毎日の時間の積み重なりはとても大きい。私は往復2時間半の通勤時間に愚直に読んでいるが結構たくさん読める。

長距離通勤者は恵まれている。所要時間が1日1時間なら365時間、2時間なら730時間ある。1冊に4時間かかっても、前者なら90冊、後者なら180冊以上は読めるのである。(実際には休日は通勤がないのだが。)

面白い本を選ぶことも大切と考える。内容にひきこまれて夢中で読んでいるときの速度は結構速いものだし、中断や放棄がないから、結果的に中長期で、大量の本を読むことになる。途中まで読んで、面白くない本は、時間の無駄だから、そこで止めることにしている。思い切りが重要だと思う。

そうやって毎日読んでいると、日常が練習になって、読書はある程度、速くなるものではないだろうか。速読法は万能ソリューションではないと思うが、試してみるのは悪くないのだと思っている。速く読めるんだけれども、ペースを落として読んでいるんだと思える余裕はあったらいいと思うから。

内容の構造やキーワードに集中して30分読んでみるといい、というこの本のアドバイスは、短期集中で情報を集めたいときには、ちょうどいいくらいの速度だなと思った。

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2006年08月31日

知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ

・知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ
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1 複眼思考とは、ありきたりの常識や紋切り型の考え方にとらわれずに、ものごとを考えていく方法のこと。

2 常識にとらわれないためには、何よりも、ステレオタイプから抜け出して、それを相対化する視点を持つことが重要。

3 知識も大切だが、「正解」がどこかにあるという発想からは複眼思考は生まれない。」

全国3万人の大学生が選んだ「ベストティーチャー」が語る多角的な視野の持ち方、考え方論。創造的読書法、考えるための作文技法、問いの立て方・質問の仕方、関係論的なものの見方など、学生だけでなく社会人にとっても大切な「自分の頭で考える」方法論をわかりやすく説く。

私の場合、調子よくしゃべっているうちに自論に惚れこんで、大局を忘れてしまうことがあるなあと思う。今日もあった。私は午後、「革命的に素晴らしい検索サービス」を思いついたので、社内会議で延々としゃべった。内容に矛盾はなかったのでロジックはしっかりしていたと思う。事業プランとして社内で合意を得た。

そこで勢いに乗った私は、師匠にも話に行った。ところが師匠曰く「橋本さん、それ、やってもいいけど、ずいぶんニッチなサービスだよねえ」という評価をもらって、少し我に返った。神は細部に宿るという言葉がある。面白い細部に夢中になると、大局を忘れてしまう。この本のいう複眼思考も、全体と部分という二つの角度から見直せという話でもある。(それでも、そのプランは実行するつもりだが...)。

ものごとの二面性に注目する、関係のなかでものをとらえる、メタを問う。

概念はサーチライトであり個別具体を照らし出す道具だが、強すぎる概念には気をつけろという注意は参考になった。たとえば「構造」「個性」「権力」というビッグワードが強すぎる概念である。それは構造的な問題だ、とか、個性が大切だとか、権力に立ち向かえという言葉は、考えてみるとサーチライトとして照らし出す意味が広すぎる。そういうときは言い換えてみよと教えている。

「画一的な校則の強制は生徒の『個性』を育てない」

は、

「画一的な校則の強制は『生徒ひとりひとりが自分なりによいところと思っている特徴(=個性)を伸ばすことを難しくする』」

といった具合に置き換えてみれば、何を言っているのかはっきりする。

IT業界のコンサルタントも気をつけないといけない。

「ネットの『クチコミ』で広めましょう」 < 企画の万能最終兵器「クチコミ」キター
「『コンテンツ』が重要なんです」 < というか、それがすべてではないのか?
「『ロングテール』に『最適化』した『ビジネスモデル』」 < 決め手がないということか?

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2006年08月20日

15秒でツカみ90秒でオトすアサーティブ交渉術

・15秒でツカみ90秒でオトすアサーティブ交渉術
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叩きのめさず、叩きのめされずに、すがすがしく自己主張するのがアサーティブ交渉術。「話し上手」になるのではなく、「聞いてもらい上手」になりましょう、というのがこの本の趣旨。

相手が聞きたい話をして、YESをもらう方法として、

1 言い訳をしない
2 優先順位をつける
3 時間を区切る
4 きちんと言い切る

というポイントが挙げられている。

× 「今日はとりあえず、ごあいさつということで」
○ 「新製品のメリットをお伝えしたい」

というわけだ。

そして、相手が聞きたいことは何かを考えて、

× 「社運を賭けた新製品を、ご紹介したい」
○ 「御社のコスト削減に役立つ新製品の特徴をご理解いただきたい」

というように、最初の説明で、Win-Winの関係を作れば、言いたいことを言っても、YESがもらえる。

アサーティブ交渉のために、、

15秒のインパクトを与えるスピーチ
90秒の納得感を与えるスピーチ

の2つのスキルを強化せよ、と著者は説く。

・「昨今のビジネス環境」を語るべからず
・「自己アピール」と「自慢」をしっかり区別する
・「がんばります!」ですまさない

など、やってしまいがちなポイントの具体例と、こう直すとよくなるという模範例に、納得する。

90秒スピーチは、あいさつ、名乗り、アイスブレイク、予告、本論、結びの6パートで構成せよ、としている。いくつかの選択肢を選ぶだけで、自分版の90秒スピーチの台本ができあがる「プリフィックスメニュー」はとても参考になった。


・一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003895.html

・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・ワルに学ぶ「実戦心理術」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003180.html

・NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003031.html

・トップに売り込む最強交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000324.html

・心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000609.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・悪の対話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002109.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000150.html

・ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000145.html

・外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003381.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

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2006年08月16日

説明上手になれる「らくがき」の技術

・説明上手になれる「らくがき」の技術
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著者はグラフィック・ファシリテーションの専門家である。

「グラフィック・ファシリテーションの手法は「集団によるエネルギー」「学習のためのセオリー」「イメージマップ」という三つの要素の微妙なバランスによって成り立っています。これらの要素を組み合わせることによって、反対意見の応酬でちっとも意見がまとまりそうにない会議をアイデアを生み出す場に変えることができるのです。」

これは検討課題を絵図で表現することで、円滑に議論する方法論である。ホワイトボードや配布文書に描かれた絵図は、文章よりも、参加者の関心を確実に集める。効果的に絵図を活用できれば、具体イメージを喚起させたり、話をまとめやすい。

「ユーザー」や「電話」、「サーバ」や「データベース」を絵にする。☆や○など基本図形を使う。飾り文字を書く。図形をレイアウトしてクラスター図を描く。価値基準の軸を持つグリッドに図形を配置して整理する。らくがきをグループ思考ツールとして役立てるためのコツが紹介されている。

基本図形の例が、絵描き歌のような筆順付で、大量に収録されている。人や車やパソコンの簡単な図形。これをいくつか覚えるだけでも、ホワイトボード上手になれそうだ。上達のための訓練法が「やってみよう」演習として各章で用意されている。

たとえば「テレビを見て視覚的な比喩を書き取りましょう。まず、ほかのことは何もしないで聞いてください。次に、聞き取った視覚的な比喩を書き出します。その後、その言葉を絵にします」。傘下に入る、水に流す、雀の涙、峠を越す、話がどうどう巡りをする、話が飛躍する、などの比喩を絵図で表現するという練習だ。

直線や円のキレイな描き方、レタリング(文字)、水平に描く、高さをそろえる、フキダシやフレームなどのアイデア、系図やダイアグラム、遠近法など、初級者から上級者まで、ホワイトボードの達人への道が語られている。

わかりやすい図をスラスラと描く人は、創造的なアイデアマンに見えるし、紛糾した議論の内容をグリッドや系図、関係図で鮮やかに整理する人は、知的なリーダーに見える。らくがき思考のらくがきは、会議中でも独りで練習できるわけだから、ちょっと取り組んでみようと思った。練習中。

・パワーポイントは不要?ドローエディタ ディスカス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003485.html

・ビジネス図解に強力なSVGcats
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000827.html

・フォント考、印象の良さ、強さ、周辺ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000526.html

・最強の戦略は「図」で立てる
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000490.html

・デジタルとネットワークで会議は踊る?
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003244.html

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2006年08月15日

「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法

・「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法
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人を論理で説得する。その難しさは誰だってわかっている。実際には人は論理だけでは納得しないのだ。この本はビジネスのコミュニケーションやマーケティングにおいて、物語の力を活用せよと説く。

「モノを売り込むには、論理で攻めるよりも、相手を共感させ、感情移入させる「物語」のほうが効果的」。従来の「ロジカル・シンキング」の落とし穴は、人間が純粋にロジカルな存在ではなく、感情を持った非ロジカルな存在だという事実を見落としていることにある。

物語には、単なる論理の理解ではなく、共感、感情移入、想起、想像というプロセスがあるから強いと著者はいう。人類史上最大の説得力を持った聖書は、事実や論理ではなく、物語という形式をとっているではないかという。

「現在」から入り、いったん「過去」にさかのぼり、再び「現在」に戻ってくる「V字型のストーリー」が効果的だとする。失敗や挫折を乗り越え、主人公が出発点からどこまで到達できたのかの遠近感に人は感動するのだという。誘因、紛糾、危機、山場、解決の構造。NHKの番組「プロジェクトX」など成功物語のほとんどは確かにこの形式を取っているなと思う。具体的なV字型ストーリーの構成法が語られる。

物語法は製品開発においても効果があるという。従来の製品開発形式には、明確な市場ニーズを満たす製品を作る「需要プル型」と、明確な技術シーズを適用するための市場を探す「技術プッシュ型」の2種類があるが、近年、どちらでもない「芸術型製品開発」が増えているのだという。消費者のニーズも、技術シーズもはっきりせず、両者を対話させながら、開発が進行していくケースのこと。

多くのインターネットの「Web2.0」なものの開発がその例だと思う。市場ニーズも技術シーズもはっきりしないが、断片的な情報に予兆を読み取り、こうしたサービスを消費者は使うようになるに違いないという「意味」をみつけていく。まさに物語をみつけるプロセスである。

物語は組織を率いるリーダーの言葉としても効果を発揮する。リーダーシップとは、チームで物語を作り、共有することでもあるからだ。


リーダーは自分の物語を追及するだけではダメ。チーム内のひとりひとりを主人公に見立てた物語を本人たちと共有し、つねにプロジェクト全体に目配りできることが大切です。」

利点を図や箇条書きにしただけではダメで、相手を主人公にした利用シーンを語ったら、わかってもらえた、ということはビジネスシーンでよく経験する。過去の成功を伝説や神話にすることで長く繁栄している企業もある。論理で戦略を立てて、物語で人を動かす方法について、とても参考になる一冊だった。

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2006年08月13日

ホワイトハウスの超仕事術―デキるアシスタントになる!

・ホワイトハウスの超仕事術―デキるアシスタントになる!
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大学で担当している前期授業が終了。今年は有能な学生アシスタントのM君に毎回とても助けてもらった。彼はまだ2年生だが放送部部長で、FMラジオ局で番組制作のアシスタントのアルバイトもしたりしているらしい。道理で現場アシスタントの役割を熟知しているなあと感心し、仕事のイベント業務も手伝ってもらったが完璧な動きをしてくれる。若いけれども、プロだと思った。

彼がいると、授業というフライトの「自動操縦」ができる。

「前列から席が埋まってほしいんだよね」とぼやくと、私に代わって「前から座ってね」と授業前に学生に呼びかけをしてくれる。それでも効果がないとわかると、次回から、入場時に教室の後列の照明を消しておく手法を編み出した。自然と前列からの着席になり、効果があった。

私の授業はパワーポイント資料を大きなプロジェクタースクリーンと、後列のモニターに投影して進める。ワーキンググループ活動の時間には課題内容を画面に投影している。このときに、私がプレゼン用PCで他の作業をしようとすると、「画面をフリーズさせますね」と確認してくる。最初、何のことかわからなかったのだが、プロジェクターの画面固定機能のことだった。これは便利だ。

ゲスト講師のいるときは、私がゲスト紹介を始めている後ろで、ゲストのPCの機器設定を手早く進めている。紹介が終わる頃には、ゲストがスムーズにプレゼンを開始できるようになっている。マイクの音量や照明、ドアの開閉に常に気を配っており、頼まないでも最適化してくれる。

こうしたことを、彼は、私を質問攻めにしないで遂行する。目で合図できるアシスタントは珍しい。私にはない機材知識や現場経験からの提案は有効なことが多い。授業やイベントの最初から最後までをイメージしている人間が、私以外にももう一人いるというのは、大変な安心感があり、自分の仕事に集中できる。

信頼関係ができて、いろいろな問題を話しかけたり、相談を受けたりするようになった。私が彼の主張に異論を唱えることもあるが、その場では反論しないで、いったん飲み込んでくれる。そういう彼の態度から、逆に自分が間違えたかもしれないと、私の方が内心気になり始める。アシスタントとしての彼の「飲み込み」は、私に対して反論以上の効果をあげている。

さて、この本は、大統領補佐官のアシスタントとして働いた後、クリントン大統領再選時のテキサス州選挙対策事務局長、ポロ・ラルフローレンIR担当役員などを歴任した女性アシスタントの仕事術である。

・ボスのためにどんな情報リストを管理すべきなのか
・書類整理、電話対応、スケジュール管理、出張手配などの技術
・ホワイトハウスで使われているブリーフィングメモの実物公開
・アシスタントのキャリア(いつかボスになるために)
・ボスとのコミュニケーション術

など、アシスタントの仕事について現場の経験をベースにたっぷり書いている。学生や新入社員はまずアシスタント業務につくことが多いはず。経営トップのマネジメント論も大切だけれど、アシスタントとしてプロになることが、トップへの近道であったりするかもしれないと思った。

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2006年07月23日

企画書は1行

・企画書は1行
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一枚企画書を超えて、企画書は渾身の一行に賭けよ、と説いた本。
(文字通り一行の企画書を書けという意味ではない。)

コンサルタントの仕事をしていると、分厚くビジュアルな企画書を書くのが仕事だと思い込んでしまう時期がある。コンサルを専門とする会社では、特に若手はたくさん書かないと企画書として認めてもらえない雰囲気もある。それで何十ページや何百ページの豪華版を作ってしまうわけだが、最終決定者が企画にGOサインを出す判断は、やはり企画書の長さではなくて、渾身の一行の精度なのである。

有名な経営者、プロデューサたちの企画立案の心構えと、彼らの代表作の一行が読める。
「一生屋台を引くことはできない」という覚悟の一行メッセージで、投資家から出資を引き出し、お好み焼きチェーンを創業した成功者。「彼女の部屋で遅めのランチ。パスタを食べながらグビグビ」でヒット商品の缶チューハイを開発したキリンビール。「人の命をどう考えるのか」で救急ヘリコプターのネットワークNPOを設立した元警察庁長官。現状と理想像を合成写真で並べて「この二枚の写真を見てください」と役所を説得した地域活性化のリーダー。

「企画書は内容のまとめではない」

「つまり、企画書の一行とは読んだ人の脳裏に風景を映し出すことなのだ」

聞いた相手の心に鮮明な映像をむすぶような一行が企画書の本質であって、それ以外はおまけに過ぎない。実現に結びつく企画書の共通点はその一行があるかどうか、というのがこの本の要旨である。それを伝えるために多数の企画者の事例が紹介されている。

私も思い当たる経験がある。必死に書いたWeb構築の企画書でプレゼンし大きな仕事をもらって喜んでから、数年後、GOを出してくれた経営者と飲んでいた席で、こんな風に言われた。「あのとき、橋本さんの企画書はどうでも良かった。それより、あなたが、あらゆる手段でアクセス数を上げて見せますって本気で言っていたから通したんですよ」。

私は当時、アクセス向上委員会と言うコミュニティを運営していて、ホームページのアクセス数を高める仕組みを研究し、本を書いていた。その経営者は、もともとそういう背景を評価して私に提案させていたのだから、企画の趣意が「本気であらゆる手を使って人気サイトつくります」でよかったのである。何ページ後ろについていようと、特定の方法論が書いてあろうと、それはおまけだったのだ。

プロの専業コンサルはともかく、フリーランスやベンチャーの場合、大手企業から企画提案を要請されるということ自体に、二者の関係性が確立されているということでもある。そこを認識しないで、一行のない、小手先でたくさん書いた企画書を出したら逆効果ということもあるだろう。企画書をさあ書くぞと気負っているとき、意外にその前提を忘れがちだと思う。本来相手の方が専門家であるビジネスについて、一般的な市場分析から入って、的を外してしまったりする。仕事を始めた頃、書いた企画書は今思い出すとそうした恥ずかしい失敗が満載だった。

ズバリの一言で意思決定者の合意を得て、必要ならば後から長大な企画書を作るというのが正しい企画マンの仕事なんだなと思った。


・鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

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2006年07月11日

かけひきの科学―情報をいかに使うか

・かけひきの科学―情報をいかに使うか
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情報をいかに扱うかについての軽めのエッセイ集。”かけひき”については実は内容が少ない。情報とは何か、考察がある。

気になった部分を抜書き。

・冗長性

日本語の一般的な会話における冗長な言葉(それがなくても意味が伝わる言葉)は42%もあるそうだ。しかし、この冗長度はうまく使うと、情報を伝える媒介となる。

「講義の上手な先生の話には、じつは冗長な言葉がいっぱい入っている。しかもあちらこちらに余分な話が入っている。講義の内容はだいたいわかる。つまり、私たちが相手にメッセージを送るときに重要なのは、冗長度のサジ加減なのである」。「セールストークであまり冗長度が少ないと、どういう商品かがわからないし、だいいち客はとっつきにくいから、とたんに購買意欲が失せる」。

確かに、電報や業務連絡のような冗長性がないメッセージは、文脈を完全に共有した人以外では伝えるのが難しい。

・現状維持の仮説

「現状は維持される」という仮説は結構当たる。たとえば今日の天気が晴れなら明日も晴れ、雨なら雨というように、「今日と同じ」仮説の的中率は年間60%だそうである。同じ天気が2日続いたら3日目も同じとする「傾向が維持される」仮説は東京だと70%近くなるらしい。冬場に3日間寒い日が続くと4日間暖かい日が続く三寒四温の「周期性がある仮説」もかなり当たる。

これと同様に、市場に投入される製品にも規則性がある場合が多く、各社の製品に基本的な型がn種類あって、型ごとにランク付けがされていて、製品同士が競合関係にある電化製品の市場などでは、過去の新製品出荷のペースを調べれば、将来の新製品の型や販売時期、価格までかなりの精度で予想できると著者は述べている。最近では、携帯電話やパソコン、テレビではこうした予測が成り立ちそうである。

・二つの知性

米国のエイジング研究によると、人間には二つの発達する知能がある。

フルーイド・インテリジェンス 流動性知能
  柔らかいひらめきや創造する能力 10代後半から20代でピーク

クリスタル・インテリジェンス 結晶性知能
  長い間の経験や学習によって培われる総合判断力 30代からゆっくり上昇

前者が創造力で後者が経験則といえる。年齢を重ねるに従い、驚きが減って好奇心が弱くなる。若いときに創造力を発揮しておかないと経験則にならない。達成したことの感動が次のステップの努力につながる。

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2006年06月19日

ビジョナリーカンパニー【特別編】

・ビジョナリーカンパニー【特別編】
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全米200万部のベストセラー「ビジョナリーカンパニー2」の付属論文。

前著で語られた偉大な企業組織とは何かというテーマを、医療、教育、役所、NPOなどの社会セクターに適用する。非営利組織においてもビジョナリーカンパニーの「偉大な」組織への飛躍の法則ははたらいていることを説明する。

・ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
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目次

一 偉大さの定義 経営指標が使えないなかで、偉大さを判断する
二 第五水準のリーダーシップ 分散型組織構造で成功を収める
三 最初に人を選ぶ 適切な人をバスに乗せる
四 針鼠の概念 利益動機のないなかで、経済的原動力を見直す
五 弾み車を回す ブランドを構築して勢いをつける

社会セクターの偉大さは金銭的指標では測れない。企業にとってはコストや利益の数字が偉大さを測るインプットであり、アウトプットであるが、社会セクターでは金銭はインプットではあってもアウトプットではないからだ。

社会セクターでは、投資した資本に対しどれだけの利益が得られたかではなく、使った資源に対してどれほど効率的に使命を達成し、社会に際立った影響を与えたかで偉大さを測るべきだという。たとえば楽団であれば、年間のスタンディングオベーションの数、演奏できる高度な演奏技術を必要とする楽曲の数、音楽祭に招かれた回数、チケットの需要。社会セクターの実績測定は、経営指標のように数量化できる必要はなく、厳然たる質的事実を集めて証拠とする弁護士のような仕事となる。

人材の流動性が企業組織よりも小さい社会セクターでは何より、優秀な人材を選別し「バスに乗せる」ことが大切になる。重要なのは報酬をどう支払うか(あるいは、いくら支払うか)ではなく、だれに支払うのか(誰がバスに乗っているのか)なのである。偉大な社会セクターがどのようにして、意識が高く能力のある一級の人材を集めているかの実例がいくつか示される。

そして志の高いビジョンと経済的原動力の関係、組織を際立たせるブランド構築法など、ビジョナリーカンパニーのやり方を、社会セクターの経営に最後まで翻訳していく。偉大な組織のあり方は、どちらの世界にも共通であり、普遍性を持つということがわかる。

ドラッカーの「非営利組織の経営」にも通じる部分が多くあった。要するに高い志と優秀さが鍵なのだ。こちらも学生時代にNPOの支部代表をしていたとき、読んで感銘した。NPO活動に従事する人にはどちらもおすすめ。

私が所属している団体がNPO法人になって、法人の理事になるので、読み直した次第。
・非営利組織の経営―原理と実践
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2006年06月12日

通勤電車で寝てはいけない!―通勤電車と成功の不思議な法則

・通勤電車で寝てはいけない!―通勤電車と成功の不思議な法則
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先日、朝の通勤電車の話。

老夫婦が満員の電車に乗っていた。私が乗り込んだ駅で、ちょうど席がひとつ空いて、おばあさんは座ることができたようだった。だから私はおじいさんの方と並んでつり革につかまった。

おじいさんの前には若いサラリーマンが足を投げ出して座っていた。席を譲る気はないらしいが、後ろめたいのか、自分の携帯をじっと見ている。次の駅を過ぎた頃から、おじいさんがサラリーマンに、「足をひっこめろ、ばかもん」と仕切りに怒り始めた。足を蹴飛ばしている。

おじいさんはかなり頑丈そうな体格で、サラリーマンの方がひ弱そうにも見えた。この場合、席を譲る、譲らないは、飽くまで好意であって、最初に私が違和感を覚えたのは、譲るのを当然とでも言っているような、おじいさんの態度なのだった。

おじいさんの罵声は次第に大きくなっていく。「聞いているのかお前」。サラリーマンは携帯の画面に逃げ込んで一層の無視をきめていた。席を譲らせるにしてはおじいさんのやり方、強引である。まあ、しょうがないよね、とサラリーマンに同情しかけたとき、おばあさんがすっと席を立った。

おばあさんが席を譲った相手は、おじいさんではなく、その隣、私の視界の外にいた、見るからに身重の妊婦さんだった。「ありがとうございます」と本当にうれしそうに譲られた席に座った。並んでつり革につかまる老夫婦と私と、足を投げ出し、携帯を見つめるサラリーマン。それを睨みつけているおじいさん。優しく妊婦に何ヶ月なの?と話しかけるおばあさん。

そう、おじいさんが怒っていたのは、サラリーマンの斜め前にしんどそうに立っていた妊婦さんに席を譲らない行為に対して、だったのだ。私はおじいさんに当初抱いた反感が申し訳なくなり、次の駅で私の前の席が空いたら、絶対に老夫婦に座ってもらおうと思ったのであった。

ところが次の駅で、老夫婦も妊婦もサラリーマンも降車していった。一緒に降車するのが決まりが悪いのか、サラリーマンは老夫婦がドアから出るのを見届けてから、慌てて自分も降りていった。

その空いた席に複雑な気分で私が腰掛けた。

そうして広げたのがこの本であった。通勤時間をコストではなく自己投資として有意義に使え、そのために敢えて通勤1時間以上かかる遠くに住んだらいい、そして電車の中ではこんなことができると、薦める本である。


片道一時間としても、一週間で十時間、一年だと約五百時間もの時間になる。この時間をただぼーっと過ごすのか自分を高める時間にするのか。この通勤という”継続の力”はあなどれない。寝てなどいられないはずである

この計算は私もしたことがあった。私の試算では、500時間は8時間労働ならば62.5日分に相当する。週休二日制ならばざっと3ヶ月の仕事量である。人月150万円のシステムエンジニアの仕事に換算するとざっと450万円。なにかビジネスを始められそうな投資に相当する。数人の長距離通勤仲間を集めれば「電車法人」が設立できるかもしれない。

問題は細切れの時間をどう集約するかなのだが、この本では、1日のシミュレーションや、情報収集、読書と勉強にあてたらよいとアドバイスがあった。私もかなり通勤時間活用派なので、著者の実践とこころがけには共感する部分が多かった。

満員電車で座れない日は、冒頭に紹介したような人間観察と、吊り広告の文章分析をするのもいいと思う。人間観察は少なくともブログのネタになるし、気になる広告キャッチコピーを集めておけば、企画立案に応用できる。。

やっぱり、寝てはいけない。

関連:

・通勤電車で座る技術!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003233.html

以前に書評した同テーマの本。この書評、その後、日経新聞記者の目に留まり、「橋本さん固有のワザは他にないのですか?」と取材され、後日にITコンサルタントの橋本さんのアイデアとして朝刊のコラム内で紹介されたりした。通勤ワザを通勤時間に考えることで通勤コンサルタントになるという道もあったりするかも。

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2006年06月08日

仕事は、かけ算。

・仕事は、かけ算。
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日々、楽しみにしているメールマガジンがある。

これまで人に教えず自分だけで楽しんでいたのだが、本になってしまったので、しぶしぶ紹介する。

・メールマガジン 平成・進化論。
http://www.2nd-stage.jp/

実はこのメールマガジンはまぐまぐ発行部数第1位であって、知る人ぞ知るというわけではない上に、この本はアマゾンでは6月7日発売直後に総合ランキング1位にもなった。

・『まぐまぐ!』週間総合ランキング
http://www.mag2.com/ranking/rankingw.html
週間総合ランキング

(2006/06/07 21:56:40 現在のデータ)

1位  151580部 1億稼いだ■最強方程式を毎日10秒で⇒平成・進化論。
2位  140168部 ネットで収入と自由な時間を手に入れる方法
3位  135068部  セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術

著者の鮒谷さんは、失業から3年で広告代理店など3社を起業し収入を20倍にした経験を持つ。そのノウハウを、メールマガジンで配信したところ、爆発的な人気を呼んでいる。今話題の”持続可能な”という点でも2年半以上継続で1000号を超えている。この本はその1000号から読者に好評だった約60本を選び編集を加えたエッセンスである。

各エッセンスは4ページなのでテンポよく読める。共感と感銘するページが多くて、うなずきながら読んだ。気づかされる部分も多かった。

たとえば次の3箇所。

1 「泣きたくなるほどの辛い経験も、「これは生涯にわたってのネタになる」と思えば、成長の糧に早変わりする。」の章から引用。


実際、倒産ネタは、もう何度もメルマガのネタとして使わせていただいています。ダメな会社の特徴、倒産したときの身の振り方、失業時代の時間の使い方......。ネタがなくて困ったときも、この倒産劇を思い出すと、次から次へと書きたいことがあふれ出してきます。この倒産ネタはまさに打ち出の小槌で、角度を変えることで死ぬまで何度でも使える私の一生の財産なのです。

