2007年11月11日
俺たちのガンダム・ビジネス
ガンダムのプラモデルはいかにして生まれたのか。
30代から40代でガンプラファンならば、懐かしいエピソードとカラー写真も満載でページをめくるのが本当に楽しい本である。バンダイ模型の元社員で、ガンプラブームの仕掛け人と設計者の二人が、ガンプラ絶頂の栄光の日々を振り返る。
以前にも書いたが、私も小学校時代にかなりのガンプラ・ファンだった。
・ガンダム・モデル進化論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003091.html
この本はデータブックとしてもよかった。
・機動戦士ガンダム THE ORIGIN、MGアッガイ、ターゲット イン サイト
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004854.html
そして今年の正月にはアッガイをつくった。
テレビ放送の「機動戦士ガンダム」は当初は不人気だったことはよく知られている。しかし、実際の番組を見てヒットの可能性を予感した二人は、当時は競合他社がおさえていた版権の獲得に乗り出し成功する。半信半疑の設計開発。そして視聴率低迷で番組打ち切りになった半年後にガンプラの第1弾が発売された。当時キャラクターものとして異例の144分の1、100分の1という統一スケールを採用した。
「万人向け」にとらわれず、投書や電話をしてくるマニアの意見を丁寧に聞いて、短期間で製品にフィードバックする。たとえば足首が動かなかったザクを出荷分のモデルでは動くようにする。当初はなかったビームサーベルのおまけをつけるなど、マイナーチェンジにもこだわった。
ファンの熱い支持により、それまでの業界の常識では考えられないほどの大ヒットとなり、現在までにシリーズは900点に及ぶモデルを発売してきた。世界的に見てもプラモデルのここまでのヒットは例がないようである。
「好きな仕事をしているからヒット商品が生まれるのではない。その仕事を好きになるほど熱中しているからこそヒット商品は生まれるのである。」その後のビジネスで経営者として成功を収めた著者の二人は、当時を振り返って、そう成功哲学を総括している。
2007年10月14日
統計でウソをつく法
「この本は統計を使って人をだます方法についての入門書のようなものである。どちらかといえば、サギ師のための手引書のようなものであるが」とまえがきにあるように、統計にだまされないために、だます方法を教えた本。原著は1954年出版、邦訳は1968年出版だから半世紀のロングセラー。
「統計というものは、その基礎は数学的なものであるが、科学であると同時に多分に技術でもあるというのが、本当のところである。」。たとえば「平均」には平均値(算術平均)、中央値(中位数)、最頻値(並み数)の3種類がある。どれも「平均」として使うことができるが、大きく数字が異なることがあるという基本や、グラフ化することで差異を拡大して印象づけるテクニックなど、実例をたくさん使って説明している。
「米西戦争の間、米軍の死亡率は1000人につき9人であった。一方、同期間のニューヨーク市における死亡率は、1000人につき16人であった。さて、米海軍の徴募官たちは、最近、この数字を使って、海軍に入隊した方が安全だと宣伝していた。」
軍隊には頑丈な成人男子しかいないが、都市部には老人や赤ん坊がたくさんいる。なにもなくても都市部では人が亡くなっている。
「今日では、次のような事柄のどの二つをとってみても、その間にプラスの相関関係を認めることは容易にできるのである。それらはすなわち、大学生の数、精神病院の収容者数、タバコの消費量、心臓病患者数、義歯の生産量、カリフォルニア州の学校教師の給料、ネバダの賭博場の儲け。」
風が吹くと桶屋が儲かる式の三題噺がいくつも作れそうだ。
統計を見るときには
1 誰がそういっているのか?
2 どういう方法でわかったのか?
3 足りないデータはないか?
4 いってることが違ってやしないか
5 意味があるかしら?
というポイントに気をつけよとまとめられている。著者が取り上げた事例は、新聞やテレビ、政府や大学が発表する数字が多かった。権威の発表する数字を鵜呑みにしてはいけないわけだ。
ところで最近、統計で疑問を持ったのが、新聞社発表の、この記事である。
・大学発VBの経営厳しく、55%が経常赤字・06年度日経調査
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20071010AT1C0900409102007.html
「 大学発ベンチャー企業の経営が厳しさを増している。日本経済新聞社が9日まとめた大学発ベンチャー調査では、回答企業の55%が2006年度の経常損益が赤字で、7%は「3年内に会社を売却する可能性がある」と回答した。政府が2001年に1000社育成計画を打ち出した大学発ベンチャーの数は1500社を超えたが、社員や営業ノウハウの不足から事業を採算に乗せられない姿が浮き彫りになった。(詳細を10日付日経産業新聞に)」
詳細な記事を読んでいないので恐縮だが(これは同じ発信者による要約記事)、この記事は統計を使ったミスリードではないか。
一般的に大学発ベンチャーは技術開発系であろう。営業系と違って初年度は赤字になるのがふつうである。また、そうしたベンチャーの多くは大企業への「売却」が目標である。「3年以内に売却」見込みがある企業の中には、成功が見えている会社も含まれているのではないか。さらに言えば、55%が赤字を裏返せば、45%もの企業が黒字なのである。ベンチャーキャピタルの投資成績として考えたら、悪くない数字であろう。そもそもベンチャー市場は多産多死、競争淘汰の中から、少数の大きな成功者がでてくる世界である。平均成績が悪いからといって、全体が悪いと言うことは言えないと思う。
2007年09月27日
スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
「日本でふつうに暮らしているような生活者が、自分なりに楽しく生活するためには、経済のしくみをどう理解したらいいのか」を、経済学者がスターバックスのメニュー体系のような、身近な事例を使って解説する本。
ソフトバンクに携帯を乗り換えたばかりの私は、第4章の「携帯電話の料金はなぜ、やたらに複雑なのか」と最終章のケーススタディが、特に面白かった。店頭では絶対に教えてもらえなさそうな携帯電話各社のサービスモデルの背景が書かれている。
私の携帯乗換えの直接の決め手は、特定のソフトバンク利用の家族間が無料の割引になるからだった。トータルで見ると家族や親族間の通話がほとんどだったので、一族郎党で一斉に切り替えた。なぜソフトバンクはこれが実現できて、ドコモはできないのか。それはソフトバンクのシェアが低いから、大半のユーザの通話は、他社携帯との有料通話になるからだ、と著者は指摘する。シェアが高いと実現しにくい割引というものが存在するわけだ。規模の経済を逆手に取ったような戦略なわけで、後発参入者の攻め方の例として興味深いと思った。
携帯電話の料金体系が異様に複雑になった原因は、利用者が料金プランを変更する際の取引コストが高くなると、利用者は料金プランを最適化せずに放置するので、携帯電話会社にとって利益をもたらしやすなるから、らしい。取引コストとはすなわち情報を調べる手間のことだ。
この本には多数のビジネスのしくみが紹介されているが、ほとんどは取引コスト、情報コストが最終価格差の原因になっている。消費者はしくみを知っていれば得をする、というケースが増えているということでもある。
あとがきでは「つまり、他人と同じ好みや行動パターンの人は、産業の技術進歩や経済のしくみの変化によって、取引コストを節約しやすいのです。この点だけをみると、他人と異なる好みや行動パターンの人は、取引コストの節約の面で損をする可能性があります。」と著者は書いている。
特に人と異なるパターンの人ほど、経済のしくみを勉強する価値があるということである。
サービスの料金設計を考えるビジネスマンにもおすすめ。
2007年08月28日
美徳の経営
知識経営論の生みの親の野中郁次郎教授とナレッジマネジメントの大家 紺野登教授の共著。このペアの著書では他に「知識経営のすすめ」などがある。
・知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001734.html
「分析的アプローチでは、戦略は限定された事実や過去の事実に基づかざるをえないし、また客観的である反面、どうしても同質的になるために、不確実で複雑な環境では、他社との差別化が生まれにくくなる。もちろん競争上の脅威を分析し、それにしたがって内部資源の確保を行うことは重要なことではあるが、それだけでは戦略は決定されない。一方で、サプライズのあるような独自性が顧客からは求められている。そういう多元的な、創造性が求められる戦略の時代にわれわれはいる。」
著者は知識経営のエキスパート。現場経験を持たず分析的な形式知に偏重しているMBA流の経営はもはや時代遅れであり、これからは人を動かす力としての美徳を重視した経営の時代だと宣言する。
「もはや論理分析的な判断や意思決定ツールだけでは成り立っていかないのである。これからの社会や経済、企業の未来を読み解く必要がある。そのためには将来的な返還に対する感受性(センスメーキング能力)や、未来に対する知的方法論あるいは価値をデザインする「綜合力」を持たねばならない。知識社会・経済に基礎をおく知識経営へと時代はすでに変化しつつある。知識経営とは人間を基点に置いた経営である。知識を起点にした経営では、成員の「志」を具現化するような新たな知の仕組みや組織が要請されるのである。」
美徳とは「共通善(Common Good)を志向する卓越性(Excellence)の追求」と定義されている。日本的経営の礎を築いた本田宗一郎や松下幸之助の目指したのも美徳の経営であったし、貧者のための金融に徹して成功しているグラミン銀行も美徳の追求である。その追求のために知や力を賢く使う「賢慮型リーダー」が最終的には勝つという、経営の王道を説いている。
「賢慮型リーダー」の要素としては、次の6つが挙げられている。
(1)善悪の判断基準を持つ能力
(2)他者とコンテクストを共有して共通感覚を醸成する能力
(3)コンテクスト(特殊)の特質を察知する能力
(4)コンテクスト(特殊)を言語・観念(普遍)で再構成する能力
(5)概念を共通善(判断基準)に向かってあらゆる手段を巧みに使って実演する能力
(6)賢慮を育成する能力
哲学なき経営は破綻する時代になったことは、企業の不祥事事件を見れば明らかだ。好調な企業をみても、たとえばグーグルなら技術者の理想を掲げた組織風土、アップルならデザインの重視、など、売り上げや利益以外の価値に最適化する成功企業が多い。経営学は経営哲学であるべきで、経営者は哲学を持つべき時代になった。いや、そうなるべきなのだ、もともと。そう確信した、書いた人にも、書かれていることにも志のある本だった。
2007年06月19日
経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには
とにかく面白い視点が満載でいっきに読めた。
経済学を使って、世の中の仕組みをひもとく。副題の「お金がない人を助けるには」だけではなくさまざまな話題がある。
・16歳の時の身長が現在の賃金に影響している「身長プレミアム」の理由
・重役の美男美女度が高いほど企業の業績がよいのはなぜか
・「イイ男は結婚している」のか、「結婚してイイ男になる」のか
・プロスポーツチームは強ければ強いほど儲かるのか?
・野球の勝敗における監督の力ってどれほどあるのか?
などなど。
気になる俗説の真偽究明や、意外な事実の深追いという導入が多いので、興味を持って読みやすい。そして、ちゃんと最後は経済学的な説明をつけて読者を納得させる。
年功賃金と成果主義について真正面から考える部分が特に個人的には勉強になった。「年功賃金はなぜ存在するのか」について、著者は4つの仮説があるという。
1 人的資本理論
「勤続年数とともに技能が上がっていくため、それに応じて賃金もあがっていく」
2 インセンティブ理論
「若い時は生産性以下、年をとると生産性以上の賃金制度のもとで、労働者がまじめに働かなかった場合には解雇するという仕組みにして、労働者の規律を高める」
3 適職探し理論
「企業のなかで従業員は、自分の生産性を発揮できるような職を見つけていくのであり、その過程で生産性が上がっていく」
4 生計費理論
「生活費が年とともに上がっていくので、それに応じて賃金を支払う」
5 習慣形成理論
「人々は賃金の増加を喜ぶ」「生活習慣に慣れてしまって、その後生活水準を下げることがつらいことを知っているから、生活水準を徐々に上げていくことを選んでいる」
この年功賃金は実は世界共通の傾向でもあり、日本企業だけの制度ではない。労働者にアンケートを取ってみると、賃金がだんだん上がっていく年功賃金が好まれたという報告もある。総合的に考えると多くの職場で年功型賃金が与える満足度はとても大きなもので、年功賃金を単純に廃止すれば労働意欲を大きく損ねることになるという分析があった。
これに対して、成果主義が機能するケースとして、
1 どのような仕事のやり方をすれば成果があがるかについて企業がよくわからない場合2 従業員の仕事ぶりを評価することが難しいが成果の評価が正確にできる場合
の2つがあげられている。成果主義を見直す良い材料になるパート。
この本の面白さは「ヤバい経済学」に似ている。経済学だが、需要と供給の話はほとんどでてこなくて、インセンティブや人々の生活思考を研究の対象にしている。新書だが単行本なみに内容が詰まっている。
・ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004611.html
2007年05月07日
未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家
「自覚と決意をもった人々が集まれば、どんな小さなグループでも世界を変えられる。それを疑ってはならない。それだけは絶対に信じなくてはならない。」マーガレット・ミード。
この本の著者である若い二人は、2003年6月、440日間に渡る世界旅行に出発した。「自覚と決意を持った」を訪ねるために。そして、彼らは113人の社会起業家と対面し、そこから選り抜き80人のプロフィール紹介とインタビューを書籍にまとめた。