この精神は見習いたい。

2 「「明日からやろう」は禁句にして「いますぐやる」と自分に言いきかせる。」の章から引用。


真顔で言うのはちょっと恥ずかしいのですが、じつは私、
「すぐやる共和国の大統領なのです」
を務めています。
<中略>

なかなか行動に移せないでいるときに「あ、俺はすぐやる共和国の大統領だった」と一言つぶやいてみると、不思議なことにその気になって、すぐに体が動くのです。

3 「夢を言葉にして、周囲に決意表明を。」 の章から引用。


そんな怠け者がなぜメルマガの発行で変わったのか。それはメルマガで格好をつけて、「勉強は大切だ」「時間管理を厳密に行おう」なんて言い切ってしまったがために、自分もその言葉に引きずられて、やらざるを得なくなってしまったからなのです。

ブログに置き換えると私も似たところがあるなあと共感。

この本が気に入ったら、メールマガジンをライブで読むのがおすすめ。鮒谷さん流にいうと「自分の思考を瞬間的に切り取る言葉のベスト」でメールマガジンが構成されている。意味が圧縮されているので読みやすいし、改行でリズムをとっている。また広告と本文の融合が見事で、大量の広告がむしろ楽しい。ネットで売れる文章術の見本としても参考になる。

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2006年05月29日

ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則

・ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
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百式管理人 田口元監訳。日本語版解説で田口さんは「知識社会で生き残りたいなら、作業や時間を管理するだけの手法は役立たない。必要なのはアイディアとエネルギーを管理する手法である。」と書いている。知識社会の仕事とは、部品組み立て作業のようには明確な終わりが見えないものだ。いいアイデアが生まれるまで終わらない企画の仕事だとか、複雑に絡み合う複数プロジェクトの同時進行のような仕事では、現時点の達成度が何パーセントとはわからないことが多い。

終わりの見えない仕事群を相手にする知識労働では、単なる進行管理だけだと、ストレスで仕事の質すなわち創造性が落ちてしまう。すっきりした気分でワクワクしながら仕事をすることが大切になる。著者のデビッド・アレンは、GTD(Getting Things Done、邦訳「仕事を成し遂げる技術」)の中で、知識労働のための具体的なToDo管理技法を提案し、ベストセラーになった。

GTDとは、

1 頭の中の「やりかけの仕事」を全部書き出して意識的に把握しよう
2 書き出した「やりかけの仕事」に対して、次にとるべき行動を決めよう
3 次に取るべき行動を信頼できるシステムで管理し、定期的に見直そう

という3ステップを実践するための方法論である。

この本では、GTDの原理にもとづき、仕事と人生をコントロールするための心得とノウハウが、次の4つのカテゴリに分類されて、52個解説される。

・物事を片付けること
・集中すること
・枠組みを活用すること
・実際に行動を起こすこと

最後まで読んだら付箋を30枚もつけていた。日常の仕事で何が問題かずばり指摘してくれる箇所が多かった。例として3つほど付箋の箇所を引用してみる。


記憶というものは、保存したものを、最新(時間的に)かつ最も目立つ(感情的に)という基準で取り出す傾向がある。これはどう考えても効果的なファイル検索システムとはいえない。同じように、「やるべきこと」のリマインダーが行き当たりばったりのいい加減なものであれば(パソコンにポストイットを貼り付けたり、机に伝言メモを置いたり、椅子にメモを貼り付けたり)、忙しさにかまけて、ついついいちばん簡単なことにとびつき、忙しいふりを続けることになる。しかし、文字どおり目の前にあることをやるのは、今すべきことを選ぶ基準として適当ではないはずだ。

「プロジェクトは実行不可能」。プロジェクトリストとToDoリストには決定的な違いがある。ToDoリストにプロジェクトを入れないこと。

「システムが得意なのは、何かを覚えたり、思い出してくれる機能だ。一方、あなたの頭が得意なのは、次々に出現する情報をもとに、考えをまとめ、創造的に意思決定することだ」

そして本書のテーマであるストレスフリーというキーワードは、仕事と生活の境目が曖昧な知識労働を軽やかにこなすノウハウでもあるなと思った。生産性を創造性で測る時代には、作業効率化や能力開発よりも、ストレスフリー化こそ全体最適な方法論になるのだと思った。

・ Life Hacks PRESS デジタル世代の「カイゼン」術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004414.html

・百式2冊同時出版と管理人への7つの質問
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000872.html

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2006年04月10日

Life Hacks PRESS デジタル世代の「カイゼン」術

・Life Hacks PRESS デジタル世代の「カイゼン」術
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まず、私と百式田口さんの共同開催イベント「無敵会議」を面白がってくださっていた、創意工夫が大好きな皆さんには、間違いなく面白いですのでオススメの本です。田口さんが書いています。

このエントリでは、本の概要と私のライフハックスを紹介します。


◆総力特集
GTD - シンプル&ストレスフリーの仕事術
「あれもこれもやらなくちゃ」を解決。今すぐ始めて、効果抜群

 GTDはlifehacksの代名詞とも言える存在で、David Allen氏の著作『Getting Things Done』の頭文字をとった仕事術です。
 GTDはいま世界的に注目されており、「シンプル」かつ「道具を選ばない」方法で頭の中にある「気になることすべて」を掃き出して整理し,「ストレスのない仕事」を実現します。GTDを実践することで「あれもこれもやらなくちゃ」から解放され、リラックスした状態で新しいアイデアを生み出すことができるようになるのです。
 本特集では、GTDの基礎から、デジタル、アナログを問わずさまざまな道具を使った実践方法まで、徹底的に解説していきます。

◆特集2
Google全サービス活用
Gmailも地図も、徹底的に使い倒す

 ほんの数年前まで、Googleは検索サービスのみの会社でした。今では、地図、Webメール、ニュースポータルなど数多くのサービスを提供しており、現在も増え続けています。さらに、既存のサービスも日々進化していっており、もはやGoogleのすべてを把握することも、すべてを使いこなすことも難しくなってきています。しかし、Googleがプラットフォームとなりつつある今、これを使い倒さない手はありません。
 そこで本特集では、Googleの全体像と、その活用方法を徹底解説していきます。まず第1章でGoogleの全サービスをカテゴリごとに解説し、第2章から第4章では特に便利なサービスの、より深い使いこなし方を紹介します。そして第5章では、Googleの未来を予想してみます。

◆特集3
仕事で、生活で、発表の場で
プレゼンが簡単にうまくなる

 プレゼンテーションは、仕事や発表の場だけでなく、毎日の生活の中で「自分の考え」や「自分自身」を伝えたり理解してもらうためにも重要です。「プレゼンテーション技術」=「コミュニケーション技術」でもあるのです。そんな大切な技術であるにもかかわらず、プレゼンテーションについてきちんと学ぶ機会はあまりありません。
 そこで本特集では、プレゼンテーションが簡単にうまくなるコツをわかりやすい法則(定理と方程式)を用いて説明していきます。

◆特別企画
はじめてのマインドマップ
図解思考で「脳」を整理

 マインドマップは、トニー・ブザン氏が開発した図解による思考ツールです。アイデアを中央から放射状に伸ばしていくので、発想の広がりに制約がありません。情報を1枚の紙に図でまとめるので、情報同士の関係の中から新たなアイデアを生み出せます。マインドマップは、アイデアの整理だけでなく、文章作成やセミナー、会議の記録、読書の感想、スケジュール管理など、いろいろな場面で活用できます。
 本特別企画では、これからマインドマップを始めたい人に向けて、基本から丁寧に解説していきます。

■私のライフハックス

この本を読んで、自分にも独自のハックはないかなと考えて、3つほど挙げてみた。

(1) 「携帯で携帯」

携帯にペンや付箋紙を取り付けて使う。

携帯ストラップに携帯用ストラップつきミニボールペン(三菱鉛筆製)をぶら下げておく。このペンがあるおかげで年中助かっている。メモしたいときに必ずペンがある状態を作れる。そして折りたたみ携帯の内側に、付箋紙を数枚重ねて貼っておく。どこで読書していても付箋紙が使えるし、私は携帯を時計代わりにしてよく開いて見るため、この付箋紙をそのまま備忘録に使えるというわけ。

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(2) 「通過駅スケジューリング」

私は、毎日、東京ー藤沢間を東海道線で往復している。電車の中では読書、執筆、考え事(意思決定やブレスト)をするのが日課。この経路には藤沢→大船→戸塚→横浜→川崎→品川→新橋→東京と6つの駅がある。各駅間の感覚は体感でよく覚えている。この身体記憶を利用する。

出発する際に私はいつも細分化した作業の完了すべき駅を決めている。読書なら次の駅や中間の横浜駅までに目標とするページ数を決める。意思決定や考え事ならば、どの駅までにいくつ決めるかを決める。身体記憶に加えて見慣れた車窓の変化もあるので時計を見なくても時間管理ができる。走行による進捗感と、ぼやぼやしてたら時間切れする感がよく脳にはたらく。

(3) 「第一印象データベース」

これは皆がそうかは知らないけれど、たいていの問題で、第一印象が当たっていることが多いと思う。最初に思いついた結論はかなり正しい。だから、自分が最初に考えたことはメモをする。簡潔な質問文をつくり、詳しそうな複数の人に雑談的に聞いて、最初の結論だけ一覧をつくる。自分の考えと違う答えが返ってきても詳細説明や再質問はしない。こうして集めた第一印象データベースは意思決定に役立つし、時間短縮になる。

最近それを裏づける本も書評。

・第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004336.html

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2006年04月04日

「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術

・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
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1分の話は字数にすると約400字で、新聞のリード文に相当する。必要最低限のことを伝えるには十分な量だとして、話を短くわかりやすくする方法論が語られている。まず最初に、話を長くわかりにくくしている盲点として挙げられた9つのポイントはとても参考になる。

1 相手に気を遣うあまり、言いたいことがいえなくなる
2 具体例をいううちに、話がズレてしまう
3 イエス・ノーを決められず、何を言いたいのかわからない
4 何をしゃべっても、すぐ得意ネタ、自慢話になる
5 前提となる説明をすっ飛ばす
6 相手がわかっていることをクドく説明する
7 細かいことを正確に伝えないと気がすまない
8 言い訳が多い
9 へりくつを言う

言われてみれば、その通りだと思う。要領の悪い話し方の欠点は、ほとんどこの9つにおさまる気がする。言うべきことをいかに言うか、と同時に、必要のないことをいかに言わないかが大切ということだろう。そして、ツボをおさえた話をするには、次の4つがポイントであるとされる。

・相手の立場を確認する
・相手の不安を探る
・自分のスタンスを決める
・話の構成を決める
   構成A 言いたいことをずばり言う
   構成B 相手を少しずつ納得させる
   構成C 相手を立てつつ自分の意見を主張する、の3つの方法

ダラダラ話さない、考えて話せ、方法論はある、ということである。この本自体が事例も豊富でありながら簡潔で大変わかりやすい。日常会話でも役立つコツを学ぶことができた。

ところで、ダラダラ話す原因はダラダラ話せる状況にも原因はあると思う。

たとえば、

・秒単位が問題になる非常事態のときの会話
・高額な国際電話の通話
・電池が切れそうな携帯電話の通話
・イベント中のスタッフとの会話

という状況だと、かなり簡潔に要領よく話せることが多い。(逆に失敗するとダメージは大きいわけだが。)

通信コストが高いので、伝える側は意味を圧縮して伝達し、受けとる側は意図を汲み取って展開する。そういうダラダラできない状況、ちゃんと伝えないとマズい雰囲気を作り出すことも、伝達力強化のポイントだと思う。

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html

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2006年03月15日

2分以内で仕事は決断しなさい―スピード重視でデキる人になる!

・2分以内で仕事は決断しなさい―スピード重視でデキる人になる!
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下着業界で急成長を遂げ、大手ワコールに次ぐ2位のシェアを誇るに至ったトリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の書いたスピード経営論。文章の勢いにも圧倒されて元気が出てくる。

トリンプの社員は120人でこれは18年前とほぼ同じ数字だそうである。一方、売り上げは18年間で5倍に伸びている。スピード経営の成果であるとし「社員のIQを5倍にしたり、労働時間を5倍に増やすのはまず不可能ですが、スピードならやり方しだいで5倍にできる」と説明する。

もちろん精神論だけではスピードははやくならない。トリンプという会社には、スピードアップのための、たくさんの仕掛け、ノウハウがある。それが次々に明かされている。その中心にあるのがユニークな早朝会議。


早朝会議では、毎朝40〜50の議題を扱います。私が議題を選び、担当者が報告する。私が質問をして、担当者が答える。煮詰め方が甘ければ、さらに私が突っ込んで、担当者も負けじと言い返す。私を見事納得させることができれば、次の議題にパッと移ります。この間、1分〜2分です。

私を納得させられなくても同じです。何が足りないのか、どこが煮詰められていないかを指摘して、その部分を次の日までの宿題にする。この場合も、長くて2分で次の議題です。

2分で議論し決済をもらうには、担当者は何が問題なのか、本質は何なのかを簡潔にまとめておかねばならない。実物公開のA4半分の企画書という数行の企画書も驚きだ。「議論に議論を重ねても結論が出ないのが普通」という反省から、こうした即断即決の会議スタイルが生み出され、会社の高成長の仕掛けとなったそうだ。

トリンプは45分の昼休みが他の会社より15分早く11時45分に始まる。これは近隣の飲食店が混む前に食事をして早く戻れるようにな設定。そして午後12時半から2時半までを「がんばるタイム」とし、私語は一切禁止、電話もダメ、席を立つのもダメ、仕事に集中するルールがある。ハードワークな会社だが、定時の6時になると自動的に部屋の電気が消されて社員は全員強制退去になる。6時完全退社は家族を持つ女性社員に評判がいいらしい。

がんばるタイムに電話が出来ないと仕事にならないのではないか?と疑問に思ったのだが、実はここにも秘密があった。この会社は多くの仕事のデッドラインを翌朝の早朝会議までと設定している。外部に電話連絡ができるチャンスは早朝会議後の午前中か、がんばるタイム後から6時までの2回しかない。午後の短い時間に電話をして相手が不在なら大変なことになる。だから皆、午前中に電話をするようになる。

そして残業罰金制度がある。残業した社員がいる部署はボーナスから罰金分が引かれてしまう。がんばるタイムの不徹底や「さん」づけ不徹底などのその他の罰金規定もある。全員が事実上の禁煙強制。窮屈な雰囲気なのではないかと思ってしまうが、社員はこれをゲーム感覚で楽しくやっているから、自らハードルをもっと高くしようと挑戦するらしい。

この本にはスピード経営、即断即決のノウハウが無数に見つかる。組織は軍隊を見習いなさい、会社に民主主義はいらないと断言するワンマン社長のいうことなので、すべての会社に応用が効くかわからないが、とても説得力のある章の連続で勉強になった。


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2006年02月22日

ドコモを育てた社長の本音

・ドコモを育てた社長の本音
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ご本人とお会いしたことなどないのだけれど、文体からにじみ出る人柄に感銘。

著者は元NTTドコモ社長、現JAXA(宇宙航空研究開発機構)理事長の立川敬二氏。

最初は、


NTTドコモは、NTTの子会社です。NTTの副社長から、子会社のドコモの副社長に異動するという人事は見方によっては降格です。実際に給料だって下がりました。何より、私のドコモの印象が良くなかった。

という不本意な転籍でドコモの経営に関わることになったという。当時はまだ固定通信が主流で移動通信は傍流であった。もともと無線技術を開発していた技術系はともかく、事務系はみな嫌々移った時代だそうだ。たまたま入社時に無線技術の開発に関わった過去が、ドコモ転籍の理由のようではあった。

しかし、時代の潮流はケータイに味方していた。

立川氏は社長として、携帯電話の契約台数の飛躍的成長とiモードの大成功、そして国内、海外での3度の上場という華々しい経験をする。時価総額は日本企業として1位、世界でも米マイクロソフト、米GEに次ぐ第3位の40兆円を記録した。だが、バブルの崩壊と投資の失敗によりドコモは一兆円の損失を背負う。

最後が良くなかったとはいえ、その業績は偉大だ。今日の国内全キャリアのケータイユーザは9千万人。携帯電話とiモードは明らかにこの10年で日本人の生活スタイルを変えた。そのケータイ大国の生みの親が、現場を離れてなお熱く通信市場の更なる進化、研究開発のあり方を語っている。

1939年生まれにも関わらず今も通信技術の最前線を考えているのが凄い。著者の考える携帯電話の進化は次のようなものであった。

第1世代 アナログ
第2世代 デジタル
第3世代 マルチメディアと高速性
第4世代 高精細な映像
第5世代 バーチャルな立体映像
第6世代 テレパシーのようなもの

テレパシーは本気であるらしい。

周波数の分配技術については、3次元を前提にして割り当てるから不足してしまうのであって、数学的には4次元、5次元も考えられるから、n次元で割り当ててはどうか、というアイデアもある。突飛で変わった基礎研究が重要と言い、社長時代には研究開発費を倍増させた。

「勝手なやつ」を大切にせよ、多数派戦略を取れ、多数派になれないときは逃げろ、海外は外圧として使え、知識はT字型で身につけよ、標準化がすべてではない、定額制は間違っている、などの自論が展開される。トップに立つまでの処世術や学び方、大きな組織をどう動かすかという経営論など、わかりやすく説明してくれる。

なぜ海外ではiモードが流行らないかについては、欧米には漢字がないからではないかと分析されている。小さな液晶画面では文字数が少なくても意味の量が多い漢字が重要な役割を果たしているという。なるほどと思った。こんな風に、何かの理由を考えるときに、常に技術的なロジックを考える姿勢が参考になる。

この本は基本は大企業の経営者の自伝であるが、ケータイ進化予測としても読めるし、研究開発のあるべき論としても読める。通信技術の標準化をめぐる競争やケータイ市場の未来について、現場を離れた今だから言える本音がたくさん含まれており、面白く読めた。

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2005年12月21日

できる 100ワザ ブログ アフィリエイトも楽しめるアクセスアップの実践テクニック

・できる 100ワザ ブログ アフィリエイトも楽しめるアクセスアップの実践テクニック
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お、いい本です。

人気ブロガーである田口和裕さん、松永英明さんが書かれたブログ入門書。入門書籍の名門ブランド、インプレス「できる」シリーズから出版である。ブログの開設方法や投稿の仕方といったハード的な事柄はまえがきで取り上げられるだけにとどまる。本編はブログの内容の書き方や、人気の出し方、アフィリエイトでの儲け方、継続のための楽しみ方など、ソフト面のノウハウに集中している。

ブログを作って一週間とか一ヶ月やってみたけど、誰にも見てもらえないし、何にもいいことなくて、ブログを楽しくするには、どうしたらいいんだろう?という人に絶好の本であると思う。

「インパクトのあるタイトルをつけよう」「タイトルに有名人や事件の名前を入れよう」。これだけでも随分効果があるし、「トラックバックで読者を呼び込もう」「PINGを送信して更新を告知しよう」と組み合わせれば、100人や200人の読者を呼び込むのは簡単である。本文に何が書いてあっても(変な話、本文がなくても...)、それくらいは確実にいけるはずだ。

「自分のブログ内の関連記事にリンクを張ろう」は忘れがちであるがとても有効な方法で、私のブログでも効果が実証されている。

著者はたまたま友人だったので、よく知っているのだが、著者の松永さんは特に、自分のブログの人寄せに必死だな(藁)的な人物である(笑、いやこの文脈では褒めてるんですよ!)。時事的な問題や人気タレントの話題を先取りしては、要約記事や関連記事を書いて人気を集めてきた。そのやり方がアグレッシブ過ぎて、私の周りのブロガーでは客を取りに行く積極的手法を「ことのは式」と呼んでさえいるほどである。

・絵文録ことのは
http://kotonoha.main.jp/

・ブログの「次」はこれが来る。DWS(デーサイ)=データベース→サイト化ツールの時代 [絵文録ことのは]2005/11/29
http://kotonoha.main.jp/2005/11/29dasi.html
タイトル絶妙の最近の例。

もうひとりの田口さんは音楽をはじめトレンドに詳しいライターなのだけれど、彼も人寄せがうまい。うまいというか、うますぎて大変なことになっている。

・rickdom
http://www.rickdom.com/田口さんのブログ。

・rickdom: パキシル
http://www.rickdom.com/archives/000744.html

抗うつ剤で自殺の危険増 18歳未満への投与禁止(Yahoo!ニュース)
うーん、このパキシル、僕毎日飲んでるんだけど、ほんとに止めたい。
サラリーマン時代軽鬱で通院してたとき処方されたんだけど、いまだにやめられない
何度かやめようとしたんだけど、2日飲むのを止めると、頭がピリピリしびれてなにもできなくなる。医者にも相談したんだけど、薬を売りたいためか、もうしばらく続けてみてくださいと言うばかり。
仕事の隙間を狙ってがんばって断薬するしかないんだろうな。

この記事は、薬関係に関心のある人たちがコメントを書き始めたら掲示板化してしまい、コメント数919、印刷すると200ページを超えてしまうほどの盛り上がりになってしまった。「パキシルで検索してgoogleは7個目になった」との本人談。

このような人寄せ実績のある二人が経験から抽出した100のワザ集なので、納得のいくものばかりである。「「荒らし」は放置するのが無難」という対処法なども、経験から学んだ人でないと出てこない結論である気がする。

ブログを始めたけど人気がなくて悩んでいる人はこの本のワザを黙っていくつか実行してみるといいと思う。ブログの運営のための初心者本としてオススメ。


ところで、昨年このブログは影響力のあるブログ投票「アルファーブロガー」のコンテストに選んでいただきました。読者に選んでいただけたことが大変な励みになりました。昨年投票していただいた方ありがとうございました。

今年も同じコンテストがあるそうです。第一回受賞者として宣伝を主宰者から依頼されています。

・アルファブロガーを「もっと」探せ-2005 - Alphabloggers.com
http://alphabloggers.com/
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私のブログに限らず、いいと思うブログを投票してあげてください。ブログの活性化につながる企画だと思います。また選ばれるように私もブログを強化していこうと思っています。

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2005年11月20日

仕事のヒント

・仕事のヒント
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著者はマーケティングノウハウ本でベストセラー作家の神田昌典氏。メールマガジンをベースに書籍化。読む本ではなく使う本で、困ったり迷ったりしたときに開くと、答えがそこにあるというのが売り文句。

・メールマガジン 仕事のヒント
http://www.almc.jp/

形式としてはベストセラー「すごいやり方」に似ている。著者の数十年間のビジネスノウハウのエッセンスが、約150本の短く圧縮されたフレーズとして、1ページ1つずつ解説付きで掲載されている。

・すごいやり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001597.html


個人的にはとても魅了されたり、考えさせられる含蓄のあるセンテンスが多かった。文章量的には少ない本だが、味わって読むと結構な時間がかかった。「成功哲学」色が嫌いでなければ、30代〜40代のマネージャーにとって、タイトルどおり貴重な「仕事のヒント」になりえるのではないかと思った。

収録されているヒントは「モノを売るヒント」、「経営のヒント」、「生き抜くヒント」に分類されている。内容は多彩だが、個人的にヒントとして役立ったベスト5を挙げてみる。

・5位
「利益が低いのはただ単にパッケージを売っているから。パッケージ化して冒険を売ることを考えよう。」


・4位
「商品選択基準はお客が知っているものではなく、あなたが教えるものである」


・3位
「お客は、お客の行列を見て、お客になる。あなたの商品・知識・実力を見て、お客になるわけではない。」


・2位
「白紙とペンを持って、部屋にこもる。この数時間が、最も収益性が高い時間。」


・1位
「上手くいったときこそ、まわりに感謝する。それは自分の実力ではないから。」

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2005年11月10日

マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ

・マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ
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有名な書評サイトを運営し、何冊も本を著す、大手企業のマネージャー松山真之助さんの読書マインドマップ作成のすすめ。

・Webook
http://webook.tv/松山真之助さんの書評サイト


読書ばなれが叫ばれて久しい。それは出版社にとっては憂うべきことなのかもしれませんが、本から知恵を得ている人たちにとっては、差別化の優位性がますます大きくなるということかもしれない。

ブログの秘訣の一つはネットの外からネタを持ってくることなのだと思っている。検索エンジンが高度化してネット上の話題は、皆が取り上げる。独自取材や体験をネタにするという手もあるが、書籍は比較的手軽にネタをネットにもちこめる情報ソースだと思う。

「本を読むこと=書評を出すための準備作業」とは書かれているものの、もちろん、松山さんも(そして私も)、本来は本が好きだから読んでいるだけなのだと思う。情報発信のネタとして使うというのは、この習慣をより意味のあるものに変えるためのノウハウということだろう。

この本は、読書内容を自由な連想図解「マインドマップ」形式で書き出して、ネットで公開することで、


1 読んだものを読書マップにすれば記憶に残りやすい
2 読書マップにして外に出せば(他人に見せれば)、知のネットワークが広がる
3 出せば成る(活動領域が広がる、人生の選択肢が増える)

という効用があると言うことを実体験から語り、読者にもすすめる本である。

「出すという目的があると入るものが違ってくる」

この言葉も納得で、読んだことや考えたことをブログに書いたり、人前でしゃべることを続けていると、インプットの定着率が高くなると感じている。著者が勧める「読書マップ」は、厳密にはマインドマップとは限らないようだ。誰かに内容を話すために、考えたことを書き出すことが重要だという内容である。

読書マップには、自分が感じたこと、そこから連想されたこと、関連のある本のタイトル、自分ならこうする、まったく逆の意見などを書き出していくとよいという。読者投稿から厳選した10冊の書評のマインドマップがこの本には収録されている。他人の書いたマインドマップをたくさん見る機会は少ない。どのように読書マップを書いたらよいのかが、とてもよくわかる。

この本に書いてあることは既に私も日々実践しているため、最初から最後までうなずきながら読んでいた。著者も私と同じ長時間通勤なのだが、毎日往復4時間以上も通勤時間があるらしい。私は2.5時間くらいである。通勤時間は読書タイムなのだ。なんだか羨ましい。

関連:マインドマップ

・デスクトップ発想支援ツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html

・おしゃれ会議 満員御礼に感謝 報告第1弾
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001557.html

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2005年11月09日

畑村式「わかる」技術

・畑村式「わかる」技術
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失敗学、決定学、創造学の畑村教授著。

■わかるとはどういうことか

世の中のすべての事象はいくつかの「要素」が絡み合う形で、ある「構造」を作り出している。多くの場合は複数の構造がいくつかまとまって「全体構造」を成す。そして、構造同士を組み合わせ、何らかの「機能」を持っている。乗用車ならば、いくつかの部品(要素)で製造されるエンジンやタイヤ、ハンドルやアクセルが構造で、走るや曲がる、止まるなどの機能が実現されているわけだ。

わかるというのは、次の3パターンなのだという。

・要素の一致
頭の中の要素のテンプレートと目の前の事象の要素が一致した状態

・構造の一致
頭の中の構造のテンプレートと目の前の事象の構造が一致した状態

・新たなテンプレートの構築
自分がすでに頭の中に持っている要素や構造を使って新しくテンプレートをつくることで理解すること

動的な構造の理解ではさらに次の3パターンがあるとされる。

「構成要素の摘出」
静止させた状態で構成要素を確認する

「構造化」
要素同士を組み合わせて別の大きな働きをする構造を頭の中につくりあげる

「試動」
頭の中のモデルに刺激を与えて動かしてみて現実と比較する


■逐次思考と飛躍思考、直観と直感

わかるプロセスがあきらかでも、現実の事象は複雑である。すべての要素の組み合わせを逐一考えて試していては、現実的ではない。3つの選択肢から正解を3回連続で選ばねばならないようなケースでは、しらみつぶし式では27通りを試さねばならない。これが逐次思考。しかし、3回の選択を次はAだろう、次はBだろう、次はCだろうと3回選ぶだけならば、9通りを試すだけですむ。これを著者は飛躍思考と呼んでいる。