バングラデシュ人の経済学者ムハマド・ユヌスは貧者のための銀行、グラミン銀行を設立した。「多くの場合、貧困の原因は、個人の問題や、怠慢、能力不足ではなく、わずかな元手すら手にできない状況にある」というのがユヌスの経済学者としての持論である。グラミン銀行は、貧困にあえぐ人たちに低利で小額の融資を行い、自主性に任せた返済の約束をしてもらう。担保も保証も取ることがなかった。返済が滞っても取り立てはしない。
彼の銀行は、そんな性善説の仕組みがうまく機能するはずがないという金融界の常識を覆した。貧者を救う助け合いという趣旨を深く理解した借り手たちは、融資をもとに生活を立て直し、責任を持って期限内に返済をした。返済率は一般行を上回り、銀行として大きな利益さえ出してしまった。ユヌスは1千2百万人の生活を救うと同時に、4万6千600の支店を持つ一大勢力に成長させた。ユヌスはこうした成功を背景に、次は安価な携帯電話と自家発電システムを貧困層に提供しようとしている。
フランス人のトリスタン・ルコントはフェアトレードのリーダーだ。不利な立場の小規模なコーヒー生産者たちと契約して、コーヒーを販売した。国連の規定する取引条件を守り、従業員の教育、住居、医療のための費用を上乗せした「正当な価格」で同社のアルタエコ・コーヒーは販売される。製品ラベルには「ようこそ、消費が行動につながる時代へ」と書かれている。
良き意図を持つアルタエコの仕組みは、クチコミが機能するので、巨額の広告費が不要であった。意外にも最終価格は、競合製品と比較しても高くならなかった。何より同社のコーヒーは質が高かった。製品として魅力的であった。ルコントは「幸せな生産者が美味しい食材をつくる」と確信している。
生産性を維持しつつ、環境にやさしい農法を広める合鴨農法、地球にやさしいハイブリッド車両、企業の社会性を指標に投資する社会責任投資ファンド、自然にかえるプラスチック素材の開発など、80人の社会起業家たちは社会性と市場性を同時に満たすビジネスを創造し、人々を幸福にしながら、大きな利益を出している。
今まで、社会起業家は特殊な事例というイメージがあったが、読み進めるうち、これが企業のあるべき姿なんじゃないか、と思える話がいっぱいあった。需要と供給のメカニズムを最適化する利益追求のみの企業よりも、そこで働く従業員や経済基盤としての社会の未来のことまで考えた持続可能な企業が、最終的に勝つのは、当たり前なのでもある。
インターネットによって社会や経済の仕組みは一層透明になってきている。製品も会社も市場のグローバル化によって選択肢は増える。消費者や従業員に選ばれるサービスをつくるものが勝つという新ルールでの、最先端の勝ち組みがこの80人なのだろうなと思った。
日本人も何人か取りあげられている。
2007年04月10日
1万円の世界地図
日本の格差、世界の格差を多数の統計データを使って解説する。世界と国内の経済状況を把握するための、とても有益な情報源。
国際比較というと気になるのは購買力平価である。マクドナルドのビックマックの価格を比較する、有名なビックマック指数というのがある。日本のビックマックは280円、米国では3.1ドル。この本の執筆時点でビックマック指数で為替レートをつくると、1ドル=90.3円になる。ビックマックで経済をはかると、東京は一人当たりの可処分所得でトップになる。
しかし、より広い商品・サービス(2500品目)で比較した場合、日本は10位に後退する。世界の可処分所得1位はスイスのチューリヒ、最下位がインドのデリーだそうで、そこには16倍の格差がある。住宅や教育などの支出も大きな差がある。これらの国々でのお小遣いとしての1万円の使い手は、何十倍も違いそうである。
国際間と同時に国内にも格差はある。所得の分配における不平等さを表す指数「ジニ係数」が紹介されている。発展途上国の多くはジニ係数が極めて高い。この係数は0〜1の間の値をとる。1は一人がすべての富を独占している状態で、0は全員が平等な状態だ。1位のナミビアは0.7を超える。0.2〜0.3が普通の所得分布らしい。0.3を超えると格差の大きい社会に分類される。現在の日本は0.314。まさに格差社会に突入していることが国際比較でも明確になった。
世界のGNI(国民総所得)を見ると日本は第2位の経済大国である。しかし国民一人当たりのGNIを出すと11位に転落する。日本人は勤勉で労働時間は国際比較でも長い。にもかかわらず、一人当たりGNIが低いということは、労働生産性が低いということである。OECDの労働生産性を調べたデータでは加盟30カ国のうち20位に位置する。
ホワイトカラーの生産効率を高めるIT化は日本は世界のトップクラスである。研究者も数は多くて世界第3位。研究費もそこそこある。しかし、実績評価のレベルでは日本の研究者は自慢できる状態にない。つまり、恵まれた労働環境にあり、いっぱい働いていているのに、生産性が悪いのである。
だらだら働いている日本の会社、最適化されていない経済構造が、日本の伸び悩みの最大の原因であると、データで再認識することになった。
この格差データブックを読んで、可能性を感じるのが今、大人気の仮想世界セカンドライフである。セカンドライフでは、世界中のプレイヤーが仮想通貨リンデンドルでバーチャルな不動産や動産を売り買いしている。労働して稼ぐこともできる。そしてリンデンドルを実世界のドルや円に交換するサービスがある。
考えてみるに、日本人の1万円が途上国の数十万円に相当するのであれば、仮想世界内での労働は、圧倒的に途上国のプレイヤーに有利である。セカンドライフで必死に働いて一万円を得ても日本ではお小遣いに過ぎないが、途上国のプレイヤーにとってそれは一か月分の生活費に相当してしまうのだ。これからは仮想世界へ出稼ぎという発想も生まれてくるかもしれない。
逆に考えれば、日本のプレイヤーは手持ちの1万円をセカンドライフへ投資することで、数十倍の労働力(ゲーム内の、だが)を手に入れることができるのだとも言える。アウトソースの場としてのインターネットという発想は、仮想世界でこれから盛んになったりするかもしれない。
しかし、結局のところ、このモデルでも途上国は出稼ぎができて助かるが、手持ちの金額の初期設定が多い先進国プレイヤーが最終的には儲かるという格差拡大の図式は変わらないわけで、世界の格差の解消にはつながっていかない気もする。
セカンドライフに限らず、インターネットこそ、世界の格差解決の手段になりうると思うのだが、そのためには市場メカニズム以外の発想が求められているのだなあ。この本にも何項目がでてきたが、生活の質、幸福感、価値観といった要素がカギを握っているような気もするのだが。
2007年04月02日
なぜ株式投資はもうからないのか
団塊の世代の大量退職やITブームの再燃で株式投資に手を出す人は増えている。「まだ株をやっていないってヤバくないですか?」と証券会社出身の著者にマジメ顔で話す人がいたらしい。株で大損するほうがヤバいですよと著者は冷静に答える。
一般人の株式投資が当たり前のイメージがある米国でも、株式投資に充てられる個人の金融資産は3割だそうだ。7割はより安全な手法(預金、債券、投信)で運用されている。世界的に見ても、個人資産の運用で株式投資が3割を超えるのは高すぎる。
3割の資産を必死の株式投資で10%増やすことに成功しても全体では3%増加するにすぎない。国債や社債の購入でも年率1.5%〜2%程度の利回りはあるので、株式投資に一生懸命になるのは考えものであるという。
そもそも一般投資家と機関投資家では情報の格差があり、個別銘柄の発掘方式で一般投資家が大儲けするのはかなり大変であると著者は繰り返し語っている。何がどのように違うのか、証券会社や機関投資家の優位性の中身が説明されている。
「以上、さまざまな形で一般投資家の不利益を見てきたが、「証券村」は、証券会社とプロの投資家だけが住むことを想定されていなかった。ゆえにどうしても割を食う存在になっている。」
「負けてくれる人がいないと市場は活性化されない。業界関係者は、一般投資家に株式投資は大して儲からないものだと見破られることが実は一番怖いのである。」
「まず、根本的な話になるが、毎回推奨株が当たる営業マンが存在するなら、そんな人が営業をし続けるわけがない。さっさと自分で株式投資を始めるに違いない。」
コンピュータやインターネット使った情報処理、情報共有によって、一般投資家が機関投資家との情報格差を埋める可能性があるという、著者のアイデアが面白い。たとえば一般投資家は感情に左右されて非合理的な取引をして失敗することが多い。自分や他人の投資行動を分析して、冷静なアドバイスを言うソフトウェアがあれば効果的かもしれないとのこと。
機関投資家はどのくらいのリスクでどのくらいのリターンを得るかをあらかじめ決めて行動している。だから損切りも即座に決断する。一般投資家は、リスクもリターンも設定していないので、毎日の値動きに一喜一憂し、泥沼にはまるのである。
一般投資家の不利を知った上で、あえて投資をするならば、投資ファンド追随型、TOB追随型などが大儲けはできないが確実性は高いだろうと述べられている。せいぜい損をしないレベルの投資が現実であるということか。
株式投資に夢中になるリスクとして、他のことをもっと考えるべきなのに株のことばかり考えてしまう機会損失ってかなり大きいんじゃないかと思う。本来は自社株を買って業績向上に夢中になるのが本筋だと思う。
株式投資の情報というのは、共有メリットが小さい上に、広く共有されると無効になる。本当に儲かっている人は秘密を明かさない。市場には他者の追随を誘うことで儲けようとする扇動者がいる。アマチュアがうかつに手を出しても厳しい戦いになるというのは当然なのだろう。
近年の株式投資ブーム。これが続きそうという見込みはある。やはり、起業して株を発行する側に回るのが一番、可能性があるんじゃないかなあ、と思って自分の会社をがんばっている私である。
2007年03月15日
千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン
意外な事実がたくさんあって、とても面白い経営学の本。日本版エクセレントカンパニーとは何かがテーマである。
日本には創業100年を超える老舗企業が10万社以上あるのだという。世界最古の会社は日本にある。西暦587年創業で1400年の歴史を誇る金剛組という建設会社だ。寺や神社の建築と修復を請け負う会社で飛鳥時代から今日まで存続している。この本でも取材されていたが、検索したらホームページまで見つかった。
・世界最古の企業 金剛組
http://www.kongogumi.co.jp/
100年以上続く店舗や企業はお隣韓国には1社もなく、中国やその他のアジア諸国にもほとんどない。ヨーロッパでさえ老舗の数は日本に及ばず、最古の企業の歴史は600年程度である。日本の老舗企業の多さは世界で飛びぬけた現象であると書かれている。
ただ歴史が長いというだけでなく、そうした老舗の中には、携帯電話の開発やバイオテクノロジーの研究へ転進して成功し、現代でも成長を続けている企業がある。事業の継続という観点からみたとき、超優良企業は日本に集結している。
この本では著者が多数の老舗企業の経営者にインタビューしてまわり、老舗の歴史や経営哲学をまとめている。共通しているのは以下の5つのポイントであった。
1 同族企業だが外部の優秀な人材の登用を躊躇しない
2 時代の変化に対応して事業内容は変化させてきた
3 創業以来のコア家業は譲らない
4 分をわきまえ好景気でも投機をしない
5 「町人の正義」を実践してきた
1の代がわり問題について
「日本の老舗企業にも、一族経営は多いのだが、血族にさほどこだわらない融通性をあわせ持っている。たとえ長男でも、娘婿が経営者として優秀であれば跡継に選んだり、養子や赤の他人に家業を任せる場合も珍しくない」
と述べられている。そして中国や他のアジア諸国の商人文化は家族とカネしか信用しないので、優秀な人に経営を譲る発想がなかったのではないかと分析されている。これに対して日本人は長い間、国家(お上)を信頼してその庇護の元に、職人文化を発達させることができた。老舗10万社のうち4万5千件は製造業なのである。儲け主義の商人発想ではなく、職人発想であったことが、事業の長期の継承を可能にしていたと著者は述べている。
日本人の精神性と企業経営の関係を歴史的に実証しているきわめて面白い新書。
大量発生しているITベンチャー企業はどれくらい長く続くのだろうか、とふと思う。私の会社は創業7年目。今年度決算はおかげさまで黒字で好調です。70年とか700年とか続く、かなあ。
2007年01月29日
ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実
「はたらけど はたらけど 猶わが生活楽にならざり ぢつと手を見る」 石川啄木
フリーター、ニートが社会問題になって久しいが、職を得たら幸せなゴールとも言えない現実がアメリカにはあった。働いても働いても貧しい生活から脱出できないワーキングプアという階層が近年、大きな問題として浮上している。
著名な女性コラムニストである著者は、米国の低賃金労働を体験するために、身分を隠し僅かな生活資金だけを持って、長期潜入取材を敢行した。「頂点から20%の階層」から「底辺から20%の階層」へ。時給6〜7ドルの劣悪な長時間労働の環境で、食費や医療費も切り詰めながら、土日も働く日々を体験した。
低賃金労働とはいえ職を得るのに一苦労する。性格的問題がないことを証明するために馬鹿馬鹿しい数十の質問リストに答え、従順な従業員になることを経営者にアピールしなければならない。麻薬をやっていないことを示すために、担当者の目前での尿検査まである会社もある。
単調な労働に創意工夫は期待されない。一人がちょっと頑張ると「みんながそうしろって言われちゃうでしょ」と同僚から叱られる。できる従業員は酷使されるだけ。仕事ができたからといっても1年後に時給が1ドル上がるくらいの将来しか用意されていないのだから、専門の技能を伸ばすことなど考えられはしないのだ。
最低水準の生活を維持することに精一杯な状況では、よりよい職場へ転職することもできない。貯金が無いので職探しのために仕事を休めないからだ。人間関係も職場に閉じているので天職のための情報や人脈もない。
ウェイトレス、掃除夫、スーパーの店員として会社の奴隷のように、身を粉にして働いた著者だったが、どの職業でも生活の向上など実現できなかった。安売りで有名なウォルマート(大手スーパー)の労働者の給料では、ウォルマートのシャツが買えないのである。