もちろん、飛躍思考で正解を得るには全体の構造を理解できていなければならない。それには過去に徹底的にそのことについて考え、演習して答え合わせまで行う経験をしていることが大切である。経験と知識に裏付けられた飛躍思考を直観と呼んでいる。直観でわかるが理想である。

直観と似て非なるものが直感や勘である。これは刺激を受けて思い浮かべたもの。なんとなくサイコロで次に5が出るような気がするという論理的根拠がない思考だ。自分の持っているテンプレートが不完全なのに、目の前の事象と一致しているように見えて、すべての説明ができるように思えてしまう錯覚にも気をつけよという。

では直観でわかる力を鍛えるにはどうすべきなのか。

■現地、現物、現人


現代社会で本当に必要とされていることは、与えられた課題を解決する「課題解決」ではなく、事象を観察して何が問題なのかを決める「課題設定」です。課題解決と課題設定のちがいは「HOW」と「WHAT」のちがいと言ってもいいでしょう。そして何よりも「WHAT」が社会で必要とされる時代なのです。

それは本当にそうだと思う。「HOW」は今はネットで検索すれば誰でもすぐにみつけられる時代でもあるからだ。変化が激しい状況では、解決すべき課題が何なのかを見抜く人が求められている。

見ない、考えない、歩かない、の3ナイがいけないと著者は指摘する。現地、現物、現人を観察し、自分で考えることが直観を鍛える上で、大切だと結論している。逆演算の重要性という章もあったが、ネットで検索するとHOWがすぐに見つかってしまう現代では、手を動かして検算する疑い深さがますます重要になってきているように思われる。

わかるという当たり前のプロセスを根底から解き明かそうとする一冊。

・決定学の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001676.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003801.html

・「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000973.html

・「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・「分かりやすい表現」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html

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2005年11月08日

人生は数式で考えるとうまくいく

・人生は数式で考えるとうまくいく
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著者大村あつしさんが創業者として12年間、育てた会社が他人の手に渡るシーン。


調印を終え、その場を立ち去る「新社長」の後ろ姿を努めて冷静に見届けた私に、弁護士は、「最後まで立派でしたよ、大村さん」とやさしく声をかけてくれました。

しかし、帰宅した私は緊張の糸が切れたのでしょうか。悔しくて悲しくて苦しくて、ガソリンがなければ走れない自動車のように、心のガソリンが空になり、とにかく気持ちが「走れない」のです。ベッドから起き上がれない状態が数週間続きました

大村さんのことは90年代から知っていた。Visual Basicなどの解説書をたくさん書かれている(累計100万部超)ライターで元は編集プロの経営者で、日本最大のVBAコミュニティの主宰者だった。私も著書を読んでVBAを使えるようになった一人だから、お世話になっている。

・大村あつし ボクは不死鳥 - ブログ
http://www.fushicho.com/blog/

その大村さんと最近ときどき渋谷のバーで会うようになった。私のことをご存知だったので、嬉しかった。ライター出身でコミュニティ主宰者として活動し、経営者になったと言う点では私とも経歴が似ていると思っていたから。だが、上述のような会社乗っ取り事件や、駆け出し時代の苦い体験を乗り越えて、活躍されているなんて知らなかった。

表題の人生の「数式」は至って単純なものだった。

目標 − 現状 = 課題

知識 × 経験 = 知恵

このわかりやすい式に、大村さんの個人的な生々しい体験が代入される。

物事を多角的に見る知恵の説明として、フロントホックブラってどんなブラジャー?という質問の例がある。ほとんどの男性は前で外すブラと答える。ほとんどの女性は前で着けるブラと答える。前で着けるブラジャーと答えられる男性、前で外すブラと答えられる女性が、成功者になる可能性が高いのだと言う。物事を他人と違った視点で眺め、わかりやすく説明することができる人になるには知識と経験の掛け算ができないといけないということだ。

フリーランスとベンチャーを10年やってきた、似たような立場の人間として、大村さんの等身大の成功論、人生論にはとても共感するところが多かった。自ら経験した成功と失敗の両方を堂々と語っている。ひとつひとつの決断を積み重ねてきて今があることの誇り、なんだと思う。自分の信用で取引をし、自分の人生をハンドリングしている感覚を持てることはフリーランス、ベンチャーの醍醐味だと思う。そのことがいっぱいこの本には書いてある。

この本、八重洲ブックセンター 週間ベストセラー 初登場総合1位。アマゾンでもベストセラーになるなど、とてもよく売れているようだ。この前、お会いしたときには「これからはテレビを舞台に活動するつもりです」と少し突っ込んだお話も聞かせてもらった。大村さんに負けないように私も頑張らねばと思った。

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2005年10月31日

相手に伝わる日本語を書く技術

・相手に伝わる日本語を書く技術
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日本経済新聞社の記者が書いた文章の教科書。

主題の明確化から文章の構成論、文法論、陥りやすい間違い集など、基礎から正しい文章の書き方を教えている。句読点の打ち方や、複数の修飾語がある場合の係り受けの処理など、大人になると”いまさら聞けない”と考えがちな事項も丁寧に解説してくれる。

この本は書き方が教科書、参考書風なため、ここで過去に書評してきた文章読本のような楽しさはない。その代わり、解説が丁寧で網羅的なので、学習教材としてとてもよくできていると思った。毎日のように文章を書いていて、いつか改めて調べておきたいと思った事項が点検できた。

新聞記事やビジネス文書を書く際のガイドとして良書。

なるほどと思った部分をメモとして抜書き。

・文章の材料の出所

体験・観察(直接材料)
読書・聴取(間接材料)
思考(発展材料)

・中心文は段落の最後に配置すると書きやすい


ヨーロッパ語の文章では、中心文が段落の冒頭におかれることが80%近くある。これに対して日本語の文章の場合、主語と述語が密着しているヨーロッパ語とちがって、文の”幹”にあたる述語が文末にくる組み立てになっているため、中心文を段落の冒頭に置く、書き方をするにはかなりの努力がいる。中心文を段落の最後に置くほうが書きやすい。

・1センテンスの長さは42、3字が適当

第2次大戦中、アメリカ政府が心理学者、社会学者、言語学者を集めて、軍隊の指示として1センテンスの長さはどの程度が適切かを、調査させたそうだ。その結果、20語以内が理解しやすいという結論になった。日本語の文章心理学の研究成果では、一文が75文字を超えると読みにくく、42、3文字が最も読みやすいそうだ。これは具体的で参考になる数字だ。

・日本語では受動態を使わなくても文章が書ける。

基本的に日本語の発送は能動態であり、受動態は翻訳を介してヨーロッパ語の影響を受けた舶来品だそうである。

・以下はすべて間違い(このほかにも多数の事例が掲載されている)

知名度がない。利益がトントン。愛想をふりまく。いやがうえでも。押しも押されぬ。けんけんがくがく。古式豊かに。弁舌が立つ。怒り心頭に達した。白黒をつける。

関連書評:

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

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2005年10月06日

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

・わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
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わかりやすくて面白い本だ。

読解において問題なのは、「わからない」ことよりも「わかったつもり」という状態である、という問題提起がある。「わかったつもり」は「わかった」状態のひとつなので、それ以降の探索を妨害し、浅いわかりかたから抜け出すのを困難にする厄介な状態である。
わからない、わかる、よりわかるとは、この本の要約によれば、


1 文章や文において、その部分間に関連がつかないと、「わからない」という状態を生じます
2 部分間に関連がつくと「わかった」という状態を生じます
3 部分間の関連が、以前より、より緊密なものになると、「よりわかった」
「よりよく読めた」という状態になるのです。
4 部分間の関連をつけるために、必ずしも文中に記述のないことがらに関する知識を、また読み手が作り上げた想定・仮定を、私たちは持ちだしてきて使っているのです。

ということとされる。

簡単なようでいて、部分間の関連を読み取るのがいかに困難かは、この本の極めてわかりやすい文章事例で示される。どれも小中学生でもわかる平易な文章ばかりだ。しかし、読後になされる質問に答えようとすると、実は「わかったつもり」になっていた自分が露呈するしくみである。

特に読解において、文脈は大きな力を持つ。正しく読むガイドにもなるし、ミスリードの原因ともなる諸刃の剣だと著者はいう。


1 文脈がわからないとわからない
2 文脈がスキーマを発動し、文脈からの情報と共同して働く
3 文脈がそれぞれの部分の記述から意味を引き出す
4 文脈が異なれば、異なる意味が引き出される
5 文脈に引き出されたそれぞれの意味の間で関連ができることで文がわかる

文脈とは読んでいるうちにわかるものではなく、ある種の先入観として存在していることが多いと著者は指摘する。

わかったつもりの分類が面白い。なるほどと思うケースばかりだ。

・「結果から」というわかったつもり
・「最初から」というわかったつもり
・「いろいろ」というわかったつもり
・「善きもの」というスキーマによるわかったつもり
・「無難」というスキーマによるわかったつもり

たとえば文中に事例がいっぱいあると、読者は「いろいろあるのだな」という読みになってしまう。細部が読まれない。書かれていなかったことまで書いてあったと勘違いしてしまう。「地球にやさしい」や「共に育つ」のような記述があると、人は「無難」のスキーマを発動して、細部を省略したり、誤読して、典型的な理解をしてしまう、など。

この本はこうした「わかったつもり」を説明する文章事例が適切で、たいへんわかりやすい本である。文章を書く上でもミスリードを避けるためのノウハウに満ちている実践的な内容だと感じる。私が「わかったつもり」でなければ、の話だが。

・「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000973.html

・「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・「分かりやすい表現」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html

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2005年08月02日

成功術 時間の戦略

・成功術 時間の戦略
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有名な火山学者が、京都大学総合人間学部で行った「活きた時間」講義を書籍化した本。人間としてのトータルな成功を達成する秘訣として、すべての社会人に向けて書かれている。

そもそもトータルな成功とは何か。著者は、仕事、人づきあい、趣味の3つが満たされる必要があると最初に定義している。この3つの要素を横糸にして、縦糸に時間を考えなさいという。ニュートン時間とベルクソン時間という言葉が出てくる。ニュートン時間とは時計ではかれる客観的な時間の流れのこと、ベルクソン時間とは生きる密度によって感じ方の異なる時の流れのこと。ベルクソン時間で有意義な時間を過ごすことが大切だという。

時間管理の心得として、

・仕事の価値判断と持ち時間の判断、すなわち切迫度と重要度の判断を常に意識せよ。
・「頭は1日に1時間しか動かない」と考えて割り当てよ
・だが、「頭は100%使うな」

などとアドバイスされている。特に最後の100%使うなは面白い。脳を完全燃焼させるとしばらく飽和してしまう。小休止をうまく挟んで8割くらい使う状態を続けるのが、全体効率を高める秘訣であるということ。

仕事、職業選択としては「好きなことよりできること」をしなさい。好きなことは下手の横好きになる可能性が高いので、できることを仕事にせよという。そして、次のような時間管理で自分の武器を磨けと書かれている。

・とりあえず何かの専門家になる 所要時間 10年
・どこでも通用する専門家になる 所要時間 5年
・オンリーワンになる 所要時間 5年

分野としては大枠としてはまず主流に属せ。同レベルの優れた仕事をしている場合、傍流に属しているよりも主流に属している方が高く評価されるからだ。2つ目のステップで主流の中でのニッチを探し、そこでどこでも通用する専門家、オンリーワンになれば認めてもらいやすいとのこと。

引用されている故竹内均東大名誉教授の「私のいう「自己実現」は、1 好きなことをやって生きる、2 それで食える、3 それが他人によって高く評価される、ことである。」も名言。

人づきあいについては、中国の古典に出てくる言葉を引用し「貴人」を大切にしなさいという。貴人とは思いもかけぬ才能を自分から引き出してくれる人。そして「可愛げ」「律儀」が良好な人間関係(師弟関係)を育むとされる。

面白かったのは人づきあいの二対七対一の法則。世間の2割は何をしていてもうまくいく相手が2割。努力すれば可もなく不可もなくつきあえるが7割。どうやっても無理なのが1割。最後の1割については、時間の無駄なので最初からつきあいを諦めよとバッサリ。同様に難しい本は書いた人が理解できていない可能性が高く、読んでも無駄なので読むなも、参考になった。

趣味については、古典教養のすすめが主な内容だったが、3種類のオフという考え方が参考になった。余暇の過ごし方として、趣味にのめりこむオフ、ボーっとするオフ、瞑想するオフの3つがあるのだという。この3種類をブレンドし、新しく建造された船が就航前に沿岸部をゆっくり航行する「コウスティング」的なオフを理想としている。深い。

有名国立大学での講義なだけあって大局的な「王道」とは何かを教えている。しかし、誰もがこの王道を歩いておかしくないのであって、王道以外に道などないのだという気がしてきた。自力も他力も総合しながらワクワクした人生を送るためのガイドとして良い本だと思った。

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2005年07月24日

決断力

・決断力
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将棋界始まって以来の7冠達成者で現在最強の棋士、羽生 善治著。オールラウンドで幅広い戦法を繰り出し、終盤の妙手で勝利する棋風で知られる。

将棋という固有のゲームについての感覚的な記述が多いのに、科学的な情報論の知見として読むこともできる極めて面白い本。

■プロの棋士でも十手先の局面を想定することはできない

素人の考えでは、将棋は頭の中でシミュレーションを行って、何手先まで”読む”ことができるかが、勝負であるかのように思われる。しかし、高度に読みあうプロ同士の対戦では、勝負を決するのはそういう能力ではないようだ。


将棋は、どんなに机上で研究しても実践は別だ。必ず、こちらが考えていないことを相手にやられて、そこで、それに対応する。一手ごとに決断し、その場その場で決めていくのが実態だ。

その場の決断力においては経験の知恵を使って、いかに情報を捨てるかが重要になる。

「将棋には、一つの局面に八十通りぐらいの指し方の可能性がある。その八十手ある可能性の中から、まず、大部分を捨ててしまう。たとえば、八十個あるうちの七十七個とか七十八個は、これまでの経験からもう考える必要がないとわかる。そこで「これがよさそうだ」と候補手を二つ、三つに絞るのである。」

つまり何十手、何百手を読むのではなく、最初から直感した2,3の候補に絞り込んだ上で、考えている。

将棋はこの10年で大きく変わったそうだ。コンピュータとインターネットの普及で過去の棋譜データベースに誰もがアクセスできるようになり、若手の棋士たちは皆、膨大な数の棋譜を暗記してくる。すると、序盤で勝負が決するケースが多くなってきているそうだ。
そのような情報戦としての将棋の中で、敢えて羽生は、自分のやり方を次のように述べている。

「私は、早い段階で定跡や前例から離れて、相手も自分もまったくわからない世界で、自分の頭で考えて決断していく局面にしたい思いがある。」「意表をつかれることに驚いてはいけない」「データや前例に頼ると、自分の力で閃こうとしなくなる」

想定内で勝負しようとする世界では、”想定外”に対応する力が勝利の鍵になるということであり、羽生は勝つために自ら”想定外”状況を作り出していく。その決断力が強さの秘密であるようである。

■情報戦に求められる直感と集中力、仲間の信用

過去の経験を知識としてたくさん持つことだけでは不十分で、直感で次に一手の候補が浮かんでくるレベルの知恵に昇華させることが大切だと羽生は論じる。ごちゃごちゃ長く考えるようではダメらしい。選ぶことと迷うことは違う。


だが、長い時間、考えた手がうまくいくケースは非常に少ない。逆にいうと、一時間以上考えているときは、考えるというよりも、迷っている。

判断に必要な情報が多ければよいというわけではない。情報が多いだけでは逆に迷ってしまう。過去の知識を整理し、圧縮した知恵をすぐに取り出せるようにしておくことが羽生の強さにつながっている。

また直感を生み出す集中力について、その境地に至る過程を重視している。


一気に深い集中力には到達できない。海には水圧がある。潜るときにはゆっくりと、水圧に体を慣らしながら潜るように、集中力もだんだんと深めていかなければならない。そのステップを省略すると、深い集中の域に達することはできない。」「これ以上集中すると「もう元には戻れなくなってしまうのでは」とゾッとするような恐怖に襲われることもある」

狂気一歩手前まで集中を深めているときの顔が「羽生にらみ」として恐れられてさえいる。実はこの恐れられていることも勝負を決する重要要素だというから面白い。

大山名人の言葉「仲間に信用されることが大切だ」を引用して、これが必勝の秘訣だと書いている。信用とはアイツは強いと思われること。強いと思われれば勝つムードが場に醸成される。プロ棋士同士はほとんど実力伯仲なのに、勝ち負けが大きく偏るのは、仲間同士の格付けという意識が大きな影響を与ええているからだという。

■才能とは継続できる情熱

後半で感銘した一節。才能とは何か。


どの世界においても若い人たちが嫌になる気持ちは理解できる。周りの全員が同じことをやろうとしたら、努力が報われる確率は低くなってしまう。今の時代の大変なところだ。何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは大変なことであり、私はそれこそが才能だと思っている。

この文章を読んで、そうした継続できる情熱が育ちにくくなっているのが現代なのではないかと思った。情報化社会では、個人の才能はすぐに全国、全世界の統一ランキングのどこかに位置づけられてしまう。最初から上位になれる人は稀だ。大抵は何千位や何万位から始まる。それでは嫌になってしまう。

かつては統一ランキングが見えなかったので、各地域のトップ、地域の秀才がそれなりに満足して存在することができたように思う。地域のトップに到達すると、さらに上の広い世界のランキングが見えて、新たな挑戦が始まっていた。徐々に拓ける世界展望というモデルが、多くの才能を育てていたのではないか。

羽生は地域の将棋大会の広告を小学2年生のときに目にしたのがきっかけで、最初の勝負に負けたが、それから、

「十五級から道場に通うごとにクラスが上がった。今考えると、目標への達成感が、私を将棋の世界へ没頭させるきっかけの一つになったと思う」

「一つのことに打ち込んで続けるには、好きだということが根幹だが、そういう努力をしている人の側にいると、自然にいい影響を受けられるだろう」

などと述べている。

全国に対して、閉じつつ開く地域性というものが、教育において一定の役割を果たすのではないかと感じた。


・集中力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001205.html

・知的好奇心
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003573.html

・上達の法則―効率のよい努力を科学する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000645.html

2005/07/28 追記
My Life Between Silicon Valley and Japan
「コンピュータが将棋を制する日」は来るか?
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050727

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2005年06月23日

組織を変える〈常識〉―適応モデルで診断する

・組織を変える〈常識〉―適応モデルで診断する
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「組織の常識は世間の非常識」という状況になぜ陥ってしまうのか、理論的でありつつ、やさしく解説した組織論の本。最近のNHKや三菱自動車、社会保険庁のような組織の常識の破綻がなぜ起きるのか、不確実な現代を生き抜く強い組織はどういう組織かを適応のモデルを使って論じる。

■頑健な共有意味世界に生きる組織と適応性

まず組織の必要条件として「意味世界の共有」があると定義される。

「組織が共有する意味世界は、それに関与する人びとの交代によって左右されないいわば頑健性がある」

それは一般に組織の中で、常識と呼ばれ、具体的には

「常識とは、”かなり共通の対人経験”を有する人びとが客観的だと同意する事柄である」

とされる。ただし、この常識は外部の現実世界のそれと異なる。組織はそれが生きる環境自体を仮想的に創造して、組織の常識を作り出し、その内部に生きるという。


組織によって主体的に想像された環境像が実際の環境を創造し、その創造された環境が今度は組織を拘束するのである。これが常識の環境捏造性である


動植物が環境に受動的に適応するのに対して、人間組織は自らが捏造した環境に適応するのである。

組織の常識に反する新しい事態が起きると、不安になり、コミュニケーションが常識を疑う相互了解を形成する。その結果、常識の信頼性が下降して、捏造された環境自体が力を弱める。逆に言えば捏造環境が成長している間は、組織の常識も成長する。これが組織の適応モデルだという。

■未練のハードルと臆病のハードル、組織に4分類

しかし、組織が長年かけて築いた常識を、一度限りかもしれない新しい事態をきっかけにそのたび作り直していては、組織は安定することができない。過去の成功から学び取った知識はまだ有効であるかもしれないからである。そこで、組織の適応には二つの機制が存在する。

1 「未練のハードル」
不安が増大してもとりあえず今の常識を信頼しようとする機制

2 「臆病のハードル」
今の常識が軽々しく疑われたり批判されるのを避ける機制


この二つの機制により「適応は適応可能性を排除する」のである。

そして著者は、適応のハードル1と2をXY軸にして組織を4つに分類する。

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この4類型からどの適応モデルが望ましいものかを決めるには、最大利得または最小損失を理想とする意思決定論ベースの現代経営学では不足であると著者は論じる。利得の確率が不明な不確実な状況下では、どの適応モデルも同様に長所、短所があり、優劣が決定できないからだ。

そこで、著者は意思決定以前の認識の段階での適応モデルの強さを考えるべきだとし、

・組織は多様性に富んでいなければならない(必要多様性)
・よく行為する組織はそうでない組織より認識に優れる(行為の重要性)

という二つの着眼点から、現代の組織として望ましいのは試行型、性急型、慎重型、鈍重型の順であると結論した。つまり、矛盾、言行不一致、ちゃらんぽらんが、首尾一貫、言行一致、真面目に勝るということになる。

過去の経験から学びすぎず、適当に”遊び”のある組織が適応上は強いのだ。いろいろな意見を内側で活発にぶつけながらも、同時に半歩先を行く取り組みには速い、そんな組織が理想だというのは、かなり妥当な結論だなと思った。

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2005年06月20日

パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す

・パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す
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■パーソナルブランド(自分ブランド)の時代

著者はパーソナルブランディングのセミナー(2日で30万円)を年100回開催している、この分野の第一人者らしい。

・Personal Branding - Personal Marketing - Peter Montoya
http://www.petermontoya.com/

この本においてパーソナルブランドは、価値、能力、行動を象徴するものであり、「あなたは誰なのか、あなたは何をしているのか、あなたが他人と違うところ、あるいはターゲットとするマーケットに対してどんな価値を提供するのか。」を伝えるものであると定義される。

「ブランドを明確にすれば、ブランドはあなた自身を明確にする」

そしてパーソナルブランドは次の3つの印象をターゲットに与えるものとされる。

1 差別化
2 優位性
3 信憑性

パーソナルブランドに力を与えるものは、

1 感情的なインパクト
2 一貫性、
3 時間

で、つまり、肯定的な強い印象を引き起こすブランドメッセージを、一貫して長期間にわたって、繰り返し送り続けることが大切なのだそうだ。

この本のメインは成功するパーソナルブランドの作り方で、それは以下の8つのチャネルの使い方ノウハウでもある。

・得意先からの紹介
・プロフェッショナルからの紹介
・ダイレクトメール
・ネットワーキング
・セミナー
・PR
・ウォームコール(電話)
・ウェブサイト

企業と同じように個人のパンフレットやロゴも作れという。プロフェッショナルであれば能力があるのは当たり前で、能力よりも、他者に与える直感的な印象や、人間関係を重視すべきだとする。

そして、自分のパーソナルブランド構築にどれだけの費用を投じるべきか?。答えは収入の15-25%。かなり大きな比率である。

■ブログはパーソナルブランディング・メディア

Webサイトやニュースレターの話もでてくるが、ブログこそ、パーソナルブランディングのメディアなのではないかという気がしている。

ブログを書いたからといって大きく儲かるわけでもない。出版やテレビ出演のように有名になれるわけでもない。この本では「パーソナルブランドがなしえないこと」として以下の3つが挙げられていた。

・能力不足を補う
・有名人にする
・パーソナルブランドのみによって目標に到達する

だが、確実に「あなたは誰なのか、あなたは何をしているのか、あなたが他人と違うところ、あるいはターゲットとするマーケットに対してどんな価値を提供するのかを伝えるもの」としては機能する気がする。

まだIT業界に限られてしまうのかもしれないが、大企業に勤務しながら、ブログで活躍し、会社ブランドよりも個人ブランドで仕事上、名前が出てくる人も登場している。ブログが形成する個人ブランドは転職や独立後も引き継げる。名刺や履歴書以上の有効なビジネスツールとなってきていると思う。企業が「ビジネスブログ」をするだけでなく個人が「個人ブランドブログ」をする方法論もそろそろ誰か本にまとめてくれないかな。

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2005年06月16日

会議はモメたほうがいい

・会議はモメたほうがいい
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一味違う会議ノウハウ本。

ダラダラ続いて結局何も決まらないダメ会議。日本の古い村社会の寄り合い文化を受け継ぐこのやり方は、欧米流効率重視の考え方では無意味に思えるが、実は「納得によるコミュニケーション」を重視した日本の会社風土に適応したノウハウなのだというユニークな分析がまず提示される。

伝統的な農家の村落共同体では、田に水を流すにせよ、稲刈りするにせよ、構成員全員の意見の一致が必要で、多数決では決められない。だから、会議では、「納得とまではいかないけれどまあしかたがないか」的了解に全員が達するまでダラダラする。

「ダラダラ続くダメ会議は、日本人に備わっていた気質が生み出した、構成員全員に仕事について納得させるための場だったのです」と著者は効用を肯定する。つまり、会議は結論を出す場ではなく、納得を作る場だという考え方。ダラダラ会議は誰かリーダーが結論を決めてしまうのではなく、ひとつの文章を共同で作り上げる共創プロセスであると高く評価される。

そしてダラダラ会議にも効用はあるのだから、それを否定するのではなく、「ダメ会議に利用されている人」から「ダメ会議を利用する人」になることが日本の会社社会で出世して、幸福に過ごす近道なのだと、会議での立ち回りの方法論を説く。

具体的には、

(1)会議では1年黙っていること
(2)「自分は納得できない」と発言し続けること
(3)たったひとりを納得させればいいこと

という3つの戦術が詳しく解説されている。

この本の内容はこれまでの会議マネジメントの本と180度違うので、かなり衝撃を受けたが、実際、こういうダラダラ会議はなくならない以上、その土壌の上でどう振舞うかを戦略的に考えてみるというのは、個の視点としては有益だなと感じた。

無論、いくら日本的寄り合いといってもことなかれ主義に徹していては出世は望めない。だから、この本のノウハウは、孤立することなく、周囲に受容される異議申し立ての方法論が主体となっている。「それは違うと思う」をどう言い出すかのメソッドである。そうすることで全員が納得し、会議後の団結と実行効率が高くなる。

まあ、ダラダラ会議がいくら長いとはいえ半日や1日だろう。その後のプロセスがきちんと動くようであれば、ダメ会議も価値があるということか。

日本の共同体の意思決定方法をめぐり多様な考察がある。会議論というより日本文化論になっている。最近、人気の「すごいやり方」、「すごい会議」の対極にある独特な一冊。
・すごい会議−短期間で会社が劇的に変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003427.html