米国でおとな一人とこども二人の家族の生活に必要な実質的な年収は3万ドルで、それは時給にすると14ドルだそうである(これには健康保険や電話料金などを含むが娯楽の費用は入らない)。しかし、米国の労働者の60%は時給14ドル以下で働いている。ブルーカラーの労働に対して企業は前述のように6,7ドルで雇用しているわけだから。
多くの先進国では企業が負担できない費用を政府が健康保険や各種の補助金、税金の控除でカバーしているから、国民の生活は成り立っている。自助努力が原則の米国ではそれが期待できない。自力で3万ドル全部を稼ぐしか生きる道は無いのだ。「通勤用の車まで持っている健康な独身者が、額に汗して働いているにもかかわらず、自分一人の生活を維持するのさえままならないというのは、どこかが間違っている」。
著者は、自らの取材体験やそれらの職場での同僚たちの実態をレポートし、貧困から這い上がれない低賃金労働者の不幸の原因も指摘した。彼らは技能がないから、やる気がないから、低賃金労働をしているわけではないのだ。そこから抜けられない社会構造があるのである。そして貧困の再生産構造は強化され、持つものと持たざるものの格差は年々大きくなっている。
低賃金労働の多くは、いわゆる3K労働であるが、これらは中流や上流の階層が快適を味わうためのサービスである。誰かが掃除をして、誰かがお茶を運び、誰かがマーケットの棚を整理しているから、快適な消費が促進されるのである。
「私たちが持つべき正しい感情は恥だ。今では私たち自身が、ほかの人の低賃金労働に「依存している」ことを恥じる心を持つべきなのだ。誰かが生活できないほどの低賃金で働いているとしたら、たとえば、あなたがもっと安くもっと便利に食べることができるためにその人が飢えているとしたら、その人はあなたのために大きな犠牲を払っていることになる」と著者は訴える。
日本でも格差社会の問題が取り上げられているが、こうした本で、アメリカの暗い現状を知っておくことは、課題の解決に役立つかもしれない。能力主義や資本の論理は経済を最適化するものであるが、バランスを考えない施策では、人間に最適化ができないということなのかなと思った。
2007年01月18日
ブランドの条件
ブランド文化論の専門家が書いたブランド入門。ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルについて創業から現在にいたる栄光の歴史を紐解くことで現代消費のキーワードのブランドを解題する。
ルイ・ヴィトン、エルメスをはじめ多くの高級ブランドは、起源においては顧客にフランス皇室を持つロイヤルブランドであった。ナポレオン三世の奢侈産業振興政策を背景に、ルイ・ヴィトンは貴族のドレスを鉄道輸送するための高級な木箱をつくった。それはひとつずつ手作りの特注品であり、貴族が召使いに持たせるものであった。顧客のオーラを受けてブランドは輝いた。
馬具商エルメスは自動車の時代、大量生産の時代になることを理解し、だからこそ逆にハンドクラフトを「少なく、高く、売る」、つまり「売らないことによって売る」の戦略が大切になると考えた。希少性の戦略の前提には大量の消費がある。安物、贋物が多く出まわれば、むしろ少数の本物の価値があがると考えて、過剰生産の陳腐化を避けてきた。ひたすらに永遠に変わらないものを追い求めた。
皇室のオーラと少量生産のロイヤル・ブランドの時代に革命を引き起こしたのがシャネルであった。シャネルは皇室のオーラをまったく必要としなかった。孤児であった創業者自身の成功と華やかな生活が、メディアで取り上げられ、彼女自身の姿や生き方のオーラがブランドパワーの根源となった。ココ・シャネルは晩年、ジャーナリストの取材に対して「彼女たちが私の真似をしたのは、私が素敵に見えたからよ。もし時代のなかで何かはやったものがあったとしたら、それはショートカットじゃないわ。流行したもの、それは私よ」と答えたという。
シャネルは本物主義さえ否定した。自分のデザインがそっくりコピーされることを許した。型紙を買っていった業者たちはシャネルの名前を使って自分達の服を世界中に大量に売った。デザインは機能性を重視し、流行(モード)をつくりだした。ロイヤルブランドの永遠に変わらないものの価値を否定した。
シャネルの偽者主義はイミテーション・ジュエリーを自らデザインし販売したことにも現れている。本物の宝石と偽者の宝石を混ぜて使い、ココ・シャネル自身が身に着けて見せた。だが価格は高額のままであった。これは本物の宝石だから高いのではなく、シャネルだから高いのだと言った。
そして王家の血筋よりも有名性がブランドパワーの根源となり、メディアが伝説を作り出す時代になった。モード(流行)とブランドは本来は対立するものであったが、現代はモードなブランドの時代である。ルイ・ヴィトンは「ファッショナブルであってもファッションブランドにはならない」と宣言している。貴族の贅沢がストリートに降りてきてバッグを働く女性に売っている。
女性向け高級ブランドについて名前は知っていても、それぞれがどういう位置づけや価格帯なのかは私はよく知らなかったのだが、この3社が高級御三家で、ルイ・ヴィトンとシャネルはまるで違うものだと基本がわかってまず勉強になった。
・ブランド王国スイスの秘密
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004359.html
2007年01月17日
おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学
経済学の教授が書いた値ごろ感、経済心理学入門。
値ごろ感の方程式が前半のテーマである。
それは、
値ごろ感= 価値 ÷ 費用
というもの。
価値がわかりやすい商品であれば、おまけと割引では基本的に割引の方が効用が高い。
おまけ付値ごろ感= 価値(500円+100円) ÷ 費用(500円) = 1.2
割引の値ごろ感 = 価値(500円) ÷ 費用(500円-100円) = 1.25
「つまり、同じ財源を使うとすれば、値ごろ感という視点からは、おまけよりも割引に使った方が有効であることが分かる。しかし、この簡単な値ごろ感の分数式からいくつかの重要な視点も導き出される。それは割引と同等の値ごろ感1.25を作り出すには、分子には500円×1.25=525の価値を作り出さねばならない。つまり、100円の割引に対して、125円のおまけでやっと釣り合うわけである。
この単純な事実から、おまけをつける場合は相当なものでなければ有効でないことが分かる。そもそも割引には価格という最も明確な費用を差し引いてくれるという実感もあるし、お金が戻ってくるようなものだから、ただでさえ好ましい側面がある。
」
無論、効用関数の計算だけではないと思う。手数料無料の戦略や、衝動買い、ついで買いのポイントなども解説されている。値決めについて考えたい人、売り手の思惑を見抜く賢い消費者になりたい人に基本的な知識を与えてくれる本である。
値ごろ感について最近考えることがあった。
先日、地元のデパートで物産展をやっていた。ミニたい焼きという実演ブースがあった。いろいろな餡子を入れたとても小さなたい焼きである。おいしそうなので買うことにしたのだが、閉店間際だったこともあり、値引きをしてくれた。定価は1個50円である。それを10個で500円のところが350円になった。3割引である。
お金を支払い商品を受け取ると店主が「ちょっとまって、おまけもあるよー」といって、いま買ったのと同じ分量10個をおまけで追加してくれた。本来20個1000円のところを350円で買ったことになる。65%オフである。
だが、私は90%オフ以上の物凄い値ごろ感を感じた。店主の値引き+予想外のおまけの二段階サービスが、65%オフをそれ以上の効果へ増大させたのである。投売りにしても、やり方はあるものなのだなと感心した。
正月にも値ごろ感事件はあった。家族で近所のミスタードナッツへ行ったのだが店頭で福袋を売っている。キャラクターの弁当箱や手帳などのグッズがいくつか入っているそうである。お客は満員なのに、この福袋はあまり売れていなかったし、グッズだけでは買う気がしなかったのだが、売り子がぼそっと大変な事実を述べた。「ドーナツ10個の引換券も入っています。すぐでも使えます」。
福袋コーナーにはドーナツ10個の引換券について表示が無かった。ドーナッツの平均単価は100円を超える。家族で10個は簡単に消費する。どう考えてもお得なのである。3人以上で来ている場合、事実上、タダでグッズ類が手に入るようなものなのである。満員のお客たちはこの事実を知ったら、ほとんどのテーブル席の客が買っただろう。10個くらい食べているんだから。
売り子はダメ押しに「この1000円にはポイントもつきますよ」。妻はミスタードーナッツのポイントカード利用者、貯めてグッズと引き換えるのを楽しみにしていたのである。買わないわけがない。
そしてドーナッツ10個を引換券で注文してグッズを楽しめた。たいへんな値ごろ感であった。わたしたちだけが知っていて得をしているという気分が効用関数をさらに引き上げていた。帰りにもう一袋買おうか?という案まで出ていた。
現代の流通システムには販売奨励金や補助金などのさまざまなインセンティブ制度が働いているから、あの手この手の割引やおまけが店頭で展開されているから、そういうものに対して消費者は麻痺しがちである。ミニたい焼きのように割引の後におまけを提示する戦術や、ドーナツのように、一見割高だけどよく聞いてみるとお得というサプライズ感の演出が有効なのではないだろうか。
2007年01月10日
帝国ホテル 伝統のおもてなし
「コーヒーカップと口の角度で、残量がわかる。残り少なくなればカップの角度が垂直に近くなる」
お客様のお代わりのタイミングを見計らうために帝国ホテルの従業員はそう教えられるそうである。バーテンダーはお客様がグラスを置く位置を記憶してお代わりの二杯目をその場所に置く。客室のゴミはお客様出発後1日おいてから捨てる、お客様専用金庫室には鏡を置く。電話オペレータはお客様が名乗ったら一瞬間をおいてから「○○様ですね」と確認する。
「サービスは声高にするものではない。控えめに。それが上品だと教えられてきました。「控えめ」でさりげないサービスを徹底すると上品になるということです。」
簡単な作業書以外にマニュアルは存在しないが、帝国ホテル行動基準というカードを全スタッフが携帯している。この本にはそのコピーが全文掲載されている。挨拶・清潔・身だしなみ・感謝・気配り・謙虚・知識・創意・挑戦の9項目。当たり前を積み重ねて上質なサービスを実現する。
社内には「さすが帝国ホテル推進運動」というサービス向上運動があるそうだ。社員以外のホテルハイヤー運転手、靴磨きスタッフ、氷彫刻師などの仕事も表彰されている。表彰理由になったお客様対応のエピソードが多数紹介されている。
ホテルマンの行動基準というとリッツカールトンのクレドも有名である。ザ・リッツカールトン東京は六本木の防衛庁跡地「東京ミッドタウン」に2007年3月開業予定である。7月にはザ・ペニンシュラ東京が帝国ホテルの近くで改行する。
・ザ・リッツ・カールトン東京[THE RITZ-CARLTON TOKYO]
http://www.ritzcarlton.co.jp/
・Tokyo Hotels: The Peninsula Tokyo
http://www.peninsula.com/tokyo_jp.html
・驚きより「顧客感動」〜帝国ホテル・小林社長の戦略
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06032419.cfm
外資系高級ホテルの進出で、帝国ホテルも厳しい競争環境におかれているはずだが、1880年創業で2005年に115周年を迎えた帝国ホテルは「アーケード」「バイキング」「ホテルウェディング」などをうみだした革新のパイオニアでもある。
「さすが帝国ホテル」で検索してみた。お客の感想がいっぱい出てきた。
・「さすが帝国ホテル」 の検索結果 約 1,350 件
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLD,GGLD:2005-14,GGLD:ja&q=%e3%81%95%e3%81%99%e3%81%8c%e5%b8%9d%e5%9b%bd%e3%83%9b%e3%83%86%e3%83%ab
「さすが○○」と言われるブランド力でどう外資ホテルを迎え撃つかが2007年の課題のようだ。
・ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004068.html
2006年11月28日
新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略
金融資産1億円〜5億円の「富裕層」81万世帯のプロフィールと彼らの資産運用の考え方を徹底分析し、特に新興の「新世代富裕層」に対する金融サービスの戦略を考察した本。野村総合研究所アナリストの著。
「
極端にいえば、旧世代富裕層が金融機関と付き合う選択肢は「金融機関を信頼して『情緒的に依存する』」か「金融機関を信頼せずに、自分がわかる範囲のことしかしない」のどちらかである。
」
昔からのお金持ち層は保守的なのだ。これに対して少子高齢化による相続と団塊世代の大量退職によって誕生する新たな富裕層=新世代富裕層は、資産運用の知識と相談相手を持たない突然の金持ちである。この層を金融機関はどう取り込んでいくべきなのか。
情緒的な旧世代富裕層と比べて、新世代富裕層は能動的で合理的である。インターネットも駆使して自ら納得できる資産運用サービスを探す。実は富裕層のインターネット利用率は63%で、準富裕層(5000万円〜1億円)の37%、超富裕層(資産5億円以上)57%よりも高い。新世代富裕層にいたっては72%であるという。
しかし、情報収集能力に自信がある新世代富裕層には、単純に情報ページや「マイページ」機能を提供しても受け入れられない。ネットの裏に担当者や専門家が存在して相談に乗ってくれる「気の利いた執事」レベルが求められているという。
新世代富裕層への金融商品設計アプローチとして以下の4つの条件が提案されている。
1 フックをかける
興味を持つきっかけをつくる
2 夢をわかちあう
人生観の共有
3 質にこだわる
すべてにおいて上質なサービス
4 ファミリーにアプローチをする
家族・親族単位でアプローチ
新世代に特有の価値観とは「自分らしさ」、「自由」、そして「独創性」。これは他業種のサービス設計にも使えるキーワードだと述べられている。