・すごいやり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001597.html

・会議が絶対うまくいく法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000203.html

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2005年05月10日

「稼ぎ力」ルネッサンスプロジェクト 稼ぎ力養成講座 Episode1

・「稼ぎ力」ルネッサンスプロジェクト 稼ぎ力養成講座 Episode1
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女性向け自己啓発セミナーの人気講師が書いた本。昨年末には大手書店でベストセラーになっていた。男子禁制のセミナーが多いようなので、男性にとっては本が内容を知る唯一の方法らしい。妻が買って家に置いていたのを研究のため、読んでみた。

・Mature Life Institute
http://www.womanf.co.jp/
著者の経営する教育セミナー会社。

稼ぎ力というのは、自分が蓄積してきた才能やスキル、その他ヒト・モノ・カネ・情報・ノウハウ・アイデア・発想などをモノやサービスとして世の中に提供し、お金に変える力のこと。

多くの人は自分の既に持っている資源に気づかず、不足だとして能力開発や資格取得に走るが、稼ぎ力のタネをいくら増やしても、花開かせなければ意味がない。むしろ数は少なくても手持ちのタネを確実に花開かせる人が稼ぎ力のある人だと定義される。

そして、稼ぎ力の基本が経営者人材。これは経営者ではなく自分の人生を経営する意識を持った「経営者人材」という意味。経営者人材になるには、視点、分析力、伝達力、哲学の4つが必要で、特に大切なのが視点。

なぜなら、として


視点が変われば価値観が変わる。価値観が変われば考え方が変わる。考え方が変われば性格が変わる。性格が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば.......人生が変わる

という名言が引用されていた。いい言葉だ。

そして、この視点をさらに分析してみると、

・長期的・将来的視点
・全体的・マクロ的視点
・本質的・根本的視点
・多角的・多面的視点

という4つの視点が必要なのだという。それぞれ具体的で分かりやすい語り口で説明している。男性でも勉強になる。

この本は、かつてストレスを溜めていた著者が夫婦喧嘩の末、銀行員の夫の経営者人材教育を受けることになり、それがきっかけで「稼ぎ力」を体系化して、起業するに至るまでをドラマ仕立ててで描いている。セミナービジネスの起業家の体験談としても楽しめた。

基本的には、頑張っているのだけれど結果が出なくて行き詰っている人(特に女性)向けの、ブレークスルーを提供している。

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2005年02月17日

一億総マーケター時代の聞く技術―「明日の売れ筋」をつかむプログラム

・一億総マーケター時代の聞く技術―「明日の売れ筋」をつかむプログラム
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これは本当にいい本だ。

私はこの半年、毎月のように企業で”ブログ講演”をやっている。ブログを一般の会社がビジネスにどう役立てるか、がテーマだ。どの会社も気にしているのは、コミュニティとの接点をどう管理するべきかということ。ブログはリンクやコメント、トラックバックなど外とつながるオープン機能満載である。ブログの可能性に期待すると同時に、企業の顔であるWebサイトに商品の悪口や会社への批判の声が集まって、評判を落とすことを恐れている。

企業がネットコミュニティとの間で起こすトラブルの原因はほとんどの場合、担当者の対応ミスである。知識と経験の不足である。火を消すつもりがニュースで取り上げられるような、大火事にしてしまったりする。失敗は経験者から見たらマズさ一目瞭然のことが多い。配信承諾を得ないリストに”CC”でぶしつけ広告を配信してしまったり、告知なしに一方的に利用規定を変更してしまったりするわけだ。

逆にネット対応を長年、上手にやっている企業もある。担当者自身がネットの住人として溶け込んでいて、かなり大胆な企画や発言をしても、評判は上々で、成果を上げ続ける。こうした企業はコミュニティとの間の、超えてはならない一線が見えている。何をするとコミュニティに愛されるのかを体得していて、自然にそうしたふるまいをしているから、ますます愛される。

そうしたネット対応の秘訣のノウハウ一覧がこの本である。企業とコミュニティのいい関係をつくる方法がわかりやすく、具体的にまとめられている。

■顧客の声の何を聞くべきか

インターネットの出現で企業の社員全員が顧客とつながってしまった1億総マーケター時代。「お客様は神様」かもしれないけれどお客様の声は神の声ではないとして、上手に「聞く」技術のガイドラインが示されている。

1 「意見」ではなく「事実」に着目する
2 「けなし言葉(否定)」ではなく「ほめ言葉(肯定)」に着目する
3 「意識」ではなく「行動」に着目する

意見から事実を「聞き」分けて、苦情ではなくほめ言葉を「訊い」て、意識ではなく行動を「訊く」ステップがこの本の基本思想。

そして、

ほめ言葉=ポジティブ・データ=機会発見情報
けなし言葉=ネガティブ・データ=改善情報

と分類し、「明日の売れ筋」はほめ言葉から生まれる。だから、事実にもとづくほめ言葉をたくさん聞く技術が大切だということになる。

■原理と応用

最初にいくつかの原理が紹介される。

ネガティブ〜ニュートラル〜ポジティブという軸のうち、ネガティブからニュートラルな意見Nを、インタラクションによって、ポジティブな意見に変換する「NP変換」だとか、
6つの要素(ターゲット、場面、ウォンツ、清貧、属性、ベネフィット)で顧客から声を引き出す新商品開発モデル「BMR」、接客理論の「CNAPP」など。

こうした原理をネットマーケティングの具体に次々に落とし込んでいく。

気になったところを抜粋:

・メールやメールマガジンの書き方
  全体を三部に分け、本文、冒頭20行、タイトルの順で書くこと
・アンケート質問の設計
  「この商品があったらあなたは買いますか?」などと聞くな
・ネットグルインの方法論
  参加者をアンケート回答から選ぶ方法
・メール対応
  「怒り」は引用しない、
・コミュニティでのコミュニケーション
  あいづちの可視化、流れのNP変換、「第2波」観察
・クチコミの原理
  クチコミは受信者原理。「聞き上手」、「リアルユーザ」、「商品開発者」、「ユーザの声」の4つが起点。ポジティブファクト中心に広がる。

それぞれ実際にうまくいったサンプルも例示されるので明解。

■これは一社に一冊本

少数の例外を除いて”ネットマーケティング本”の多くは、視野が狭かったり、文章が粗雑だったり、抽象的過ぎ(あるいは具体的過ぎ)て実用に使えなかったりするケースが多かったと感じている。手法にしても、クリック率の高い宣伝文の書き方だとか、サーチエンジン上位表示の仕方だとか、ゲリラマーケティング中心で、個人かSOHO企業向きのものが多かった(書き手がその立場が多いからだろう)。

この本は顧客コミュニティと良い関係を維持しつつ、価値ある情報を聞き出す手法が中心になっている。普通の会社で使いやすいはずだ。サポート返信メールの書き方から、アンケートの質問設計方法、コミュニティ運営術、メールマガジンの運用術、クチコミの利用法など、明日から使える現場の話が満載。

全体としては、文章がわかりやすく、ポイントがよくまとまっており、実例提示が多いこと。新人にとっては良い教科書になる。教育する立場の人間にとっても指導内容の整理やマニュアル作成に大いに役立つ「一社に一冊本」だと思う。私もこれは会社に置いておこうと思っている。

誰が書いたのだろうと最後に著者プロフィールを見たら、日本のネットマーケティングの老舗ドゥ・ハウスの常務さんだった。さすが...。

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2005年02月14日

NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術

・NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術
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ニューヨーク市警でハイジャックや爆弾人質事件の専門交渉役(ネゴシエーター)として22年間働いたプロフェッショナルが明かす究極の交渉術ノウハウの本。交渉術の本は数あれど、交渉に失敗すると人質も自分も生命が失われるという極限状況で培われた戦術論は一読の価値あり。迫力。

・HostageNegotiation.com, home of the International Association of Hostage Negotiators (IAHN) providing negotiator training information, classes, audio, video, articles, news, gifts and products
http://www.hostagenegotiation.com/web/HostageNegotiation_v2/default.asp
著者のサイト。Hostage Negotiation(敵対交渉)のプロフェッショナル。

交渉を成功させるには、交渉・記録・決定の3つの役割が必要で、一人で交渉を行う際にも、各役割を別物として意識せよ、という。交渉役は共感ベースで相手と接触する。背後には冷静に決定を行う役がいる。記録係は忘れられがちだが長い交渉では極めて重要で、相手の要求や態度の変化読み取るためのデータを作成していく。この三権分立が破綻すると交渉は失敗するという。

そして交渉役は、相手の話す内容には、発言、感情、価値観の3つが含まれていることを意識し、言葉通り受け取らず、その背後にあるものを常に読み取ることが大切だという。犯人の要求タバコ3本で人質を解放させた経験談など参考になる実例多数。

なるほどと思ったノウハウを3つ。

アウェイが有利:

多くの交渉術の本では交渉は自分のホームとする場所で行うのがベストだとされる。だが、著者は交渉はだましあいではないから、相手がリラックスして本音を出せる敵のフィールドこそ有利だと指摘する。「交渉は戦いと対極に位置するものだ。自分が落ち着いていることだけでなく、相手が落ち着いていることもまた重要なのだ」

妥協リスト:

冷静に交渉を進めるために紙に一本線を引いて、妥協できること/できないことリストを作れという。アナログな方法だが、人質交渉から車や冷蔵庫の購入交渉まで、このやり方が一番役立ったらしい。

同情でなく共感を示せ:

交渉役がすべきなのは相手がこちらにどう映るかを話すことであって同情を示すことではないとする。たとえば「気が滅入っているんだね」と言わず「気が滅入っているように私には思えるんだが」と言うべき。

爆弾を抱えた犯人や今にも橋から飛び込もうとしている女性を前にして、著者がどう交渉してきたか、ドキュメンタリタッチで生々しく教えてくれるのが本書の読みどころ。今は警察を退職してビジネス交渉のコンサルタントになっているそうだ。妻や自動車ディーラーや上司を相手にどう交渉するかという現実的なゴールのノウハウも多数ある。

交渉術に興味がある人なら、娯楽作品としてもノウハウ本としてもかなり面白い一冊。

関連書評:交渉、説得術

・トップに売り込む最強交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000324.html

・心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000609.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・悪の対話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002109.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000150.html

・ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000145.html

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2005年01月17日

プロマネは見た!

・プロマネは見た!
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主人公は架空のIT企業グローバルシステムズ(社員1万人)に転職したばかりの新任プロジェクトマネージャ。現場の日常の中で体験する、ヒトと組織の困った問題を33のストーリーで指摘する。

つぎつぎに出てくる、いやーな話。

・上司と部下の関係にこだわる
・責任を問われないエリート社員の失敗はなかったことに
・掲示板やMLを使って議論を始めるSE
・何でもメールで連絡してくるSE
・権力や地位に弱い事業部長

私は大企業の社員として働いた経験がない。大企業のプロジェクトに参加することはあっても、立場が「プロマネ」でなくて「社外コンサル」である。この本に書いてある風景は、ときどき見るなあ、と思いつつ、当事者でないので、疑問や怒りもわかない。ただ、大きな組織の中の論理って複雑だなと思う。社外コンサルとしてはそうした事情も理解しておかねばならないわけで、この本は勉強になった。

私が頻繁に遭遇し不思議に思うのは、プロジェクトの顔合わせで、大企業の社員同士またはグループ内同士で名刺交換をする風景だ。確かに初対面だから名刺交換してもおかしくはないのだけれど、挨拶含めて長時間に及ぶこともある割に、実は名前を覚えられなかったりする。

あれは方程式にするとn×(n-1)だ。10人、20人いたらば大変である。10人×(10-1)枚で90枚の名刺が飛び交う。20人だと380枚だ。あれはやはり無駄なんじゃないかなあ。その後もメーリングリストも作るの決まってるわけだしって、いや、私がわかってないのかもしれないが...。あ、その名刺は再生紙でしたか。失礼。

と、あまり、こういう話を広げて書くと隊長(先日の某所での再会と楽しい懇談とネクタイ批評ありがとうございました)風になるので、ここらへんで提言に向かうとして。

名刺の交換でなくてポジションペーパーの交換に変えてみるのはどうだろうか?。

・ポジションペーパ方式
http://eto.com/d/0403.html#1-wx_JFWRdTXUHIYPZXc3g
一緒に中国を旅したエトさんの説明。

- ポジションペーパとは「立場表明書」を意味する。
- 参加者各自が現在の自分の立場をA4一枚にまとめ、配付する。
- それぞれが5分づつ、そのペーパーを元に発表を行う。
- 参加する全員が配付し、発表することが重要。あらかじめ人数分コピーする。
各自がA4一枚の大きさ内で自分が今考えていること,みんなに伝えたいことを
まとめて,それを全員に一枚づつ配付する.(名刺代りにもなっている.)
こうすることによって,各自が考えていることをコンパクトに伝えられる.

この本、軽い読み物として楽しめたが、プロマネをやっている人にはただ日常が書いてあるだけ?

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2004年12月08日

面接力

・面接力
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会社や学校の面接についてのノウハウ本。面接をする方、受ける方、両者のために書かれている。受験、入社試験、プロジェクト採用、人事評価など幅広い面接に対応している。

■ありのままの自分をアピールしてはいけない

著者は外資系企業で人事部長として1000人のクビを切り、”クビ論”を書いてベストセラーになった人物。

「クビ!」論。
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著者にとって面接は狸の化かしあいであるようだ。ありのままの自分をさらけだしたりするのは愚の骨頂であり、良いところだけをうまく見せるための技術の数々が紹介されている。

「面接の達人」的技術は一通り知っている必要はあるがそのまま使ったら皆と一緒になるから、個性を発揮して差別化せよ、が基本であるが、面接官の求める個性=ありのままの自分ではないのだという。

伝統的企業や学校で応募者が多数いるようなケースでは、個性は逆に落とす理由となる可能性もあると分析されている。平均して優秀な応募者群の中から能力のない人を落とすための面接なのか、優秀な人を発掘して採るための面接なのか、見極めて対応することが大切とされている。

・ITmediaニュース:Googleのユニークな適性テスト、実は求人広告?
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0410/04/news008.html
Googleのように個性と飛びぬけた優秀さを求める企業もある。これどんな人が通過したのだろうか、大変気になる。

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?
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マイクロソフトのユニークすぎる面接問題。無敵会議に通じるものが...

■ダメージ・コントロール

一番、参考になったのは「イヤな質問」についてのノウハウである「ダメージ・コントロール」の技法。面接官は応募者に「イヤな質問」を投げかけることで本当の姿を見極めようとする。

たとえば自分の欠点や過去の失敗例を10個も挙げてみよという質問だ。これに対して、あらかじめ弱点を強みに言い換えたリストを準備しておくと効果的な受け答えが可能になるという。弱点は弱点として答えた後で、話の流れを強みに思わせるようにもっていくというテクニックである。

たとえば、この本から引用すると、


用心しすぎる傾向がある → 注意深く、正確さを大切にする人間である
まとまりがつかなくなることがある → 自由に、先入観にとらわれずに物事を考える方である
行動が遅いと言われる → 軽率な行動をさけ、注意深く行動する方である
ガンコなところがある → 一生懸命なところがあり、また首尾一貫しているとも言われる
思いやりにかけるところがある → 率直であり、直截的な裏表のない性格である
なんでもかんでもコントロールしたがる → 結果をとても重要視する性格である

といった具合。

普通、面接時には自分の強み、長所のリストアップばかりを考えがちであるが、確かに面接で困るのは弱点の方である。その対応策を用意しておくというダメージコントロールは効果がありそうだ。

読んでいて営業との共通項が多いように感じた。

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2004年11月28日

「超」時間管理法2005

・「超」時間管理法2005
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10年間毎年ユーザの声が反映されて改善されてきたという「超」整理手帳本体とそのノウハウのガイドがついたムック。以前から気になっていた。作者は超整理法で有名な野口 悠紀雄氏。

6日間の中国旅行中に、ひとつ新しい情報ツールの使い勝手を試してみようと、出発直前から、この手帳の使用を開始。使ってみて、とても便利だと結論。しばらく日本でも使い続けることに決めた。

手帳の特徴は、

・「超」整理手帳2005
http://www.noguchi.co.jp/datebook/

のオフィシャルサイトが詳しいが、私が特に便利を感じたのは以下の3点。

1 A4・四つ折という絶妙なサイズ

ほかの手帳との最大の違いはサイズだと思う。妙に細長い。A4を四つ折りにしたサイズは、ビジネス標準のA4プリントを収納しやすい。この大きさはスーツの胸の内ポケットに入れると上端が飛び出しているので、サッと取り出しやすい。A4サイズが基本で作られた収納やバッグにもピッタリ入るのが気持ちがいい。

2 自由度と一覧性の高い差込み式、ジャバラ折りシート

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超整理手帳はA4をジャバラ四つ折りにした紙を差し込んで使う手帳である。すべてのシートは差し込んでいるだけなので簡単に取り外すことができる。専用の四つ折のカレンダーは8週間が一覧可能である。メモも四つ折だと情報量が多い。また、必要のないページは簡単に取り外すことができるので、常に軽くてコンパクト。

3 インターネットと連携したオリジナル用紙

何よりPCやインターネットと相性が良い。実際、ユーザ層もPCユーザが多いそうだ。今回特に便利だったのが、オンラインの無料サービス「Paste-it」を利用してこの手帳用に3つ折レイアウトで印刷した旅程詳細を常に携帯できたこと。すぐに取り出せる上に、3日分の旅程を片手で一覧できたこと。

・「超」整理手帳2004 Paste-it
http://www.noguchi.co.jp/datebook/pasteit.php
テキストを貼り付けると四つ折レイアウトに整形してPDFに変換してくれる。PCの住所録や情報ファイルを印刷して携帯できる。

また、追加用紙はオリジナル及びユーザ投稿の考案品が数十種類も無償でダウンロードできるのも魅力。

というわけで、他の手帳にない特徴を備えている。名刺やカード、領収書やお札などを、なんでも気軽に挟み込んでおける「カンガルーホルダ」も横着物の私には便利だった。とりあえず何でも挟んでおけばなくならないのが嬉しい。

使い込んだら自分用の用紙を私も開発して公開してみたい。

ムックはこの手帳を使ってどうビジネスに活用するかのノウハウ満載で読み物としても面白かった。

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2004年10月23日

スナップ・ジャッジメント瞬間読心術

・スナップ・ジャッジメント瞬間読心術
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「パワープレイ」などの小手先心理操作術で名をはせた著者が、今度は瞬間読心術を新書で出している。心理学の論文や統計データをもとに、ジェスチャーや口癖、体型や服装から、相手の心理を読んだり、類型に分類するための診断リスト集。

・丸顔の人→迷信的
・まぶたが厚ぼったい→嫉妬深い
・耳が小さい→臆病で粘り強さに欠ける
・あごの先がほっそりしている→創造力豊かなアイデアマン
・「でも」が口ぐせ→超保守的

実用性はあるのかどうかはさっぱり分からない。当たることもあれば外れることも多そうなものばかり。ただ、読心術というのは相手の腹を読みきっているという自信が、交渉でイニシアチブを取るきっかけになるという面もありそうだ。交渉はスキルが同じなら、強気なほうが大抵は勝つわけだから、相手と状況を把握したと思い込めるのが大切なのだとも思う。
この本は文章を書く人にとって参考になるかもしれない。コラムや小説などの中で、人間を描写したいときに、動作や容貌描写で性格描写を行いたいことがある。だが、普段余程の人間観察家でない限り、何を書けば性格描写につながるか分かりにくいものだ。

例えば、次のように描写した場合、

A 彼は細く白い指で資料の数字を指差した。
B 彼は太く骨っぽい指で資料の数字を指差した

これだとだいぶ意味が違ってくるだろうし、

A うつむきがちに手を後ろに組んで彼は部屋に入ってきた
B 早足で手を大きく振りながら彼は部屋に入ってきた

やっぱりこれも印象が違うと思う。

性格と動作が一致するかどうかは分からないが、タイプAの方が繊細で、Bの方が自信家の印象を与えるだろう。文章を書く場合、どこに着眼して書くかが重要である。実際には、細く白い指でうつむきながら歩く自信家もいるのだろう。だが、そう書いたら性格描写としては伝わりにくい。スナップジャッジメントに登場する診断項目と性格分類にはこうした事例が多数含まれている。

個人的には後半の逆ジャッジメントの方が面白かった。こういう性格の人はこういう態度、容貌をしているというリスト。前半と逆である。

関連:

テレビの有名人の動きを分析した下記のサイトも面白かった。久米博のジェスチャーはそういう意味があったのか。

・人の動き研究室 人とお店のアクション分析
http://homepage2.nifty.com/ugoki/page/top.htm

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2004年10月19日

記憶する技術―覚えたいことを忘れない

記憶する技術―覚えたいことを忘れない
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記憶力を高めるためのノウハウ本。さまざまな研究をつまみぐい、エッセンスを読みやすくまとめていて、幾つか、気づきがあった。

「必要のないものは、ムリに覚えない」という章があって、アインシュタインは自宅の電話番号も、専門であるはずの光の速さも暗記していなかったという逸話が取り上げられている。必要としなければ天才でも覚えられないというのにほっとする。逆に言えば覚えようとしなくても覚えられることもある。動機づけが大切ということ。

面白かったのはかつてのエチオピアの国を上げての学習強化エピソード。90%の国民が文字が読めなかったので政府は、8歳以上の子供のいる家庭で文字が読めない家族がいる家には赤いステッカー、全員でできれば黒いステッカーを貼る運動を推進した。赤いステッカーが恥ずかしいので国民は必死に勉強し、識字率向上に成功したという。そういえば、私も講演など人前で話す直前に暗記力が良くなっている気がする。恥ずかしい思いをしたくないからで、やらないと恥を書く状況を作り出すのは手なのかもしれない。

瑣末な周辺情報やディテールを敢えて覚えることで、記憶が定着するというノウハウも心当たりがある。大学受験時に予備校で名物講師がいたのだが、この先生は試験には出ない世界史裏話をよく話してくれた。トルコのオスマン帝国では、王座を継ぐには兄弟を殺してからという法律があったこと、くらいまでは試験に出るのかもしれないが、具体的に絹の布で両方から従者が首を絞めて殺したんだよ、みたいな部分は出るわけがない。だが、実際にはこの生々しいシーンが記憶に残って、オスマン帝国のその他の事項が試験では思い出せた。

著者は記憶術の専門家でない分、この本では、自説に固まらず、幅広く理論や経験則を提示してくれるので、これは私向きかも?というアイデアが見つかる本だった。記憶力は頭の基礎体力みたいなものなのだと思う。調べれば分かるで用が済むことが多いが、覚えていればもっとクリエイティブなことができるチャンスがある。会議で統計の数字や前期の売り上げを「後で調べておきます」で決定が次回回しになってしまうことなど、惜しいなあと思う。

以前、毎回感動しながら見ていたドラマ、(アート引越しセンターがモデルの大阪人情ベンチャー成り上がり物語、藤原紀香)があるのだけれど、

・あなたの人生お運びします
http://www.tbs.co.jp/ohakobi/contents.html

このドラマでは顧客名簿を盗まれたとき、記憶力の強い社員が顧客名簿を丸暗記しており危機が回避された。実話だったかどうかは知らないが、こういう人物が社内に一人いたら、会社では戦力になる気がする。

インドでは、九九の計算を、9*9ではなく22*20まで暗記させるそうだ。日本では詰め込み教育への批判で、暗記は軽視されているようだが、基礎体力不足に陥らないと良いのだが。

関連情報:

・Passion For The Future: なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000470.html
この本はとてもよかった。名著。

・Passion For The Future: 記憶力を高める50の方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000974.html
今日の本に似ている。

・Passion For The Future: 「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001014.html
円周率暗記、元世界チャンピオンの本。

・Passion For The Future: あたまのよくなる算数ゲーム「algo」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001072.html
記憶力を鍛えるゲーム。

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2004年10月06日

40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術

40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
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「仕事は核心をつけばうまくいく」という発想から、何でも40文字に要約する習慣でビジネス力をパワーアップしましょうという趣旨の本。40文字の理由は短歌がヒント。歌人なら5・7・5・7・7=31文字に、通常文で数千字を要するであろう内容を圧縮できるから、だそうだ。40字ではひとつかふたつのことしか言えないということでもある。

第1部では、文章を短くする技術や、キーワードの見つけ方、電車吊り広告を使った要約の練習方法などが解説される。この本はビジネスマンのための要約術であって、国語の教科書とは違う。俗に言うホウレンソウ(報告・連絡・相談)に使うための要約が常に意識されている。単に短くまとめるだけでなく、要約の目的を明確にすべきという指摘に頷かされる。

要約の正解はひとつではないわけだ。事実の報告に使う場合と、交渉説得材料に使いたい場合では40文字に残す内容は違ったものになる。要約とは言葉を深くすることでもあるなと理解。深くするためには制約が必要なのだ。それがここでは40字という字数限定になっている。

要約ノウハウは、ノーレットランダーシュが「ユーザーイリュージョン」で語った外情報とコミュニケーション会話木を連想させる。相手に伝わるようにどれだけ意味を切り捨てることに努力したか、その手間こそ情報量なのだ。


最も為になったのは第2部の実践編。新聞雑誌記事、コラム、専門的文章、白書、審議会答申、セミナー、業務報告書、後輩からの相談メールなどの実例を使った要約練習問題が用意されている。ポイント解説と著者の回答例が示される。

練習問題のバラエティの豊かさを楽しみながら、私もひとつ問題を考えてみた。

「あなたのここまでの人生を40字で要約してください」

むむむ、自分で作った問題だが、答えられない。

参考:

受信したメールを携帯向けに自動で要約してくれるサービス。

約丸:製品紹介
http://www.infocom.co.jp/yakumaru/
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非常に使ってみたくて契約意欲ありで、


1ライセンスあたり 年間 3,780円 (消費税込)

月換算すると 315円!と大変リーズナブルです。

まではいいのだが、問題は「ご購入は10ライセンス単位とさせていただきます。」という縛りがあること。

10人集めるのはなかなか難しい。9人集まってもう一人というグループがあったら私を入れてください。


経験や行動履歴の漫画的要約表現
http://www2.mic.atr.co.jp/JSAI2001/papers/0087.pdf
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上記論文から画像引用。

漫画で要約する理由は、

a 親しみやすい
b 一覧性が高い
c 表現力が高い
d 時系列に沿った表現が可能

実際にユーザの展示会における行動を漫画に要約するシステムを開発した研究報告。すべてを漫画で読めたら面白すぎ。

・Passion For The Future: テキスト簡単化と図表化のテクノロジー
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000692.html

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2004年08月25日

超時間活用ノート―あなたに「成功グセ」がつく単純化システム

超時間活用ノート―あなたに「成功グセ」がつく単純化システム
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■タイムマップで時間と空間の一元管理

著者のジェリー・モーゲンスターンは整理整頓のコンサルティング会社の社長。

・Julie Morgenstern: Professional Organizer, Author, Speaker
http://www.juliemorgenstern.com/index.html


ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、幹部クラスの人が散らかった机や整理されていないファイルから書類を探すために、年平均6週間を無駄にしているそうです。つまり控えめに見積もっても、一日1人あたり一時間を無駄にしている計算です。

1年間に6週間分の仕事の差は大きい。整理整頓コンサルタントらしい出だしで、まず身辺を整理しておきましょうから始まる。

超時間活用法は、時間と空間の整理術である。独特のスタイルのタイムマップ(時間割)を作ることから効率化は始まる。人生の主要分野と大きなゴールを明確にし、それに向かう活動を具体的に書き出し、分類する。月曜から金曜までの曜日をヨコ、時間帯をタテにした時間割の空間に、活動を割り当てていく。時間の枠を時間箱と呼ぶ。

時間箱内にはできるかぎりひとつの分類テーマの活動に集中させる。空間の整理と同じように、いかに時間箱に活動を整理できるかが重要だという、時間の空間型整理術である。
タイムマップを作り運用する際には、SPACEの公式がある。

SPACEの公式とは以下のようなステップである。

Sort(分類する)=用件をふりわける
Purge(浄化する)=用件を切り捨てる
Assign(割り当てる)/Containerize(封じ込める)=時間を「時間箱」に収める
Equalize(調整する)=オーダーメイドの時間術を見つける

自分の大きな目標達成のために必要な事柄を時間箱にきちんと割り当てていれば、自然にいくつものゴールを達成できるとする。

■活動エネルギーのリズム調整

この本では、管理すべきリソースのひとつに「エネルギー」が挙げられている。活動エネルギー=やる気のこと。そのために「普段うまく処理できていることを書き出す」方法論は参考になる。

例えば以下のようなフォームに答えてみなさいという。

どんなに忙しくても、いつも時間を作って【     】します。
目標がはっきりしているのは【     】に関してです。
処理時間を把握しているのは【     】です。
ぐずぐずと引き延ばしたりしないのは【     】です。
絶対に遅れないのは【      】です。
複雑なプロジェクトにかかれるのは【     】の時です。
いつも切り替え時間を設けているのは【     】の間です。
簡単に断れるのは【     】の時です。
締め切りを守るのが苦にならないのは【     】の時です。
最高に幸せと感じるのは【     】の時です。
気軽に人に任せられるのは【     】です。

この穴埋めフォームで引き出される”うまく処理できていること”を日常業務の中に取り込むことで、エネルギー充電効果が働いて、リズムを調整できる。冷蔵庫を片付けることで心が安らぐ人は仕事の合間にそうしてみなさいという。

結局、時間を割り当てても、やる気が起きなければ、良い成果が出ないわけだから、エネルギーのリズムを同時に考慮することは大切なのだろうと思った。

■強制イベントに割り当てるのはグッドアイデアかも?

私は時間管理が下手なのだけれど、このブログでひとつ学んだことがある。毎日の力はすごいということ。もうすぐ1年のこのブログは、いつの間にか300本以上の記事がある。書評も150冊を超えた。内容の質はともかく数は、我ながらよく読み、書いたなあと思う。2ヶ月休んでいいから一度に読んで書けといわれても絶対にできそうにない。これはタイムマネジメントの成功例と言ってもいいのじゃないだろうか。

読書をする(=電車の移動時間に割り当て)、ブログを書く(=寝る前に割り当て)。どちらもきちんとタイムマップに収まっているからできていると自己分析している。”電車で移動”も、”寝る前”も、必ず発生する強制イベントだというのがポイントのような気がする。読書は午前中の手が空いた時、ブログを書くのは午後のどこか、とやっていたのでは、おそらくできない。

強制イベントの前後に割り当てるという点では、

・トイレに置いたメモにアイデアをひとつ書いてから出る
・通勤途中の本屋で営業本の見出しを立ち読みする
・PC起動中の合間に雑誌記事をひとつクリッピングする

なども有効なのかもしれない。毎日は3年続けると1000を超える。大抵のものは、1000個は価値になる。1000に3つの法則なら、3個は素晴らしいものが含まれていることにもなる。

ブログの更新ペースと同じ速度で営業や経営のあらゆることを処理できたら、私はとっくに大成功していそうな気がしてきた。毎日、毎時間を強制イベントで埋め尽くしたら、大統領のように働くマシーンに変身できるのかもしれない。

(過労死しそうだけれど。)

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2004年08月01日

無限のセールス―あなたは「真我(本当の自分)」にめざめていますか?

無限のセールス―あなたは「真我(本当の自分)」にめざめていますか?
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凄い本である。ある種宗教。著者は、1951年北海道生まれで15歳で単身上京、社員食堂の皿洗いをしながら定時制高校に通い、その後、宝飾品セールスで日本一、教育プログラム営業で世界一を達成したそうである。「ステーキのくいしんぼ」社主で、チェーン開業と全国70店舗展開の実績を持つ。即ち、たたきあげである。

セールス、営業には上昇ステップがあって、次のようなレベルに分かれているという。

訪問恐怖症レベル

説得技術レベル

蛙の面に小便レベル

自己成長を目ざすレベル

方便自在のレベル

真我の愛のレベル=真実のセールス

無限のセールス

最初のうちは断られて落ち込むが、なんでも超プラス思考にとらえることにより、断ってくださったお客様のおかげで、「学びがあった」、だとか、「成長できた」とか、「大切な営業時間が短縮できた」とか、積極的にとらえろというのが、この本の趣旨。

むしろ、断られたらラッキーだとする。断られて「歓び」を感じ、売れたとき以上に嬉しくなる状態を作れ、というのだ。そうすれば、売れたら嬉しい、売れなかったらなおさらう嬉しくなって、セールスが楽しくなる。著者のノウハウの中心は件数なので、とにかくモチベーションを高めて、営業することが重要なのだ。

他の営業ノウハウとの違いは、


営業を通して、本当に自分の人格が良い方向へと変わっていくこと。人生観が変わり、人間が変わっていくこと。

だそうである。

無理のあるプラス思考は否定しており、「そう思う」のではなく「そうとしか思えない」ほどの超プラスの世界へ入れと説く。そして、最終的には真我の営業に至る。「それはすべての時間や空間を超越した世界である。一切の壁がない。無敵の世界である。それは光の世界といってもいいし、愛の世界といってもいいのである」。そして究極は、光の世界の人間になることで、闇の世界の=断る人が、断ることができなくなる。闇は光に勝てないからだ。自然にモノが売れてしまう。仏様みたいになれということか。

人類や宇宙という言葉も出てきたりして、スケールの大きな営業ノウハウである。

同じ著者が、ドキュメンタリタッチでさらに熱い本も書いている。

復活のセールス―6カ月で売上20倍!“どん尻営業マン”が変わった衝撃のノウハウ
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営業の「ダメ集団」が「燃える軍団」に生まれ変わった!!やる気なし、覇気なし、実績なし、おまけに営業マンとしてのマナーもなし。あるのは、会社に対する不平不満だけ……そんなダメ集団、烏合の衆、リストラ寸前の冴えない男たち(失礼、ちょっといい過ぎた!)が、たったの六ヵ月で約二十倍の売上を達成し、全国三十五の支社中で堂々一位の座に着く!

こちらも楽しめた。茶髪の反抗的な若者や、やる気のない中年の新人営業マンを、一ヶ月の合宿で、どうデキル営業マンに育てたかの実話ベースの汗と涙と真実の物語。熱い。


営業には、理屈じゃない部分があるのだろう。どんな知識を得るかではなく、どうその境地に至るか、みたいな部分では、この著者の本は面白い気がしている。知識と話術が巧みすぎる営業マンより上の、営業マンがありえるというのが趣旨なのだろう。

この2冊には理屈もノウハウもかかれていないのだが、そう無茶なことを言っているわけでもないように思えてきた。

モチベーションが比較的高い状況で、さらに高めるために、とにかくアツイ営業本が読みたいというときに、おすすめ。

・著者のサイト 佐藤義塾
http://www.shinga.com/

佐藤義塾は、心理学博士・神学博士の佐藤康行が「本当の自分(=真我)」にあなたが出会うためのお手伝いをし、あなたのあらゆる悩み・問題の解決や営業力アップ、業績向上など仕事での成功、あなたの生きる使命を発見する"心の学校"です。」

一度この人の講座でてみたいな。怖いのかな。

この人ではありませんが、「地獄の特訓○○日」とか出た方いますか?

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2004年06月30日

「挫折しない整理」の極意

・「挫折しない整理」の極意
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106100673/daiya0b-22/
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人類の歴史は狩猟採集時代の整頓の時代、農耕開始以降の収納の時代、工業化以降の整理の時代を経て、現在は新・整理の時代だと著者は現代を定義する。そして、モノが休むことなく入ってくる時代に整理=秩序では崩壊して当たり前だとし、新しい整理術を提案する。

モノは整理しておしまいではなく、「出す」、「使う」、「しまう」という一連の流れの中で活かしてこそ価値がある。従来の図書館型分類による整理では、動きがとれなくなる。モノが活かせなくなる。

著者は、モノを材料モノ、道具モノ、愛着モノの3つに分けて、それぞれの整理法を解説していく。モノの2つの状態、モノの3つの種類と整理法、整理の2つの原則という概念がベースとなる体系だが、要点は次のようなノウハウ。

1 直線型で流れる材料モノを”流れ路”で整理する「時間軸整理法」
2 居着き型で動く道具モノを”居場所で整理する”「空間的整理法」
3 回遊型で移動する愛着モノを”優待席”で整理する「愛着度整理法」

使えば使うほど片付いて、自分の用途に最適化された状態になる、というのが特徴としている。

私も整理がヘタで、机の上は常にちらかっている方なので、新・整理の方法はかなり参考になった。材料モノが私の場合、特に多い。材料モノは日常活動の維持に使うモノで、食材、情報材、環境材などがあるとされる。情報材(本、新聞・雑誌、DM、手紙など)が特に私の問題だ。

著者は材料モノの「流れ路」の最終地点であるゴミ箱が大切だと指摘する。大きなゴミ箱がいいという。我が家にも早速大きなふたつのゴミ箱を調達した。これで様子を見てみよう。

参考:
・ゴミ箱評価サイト/CLEAN BOX
http://members.jcom.home.ne.jp/f_h/clean_box/

家の、街のゴミ箱を写真つきで辛口採点しているサイト。すごい数のゴミ箱評価がある。

そういえば、バーチャルな意味でのデスクトップも、ドラッグできるゴミ箱(あるいは保存フォルダ)が大きいほど片付くかもしれないなと思った。と、思ったら、やはり同じことを考えて実行している人がみつかった。アイデアをカタチにしている。偉いなあ。

・ゴミ箱巨大化計画
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/6494/mytrashcan.html
MyTrashCan_SSM.jpg

巨大ゴミ箱ソフト。

だが、私は普段、デスクトップのゴミ箱機能を使わない。大抵のファイルは捨てないでとってある。メールも捨てることはまずない。アイコンが散乱気味になると、デスクトップに「040629」のような年月日のフォルダを作っては、そこへすべて放り込んでいる。すべて全文検索ができるようにすると、非常に便利に使える。ファイルは時間軸管理がベストだと思う。

研究レベルではさらに進んだ整理法もある。ソニーCSLの暦本氏の提案するタイムマシンコンピューティングなどは先端例だ。デスクトップの状態を記録し、いつでも任意の過去のデスクトップに戻すことができる。フォルダの概念をなくし、時間軸のどこかにあるファイルを探すことになる。外見上、ゴミ箱は存在するが、システムはファイルは削除せず、過去の時間軸に結び付けて仕舞われている。これがあれば、デスクトップが散乱したり、間違って重要なファイルを捨てたりしても、ノープロブレムである。素晴らしい。

・Time-Machine Computing
http://www.csl.sony.co.jp/person/rekimoto/tmc/
s_tsdesktop.jpg

おっと、話が書籍からずれたけれど、この本は整理について、新しい視点を与えてくれる良い本だと思う。終盤は、整理の仕方というのは、つまりは価値観であり、生き方なのだよと教えてくれる。ちょっと感動。

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2004年06月17日

知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代

知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代
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■SECIプロセスなど基本のサマリー

ナレッジマネジメントの重鎮、野中氏、紺野氏の共同執筆による入門書。

そもそも何故、知識経営なのか。

冒頭で、マイクロソフトとコカコーラの例が挙げられる。この二つの企業は企業規模や売り上げでは、世界の大企業の中で中位なのだが、時価総額ではトップ10に入る(この本の執筆時点)。ブランドやソフトウェアという知識資産が、規模や売り上げ以上に、市場に高く評価されていることになる。そして、知識ワーカーが知識を生み出し続ける企業が21世紀の経済の主役となると多くの経営者がアンケートに答えている。知識が名実ともに、企業経営の中心となったのだと始まる。

KMの大家である野中郁次郎氏のSECIプロセスはあまりに有名で、大抵のKMの本に引用されている。知識には、文書や言葉になった形式知と、職人の熟練のような言語化できない暗黙知の二つがあるとし、組織における知識創造のプロセスは、ふたつの知が、次の4つの段階を螺旋状に上っていくプロセスだ、という理論。

共同化 身体・五感を駆使、直接経験を通じた暗黙知の共有、創出
表出化 対話・思慮による概念、デザインの創造(暗黙知の形式知化)
統合化 形式知の組み合わせによる新たな知識の創造(情報の活用)
内面化 形式知を行動・実践のレベルで伝達、新たな暗黙知として理解・学習

とても完成度の高い理論で、これはそのとおりだなと思っている。

情報システム主導によるKMは、統合化ばかりを強化しているのが弱点だと思った。この知識スパイラルをまわすためには、4つのプロセスがバランスをとらないといけない。個人の内面や、個と個の間(人間、ジンカン)あたりがポイントなのではないかなと思いながら、読み進めた。

■「知識とは信念である」

この本では、たくさんの理論や要素のリストが紹介されているのだが、なるほどと思ったのは二つある。

ひとつは知識とは信念であるということ。このセンテンスについては、昨年、日経BPの連載でも一度書いた。


ナレッジマネジメントの権威、野中郁次郎氏の著書の中で、知識の定義のひとつとして、「知識とは信念である」というセンテンスがあった。知識とはそれを持つ人にとっては、これまでのところ正しい「真」であり、信じていることだ、とし、この性質に「正当化された真なる信念(Justified True Belief)」という呼称を与えている。別の学者の「行動のための能力(Capacity To Act,K.Sveiby)」という定義も同時に紹介されていた。[橋本大也]

私たちは、知識を行動の原理として使う場合、その知識が正しい、少なくとも最善だ、と思っているものだ。だが、この場合、客観的な正しさや論理的な正しさは必ずしも求められていないように思える。

この続きは詳しくはこちらで。

・情熱的な発信者と知識の影響力
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031111-01.htm
思い込み知識のパフォーマンス、モチベーションと情報感度、その強化方法、ITと個の影響力の範囲拡大、ポスト・デジタル・デバイドの丸裸の個人 影響力を持つ知識の使い手の戦略、悪貨と良貨を見分ける難しさと必要性。

■場と愛嬌

もうひとつは場こそ重要だということ。

表出化の場として会議やお喋りという対話場がある。「対話場は情報システムを介して創出することも可能です。ただし、対話の場自体がサイバー・スペース上にあるのではなく、チームやグループの考えをまとめるのに情報技術を活用するというのが有効な方法といえます」という。当たり前の話であるが、これはKMシステムの導入担当者がしばしば間違う所だと思う。政治家がハコモノを重視してしまうのと同じように、KM担当者はまずシステム主導の知識マネジメントを考えがちである。使われない社内掲示板が作られてしまう原因はここにあるだろう。

対話場というのは、自分や他人から情報を引き出すインタラクションの場である。そうした場は設計が難しいと思う。上から場のレイアウト、テンプレートを与えても、それだけではインタラクションは起きないものだ。例えばどんなによく設計された会議室であっても、意識統一のできていないメンバーを入れてしまったらアウトプットはでない。

私が場の技術でポイントになるのではないかと考えている要素に「愛嬌」がある。知識による理論武装などという言葉があるように、知識や信念に固まった人間同士は、知らず知らずのうちに、鎧を着てしまっているのだと思う。この鎧を溶かすのが「愛嬌のある人」なのではないかと思うのだ。

・放っておけない
・見逃せない
・ホロリとさせる
・ツッコミたくなる
・微笑ましい
・良い意味でのバカ

真の”ファシリテーター(会議の促進者)”とは、場のレイアウトを外や上から与える人ではなく、参加者と同じ視点から、場の雰囲気を、今あるものから、あるべきものへと連続的に変容させることのできる人であるような気がしている。そのはたらきを強く持つのが愛嬌だと思うのだ。愛嬌は知識インタラクションの呼び水であり、アフォーダンスであると考えている。

「知識がある」、「やる気がある」だけでなく「可愛げがある」人、「バカになれる人」を組織に増やすことが実はナレッジマネジメントの重要なポイントになるのじゃないか、そんな風に最近、考えている。そういえばブックオフの本にも「顔を赤くして必死にプレゼンするバカこそ採用すべき」なんてことが書かれていた。少し関係があるかもしれない。(この本の論旨とはだいぶズレた)

この本は、KMの理論や要素リストが多数紹介されており、頭が整理される。入門書としてとてもよい本だなと思った。

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2004年06月07日

決定学の法則

決定学の法則
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著者は東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏。企業組織の失敗を分析し、学会まで設立された「失敗学」に続き、「創造学」を提唱してヒット、次は「決定学」で最善の解にたどり着くための体系的な頭脳活用システムを語る。

機械工学科出身の著者は、設計図がどのような決定プロセスで作られているかを分析した著書を持ち、その経験を一般化して、組織や個人の意思決定を理論化している。創造学や失敗学でも取り上げられた「思考平面図」「くくり図」「思考関連図」「思考展開図」などのキーワードが再登場する。

■おもいつきを重ねて思考平面に転写する構造選択

人間の思考には、知識、山勘、経験、生き方、好みなど幾つかの、次元の異なるレイヤー(思考平面)が存在し、ここに何らかのテーマが与えられると、各平面で脈絡なくバラバラに要素のつながりができあがる。日常の言葉で言うなら「おもいつき」で、イメージ的にはマインドマップに近い。

このバラバラの孤立分散したレイヤーを重ね合わせ、最も下にある思考平面図へパターン転写することで、決定に向けた統合を行う。転写される際に、経験のレイヤーは大きな役割を果たす。

著者は、決定の本質は選択であり、以下の3つのパターンに分類できるとする。

・単純決断 やるかやらないかを決める
・単純選択 選択の結節点に集まる選択肢の中からひとつを選ぶ
・構造選択 複雑な選択肢の分岐構造から、全体として一つの道筋を定める

特に構造選択が、現実の決定に近い。企画立案や戦略決定も、単純決断や単純選択の数はさほど多くはないからだ。やることは決まっていて、直近の選択内容も明白なのだけれど、ゴールにいたるまでの道筋をどう描くかこそ重要な問題なのだということ。

どれだけ豊富な選択肢の中から、ある構造が決定されたかというプロセスの質が、決定の質において、重要なのだと著者は言う。豊富な経験や知識がある人間は、たくさんの選択肢の中から、適宜、最適な構造を選んでいるから、外部要因による、かく乱に対しても、安定して効果的な解を選ぶことができる。

また、同じ道筋が使われれば使われるほど強くなる脳の情報伝達経路と同じように、経験や知識が豊富になると、ある構造決定にいたる道筋を太くする。潜在的な選択肢の数が多いだけではだめで、著者が”活線状態”と呼ぶ、アクティブなリンク構造の数が、決定の質に大きく関わるとする。生きた経験や知恵が重要だということか。

■人、モノ、カネ、時間、気、十七の経験則

決定に付随する5つのテンプレート「人」「モノ」「カネ」「時間」「気」についての一般則があるという。人、モノ、カネは、物事の流れを説明するのに、よく聞く組み合わせだが、「時間」と「気」は新しいと思う。決めるまでの時間や時期が「時間」要素、決定プロセスを取り巻くムード、モチベーションが「気」の要素である。

時間内で確信の持てない判断の連続がビジネスだと言えるので、ここで分析される、決定における迷い、心理ポテンシャルをどう乗り越えるか、は本質的なテーマだと思った。そうした現実の決定のケースとして吉野家の価格決定プロセスが挙げられる。最初に著者が公開情報から、こうした決定プロセスがあったのではないかと仮説を立てて、その後、吉野家社長本人にインタビューして検証する。研究室を飛び出しての、分析が活き活きとしている。

最後に「成功のための十七の経験則」として、理論でない、ノウハウがまとめられている。「論理は跡付け」で好き嫌いの気分で決めていることを認めよ、それ自体が悪いわけではない、とか、「成功に必要な条件が満たされることは絶対にない」自分で決めることが大切など。

選択肢の見えない不完全情報下で、迷いながら、個はどのように決定を下すべきか、そのノウハウは何か、理論と実践で迫る本。同じ著者の失敗学か、創造学について一緒に読むと理解が深まる。

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2004年06月06日

まずこのセリフを口に出せ!!ビジネスハンドブック

まずこのセリフを口に出せ!!ビジネスハンドブック
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先日、紹介した「すごいやり方」は反響が大きかったが、これもまた同類の本。声に出して読みたい日本語、3色ボールペン情報活用術、会議革命など、ビジネス本のベストセラーを連発している斉藤孝氏の近刊。

この人は出版不況の中で、年間何十冊も本を書いては、ベストセラーに食い込み続ける。出版界の寵児、救世主といってもよさそう。ノリにのっている人物が、今まさに実践している方法論というのは、気になる。

で、この本は、そのノリの部分が純粋に解説されている。

なるほどね、と思ったのを5つばかり紹介すると、

・ポイントはこの3つです
・じゃ、四十五秒でプレゼンします
・座標にして説明します
・具体的かつ本質的な質問いきます
・すみません、少し体ゆすります

「ポイントはこの3つです」は3色ボールペン情報活用術のプロモーション要素がありそうなのだが、これは、確かに効果的な感じがする。私もこれは年中やっている。事前に3つを考えていなくても、とりあえず「ポイントは3つ」と口に出して、ホワイトボードに箇条書きの点を3つ打ってしまうと、そのままスムーズにアイデアが出てきたりするなあと、納得した。

こういうセリフを先に口に出すのって、メールでも可能だと思う。

かきあぐねているメールがあったら、とりあえず、

「まず、ポイントは以下の3つです」

「それは、200字で説明するとこうです」

「座標に整理するとこうなって、」

「...までに...をやります」

と、セリフで構造のアウトラインを書いてしまって、後から内容を埋めるというやり方。ときどき、実践しているのだけれど、結構、うまくいく。

この本と、「すごいやり方」との違いは、あちらはセリフがメインで、解説はおまけ程度だったのに対して、こちらは解説のほうがメインとなっている。内容的には、こちらの方が、基本編かなと思う。

時期的には、五月病からの脱出を狙う、新入社員に特におすすめ、かな。

関連情報:

以前、この本については、日経BPの参加している連載で諸先生方と議論したことがあります。こちらも面白いのでぜひどうぞ。

・橋本講座・第五弾「口癖と生産性」(私の問題提起)
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20040308-01.htm

・第五弾へのコメント1---口癖を縦と横に分けてみる
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20040310-01.htm

・第五弾へのコメント2---頭の中で自分に言う口癖は、精神衛生の維持にはかなり有効
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20040311-01.htm

・第五弾へのコメント3---「たとえば」「言い方を変えると」「今すぐという話じゃないんだけど」
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20040312-01.htm


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2004年05月25日

すごいやり方

すごいやり方
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タイトルに偽りはないと思った。

薄くて30分で読めるが、内容を自分のものにするには何年もかかる、ビジネスブレークスルーのエッセンスが濃縮された本。

著者はコーチングのスペシャリストの大橋 禅太郎氏と、元インターネットマガジン編集長の倉園 佳三氏。あとがきを見ると、この内容の発想には、百式管理人も関わっていたらしい。

31個の、他人や自分を動かすセンテンスが、解説される。

たとえば、

・いま、うまくいってることはなに?
・5秒で答えを出してみて。
・ヤバイ話をしてみない?

など。

そして、これらの言葉をどういうシチュエーションで使うと効果的かの説明が1ページずつある。ただ、それだけなのだけれど、どれもツボにはまっている言葉が多くて、毎ページ、うなずきながら読んだ。

最も感銘、感動したのが、「くだらないアイデアを5個言ってみて。」。企画や原稿のネタに困ったとき、これは特効薬になることがあると私も思っていた。”煮詰まる”という状態は、ビッグアイデア、大正解を探さなければいけないという強迫観念に自分自身を追い込んで、にっちもさっちも行かなくなった状態なのだと思う。そういうときには、ベストでグレートでなくてもいいから、おもいつくことを5つくらい、口に出してみる、書いてみるのが突破口になる。

この本は、コーチングが好き、ポジティブシンキングが好きという人に特に向いている。私も好きで過去2回ほどコーチングを受けてみた経験がある。コーチの巧みな誘導に、いつのまにか、頭の中が整理され、やることが明確になったり、やる気が出たりする。このコーチングの妙は、結局、こういう言葉をどう使って、自分の心理や、場の雰囲気を前向きに変えるか、の技術にあるのだと思う。

そのエッセンスが900円で30分で読めたら、安いかなと満足。センテンスが書かれた、綴じ込みのポスターは壁に貼っておこう。

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2004年04月25日

メモが上手になる技術

・メモが上手になる技術
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メモのノウハウ本。著者は成功したコンサルタントで経営者。140冊以上の著書を持つ。1929年生まれということは70歳を超えている。内容は箇条書き的メモから組み立てられた形式で平易な文章で書かれている。分かりやすい。だが、ひとつひとつのノウハウは、数十年間の実践から得て語られているわけで、当たり前の記述にも深さを感じながら読んだ。

・著者の略歴
http://members.jcom.home.ne.jp/yahagi1/Ryakureki.htm著者のプロフィールなど。

私、結構なメモ魔だと思う。毎日、リーガルパッドに4色ボールペンで、こんな風に何枚かメモを取る。A4サイズで大きいので、電車で広げていると、隣から覗き込まれたりもするのだが、気にしているとできなくなるので、構わず書き続ける。このブログが続いているのも、このメモのおかげである。


・私のメモ 機密事項を達筆文字暗号で保護しています。(嘘です)
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クリックで拡大

日常的にメモを多用するにも関わらず、これといって、メモの書式は決めていない。知らないノウハウが何かあるのではないかと期待して、この本を読んだ。いくつか発見できた。

著者は、メモは、忘却、間違い、浅い考えの3つの損を防ぎ、新しい創造のために取るものと考えている。文字、図、グラフなどを多用して立体的にメモを取れ、講演セミナー、読書、インタビューなどシーン別ではこうやるといい、留意すべきポイントはこれだといった感じで、メモ術とその心構えが解説される。

個人的には、7W2Hでメモを取れだとか、どの部分のメモを取れ、といったWhatの部分は勉強にはなったが、そこは人それぞれ違うと思う。むしろ、面白かったのは、ツール的な部分が具体的で非常に参考になった。

著者は、速くメモを取る方法としてオリジナルの速記術を推奨している。速記術には「早稲田式」「中根式」「衆議院式」「参議院式」などのさまざまな方式があるそうだが、どれも習得が大変である。書いたものを速記技術のない他者が読むことが難しい。そこで、著者は、カタカナを崩した略記をつくり、少しの練習で憶えられ、同時に他人も読むことができる矢矧式速記を考案した。PalmのGrafiti入力方式に似ている。試してみる価値がありそうだ。

この本に少しだけ触れられていたミウラ折メモ用紙も興味深い。ネットで調べてみた。この折り方は宇宙で利用する太陽電池パネルなどに採用された特殊な紙のたたみ方で、これを使えば一枚の紙が無駄なく便利に使えるメモ用紙に早がわりする。いつものメモ用紙がないときに、これは活用できそうなノウハウだ。

・宇宙工学に貢献している!ミウラ折とは
http://www.orupa.co.jp/miura/miura.htm

・驚異のコンプレッション・テクノロジー「ミウラ折り」の路線図!
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/todays_goods/12118.html

著者は70歳であるにも関わらず、インターネットやパソコンにも詳しいようで、ページ数は少ないものの、オンラインソフトの一覧表など濃い話もある。実際にやってみせた達人の話を聞くのは面白い。軽めの本で、一本のセミナーを聞いた読後感のする本である。1時間半で読めた。メモについてアイデアが欲しい人におすすめ。

ところで、メモというのは非常に私的な世界でとどまっていて、ノウハウが広く公開されることは少ないと思う。身近な人のメモも、のぞきこむと悪い気がするから、何を書いているのかは知らないことが多いだろう。実は昨日、ある会合で百式管理人の田口さんのメモを見る機会があった。彼は、メモでToDoリストを管理しているのだが、とてもノウハウに満ちたやり方だったので、そこにいた一同、驚いた。多忙な中、2冊同時出版と毎日複数サイトの更新ができる、彼の生産性の高さの秘密はこれか、と思った。彼の許可と機会があればまたここでも紹介したいなあと思う。

関連情報:

・社団法人 日本速記協会
http://www.h2.dion.ne.jp/~sokki/

・電子速記研究会
http://hayatokun.cloverclub.com/index.html

・National Court Reporters Association
http://www.ncraonline.org/

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2004年04月12日

1分間ですべてが決まる!