この層には自らベンチャー事業を起こして財を成した人も多いので、何事にも、他人と同じであることを好まず、自分らしいやり方を探している人が多いようだ。老舗ブランドの信用や窓口担当者の誠意だけでは、選ばれるサービスにはならない、というわけだ。
合理的に大金を動かす層が増えるというのは、ビジネスとして大変魅力的な市場が登場するということ。ベンチャー投資にここらへんの層の資金が回るようになるといいなと思う。なにか強烈な特徴がある投資ファンドなどがいいのかもしれない。
今後が注目される富裕層向けサービスについて重要なデータがたくさん入っている本だった。
・日本のお金持ち研究
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003412.html
2006年09月27日
投資事業組合とは何か
ライブドア事件の際にニュースによくでてきたキーワード。投資事業組合、投資ファンドは、一般にはその正体はよく知られていない。同事件でこの仕組みが悪用されたために、よくない印象を与えてしまったが、本来は経済活動を支える重要な役割をになう。
「
あれほど長い間苦しんだデフレの苦境から脱することができたのは、実は投資ファンド・投資事業組合の貢献があったから、といっても過言ではありません。
にもかかわらず、投資ファンド・投資事業組合は、上場会社のように情報開示を広く一般に向けて行うことはありませんから、その活躍ぶりが大々的に報道される機会はありません。
したがって、悪いところが指摘されることはあっても、投資ファンド・投資事業組合の素晴らしさが伝えられる機会は限られていたのです。
」
投資事業組合には、任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合の3つの形態があること、ジェネラルパートナーと呼ばれる運営者とリミテッドパートナーと呼ばれる出資者がいること。課税は組合に対してではなく、組合員に対してなされる「パススルー課税」という経営メリットがあること。組成は株式会社より簡単で、登記が不要であったこと。運営者の手数料は2.5%程度が一般的であること。運営者と出資者のよくある取り決めの例など、投資事業組合と投資ファンドの基本的な仕組みが、誰にでもわかる言葉で説明されている。
日本版LLP、日本版LLPとの違い、新しい法規制、コンテンツファンドなど、最新事情も具体例を挙げて記述がある。これまでは監督当局が存在しなかった投資事業組合だが、証券取引法が金融商品取引法に改正されたことに伴い、金融庁に登録・届出が必要になったそうだ。
わかりやすさに定評のある著者が書いている。ベンチャー企業家と投資家におすすめ。
2006年07月17日
プロファイリング・ビジネス~米国「諜報産業」の最強戦略
とても興味深い現実が書かれている。
9.11同時多発テロ以降の米国で、急成長している民間の「諜報」産業の実態に肉薄したレポート。主役はこんな企業たちである。企業ごとにひとつの章で語られており、新しいがグレーゾーンのニーズに目を付けた経営者のベンチャー物語としても面白く読める。
・Acxiom Corporation
http://www.acxiom.com/
・ChoicePoint
http://www.choicepoint.net/
・LexisNexis
http://www.lexisnexis.com/
・Seisint, Inc.
http://www2.seisint.com/
・Identix
http://www.visionics.com/
アクシオム、チョイスポイントなどの企業は、全米の2億人の個人情報をあらゆる手段で収集している。その巨大データベースを使えば、電話番号などの個人情報の一片を検索キーに、その人物の住所、氏名、年齢はおろか、家族構成、裁判記録、犯罪歴、クレジットカードの利用履歴、保有する車、最近の顔写真にいたるまで、あらゆる情報を引き出せるという。米国の政府や警察組織が大口の顧客リストに並ぶ。テロリストや凶悪犯の割り出しに、威力を発揮している。
強力な個人情報検索システムは、テロ対策の強力な武器になる一方で、個人のプライバシーを蝕む危険な存在でもある。間違った情報がプロフィールに登録され、飛行場などの個人情報照会の場で「テロリスト」「重大な犯罪者」扱いされてしまう事例が続出しているそうだ。一度、登録されると本人でも、容易には情報の変更ができない。政府や警察に濫用されれば、監視社会の道まっしぐらである。
指紋、顔、声紋、DNAなどの生体認証のデータやネット利用履歴と統合されることで、近年、ますますデータの集積規模の拡大と精度の向上が進んでいる。産業と社会のデジタル化、ネット化が進めば、個人情報のデータベース化は避けられそうにない。制度的な規制はもちろん重要だが、民間企業を完全に縛ることは難しいだろう。一般のISPや大手ECサイトにだって、誰が何を見たか、何を買ったかなどのログが残ってしまうのだから。
技術に対しては技術で戦うという道もあるのかもしれない。たとえば匿名認証の技術はもっと使われてもよさそうに思う。サービス利用資格を持つことは確認しつつ、誰なのかは特定できない暗号認証の仕組み。もちろんこれに加えて通信経路の暗号化も行う必要はあるだろうが、必要のない個人情報は集めないシステムは企業サイドにとっても使いたいケースが多いはず。
・Sensu Project
http://aatoken.aitea.net/
匿名認証技術の研究事例。
この本を読んで、セキュリティとプライバシーに対する企業や政府の取り組みと監視社会化が米国では日本の何倍も進んでいそうな現実に驚いた。うかうかクレジットカードも使えないのだなあと思った。
2006年07月04日
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
若きエリート経済学教授と気鋭のジャーナリストが書いた全米100万部のベストセラー。
米国で「2005年度に最もブログで取り上げられた本」に選ばれた。オモシロ論点満載。
「もしあなたが銃を持っていて、裏庭にはプールがあるとする。プールがあるせいで子供が死ぬ可能性は銃のおよそ100倍である。」
これはニューヨークタイムズに著者の一人スティーブン・D・レヴィットが書いたコラムの一節。彼は、普通は関係がなさそうな二つの事象に相関と因果を発見する天才である。そして、その結論が「世間的によろしくない」=「ヤバい」ほど、嬉々として語るのが好きなのだ。だから大論争を巻き起こす。
たとえば90年代のアメリカで犯罪発生率が急激に下がったのはなぜか?。一般的には警察官の増員や治安政策の成功が理由だとされている。そこへ著者は実はそんなことは関係がなくて、70年代以降に、女性の中絶が合法化され、とても増えたからだと結論する。不遇な生い立ちの人が減ったから、犯罪率が減ったという事実を、まず従来の定説をデータで否定した上で、説得力のある証明をしてみせる。
中絶を増やせば犯罪発生率が減るという結論は、中絶反対論者からは当然、悪魔のように言われて攻撃される。しかし、その説明ロジックは正しそうに思えるから論争は果てしなく続く。
この本で扱われるテーマは、以下のような話題。
・日本の大相撲、7勝7敗の力士の8戦目の、異常に高い勝率の、本当の理由は?