・1分間ですべてが決まる!
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著者の吉田たかよし氏のプロフィールがひとつのコンテンツである。


日本で初めてNHKアナウンサー、医師、衆議院議員・公設第一秘書を歴任。灘中学、灘高校、東京大学卒業。東京大学大学院を修了し、NHKアナウンサーとして活躍。医師免許を取得後、元自由民主党幹事長・加藤紘一衆議院議員の公設第一秘書として科学技術政策の立案に挑む。現在東京大学大学院。医学博士課程に在籍中。医師の立場から日本健康教育振興協会・理事長として予防医学の普及活動に取り組む一方、自由民主党神奈川県連・常任顧問として連立与党、小泉政権を支えている。

無節操なまでに上昇指向の高学歴、高キャリア。財前教授も真っ青である。

秀才児がそのままスクスクと育つとこうなるのだろうか。いわゆるデキル人の代表選手。
次は国会議員を狙っているのは間違いなく、いずれはその夢も適って大臣程度にまで登りつめるような気はする。

この本は、著者が数々の難試験を合格し、社会で華々しく働く間に身につけた、1分間の勉強法を語る。例えば次のようなノウハウが紹介される。

1分間記憶法
1分間読書法
1分間報告法
1分間ブロック法
1分間自己アピール法
1分間スピーチ法
1分間決断法
1分間休憩法
1分間で人を見抜く法
1分間自己改造法

1 時間はないという前提を意識せよ
2 とにかく1分間で集中して○○をせよ
3 工夫はいくつかある

ということが大意に読める。

この人は基本的に頭の回転が異常に速いタイプであるから、集中できれば1分間で、いろいろなことが、とても高いレベルでできるのだろう。ただ集中の内容は記述が薄い。常人にはもう少しその集中力のプロセスを書いて欲しい部分もあった。

ただ、この著者のやり方は正統で正論なのだと感じるし、それで実際、うまくいくのだという、やってみせた人の正解として再認識できるのは良かった。

目の覚めるような工夫、アイデアがあるかというと、2つくらいはあった。だが、大半の記述は、かなり当たり前のことを言っている。もう少し圧縮して書いても良かった気がするが、わかりやすく、早く読める(電車片道50分で読めた)。こういう本を読みたい人は時間がないのだろうから、この書き方で正解かもしれない。

NHKアナウンサー時代の番組放送における秒単位での時間管理の話。多忙な議員にいかに1分間で報告を行うかの話。灘中の難しい試験でも実は勝負は1分間であったという話。など、著者ならではの貴重な実体験にもとづく記述は、興味深い。そこが一番面白く読めた。世の中には本当に忙しい人たちがいて、彼らがいかにタイムマネジメントに留意しているかが良く分かる。自分は忙しいと思っていたが、ここに出てくる登場人物と比較すると、私などぜんぜん忙しくない部類なのだと思った。

ひとつ私もやってみようとその気になったのは決断法。とにかく1分間で決断せよ。その代わり、なぜその意思決定をしたのか、メモを残し、後で評価して、次の判断に活かせというノウハウ。即断即決は難しいが、これならできるかもしれないと思った。

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2004年02月16日

「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく

「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく
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著者の友寄英哲氏は、1987年に円周率4万桁暗記を達成しギネスブックに掲載された記憶術の実践者。世界一の記録達成者がどのようなノウハウを持っているのかを知りたくて、熟読。次々に繰り出される記憶訓練術の数々。面白い。そういうことだったのかと連発。

著者が円周率暗記は、語呂合わせで達成したということは良く知られている。「富士山麓にオーム鳴く」式に文章を作ってひたすら根性で記憶して行くのだろうな、だけど、それは自分には無理だと読む前は思っていた。そんな根性は私にはないから。ところが、著者の話を聞いていると、ひょっとすると私にもできたりしてと思えてくる。

■語呂合わせとイメージングによる暗記

円周率の暗記は数字を仮名に変換した語呂合わせ作成する。10桁ごとに区切って文章化する。つまり4千の文章を記憶する。ひとつひとつの文章は3秒で記憶、想起できる大きさにおさえる。

ポイントは二つあるようだ。

1 イメージ化する

五感に訴求するイメージに変換する。しかも不快で奇抜なものほど、記憶に定着して良いらしい。500桁までの本番で使ったイメージも後半で明かされている。

2 独自の数字→仮名変換ルールを活用する

二桁の数字に言葉を割り当てたキーワード辞書を作成して、変換パターンを拡張する。この本には著者が使ったキーワードも公開されている。

そして、あとはひたすら暗記の日々になるのだが、記憶力強化と習慣化のための無数の工夫が語られる。通勤時間を使った練習法や、リラックスのための体操法、あがり克服のための運動、テープを使った睡眠学習(肯定している)、自作の暗記ツールの開発など。どれも、普通の人間が取り組めそうで、他の事柄の暗記にも使えそうなノウハウが続く。例えば、毎日の通勤途中の本屋で立ち読みした内容を書き出すことを続ける。次の電柱までに10桁憶える、など。

著者は54歳で記録を達成したそうだ。暗誦するだけで17時間かかる。しかもテレビカメラの前での実施。記憶力と同時に集中力も重要な要素だったそうだ。感動したのは、円周率の最後の一桁を話す自分をイメージして6年間の練習に取り組んだという部分。用意した決めセリフのカッコよさにしびれた。イメージトレーニングのお手本だと思った。

脳科学の大先生や学習心理学者も、理論を知っているだけで、本人が実際に記憶ができるわけではない。実践者が話す内容は貴重だと思う。語呂合わせは言語に依存するので、この著者が、日本人であるという事実は、幸運なことだとも思った。

この本はまだまだ読み取れていない秘密が隠されていそうだ。円周率以外にも広く使える。もう一回読もう。

■デスクトップの暗記術?

私は記憶力が良くないので、幾つかイメージ化、語呂合わせで記憶していることがある。
1 コピー、カット、ペースト

キーボードのショートカットを私は長い間覚えられなかった。あるとき先輩から、こう憶えれば簡単だよと教えられた。これは毎日のように使っている語呂合わせ。

CTRL+C コピー  「コピーのC」
CTRL+X カット  「Xはハサミだからカット」
CTRL+V ペースト 「Vは下向きの矢印でココ!に差し込むという意味」

これを憶えて以来、毎日のように、ハサミ、ココ!とぶつぶつ言いながらカット&ペーストできるようになった。

2 Alexa、WebArchiveの関係

「過去のWebを閲覧できるInternetArchiveサービスは、関連検索のAlexa社が記録したアーカイブを提供している。」という関係を記憶しておくノウハウ。(私は情報活用セミナーで毎回話すことなのですが、Alexaの名前が以前はなかなか出てこなかったので考案)

イメージ化:

アーカイブ=大量に古いものが保存されて腐るので「あれ?臭(くさい)?」

この本が推奨している、バカバカしく五感に訴求するイメージ、になったので、二度と忘れない、気がする。

・InternetArchive
http://web.archive.org/
・Alexa
http://www.alexa.com/

3 Googleのシソーラス検索

Googleでは、英語キーワードに限り、検索語の先頭に「~」(チルダもしくはニョロ)をつけると関連語を同時に検索する。例えば「~culture」で検索すると「Art」「Music」なども含めた検索結果がでる。

海外のサイト探しに便利な機能だけれど、どうもニョロを忘れてしまうので、「ニョロニョロつながる言葉がぐるぐる(Google)回る」イメージ化したところ、忘れなくなった。

#みなさんも何か語呂合わせで暗記していることがあれば教えてください。

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2004年02月12日

速読・速解の技術―やっぱり使える「ポスト・イット」!!

・速読・速解の技術―やっぱり使える「ポスト・イット」!!
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■忙しい人のためのアウトプット指向情報術

今私のテーマは、仕事術。特に殺人的に多忙な生活を送りながら、効率的に大量の仕事をこなしている人のノウハウや仕事観を知るために、10冊ばかりそれっぽい本を買い込んで、読んだ本の一冊。テレビで活躍する経済キャスター西村晃氏の仕事術の本。この人は、この5年余りで60冊以上を出版している。

相当忙しいらしい。年間300回以上の講演(ほぼ毎日か)、10本以上の雑誌連載、月10冊の単行本と30冊の雑誌を読み、新聞は3紙を毎日読みながら、トレンドを分析してコメントする。年間で200日はホテル宿泊だそうだ。

この人の仕事術は徹底的にキーワード指向である。大量の情報の中から、キーワードを素早く発見し、ポストイットに書き込みを行う。キーワード探しのノウハウは非常に参考になる。本の最初の100ページに集中することが多いとか、カッコとアルファベットを見逃すな、「しかし」「だが」「けれども」などの接続詞前後を見よ、など。そういわれてみれば、そのとおりだ。

そして、ポストイットに、見つけたキーワードや、思いついたことを書き出して、文章作成時にそれらを並べて記事化せよ、というのが著者の仕事術である。この人も、情報収集においては、とにかく不要を捨てる部分を意識している。面白くない本は最後まで読むな、とか、とりあえず気になる書籍は買っておけ、積んでおけ、ページは破け、など。

3色ボールペンをこの人も使っている。ただ、以前紹介した本のやりかたと違って、ポジティブなことを赤、ネガティブを青、普通を黒で書くというもの。緑は使われない。実は、私も3色ボールペンは本に影響されて、すっかり信者になってしまった。百円ショップで4色ボールペンをみつけたのでまとめ買いし、すべてのボールペンを4色化しようとしているくらいだ。これは今後もずっと続けそうな習慣。

この本、タイトルの「速読」に期待するとハズレの本である。スキルとしての速読術向上の話はほとんどでてこない。だが、この人のやり方は一理ある。この本が述べているのは、速読ではないのだが、読む、まとめる、書くという3段階のプロセス全体を高速化するノウハウなのだと感じた。

この本は書いた人も忙しかったのだろうと感じられるくらい、早く読める本。電車の片道60分で読めてしまった。

■大量の情報を活用するための3要素?

ここからは私が読んで考えたこと。10冊の仕事術の本を読んで、メタレベルでの共通点を洗い出そうとしている。中間報告。

大量のメディア(書籍や雑誌)に触れて、必要な情報を取捨選択するというタスクには3つの要素があるような気がする。

本であれば、内容を読んで、気になる部分に注釈する(栞、印、折り曲げ含む)。そして、アウトプットを作る際には、それらの注釈の位置や種類(ナビゲーション)を発見して、役立てる。

1 情報ソース
   本のテキストそのもの

2 アノテーション(注釈)
   栞、印、折り曲げ、書き込み、ポストイット

3 ナビゲーション
   栞、印、折り曲げ、ポストイットの位置、書き込みの色など。重要度や分類を示すものもある。

3色ボールペンもポストイットも、そしてその他の情報術の多くも、これらの要素の工夫であると言えるのではないか、と仮説を立てている。他にも幾つか、仕事術本を読みながら、理論を考えているので、またこのブログでまとめてみたいと思う次第。


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2004年02月09日

記憶力を高める50の方法

・記憶力を高める50の方法
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医学博士で脳科学者の権威が書いた一般向けの記憶術のノウハウ本。理論から実践までを平易な言葉で、まとめている。

■恥をかく、汗をかく、字をかく、で記憶する

著者は、「3かく」が記憶に役立つと述べている。「恥をかく」「汗をかく」「字をかく」だそうだ。自分にそのようにして記憶された知識があるかどうか振り返ってみる。あるあるあるある

昨年の赤恥な思い出。ネットエイジの西川さんを中心に、あるテーマで新規ビジネスのアイデアだし。私は「そうすると粗利の高いビジネスになりますね」と発言した。一同、「ソリ???」。一瞬の沈黙の後、「ああ、そういういい間違えってあるよね」と笑い。そう、私は「アラリ」を「ソリ」と覚えてしまっていた。(言い訳になるが「アラリ」という読み方は知っていたのだけれど)、本を読む際に心の中でなぜか「ソリ」と繰り返している間に間違って記憶してしまった。

もうひとつ、ついでに青恥の披露。私は神奈川県藤沢市に住んでいる。東海道線で渋谷・表参道まで毎日往復3時間近くかけて通勤している。都内と藤沢の往復の中で、学生時代から数えると何十回となく終電を寝過ごして帰れなくなることがあった。学生の頃の最長記録は、平塚だった。電車で数駅なのでたいしたことないだろうと、深夜12時から私は徒歩で藤沢まで歩いた。ところが実はこれ大変で、なんと15キロもあることを身をもって知った。真夏だったので汗をかきまくりながら深夜3時に帰宅した。

社会人になってからは長距離の寝過ごしも少なくなったが、1ヶ月くらい前に、最長記録を更新した。今度はほとんど観光地の「大磯」までいってしまったのだ。歩いて帰れないことはさすがに分かったので、タクシーで6000円かけて帰宅。交通費清算できないので、痛い出費。

・粗利はアラリであること
・平塚ー藤沢は15キロで歩くとどれくらい大変かということ
・深夜タクシーで帰ると大磯ー藤沢間は6000円であること

この3つの情報を私は忘れることがないと思う。

恥と汗の記憶効果はすばらしい。でも、意図的にやりたいとは思えない。

#パソコンを使って文章を作ってばかりなので「字をかく」の経験は該当なし。

■記憶の理論のオンパレード

著者は記憶の研究について基礎から一般向けに整理してくれる。

陳述的記憶と手続き記憶に大きく大別され、それぞれが、さらに細かな記憶の種類に分類できる。脳科学や認知心理学の本にも同じような記述がある一般論であるが、平易な分かりやすいことばで総括していて読みやすい。記憶に残りやすい。

陳述的記憶
  エピソード記憶 物語化された記憶
  意味記憶 記号と意味

手続き的記憶
  条件反射 パブロフの犬のように刺激に反応する記憶
  熟練技能 自転車の乗り方や楽器演奏の技術
  認知技能 スポーツやゲームなど半分無意識にある記憶

2日経過すると、70%を忘れてしまうという有名なエビングハウスの忘却曲線の話。身体の部位と脳の特定の部位は、対応関係を持っていて、右手親指はここ、眼はここという具合に地図に描くことができるというペンフィールドのマップの話。

脳科学の専門書を読まなくても、記憶の向上に必要な脳の概要理解と、ノウハウが50の章から学べるように構成されている。

■語呂あわせやアイドルポスター?裏技から生活習慣までカバー

奇想天外でバカげていて性的な意味を持つ語呂あわせがいいとか、アイドルのポスターのバストなど、気になる部分にメモを貼り付けて眺めると忘れないとか、そういった裏技的な実践ノウハウも多数紹介される。

医者の知識を活かして、栄養や睡眠との関係を論じ、記憶力を高める食事や睡眠の方法まで、アドバイスがある。一夜漬けの可否など、読んでいると学生時代を思い出してしまう。大人になってから、記憶力を試されることが少なくなったが、知的生産性のベース部分で、どれだけの量を記憶し、保持し、想起できるかの能力は、仕事の差に少なくない影響を与えているに違いないと感じた。

この本、一言で形容すると、「テレビの生活ノウハウ番組「あるある大辞典」の記憶力増強特集を5本くらい一遍に見たような読後感の得られる本」、という感じだ。(分かってもらえるだろうか?。)

■脳科学はどう実用されるのか?気になったテレビ番組と映画

記憶といえば、正月にCSのディスカバリチャンネルで興味深い番組を観た。

・サヴァン症候群と脳の不思議
http://japan.discovery.com/series/serintro.php?id=318

サヴァン症候群という珍しい障害がある。世界でも150人程度しかいないらしいが、彼らは知的障害を持っていると同時に驚異的な記憶力や計算力を持っている。何千年分の年表を暗記し、日付を言えば即座に曜日を答えることができたり(計算しないと無理)、ネットの経路探索のように、道路網や鉄道網の地図を暗記しており、自在に最短経路をはじき出すことができる。見たままを写真のように精確に絵に描く患者もいる。

サヴァン症候群の患者は、脳の一部が損傷している代わりに、別の部位が異常に発達してしまった人たちであるらしい。稀にだが、一般人でも事故などを機に、通常の判断能力と同時にカレンダー計算能力などを持ってしまう人がいるという。

この番組では、実際の患者のドキュメンタリ部分も驚きだったが、後半で研究者の博士が、健常者の左脳に一定時間電極を取り付け、電気刺激を与えて不活性化することで、右脳を活性化させる実験もさらに驚いた。なんと、人為的な刺激を与えるだけで、計算能力が高まったり、絵が上手になったりするのだ。

脳科学は今までは脳の中身を分析するばかりだったが、未来の脳科学は驚異的な記憶力を作り出したり、天才を人為的に生み出す学問に変化していくのではないか?と予感した。

遺伝子操作による天才量産よりも、明るい考え方かもしれない。

遺伝子選別による未来社会の恐怖をドラマティックに描いた映画「ガタカ」という名作があるけれど

・ガタカ
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こういう世界になったらたまらない。それに、やっぱり、子孫だけでなくて、私たち自身がその科学の便利さを体験してみたいですからね。

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2004年02月05日

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

・成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語
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■カリスママーケターに起きたこと

神田昌典氏はメタなマーケターだと常々思っている。中小企業経営者向けのベストセラー経営書を次々に世の中へ送り込み、有料会員サービスに何千社も囲い込んで、独自のカリスマ王国を打ち立てた。

・Almac.inc KandaMasanori.com
http://www.1almac.com/
神田氏のオフィシャルサイト

ポイントを明解に指摘する文章力のうまさ、中小企業経営者の心の機微を知り尽くしたツボを押さえたアドバイス、自己の成功体験と米国MBAのメソッドを融合し、誰にでも実践できる行動指針への落とし込み。この人はとにかくアタマがいい。マーケティング書籍という市場をメタにマーケティングする天才的嗅覚を備えている。時代の寵児として、これからどこまで走り続けるのだろうと注目していた。

しかし、昨年突然、神田王国に翳りが見えた。彼にとってドル箱であったはずの会員組織「顧客獲得実践会」のサービスを一方的に中止すると発表した。出す本も従来のマーケティング本ではなく精神性の高い本に変った。何があったのか、不思議だった。

この本は一部フィクションと断りつつも、本人を襲った実話の悲劇を綴っている。

私は、神田昌典氏とは面識がないが、元関係者の方が友人の周囲にいたりして、漏れ伝わることを幾つか知っている。神田氏を襲った深刻な悲劇のいくつかは本当のように思う。随分、苦労をされたようで、それを乗り越えての出版。今まで経営者を勇気付けてきたカリスマが、孤独な戦いを強いられていたことを知り、驚く。

■ますます深まる神田昌典氏に期待

私の周りにも神田氏の本の愛読者が多い。元実践会会員のベンチャー経営者も何人かいる。共通しているのは「ウマイ!」という評価だ。分かりやすく、自分にも手が届きそうなノウハウを、「ここだけの話」として開示する。ファンの多くは、ウマイ話がそのまま自社の経営に通用することはないという常識は知っている。神田氏が、経営者の聞きたいことをおいしく加工する技に長けている事実も認識しているはずだ。

だが、「だまされている」とか「リアリティがない」と感じるファンはほとんどいないと思う。売れる本の書き方にせよ、彼が教えるマーケティングメッセージの作り方や届け方は、確立されたものであり、否定できない説得力があるからだ。むしろ、そのメタな部分の能力は本物であるし、それこそ盗みたいと経営者の多くが思う。だから本が売れるのだと見ている。

大物コンサルタント、著名マーケターにありがちな宗教臭さが薄いのも、手に取りやすい理由だと感じる。今回の本にしても、どこまでが神田氏の演出でどこまでが真実なのか、分からないが、演出家としての誠実さはひしひしと伝わってくる。誠実なエンタテイナーでもあるのだ。手品を完璧に演じ、ネタバレはしない。不思議な人である。

と、真面目な神田ファンに怒られそうな書評を書いてしまった。が、私も買った本の数を数えたら随分なファンの一人である。メタマーケターとして、これからどんな展開で読者の経営者、起業家を楽しませてくれるのか、気になってしょうがない。

この本は、成功に向けて努力する人に必ず起こる、会社と家庭のバランスの崩壊や、ありがちな経営上のトラブルについて、神田氏の分身らしき男が、主役の起業家に向けて、「法則」として教える体裁の、経営小説である。読みやすく、ドラマとして面白い。

読んでの感想は一言。「土日は休みましょう」。できていない自分に反省。ゴシップ的関心で買ったのに面白い本で、深く考えさせられました。次の本も買おう。神田ファンならおすすめ。

参考:過去に書いた記事より

・60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000181.html

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2004年02月03日

ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか

・ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか
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ちょっとベタだけれども良い本でした。今日はかなり純粋に書評。

■私のビジョン???

前の日曜日。妻が販売員を家に呼んだ。販売員は妻より幾つか年上の知的で上品な主婦。それなりの値段のする子供向け英語教材のプレゼンテーション。実物を見せながら物腰柔らかに、彼女の家での実体験を話してくれる。とても自然な会話のやりとりの中で進められるデモ。この人は売り込まずに売るプロだなと密かに関心する。教材も、確かに面白い内容なのだが...。

私の息子はまだ生後半年なので、まだ必要ないのではないか、と妻に素直に意見をする。すると「父親として子育てのビジョンって何?、どういう子供に育てたい?」と聞かれる。「ビジョン」か。そういえば...。

その2週間くらい前、営業の帰りに、大学のカフェに寄って、長話。尊敬する大先輩に経営と人生相談に乗ってもらう。そこでも「キャリアやビジョンをそろそろ考えた方がいいぞ」とアドバイスされたことを思い出す。その通りだなと感じたばかりだった。

仕事を始めてからの自分を振り返ると、興味の赴くままに、やりたいことをやってきた。ライター、Webプロデュース、ディレクター、コンサルタント、リサーチャ、会社経営。たまに失敗はあっても、達成感はあったし、今の仕事も楽しい。

でも、漠然とこれまでのやり方のまずさも分かってきた。やりたいことをやる、では、手を広げすぎて、将来のビジョンへ収束していかないのだ。目の前のことに夢中になる自分の性格は、木を見て森を見ず、なことになる失敗も多い。

自分にビジョンがないわけではない。明文化して一晩でも語れるビジョンはあるつもりだった。でも、二人に指摘されると、私のビジョン、まだ何か足りないのではないかと思った。

そこへ、この本。

■ビジョンを作りたい人向けの本

会社の経営ビジョンといえば、「ビジョナリーカンパニー」が有名だ。昔読んで感動した。

・ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822740315/daiya0b-22/

「時代を超え際立った存在であり続ける企業18社を選び出し、設立以来現在に至る歴史全体を徹底的に調査、ライバル企業と比較検討し、永続の源泉を「基本理念」にあると解き明かす。」

100年以上繁栄を続けるような成功企業を、徹底的に歴史分析して、帰納的に、企業のあるべきビジョンを浮き彫りにしていく。経営を科学した名著であるが、「ビジョナリーカンパニー」は飽くまで過去の分析中心であって、ビジョンとは何か、どうビジョンを作り、共有し、実現して行くべきかの実践部分は、私には具体イメージが湧かなかった。

「ザ・ビジョン」は経営や家庭におけるビジョンがテーマの小説である。概要はアマゾンの書評を借りると以下のような概要。


離婚した専業主婦のエリーは保険会社の経理の仕事につく。その会社では毎朝、ジムという人物からeメールが入っていて…。真のビジョンに不可欠な要素と、それを組織に根づかせるためにすべきことを説くビジネス・ストーリー。

著者ケン・ブランチャードは、ベストセラー「一分間マネージャー」を含む30冊を出版し、世界で合計1300万部を記録。読みやすい文章と明解な論理で、ビジョンの要素、役割、立て方、共有し実現する方法論が、エリーとジムの会話を通じて明らかにされていく。

軽くて読みやすく、考えをまとめるきっかけになった。この本を読んだからといって、即ビジョナリー、名経営者になれるわけではないのだけれど、ビジョン作成時に必要な知識のまとめとして価値があるなと思った。なぜ自分のビジョンがうまく機能しないのかも分かった。

会社やプロジェクトのビジョン、ミッションステートメントを作ろうとしている人に特におすすめ。これで額縁に収まって終わりの美辞麗句のビジョンは書かずに済む、と思う。

・KenBlanchard.com
http://kenblanchard.com/
著者のオフィシャルサイト

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2004年01月14日

「10分刻み」ニッチタイム(すきま時間)超勉強法

・「10分刻み」ニッチタイム(すきま時間)超勉強法
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トビラの宣伝から引用。

■ムダを省いた徹底的に実利主義の勉強のすすめ

「わたしはムダな勉強はしない。はっきり言うと、すべて「お金に変る勉強」なのである。勉強すればするほど得する勉強、勉強した分だけきちんと成果が出る勉強とは?成果を出すためにはどんな勉強をすればいいか?を考え実践しているのである。最小努力で最大効果を生み出す勉強の数々を、これから順を追って紹介していこう。」

実利主義もここまで徹底されると逆にさわやかでさえあると感じた。著者の名前でAmazon書店を検索すると100冊が登録されている。プロデュース作品を含めると400冊を超えているそうだ。毎月1冊出版のペースを何年間も守っており、ベストセラー書となった本もある売れっ子ビジネス書作家である。実利主義だけが勉強の目的のはずはないけれど、著者の出版実績を知ると、どんな勉強法をしているのか知りたくなるので読んでみた。

1:お金につながる、2:ニッチタイムを活かす、3:10分で刻む。目的が明確でやる気になるテーマに絞って、生活の中の短時間に集中して勉強する。そのための、読書術や情報ファイリング手法や、10分で線引きした独特なメモ術、記憶術といったコツが次々に語られていく。

読了して思ったのは、著者が大量の情報(年間3000冊読むとのこと。著者の実績からして誇張ではなさそう)から、上手に取捨選択している術をよく知っていることだ。特に情報を捨てる、「知的清算」の考え方が参考になった

・わたしが実践する「知的清算」の6大スキル
  1 邪魔な記憶ファイルを捨てる
  2 ポイントだけデータ化
  3 書籍は読んだらすぐ処分
  4 マーカー癖、コピー癖をやめる
  5 語学教材を自分でつくる
  6 資料の整理法を特化させる

「今使えるかどうか」を基準に必要なものだけを取り出し、他はすべて捨ててしまうポリシーである。この人の場合、物理的にも捨ててしまう。

著者は速読を実践しているのだが、こだわり方が面白い。速読する際には、本の書き手にとっての重要ポイントなどどうでもよくて、「「わたし」にとっての重要なことを勉強することだ。本は道具である。道具に振り回される必要はないのである」と述べられている。読み方も捨てることを意識しているし、道具と割り切り、消費したら、遠慮なく破いて、残りは捨ててもよいわけだ。

私は新聞記者の父の家庭で育った。子どもの頃、新聞は大切に扱わないと母に怒られた記憶がある。それに関連して、本も最近まで折る、書き込む、破るには抵抗があったのだけれど、その禁を破ってから、生産性があがったような気がしている。少なくとも原稿執筆の仕事のペースは、折る、書き込む、破って得る断片によって、飛躍的にあがった。

学校教育ではモノを大切にと教えざるを得ないが、著者の言うように、稼ぎ手ならば本代以上にその知識で稼げばよいと割り切った方が効果的ということのようだ。この考え方は気に入った。

■インターネット利用者はどのように本を扱っているか?

ちょっと面白い調査データがある。オンラインの本好きに本についての100の質問を投げかけた企画のサイトがある。1000人以上が自分のWebサイトでその質問に答えている。特にこの質問の81から90項目目までが興味深い。Webサイトを公開するタイプの個人の紙の本に対する考え方が分かる。捨てることに抵抗を感じている人が少なくない。

・本好きへの100の質問
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Shikibu/1185/

・Google検索結果(こちらの方が回答データを見やすい))
http://www.google.co.jp/search?q=%E6%9C%AC%E5%A5%BD%E3%81%8D%E3%81%B8%E3%81%AE%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%E3%81%AE%E8%B3%AA%E5%95%8F&ie=UTF-8&oe=UTF-8&hl=ja&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=

081. 本を捨てることに抵抗がありますか?
082. これだけは許せない、そういう本の扱い方はありますか?
083.“活字離れ”について、どう思いますか?
084. 本を読まない人のことを、どう思いますか?
085. とりあえず、本を持っていないと落ち着かない。そんな癖がありますか?
086. 世界中で、本の出版が禁止されたら、どうしますか?
087. 青空文庫を利用したことがありますか?
088. 電子図書館についてどう思いますか?
089. 将来的に、本という存在は無くなると思いますか?
090. 本が無くても生きていけると思いますか?

日経BPの知識流通企画でご一緒している、情報デザイナーの松岡裕典氏の読書術は、ポストイットを使った読書術で、「本からコンテンツをはぎ取ってハンドリングしやすい形に変換する」ことを意識されているとのこと。どちらかというと、本は大切という意識の方である。

・デジタル読書法(?)のすすめ
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031127-01.htm

ページを破る、ポストイットに書き出す、本の端を折る。自分にとって必要な情報を抽出する技術は、同時に残りをどうやって捨てるかの技術でもある。この本が語る徹底的に実利主義の勉強法、ビジネスマンには特に効果的だと思った。頭に休養はいらない、教養こそ頭の休養だ、という著者の意見に感銘。

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2003年12月23日

最速で開発し最短で納めるプロジェクト・マネジメント

最速で開発し最短で納めるプロジェクト・マネジメント―TOCの管理手法“クリティカル・チェーン”
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私はベストセラービジネス小説「ザ・ゴール」シリーズのファンである。

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著者の物理学博士エリヤフゴールドラットが考案したTOC(制約条件理論)が主題の名作。工場長である主人公は、閉鎖寸前の工場の業績を、TOC理論を使って生産プロセスを最適化することで、業界に革命を起こす。その過程で、TOCの考え方が、工場の経営だけでなく、あらゆるプロジェクトや日常生活までをも最適化できる汎用的な理論であることが分かっていく。

この本では、博士の小説では詳しく語られなかった理論的側面が解説されている。ザ・ゴールとあわせて読むと、特にITの開発プロジェクトにも目が向けられており、IT業界の開発マネージャに参考になる。

TOCは幾つもの理論から構成されているが、概要は次のようなもの。

■ボトルネック、中間在庫、手あまり

例えばこんな作業ラインがあるとして、括弧内にそれぞれの1日当たりの生産能力(処理できるユニット数)を示すとする。

第一工程(100)→第2工程(25)→第3工程(80)→スループット(成果)

ボトルネック:
この工程にいくら作業を投入しても、1日当たりの成果は25ユニットを超えることはできない。第2工程の作業者が病気で休んでしまったり、使う機械が壊れてしまうことがあるから、大抵は25以下である。第2工程が、TOCの重要な要素「制約条件(ボトルネック)」となっている。

溜まる中間在庫:
企業の生産性は、成果として1日何ユニット生産できるかだけでは測らない。上記のラインで1日100ユニットを投入すると、終業時には第1工程と第2工程の間に、75個の中間在庫が溜まることになる。日を追うごとにこの数字が増えていく。中間在庫は、企業にとってコストとして評価されてしまう。

手あまり:
さらに第3工程では、1日80の生産力があるのに、直前の工程からは最大25しか流れてこないものだから、55分の生産力が無駄になってしまう。第3工程の人たちはやることがなくて、ぶらぶらする結果、この作業ライン全体の人件費の効率を下げてしまう。

「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上には絶対に向上しない」という博士の結論がある。TOCでは、ボトルネックを強化することをまず考える。

■ボトルネックの最適化

TOCの改善方法は、上の作業ラインを使って説明すると、次のような流れになる。

1 制約条件の発見
   第2工程がボトルネックだということを発見する
2 制約条件の最大限の活用
   第2工程が1日当たり25ユニットを必ず生産できるようにする
3 制約条件以外を制約条件にあわせる
   第1工程の生産力を25を少し上回る程度に調整する
4 制約条件の強化
   第2工程にスタッフや機材を増やす
5 変化のチェックと繰り返し
   別の工程がボトルネックに変化していないか等チェックし1へ戻る

いくつか細かなルールがある。ボトルネックの前の工程は生産力を多めに配分し、少量の中間在庫をわざと残す。第1工程が事故で止まった場合でも第2工程以下が動き続けられるからである(保護能力)。また、手あまりの存在を容認し、全体にゆとりをもたせる(バッファー)。

■ドラムバッファーロープによるスケジュール作成

TOCではドラムバッファーロープというスケジュール管理手法がある。比ゆ的な表現として、ボトルネック工程が自分のペースに合わせて工場内に聞こえるように太鼓を叩く。太鼓のペースで他の工程は作業をする。各工程をロープで結びつけ、歩調を合わせるわけだが、わざとロープにたるみを持たせる。ボトルネック工程以外が遅れが起きても、たるみのおかげで、連鎖的に作業が中断することを防ぐ。

TOCは作業は確率的に見て必ず遅れるものという前提で組み立てられている。各工程はサイコロを振っているようなものとみなす。出た目が処理して次の工程へ渡すユニット数であるとする。サイコロは平均3.5が出るようになっているが、途中プロセスの誰かが3.5を下回る数を出せば、最終工程の出す成果は3.5を下回ってしまう計算になる(遅れの伝播)。

例えば第1工程と第2工程が2を出した場合、第3工程が6を出しても、処理すべきユニットは2しかないので、2以上の成果は出ない。逆に第1工程と第2工程が6を出したとしても、第3工程の確率平均は3.5でしかないので、最終成果も3.5程度になる可能性が高い。業務フローの遅れは伝播するが、早く仕上げた結果は伝播しないのだ。人間が行う作業である以上は、常に完璧を期待できない。遅れは必然となる。

■導入に際しての気持ちが分かる第4章

この本の面白さは第4章「夢をかたちに変えるスケジュール 開発部門のプロジェクト管理に挑む 物語編」にあると感じた。この章では、理論解説ではなく、各業界に散らばった同期が集まって、TOCの考え方をそれぞれの視点で議論する対話になっている。

TOCはマネジメントの考え方だから、管理する方と管理される方の意識の違いが導入時の最大の課題になる気がする。人は誰しも、自分の仕事を最適化したいけれど、上から最適化されたくはないと思う。この章では、クリエイターやデザイナーなどの非マネジメントサイドの意見がある。

3人以上のチームでフロー作業を行う場合にTOCは価値がある考え方と思った。他にも問題解決法の「思考プロセス」や、プロジェクトの安全余裕バッファーの量と配置の理論、全作業の中で最も重要なラインを強化する「クリティカルパス」などの理論も解説されている。

私も来年こそは遅れゼロを目指したいのだけれど、それって去年もそう言ってたっけ...。

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2003年12月13日

朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ

・朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ
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百式田口さんたちと立ち上げた、コンセプトドライブ事業部の会議は毎回、朝7時から渋谷のエクセル東急ホテル最上階の25Fフレンチレストラン「ア・ビエント」で、東京の全景を眺めながら、バイキングを食べる。

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・ウーマンエキサイトのホテルの朝食特集でも眺めの良さで取り上げられている
http://happy.woman.excite.co.jp/garbo/031015/niceview1_1.html

ベンチャーなのに妙にこの日だけは、豪華にやっている。私は自宅が遠いので朝5時起きになるが、この日だけはバシっと目が覚める。先週は忘年会議の打ち合わせも早朝に会議した。

なぜ、この習慣が始まったのかというと、半年くらい前に、この本に私が感銘して、もともと早起きの田口さんらを誘ったからだった。私はこの本を読んでから家庭の事情(長男誕生で時間軸変動)で難しくなるまで、3ヶ月間、毎日朝5時に起きて、7時には会社で仕事を始めていた。この時期、会社の売り上げが著しく伸びた。

モーニングマネジメントに関する本である。著者は、以前紹介した「3分以内に話はまとめなさい―できる人と思われるために」と同じ弁護士。毎朝6時に起きて10時までに大半の仕事を終えてしまうのだという。早起き論を中心に56の、仕事の能率を高めるアドバイスが数ページ読みきりで続いていく。

「駆使して頼るなコンピュータ」「最高の情報ツールは人間である」「朝の礼状書きで人脈の形成に努める」「ファックスの意外な効用」という見出しが続く著者なので、ITの先端的な活用の話はこの本には期待してはいけない。ただ、逆にこういうアナログなノウハウと言うのを久々に聞くと、自分がITのツールに依存することで、逆にいかに視野を狭めているかということに気づかされる。

全体的には、新入社員に向けた叩き上げ社長の朝礼の訓話集みたいな本である。朝早く起きて、時間を自己管理して人の何倍も働きなさいということ。「わかっちゃいるけど、なかなかねえ」という気がしないでもないのだが、著者の文章は口うるささの裏に、人間的な温かみを感じる。素直に私は受け入れられた。

つまるところ、この本の価値はタイトルにある。早起きして10時までに通常の仕事を片付ければ効率は確実に上がるものだろう。それを実現するには、ただ5時に起きれば良い。特別な練習やツールも不要なわけだ。

個人的に3ヶ月5時起き7時出社を継続して感じたメリットは、

・1日が長くなる
・メールが終業時刻までにもう一巡できる
・営業上、先手を打つことができる
・嫌なこと、やりたくないことを朝は片付けやすい
・夜と比べて理性で意思決定を行える
・健康的

だった。

評価:★☆☆☆☆

最後に、睡眠、起床時間についての研究やユニークな情報を集めてみた。

参考URL:

・「睡眠学習」
http://www.maruhachi.com/zatugaku/zatu_19.html
「エリオットという心理学者は、次の15の言葉(関係のない言葉であるが、無意味の綴りではない)を眠っている人たちのグループに聞かせた。事前に本当に眠っていることを脳波で確かめておいた。【 Boy, egg, say, art, run, not, sir, leg, bag, row, ice, out, age, box, eat 】翌日、これらの言葉を、睡眠中に聞かなかったグループと聞いたグループの両方に記憶させるテストを行った。聞いたグループの方が、聞かなかったグループより83%も早くこれらの言葉を覚えたという結果が見られた」

・予備軍必見!社会人学生平均睡眠時間の実態 やっぱりハード?睡眠時間調査
 社会人学生による社会人学生睡眠時間調査
http://allabout.co.jp/study/adultedu/closeup/CU20030429/「一般の社会人の平日の平均睡眠時間は7.12時間※となり、社会人学生の睡眠時間はおよそ2時間少ないことが分かる」

・動物の睡眠時間
http://www.sirasaki.co.jp/makura-ninngennkougaku/doubutu-suiminjikan.html
いろいろな動物の睡眠時間比較。トップは20時間眠るフタツユビナマケモノ(オオナマケモノ)、短眠なのは2時間しか寝ないノロジカ、ウマ。一般に草食動物の睡眠時間は短く、肉食動物の睡眠時間は長い。睡眠が生存に不利益なある種の動物はほとんど睡眠をしないとの報告がある。

・四半世紀でみるビジネスマン・OLの生活時間調査
 短縮化傾向の『朝刊を読む時間』と『睡眠時間』
http://www.citizen.co.jp/release/99/99hajime.htm
25年に渡る比較調査。睡眠時間『5時間以下』が激増。今も昔も、理想の朝食時間は20分。理想の通勤時間は、今も昔も30分。

・列車内での快適な睡眠確保に関する研究
http://www.riss.org/research/r_04.html
新幹線での実験。まくらを使った被験者は2倍眠れて、降りてからの生産性が向上した。

・インターネット利用が他の生活時間に及ぼす影響
http://www.soumu.go.jp/iicp/pdf/200306_4.pdf
「睡眠時間に関しては職業の影響力が圧倒的に強く(無職、学生、専業主婦が長く、有職者が短い)、以下、学歴(低学歴の方が長い)、年齢(高齢者ほど長い)、年収(低年収ほど長い)の影響が強いが、「インターネット自宅利用の有無」の影響力は小さかった。」

・若い人ほど、休日は「睡眠曜日」、日常の疲れが顕著に出ている30代?!
http://www.tochigibank.co.jp/f801/timeis/03.html
若い人たちほど、休日には寝だめをしてウィークデイに備えているということが言える。
・日本睡眠学会
http://www.ashitech.ac.jp/jssr/睡眠に関する基礎知識

・睡眠学術誌Sleep(英語)
http://www.journalsleep.org/
海外の睡眠研究の論文がPDFで読める。

・貴方の潜在能力を引き出す『脳波学習機』の決定版 !!
 ゴーグルと本体が一体化!!さらに使いやすくなりました。
http://store.yahoo.co.jp/royal3000/473.html
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これいい!(笑)

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2003年12月12日

上達の法則―効率のよい努力を科学する

・上達の法則―効率のよい努力を科学する
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仕事や趣味、英会話やスポーツ、囲碁将棋、茶道など。技能の上達とは、科学的にはどういうことなのか、上級者と初心者は何が違うのか、記憶と認知の研究で裏づけを持たせながら、わかりやすく一般向けに語る本。著者は社会心理学の教授。

■上級者に特有の性質がある

どの分野でも上級者には特有の性質が見られるという。例えば一部を抜粋すると、

【上級者特有の性質】

・退屈しにくい、疲労しにくい
・「ながら」ができる
・移調作業ができる(ギタリストはベースも弾ける)
・復元仮定作業ができる(勝負後に正確に分析)
・コツをメタファで表現できる
・他者への評価が早くでき明瞭、でもすぐには表に出さない
・一見無関係なことからヒントを得る
・細部へのこだわり、美観がある
・上級者特有のスキーマ依存エラーを犯す

といった性質である。

人間の認知学習に関わる記憶の構造がこの性質と関係があり、著者によると、こんな概念図として描ける、という。(ここではP65の図を簡略化して引用)。

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情報はまず感覚器官から、ワーキングメモリを通して長期記憶へ定着する。ワーキングメモリでは、情報を、記憶できる小さな単位(チャンク)にまとめる。このチャンクのまとまりを構造的に安定させ、長期記憶に長く残す仕組みとして、スキーマとコードシステムの二つが解説されている。

スキーマは知覚、認知、思考の枠組みのことであり、ぱっと物事を見たときに一瞬で要点を把握するのに必要なメタ知識である。毎日引越しを手伝っていれば、だいたいダンボール一箱はこれくらいの重さだ、とか、車両の運転ならこれくらいハンドルを切るとこれくらい曲がるだろうといった情報の蓄積である。上級者ほどスキーマを多く持ち、それに依存する。あまり思考することなく反射的に動作できる代わりに、初心者では、ありえない奇妙なエラーを犯すことがある。

コードシステムとは、大量の情報を、記憶しやすい大きさの知識に変換して長期記憶へ定着させる仕組みのことである。この本では、ファックス文書をイメージデータとして保存すると大きなサイズになるが、テキスト化すると小さい容量で済むという例で説明された。上級者はコードシステムが発達しており、情報を圧縮して要点として覚えられる。

■上級者の秘密
面白いなと思ったのは次のような話だ。

1 上級者はチャンキングの柔軟性が高い

日本舞踊の上級者と初心者に舞踏のビデオを見せる。「意味のある単位の区切りと思うところでボタンを押してください」と指示する。つまりチャンキング実験である。「意味の単位をできるかぎり細かくしてください」「意味のある単位をできるかぎり大きくしてください」という二つの指示をさらに与えたとき、上級者ほど前者の指示にはより小さく、後者の指示にはより大きくボタンを押すことが分かった。上級者は一連の動きを頭の中で意味のある単位として、精緻にモデル化しているということになる。

2 上級者は瞬時に状況を計算できる

将棋では「手ドク」「手ゾン」という考え方があるという。将棋の勝負では、駒を今まで何手動かしたか、その駒の価値になるらしい。2手動かした駒と3手動かした駒を交換した場合、2手しか動かしていない方が「1手、手ドクをした」と表現する。これは意思決定と機会損失の問題として数学的に説明がつきそうな状況であるが、複雑な計算をしなくとも、上級者は手ドク、手ゾンを暗算的に瞬時に読み取っている。

3 退屈、疲労しにくい

上級者ほど長時間技能を使ったり、他者の技能を鑑賞しても退屈、疲労しないという。チャンキングとコード化ができているので、同じ状況でも上級者のほうが多くの情報を引き出し、無駄なく動けるので飽きないし疲れない。

この本では上達を分析するだけでなく、後半では上達のコツや、スランプの正体と乗り越え方に関しても、興味深いアドバイスが行われる。前半の理論部を理解してから読めば、どれも深く納得できて、実用的だ。

■私のギター練習の経験から学んだこと

私自身、意識的に技能の上達に取り組んだことがある。それまで触れたこともなかったギターの演奏だった。学生時代の一時期、音楽産業で働きたいと思った私は、高田馬場のヤマハ教室に通いながら、1日8時間のギター練習に2年間取り組んだ。

スタートが遅かった私は、意識的に技能の習得を分析することで、早く上級者へ追いつきたかった。そこで、アルバイト先の同僚で、芸大のオペラ歌手(なんという幸運!)に、音楽全般の学習方法や、和声学について教えてもらいながら、音大受験の参考書や問題集を解いた。携帯型のシーケンサーを持ち歩き、アルバイト先で作曲も行った。

理論学習はそれなりに効果があった。この本にも身体的練習だけでなく、理論の習熟が上達につながることがあると説明されている。指が押さえるコードの弦一本一本が、和声的にどんな意味を持っているか、知っていると楽譜の暗記が著しく良くなった。

また、毎日の練習では、まず上達するにつれ指の痛みや、疲れがなくなることを知った。指の運びは上手になればなるほど、ゆとりを持って弾ける。指の力も抜けて長時間の演奏も楽になる。演奏しながら、サビの部分の表現について考える余裕もできる。

世界のロック三大ギタリストに数えられるエリッククラプトンは「スローハンド」の異名を持つ。もちろん、運指が遅いのではない。動きに無駄がないので速いパッセージを弾いていても、ゆったりとして見える。

・Slowhand ERIC CLAPTON
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結局、ギターの道は先生に異常に上達が早いなと褒められた。大学祭でバンド演奏をしたりもした。でも、ヤマハの教室で隣の中学生が難しい曲を、初見で鮮やかに弾いてしまうのを見て、自分の限界を知り、断念した。幼少の頃から楽器に親しみ絶対音感のある人には適わないと感じた。しかし、意識的に上達の法則を毎日のように考え、実践してみた2年間は、貴重な体験だったなあと思っている。この本にはそうして苦労して学んだのと同じことが、あっさり明瞭に書かれていて、ちょっと(かなり)悔しい読後感ではある

評価:★★★☆☆

参考情報:

・不可能を可能にする最強の勉強法
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ちなみに学習法で最近読んだ本も紹介。著者は灘中、灘高を出て、東大理科I類合格、その後、国家公務員試験I種2年連続合格、NHK記者・アナウンサー、医師国家試験合格、政策秘書試験合格、衆議院議員公設第一秘書、東大大学院医学博士課程を1人で達成してしまった超人。次は政治家を目指しているらしい。内容については...。結構ありがちなアドバイスが多いと感じた。基礎能力が恐らく異常に高いから、できることのように思えた。生来の天才が意識的にどういう学習法を行い、推薦しているかという点では読む価値ありだが。

敢えて評点なし。

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2003年12月07日

情報検索のスキル―未知の問題をどう解くか

・情報検索のスキル―未知の問題をどう解くか 中公新書
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「検索」といっても、GoogleやYAHOO!の使い方の本ではなく、もっと広い意味での情報検索に関する考察の本。中公新書だし表紙も題名も地味。関西から帰る新幹線の車中で読む勉強本として買った。古典的な情報検索の心構え的な話だろうと、たかをくくって読み始めたら、いきなり冒頭の「ブルックスの方程式」の節からグイグイ引き込まれ、東京に着く頃には読みきって大満足。東京駅で隣の人に情報論を語りたくなって困った(笑)。

情報探索や問題解決のモデルが多数紹介されているのが特徴である。幾つか紹介してみる。詳細な解説が事例も豊富に使って、本の中では語られている。

■ブルックスの方程式

私たちは誰かと話をするとき、情報のギブ・アンド・テイクを意識したりする。一般的には、情報をもらうことで知識が増える、と考えがちだ。「情報の蓄積」だとか、「知識がひとつ増えた」、などという言い方をする。情報や知識はアタマの中に、足し算で追加できるもの、と考えることが多い。

しかし、この本では冒頭で次のような情報の定義を紹介して論を始めている。

情報とは「メッセージの受け手の知識に変化を及ぼすモノ」である。

これは先日紹介した情報デザイナーのリチャード・S・ワーマンが「それは情報ではない」というときの意味に近い。シャノン、ウィーバーによる1984年の論文「コミュニケーションの数学的理論」の中で、「情報とは受け手が「不確かなものを削減する」ものである」とした、定義にも似ている。

受け手の知識構造に変化を与えるものこそ情報なのだ。そして、情報学者ブルックスはその影響を数学的な方程式として説明した。知識は単なる足し算ではない。情報のやりとりとは、方程式の右辺(情報)と左辺(受けての知識構造)が影響しあう、もっとダイナミックなプロセスなのだ。
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日常の感性とこの方程式はマッチする。今の私の知識を変化させてくれない情報は役に立たないという簡単な話だ。

■バンデューラの多重ゴールモデル

著者があとがきで強く影響を受けたと告白した、学習心理学者バンデューラの社会的認知理論、多重ゴールモデルの話も興味深い。引用してみる。


つまり人間の日常行動は、(1)未来の望ましい出来事(遠隔ゴール)を心に描き、(2)個々の行動の成果を評価する基準(直近ゴール)を設定して、それを実現させる可能性の高い行動を起こすことで生じている

つまり人は何かをするとき、大きな目的とそれに向かう、幾つもの小さな目標を立てるということだ。そして小さな目標達成のために現実の行動を起こす。このモデルが物理現象や一般的な社会現象と異なるのは、過去が現在に、ではなく、未来が現在に影響していることにある。そして終始一貫して同じ目的のために行動しているのではなく、とりあえずは目の前の行動に必要な情報を探している。

■クールトーの情報探索プロセスモデル

クールトーの情報探索モデルは情報探索が進むにつれての、感情の動きを意識しているところが面白い。自己効力感(モチベーションやインセンティブのこと)が、情報探索や問題解決の成功に深く関与していることがこの本では繰り返し語られる。私たちは機械ではないから、効率よく作業を進めるには、心理面をうまく制御する必要がある。

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・Information Searching Process(Carol C. Kuhlthau)
http://www.ils.unc.edu/tangr/albanycourses/602fa00/kuhlthau_files/v3_document.htm

■ウィルソンの情報探索モデル

情報学者のエリスが考え、同僚のウィルソンが8段階のフローモデルにした情報探索モデルは、私たちがネットを使って情報を探したり、問題解決を行うのに非常に近いモデルと思った。

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・ウィルソン教授のサイト
http://informationr.net/tdw/

著者は、この本で、機械的な情報処理ではなく、目的や感情を持ち、特定の文脈に生活している生身の人間の情報探索モデルを研究対象とし、立論している。各プロセスを支援する情報アプリケーションやWebサイトは、こうした生身の人間を総合的に、支援する設計になっている必要があるのだなと勉強になる。

例えば、現状の検索エンジンは、ユーザが現在どのプロセスにいるか、どんな感情を持っているか、過去に何を調べてきたかをまるで反映していない。何度同じキーワードを入れても同じ検索結果が出るということは、当たり前のように感じてしまっているが、よく考えたら変である。知識のある誰かに同じ質問を繰り返ししたら、生身の相手は、普通は別の答えや拡張した答えを返してくれるはずなのだ。

生身の人間の情報探索を支援するには、こんなアプリケーションが求められているのではないだろうか?。

・検索すればするほどヤル気がでてくる検索エンジン(結果にたまにジョークも入る)
・調べれば調べるほどあと少しで終わりそうだと分かる検索エンジン
・送受信すると気持ちのいい、気分が爽快になるメールソフト
・びっしり書き込まれると、忙しさよりも充実度を感じさせるスケジュールソフト
・知識の量に応じて、適切な用語で説明してくれるヘルプファイル

・参考:情報と知識の設計者が持つべき情報と知識
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031202-01.htm
この記事とだいぶ重なりますが、考えをまとめたものを先日書きました。

ネットからは一歩離れて、普遍的な情報探索や問題解決を考えたい人に非常におすすめ。

参考URL:
・THE CONCEPT OF INFORMATION
http://www.capurro.de/infoconcept.html
ここに紹介される情報学者たちの理論も含めて最新の議論が読める。

評価:★★★☆☆

#なんでこんなことを最近考えているのかと言うと、会社で提供しているこの情報サービスをどう進化させていけるかを議論しているからです。4im.netについても、ご意見ご感想求む。

・マーケターのための発想支援サイト4im.net
http://beta.4im.net/index.html

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2003年11月26日

あなたもいままでの10倍速く本が読める

・あなたもいままでの10倍速く本が読める
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今日はあまり本気にならずにお読みいただきたく...。

本を速く読みたい。1冊読むところを3冊とか10冊読みたい。何十枚のビジネス文書を配布された直後に即効で把握してしまいたい。私もそう思っている1人である。教養や娯楽分野の、ノンフィクションや小説ならば、ゆっくり味わって読みたいが、ビジネスや研究の仕事に必要な知識は、高速に吸収したいものだ。

私は多分、読書ペースは遅くないほうだ。だいたい常に5冊程度を平行で読んで、週に1,2冊を読み終わる。最近はBlogにも書評を書く。ほとんどは往復3時間の通勤時間と就寝前の夜中の作業である。カバンには内容の硬い本と柔らかい本の2冊を入れている。枕元に重い本を1冊。技術実用化コンサルタントとしての知識レベルを維持したいと思うので、そんな生活をずっと続けている。しかし、進化の早い業界、知識の不足感はつきまとう。

だから、もっと速く読めればなあ、の想いは人一倍強い。そこで、全世界で20万人が使っている(らしい)、フォトリーディングのメソッドに手を出して見た。

フォトリーディングは次のプロセスで進める。

1 準備
     読む価値の事前判断と「ミカン集中法」で理想的な状態形成

2 プレビュー
     文書の持つパターンを把握し読書方針を検討する。キーワード把握。

3 フォトリーディング
     ここが重要。フォトフォーカスという周縁視野を意識してページを画像イメージとして記憶へ写し取る。

4 アクティベーション
     意図的、自然発生的に内容を想起する。そのためのマインドマップ等ツール類

5 高速リーディング
     従来型の速読。必要な箇所を斜め読みする。多くの人が普通にできる。

フォトリーディングでは、1ページを1秒で視覚的に読む。250ページの本であれば、5分程度で読む計算だ。ただし、この異常な高速さを、誤解してはいけないのは、他の速読法(読むのを高速化する)と違って、内容を詳細に理解することは目的ではない。つまり、読書ではない。要点抽出と概要把握が目的で、フォトリーディング後、必要な部分は、普通に読むことになるのである。

本の中では、「要点がかかわる重要なことがらが書かれているのは文書中の4-11%に過ぎない」という調査が紹介されていた。これは納得できる。もし、要点の場所を発見できて、連続して読めるならば、10倍高速化は理論的には可能なはずだ。

このメソッドはそれなりの説得力を持っている。練習が必要なプロセスが幾つかある。最初はできないが、少しずつできることもある。ページのつなぎ目に幻のページが浮き上がるブリップページ体験は私はできた。それが意味することは分からないが、もしかして、自分の能力が開発されているかもしれない感は感じる。本当にせよ、嘘にせよ、本気でなければ十分、楽しめる本だった。ホームページや電子文書の速読の記述もある。

なお、巻末の速読に関する海外参考文献のリストは、いい。少しずつ原文を取り寄せて、本書の科学的根拠も判断していきたい。

評価:★☆☆☆☆(現段階)

そして、読了後、一ヶ月間、10冊程度で実践してみた。

結論としての素直な感想。

できなーい(笑)。い、いや、できているのか?。

できたのかどうか判断は難しい。身近に完全にできるひとがいれば信憑性は高まるが、とりあえずいない。本書の通りにやって1週間もすれば、本のキーワードを書き出したり、簡単な要約はつけられる。ただ、その後、ゆっくりと同じ本を読み、その読み方で正しかったか、正確さを検討すると、100点満点で30点から40点といったところだ。また昔の私でも、集中力次第でそれができていたのかもしれない。

メソッドの有効性は否定もしない。ただただ判断不能なのだ。漠然と視線を動かして斜め読みするならば以前から日本語、英語の論文系資料のチェックではやっていた。それとの違いが仕事上の効果として、まだ明確にならない。30分程度でその本が分かったつもりには慣れるのは確かだ。

私の練習が足りない可能性がある。諦めていない。また2ヶ月程度して進展があれば、このBlogで報告させていただきたい。

なお自動要約の技術の情報(主に研究)や変わった取り組みを参考として最後に紹介。機械が勝つのか人間が勝つのか、速読メソッドビジネスの行方や如何に。

・要約機能付き市販ソフト
http://www.lr.pi.titech.ac.jp/pub/research/summarization/software.html
北陸先端科学技術大学院大学自然言語処理学講座による。自動要約機能のついた市販ソフトの紹介や、MS Wordなど各製品の要約の仕組み、要約度による変化の例など。

・テキスト自動要約に関する研究
http://www.lr.pi.titech.ac.jp/pub/research/summarization/
東工大奥村研究室による研究とガイド

・Webの要約研究
http://research.nii.ac.jp/ntcweb/index-ja.html国立情報学研究所、NCTIRのWeb研究。

・ニュース文の自動要約
http://www.nhk.or.jp/strl/results/activity/pdf/rd60-1.pdf
NHK技研がニュース要約技術を一般向けにさらっと説明。言いかえで短縮。

・動きに基づく料理映像の自動要約手法
http://www.mtl.t.u-tokyo.ac.jp/Research/paper/2002/J02-kenkyukai-reiko-1.pdf
愉快。料理番組を圧縮し、手順理解を妨げずに8分の1サイズの要約映像を作る。

・沖電気、メールを自動的に要約するサーバー
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/6215.html
「「早解サーバー」は自動でメールの要点を抽出し、携帯電話などに送信するメールサーバー。冒頭や文末のあいさつ文などの文脈を判断した上で不要と思われる部分を省略し、携帯電話などに送信する。」必要なのか?90万円〜。

付記:
私はこの本に書かれていることが科学的に真なのか知りません。またこの種の内容で、高額なプログラム教材やセミナーが存在しますが、特に推奨するものではありません。読者は大人ばかりとは思いますが念のため。同時に「速聴」に取り組む物好きで野心的な男より。


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2003年11月23日

三色ボールペン情報活用術

・三色ボールペン情報活用術
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情報との出会いも一期一会だと思うことだ。「この情報とは、この瞬間を逃したらもう会えない、今日を限りにもう一生出会うことはない、そのくらいの気持ちで接する。

情報術の売れっ子作家である著者の言葉。これって大事なことだと思う。たまに、会議の直前になって「じゃあ、今日は橋本さんが最初に全体のレクチャーしてね」と頼まれたりする。慌てて配布予定の書類に目を通すのだが、そういう、時間が限られていて緊張感のある時の方が、同じ文書から、たくさんの量の情報を読み取れることがある。

この本の提唱する三色ボールペン情報活用術は至ってシンプルな方法論である。

「客観的に最重要なものは赤、まあ大事なものは青、主観的に大切だと感じたものは緑で、線を引いたり、丸で囲ったりする、それだけだ。

ただそれだけ。細かい公式ルールはほとんどない。そして基本的に自分の読解のための、色分けである。他人のために色分けするのではないのがポイントのように思った。

著者は情報と向き合う術について、聞きなれない3つのノウハウを語っている。自分なりに要約してみると恐らく、こういうことになる。

1 くぐらせる
   外側にある情報を内側へ自分のフィルターで取り組み記憶に残す
2 立ち上がらせる
   文章の中の重要な部分、キーワードを意識して浮き上がらせる
3 編み出す
   緑で色分けした自分なりの発想、着想からアイデアを生み出す

2週間ほど実践してみている。効果は結構あったなあと思って続けている。3色に分けようという目的意識があるために、普段は頭を素通りしてしまう文書が、記憶に残りやすくなっていくのだ。著者の言う、情報との一期一会感、緊張感が強まるということだと思う。

この本の著者は大学の教授である。情報活用術の本はたくさんあって、学者の先生や、それ自体のノウハウを売るのが仕事みたいな人の著作は、どうも一般ビジネスマンのノウハウとずれていると感じることもある。この本も、ビジネスの具体的なワークフローや特定の業界の情報術にはあまり触れられていない。若干、そういう面もあるのだが、方法論と効果の分かりやすさ、実践のしやすさがそれを補っている。いい本。

ところで、一本に赤、青、緑の「3色ボールペン」は実はあまり売られていない。普通はこれに黒が入って4色ボールペンが多い。文房具屋で何本か試したが、ゼブラの4色ボールペンが使いやすかったのでそれにした。決して3色の3本のボールペンを使ってはいけないらしいので注意。

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評価:★★☆☆☆

■メールの色分けは便利

個人的に実践している色分けはメールである。Beckyというメールソフトは、登録したキーワードがメール本文にあると色分けで表示してくれる。3色にできると便利なのだが今のところ一色のみ。自分や知人の名前、興味のあるキーワードを登録しておくと、メールマガジンなどを流し読みしていても見逃さないので便利。(きっと他のメールソフトにも色分け機能はあるのだろうけどあまり利用者は少ない?)


クリックで拡大3colors02.JPG

■色のバリアフリーという視点

色と情報について調べていたときに以下のサイトを見つけて、普段気がつかなかったことを教えてもらった。色分けで情報を見やすくするつもりが、何パーセントかの人には逆に見えにくくなってしまうことがある。気をつけたい。

・色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション
http://www.watsonkun.com/shujunsha/barrierfree.html
日本人の20人に1人は色覚異常であるとのこと。色のバリアフリーについて書かれたページ。

・色覚に障害を持っていたとしたら、あなたのサイトは見えるでしょうか ?
http://www.microsoft.com/japan/msdn/columns/hess/hess10092000.asp
Webのアクセシビリティは浸透しつつあるけれど、色の問題に気をつけようという話はあまり聞かない。このページは実例があって勉強になる。マイクロソフト提供。

#本記事のメールサンプルは、お手伝いさせていただいている、デジハリ卒業生で構成するプロタマの内部MLにコンサルタントの安藤氏が流している濃いクリッピングメールから勝手にパクらせて頂きました。リンク張ったから許して>安藤氏。

#記事自体も3色で色分けしてみました。赤と青だけ読めば要旨が分かり、緑を読めば、私の個人的、主観の意見が伝わっていたら成功といえそう。

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2003年10月29日

論理的に思考する技術―みるみる企画力が高まる「アウトライン発想法」

・論理的に思考する技術―みるみる企画力が高まる「アウトライン発想法」
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先日の話の続き。駅のキオスクで売っていたので通勤往復で読みきってしまった本の紹介。

思考法とタイトルにあるが内容は副題のアウトラインプロセッサ一辺倒の本。面白かったのは後半の実践部分。例えば、著者が仮想のレストランの販売企画を、アウトラインを使って考えていくプロセスを段階を追って説明される。なかなか他人のアウトラインやマインドマップは見る機会が少ないので、参考になった。

アウトラインを文章化する過程において、説得力ある文章を書くには、収集した事実をいかに整理して見せるかが重要とし、見せたい事実が多くムダ、モレ、重複が起きて混乱しそうな場合、「あらかじめ用意されている「情報整理の枠組み」を利用するのが良い」と著者は述べている。そして具体的な例として、

1 メリット・デメリット
2 自社・競合・利用者
3 製品・価格・プロモーション
4 SWOT(強み、弱み、機会、脅威)

などの枠組みを紹介している。

確かに枠組みのバリエーションを持っているとアウトラインの方法は文章作成がやりやすくなる。私は自分がよく使う枠組みを他にも考えてみた。

・ビフォアー&アフター(使用前、使用後)
     Webのリニューアルなど。キャプチャを並べて違いを一目瞭然に。
・進化論(3段階や4段階)
     過去から未来への進み方を説明しやすい
・100の方法(nの方法)
     情報が多くまとまらない場合箇条書きしてnの方法とすれば納得してもらえる(こともある)
・3か条、5か条、7か条
     「〜すべし」式にまとめる。収まりがよく、結論としても分かりやすい

まだまだたくさんありそうだ。

こういった整理の枠組みがツールに予めたくさんセットされているとビジネスでは使い勝手がよさそうだ。2年位前に、米国Correlate社が、アウトライン的な階層構造に情報やファイルを整理するWindowsデスクトップベースのソフトを出していて、試用した際、とても気に入ったことがあった。日本語版を待っていたのだが、先ほどみたら、今はNotesやMS SharePointに組み込む企業向けのソリューションとなってしまったようだ。

・Correlate For KMap(日本取り扱い富士ソフトABC)
http://www.fsi.co.jp/kmap/

・付属アウトラインテンプレートの例(これくらいまで落とし込んでくれるとよいと思う)
http://www.fsi.co.jp/kmap/presentation/TEMPLATE.files/frame.htm

・Correlate
http://www.correlate.com/

以前のように個人でも使えるツールをリリースしてほしいのだが。

なお、この本では、アウトラインツールとしては、マイクロソフトWordのほか、Mac用のACTA、Inspirationが紹介されている。

・ACTA
http://www.a-sharp.com/acta/
・Inspiration日本取り扱い(脱パワーポイントを考えるヒトにはとてもよいソフト)
http://www.threes.co.jp/
・Inspiration米国オフィシャル
http://www.inspiration.com/

著者は比較的オーソドックスで丁寧な使い方をするのでアウトラインの入門者にもよさそうな本だ。

評価:★☆☆☆☆

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2003年10月20日

トップに売り込む最強交渉術

・トップに売り込む最強交渉術
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全米ベストセラーの営業ノウハウの著。米キャノン、3M、HPなどで採用された実績があり、40万人がこのプログラムを使って営業に成功したという。組織のVITO(Very Important Top Officer)、つまり社長やCEOに対して、どうセールスをかけるべきか、戦略が述べられている。

本の帯でも紹介されている、おすすめ営業プロセスは、

1 準備   企業調査は最低限で、業界情報に通じておく
2 手紙   見出しはリスク・利益の数字を示しつつ3行以内
3 電話   トップをあなたの話に割り込ませる
4 プレゼン 「利益」から説明を始める
5 成約   トップから推薦の言葉をもらう

という手順だ。ここでいう、手紙はメールではなく普通の手紙(Snail Mail)のことである。手紙は電話の布石に過ぎないが、内容はVITOにではなく秘書に歓迎されるように書けとのこと。将を射ようとすればまず馬から、ということか。

トップ営業を成功させるには、企業組織の「影響力と権限のネットワーク」を正しく理解しておくことが必要だという。そこには4つのカテゴリに属する人間が住んでいる。彼らは同じものではなく、異なるものを探しているのであって、適切な与え方で求めるものを与えないとセールスはうまくいかない。

1 VITO(実質的最高意思決定者)  利益を探している
2 マネージャー(マネージャー)  利点を探している
3 シーモア(技術に詳しい識者)  特徴を探している See Moreが口癖
4 消費者(一般の社員達を指す)  機能を探している

これら4カテゴリの人々の上に立つVITOに、具体的にどのような説得や質問が有効か、を教えてくれる本だ。

企業のトップは忙しくて一介の営業マンのアポイントなど相手にしてくれない、と諦めるのは早計だ。会社の利益には目がないトップたちは、利益をビジュアライズしてやれば、何時間でも会ってくれるのだ。

・著者のオフィシャルWebサイト
http://www.sellingtovito.com

私は、ビジネスにおいて、説得や交渉という営業技術は、瑣末なことではなく、むしろ本質だと感じている。どんなに良い技術や商品があっても、買い手の人間組織を動かすことができないならば、使われないで終わるからだ。開発生産の努力もそれでは無駄になる。説得や交渉の過程で、逆に、商品の問題点や可能性が明らかになることも多い。

究極の営業とは売り手と買い手に電話を2本かけるだけで翌月、自分の口座に振込みが発生することだ、と私は考えている。それによってプロセスに関わる三者がそれぞれ利益を産み、次の取引ゲームを望む関係を維持することが肝要だ。この本の語るトップ営業は、最も純粋にこの理想形を実現できる近道だと思う。

少しITに話を引っ張ると、この汗臭く手間のかかる交渉ゲームの一部は、近い将来ソフトウェアエージェント同士の交渉に置き換わると考えている。既に商品の最低価格を探すロボットや、オークションで自動入札を行うロボットが、ネット上を動き回っている。BotSpotのShopping Botsディレクトリにはその種の例が多数紹介されている。

・BotSpot(ソフトウェアエージェントのディレクトリ)
http://www.botspot.com/

買い手も売り手も仲介者もソフトウェアエージェントになると、ナッシュ均衡やベイズ理論といった「交渉と意思決定」のゲーム理論の研究が、この分野で莫大な利益を産む可能性があると思う。足で稼いだ営業マンのノウハウが、こういったボットにフィードバックされる日も近いのではないか。この金脈を掘り当てられないかと今、密かに研究中である。

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2003年10月12日

3分以内に話はまとめなさい―できる人と思われるために

・3分以内に話はまとめなさい―できる人と思われるために
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最近の私の興味は情報の要約やビジュアライズということにある。

米国シリコンバレーには「エレベーターピッチ」という言葉があるらしい。30秒でエレベータが1Fに着く前に、乗り合わせた投資家に事業プランを説明するという意味。米軍の危機管理では、3分間で報告(3Minutes Report)し、15分で決断(15Minutes Dicision)を下すというマニュアル規則もあるらしい。情報の価値を高めるには、その内容と同じくらい、どう伝えるか、が重要な要素である。タイムイズマネーのビジネスの世界では特にそうだ。

私もこれが苦手である。もともと話し好きで、1時間でも2時間でも話すことはできる。逆に3分で同じ内容を要約してみよと言われると自信がない。ときどき、業界著名人と会うことができても、名刺交換の数十秒で、自分の事業や商品の説明をうまくできないのが悩みだ。それでこの本を読むことにした。

著者は弁護士。日常、難解な法律問題を一般人に要約して話すことに慣れている。

・3分間で、ポイントを3点、キーワードを中心に話す
・真善美(それぞれ、誠実さ、前向きさ、表現の美しさ)が短時間で感動を与える
・あがり性のひとはゆっくり始めて、自分のペースへ
・表情、視線、対人距離、服装、姿勢など非言語表現が情報伝達の97%を占める

など多くのノウハウが、2から3ページずつ語られていく。ちょうど、ひとつのノウハウが声を出して読むと3分で読める量になっているのは構成としてうまい

一番印象的だった章。ある結婚披露宴で、新婦の父が挨拶に感極まって「本日は...」と話しはじめで絶句。沈黙の数十秒と沸き起こる聴衆の拍手というシーンの紹介を使って、話の「間」の重要性を説く部分。つきなみな挨拶をするよりも、メッセージは直截に伝わったわけだ。

この著者は文章が上手だ。ビジュアライズができている。3分間で話せるテンプレートを提供する本ではないが、3分で効果的にメッセージを伝えるための心構えや著者の経験の紹介は、具体的で参考になった。

評価:★★☆☆☆


Posted by daiya at 22:02 | Comments (2)

2003年09月22日

会議が絶対うまくいく法

最近こんな本を読んで、気になる情報があったのでメモに残していた。

・会議が絶対うまくいく法
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会議の運営方法についてのベストセラー本であるが、こんな一節がある。


社会心理学者のジェイ・ホールが行った実験に「月で遭難したら」というものがある。彼はさまざまな状況下でグループはどのような決断を下すのかを研究して、「グループが協力して導き出す結論は、各人が考える方法の平均値を上回る。もっとも優れた個別のアイデアと比べても、はるかに優れた結果になることが多い」(PsycologyToday1971年11月号51ページ)と結論づけた。

この実験は、「宇宙船が月に緊急着陸し、320キロ向こうにある母船まで月面を移動しなければならない、船内にあるもの(酸素ボンベ、ロープ、水、コンパスなど多数)のうち、何を持っていくべきかを優先順位つきで選べ」という問題を被験者に一人で、そしてチームで考えさせ、NASAの正解と、単独時及びチーム時の回答の差を正しさとして計算する、というものであった。

つまり、一人で考えるより、皆で考えた方が良いアイデアがでる、という実験結果が示されたわけだ。つまり「三人寄れば文殊の知恵」を実験が証明したことになる。

マウスやハイパーテキストを発明したダグラス・エンゲルバート博士は、近年、「Bootstrap Alliance」という知識コミュニティによる知の相乗効果を研究している。彼流に「三人寄れば文殊の知恵」を表現すると「CollectiveIQ」という言葉になるらしい。ネットでデータを集めることはできるようになった。次は、各自が集めたデータを、「集合知」として企業組織や個人が、情報に、知識に、そして知恵に変えていくかが重要な問題だ。Bootstrap Allianceのサイトには博士の知見の詰まったペーパーが多数公開されている。

・【INTERVIEW】マウスの誕生から30年、ダグラス・エンゲルバート博士に聞く
http://ascii24.com/news/i/keyp/article/1998/12/08/614412-000.html

・ダグラスエンゲルバートのBootstrap Alliance
http://www.bootstrap.org/

今日の私のコラムは、日経先端技術情報センターへの寄稿記事を途中から改編したものです。オリジナルのフル記事に関心のある方はこちらへどうぞ。


・第1回■ひとりで考える、皆で考える、どちらが有益な結果が出る?
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030805-01.htm
・第2回■成功する会議の条件
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030812-02.htm
・第3回■オンライン会議ツールとコラボレーション効果
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030819-01.htm

Posted by daiya at 07:35 | Comments (0) | TrackBack

2003年09月18日

60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法

60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法
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時代の寵児。出す本が次々にベストセラーの実践マーケッター神田昌典氏の集大成的な作品。文章がうまい。いや、とにかくうまい。中小企業のマーケティングのツボを芸術的なまでにコンパクトにまとめあげている。彼の本を読むと、そこで公開されるノウハウを、明日からちょっと試してみようかなと思ってしまう。

この本が扱っているのは一般的で応用の広い、商品ライフサイクルのS字カーブ理論や、市場分析手法、お金をかけないでも有効なゲリラマーケティング戦略、戦略的意思決定といったマーケティングと経営の基本テーマだ。

神田氏はMBAをお持ちだが学者というわけでもないし、純粋に現役のマーケッターだとも思えない。その「スター戦略理論」というのも、古典的なマーケティング手法やMBAコースの内容、中小企業のよくある経験則を集大成したものであると言うこともできる。独自性はあまり感じない。しかし、それでもなお、彼の本は経営に悩む経営者にとって読む価値があるものであり、一流の中小経営コンサルであると私は感じる。

彼の本はわかりやすく、読者を楽しませながら、やる気にさせるからだ。一般向けのマーケティング書籍の役割はつまるところ、そんなものだろう、と思う。これから起業しようと思っている人、経営を志す学生には特におすすめ。

内容の高度さから考えて、マーケティング本のマニア層、大企業の経営者、研究者には物足りなかったり、ピンとこないかもしれない。そういう人であっても一般に広く売れる経営書籍というのがどういうものなのかをこれを読んで勉強することはできる。

ちょっと穿った見方で評論をしちゃいましたけど、純粋にいい本だと思います。

評価:★★★☆☆

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2003年09月10日

ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略

ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
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営業するときに、フィーチャー(特徴)、アドバンテージ(利点)、ベネフィット(利益)を区別して話すべき、という部分には納得。

例えば、コーヒーカップを売るのであれば、

フィーチャー :特徴
このコーヒーカップには取っ手があります
アドバンテージ:利点
それがあなたの指を火傷から守るでしょう
ベネフィット :利益
それはあなたが避けたいと思っていたことですよね

という分け方になる、と。特徴の利点を顧客の利益として説得しないといけないわけだが、売り手は結構これら3つの違いを混同してしまうので気をつけようとのこと。確かに営業は特徴や利点を夢中になって説明しても、お客さんの立場から見た利益が明確にならないと販売って難しいですねえ。ソリューション(問題解決)を売ることはモノが見えないソフトウェアビジネスではとても重要そうです。

翻訳がもっと、こなれていれば面白い本のような気がしました。

というわけで1時間後に本日最後の営業アポ。上記ポイントに気をつけて、行って参ります。

評価:★★☆☆☆

Posted by daiya at 16:10 | Comments (0) | TrackBack

2003年09月09日

数学で身につける柔らかい思考力−ビジネスと日常の疑問が解ける!−

数学で身につける柔らかい思考力−ビジネスと日常の疑問が解ける!−
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目次をまず紹介。

・どうすれば理想の結婚相手を選べるか?―順次決定における37%ルール
・なぜスポーツの世界では番狂わせが起こるのか?―劇的逆転を演出する数学
・賭けるべきか?降りるべきか?―クイズ番組と決定理論
・なぜエレベータにいつも待たされるのか?―待ち時間削減のロジック
・なぜタクシーメーターは降りる直前に上がるのか?―料金

世の中はいろいろな数字と方程式に支配されていて、それを知ると賢くなった気がします。

「どうすれば理想の結婚相手を選べるか?」。あなたが男性で、順次10人の女性とお見合いできるとして、一度断ったら、前の子の方が良かったなあと思っても、その人とは結婚できない。そういう状況にいる場合、何人目でプロポーズするというのが確率的にベストの相手と結婚できる方法でしょうか?

数学的な答えは「初めの3人とデートして、その後、その3人よりも高得点だと思う人がみつかったらすぐにプロポーズせよ」という戦略だそうです。

「エレベーターはなぜ待たされるのか?」。エレベータは15秒待つとイライラしはじめ、25-30秒で何人かがこれはダメなエレベータと思い始め、40秒経過してしまうとみながそう思うそうです。いいエレベータを設計する方法論などが数学的に語られています。

ちなみに機械の速度は変わらないのに、エレベータの前に鏡を置いたら、待ちを感じさせなくなって、誰からもクレームがつかなくなったという実際の事例もあるそうで、現実の問題の解はさらに複雑ですな。

こんな日常の数字やロジックが語られていて、コーヒーブレイクの時間に知ったかぶりで語れば、周囲からへえー、へえー言われることは間違いないでしょう。(経験者は語る)

評価: ★★☆☆☆

Posted by daiya at 18:54 | Comments (0) | TrackBack

2003年09月06日

即効!実践講座「イソズミ・マジック」で業績アップ

即効!実践講座「イソズミ・マジック」で業績アップ


著者の五十棲 剛史氏は、船井総研で、会長、社長に続いて一人で利益1億円を稼ぐカリスマコンサルタント。同社で4期連続ナンバー1、しかも1963年生まれと比較的若い。そういう人というのは日々どういうことを考えて仕事をしているのか気になって読んでみた。

即時処理が成功の秘訣、お客様に紹介を意識させれば紹介は増える、ブレイクスルーは常識を変えることから、など、朝礼のお話チックなテーマが多いが、文章が分かりやすく、身近な例を引くことで、自然に受け入れられるようなアドバイスになっている。当たり前のことを気がつかせてあげる、やる気にさせてあげる、というのがこの人のコンサルとしてのうまさのような気がした。

この本はメールマガジンの内容の再編集のため、ひとつのアドバイスが3,4ページで読みきれる。電車で読むのに適している。

評価: ★★★☆☆

Posted by daiya at 18:26 | Comments (0) | TrackBack

2003年09月05日

成功と自己実現の黄金律

成功と自己実現の黄金律

成功哲学コンテンツのビジネス化ではデールカーネギーと並んで有名なナポレオンヒル。この出版社は相当儲かっているらしい。半端ではないらしい。どういうビジネスをしているのか非常に気になって、この本を読み、ついていた資料請求ハガキにびっしり書いて返送してみた。良い見込み客に見えるように、熱っぽく。

分厚いパンフレットと200万円以上もする成功哲学プログラムの案内が届く。成功手帳ももらった。

そこから1ヶ月に渡って、日本の版権会社の濃い営業電話が会社と自宅にかかってくる。営業の勉強にもなるので、買う気はあまりなかったので申し訳なかったけど、10回くらい話した。この会社が出している成功哲学の1500円くらいの本だったら、営業に欲しいというと無料で2回も送ってくれた。

私「今は忙しいですから」、営業「忙しい方にこそ必要なプログラムでございます」、私「毎日テープを聴くなんて面倒ですよ」、営業「速聴プログラムをご用意しております。これを使うと2倍速、3倍速で聞き取れて、潜在意識に刷り込まれます」、私「ユーザの声にあんまり著名人いないですが」、営業「橋本さまのような既に経営者の方の場合、当プログラムで成功されてもユーザの声に登場したがらないんですよ」

遠まわしに断っても断ってもひたすらポジティブトークで迫ってくる営業マン。ついには本を届けに会社に突然現れたのは驚いた。見込み客一人当たりの獲得コストって数万円くらいかけていもいいのでしょう。熱烈アピールでした。

個人的には、飽くまでツールとしての、ポジティブシンキングとかコーチングとか大好きである。自信やモチベーションを維持できればいろいろなことが自然にうまくいく。それはなんとなく分かる、けどね、高いですよ。向いた人には、価値のあるプログラムではあると思いましたけど。

うーん、なんていうか、書籍よりも究極ポジティブマインド実践中の営業マンとのやりとりが面白かったですね。

評価 ★☆☆☆☆

Posted by daiya at 17:17 | Comments (3) | TrackBack