・ヤクの売人がママと住んでいるのはなぜ?
・不動産広告の「環境良好」は周りの家はいい物件だがこの物件はイマイチという意味
・子供を有名大学に進ませる方法は?
・子供の名前でわかってしまう、親の教育水準が高さ、低さ
これらを経済学的な観点から統計分析し、ヤバい結論を導き出す。面白いのはどの論点も背景に、偏見や差別、貧富の差、人間の欲望の渦巻きなど社会学的要素があり、ポリティカリーインコレクトな要素が満載であること。そして、おもしろいだけの三面記事とは違って、著者の鋭い因果関係の分析が用意されていること。
データの相関だけだと「へー、そうかな」と思うだけだが、この著者らのように、さらに因果関係を、世の中の仕組み、人々の物語として語ってくれると「なるほどその通りだ」と思う。
経済学は、抽象化度の強い学問のように思えるが、スティーブン・D・レヴィットは人々の日常を具体的に説明するために、その優れた頭脳を使っている。もう一人の著者でジャーナリストのスティーブン・J・ダフナーは、その分析内容を一般読者向けに分かりやすく書き直している。経済社会学あるいは経済社会学の傑作。
2006年05月25日
・ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション
・ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション

ハイテク製品を成功に導くマーケティング理論書「キャズム」から15年が経過した。
著者の仮説の適切さはその期間の市場の動きで実証されてきた。企業の成長にはパターンがあり、適切なイノベーションを適切な時期に投入できるかが、企業の永続成長か破滅かの道を決めている。この本は、トレンドの急成長の分水嶺となる「キャズム」を超えて、市場の成長期にも衰退期にも、永続的に繁栄できるイノベーション戦略とは何かを語る集大成。
「コアとコンテキスト」、そして「慣性力」は今回のキーワードだ。
「
タイガーウッズにコアとコンテキストの間でどのように時間配分をすべきか問われたら、あなたはどのようにアドバイスをするだろうか?。
「自分の時間をすべてコアに集中させて、コンテキストは誰かを雇って任せればよい」
と助言するだろう。だが、ウッズが反論する。
「僕の収入の90%はコンテキストからのものなんだ。コアからではない。それでもコンテキストには時間を使うなというのかい?」
あなたは自信を持って言うだろう。
「もちろんだ。コンテキストから得た収入で、よりコアにフォーカスすべきだ。それが最終的に最も効率的な道だ」フォーカスと優先順位、これが差別化のためのイノベーションの課題だ
」
ウッズのコアとは天才的なゴルフの技能とその世界でのプレゼンスのことだ。コンテクストとは彼のCM出演や彼の名前を冠したゴルフ用品ブランドビジネスなどを指す。前者があっての後者なのだから、ウッズはゴルフの天才ぶりにこそ力を入れるべきだ。決して後者に注力すべきではない。これは誰でもわかることだ。
しかし、多くの企業がコンテキストに注力して失敗している、と著者はいう。競合優位性への貢献度ではなく、収入の比率に従って資源を配分してしまう。見かけ上、儲かっている部門に注力すればよいと思い込んでしまうのだ。
市場の変化によって、コアだったものがコンテキストになることがある。競合優位性の源泉であったものが、競合企業が模倣することで中立化し差別化要素ではなくなる。だから、企業は常にコアとコンテクストを見直し、適切な時期に次のコアを作り出さなければならない。
もうひとつのキーワード「慣性力」はその意思決定に影響を及ぼす。成熟した企業組織が過去のやり方を踏襲しようとする保守の力のことだ。この力は当初の戦略がぶれないように助けてくれる成功の源であると同時に、変革が必要な時期にそれを妨げる抵抗力ともなる。
大切なのは今、企業や技術や市場が、ライフサイクルのどの位置にあるかを正しく見極めることだ。新しいテクノロジーは最初は熱心なテクノロジー信奉者に受け入れられ小さな市場を形成する。この初期市場がマスメディアやクチコミによって増幅され、普通の人たちもテクノロジーを使いはじめる。この分水嶺がキャズムであり、前著のメインテーマであった。
・テクノロジー導入ライフサイクル
初期市場→キャズム→キャズム越え→ボーリングレーン→トルネード→メインストリート
本書では、さらに視野を拡大し、より大きな市場のライフサイクルから、企業の栄枯盛衰を説明している。たとえばカテゴリー成熟化ライフサイクルという大きな流れだ。
・カテゴリー成熟化ライフサイクル
成長市場→成熟市場→衰退市場→ライフサイクルの終わり
こうした市場の各ライフサイクルの中で、求められるイノベーションは異なるものになる。この本では100社以上のケース分析から、14のタイプのイノベーションをひとつずつ解説していく。適当なイノベーションによって、コアとコンテキストの配分、慣性力を最適化させるものこそ長期的な勝者になるということである。
「イノベーションのジレンマ」3部作のクリステンセンや、競争戦略論の古典のマイケル・ポーターなどと一緒に読むと、さらに深く理解できる。ITマーケティングに関わる人におすすめの一冊。
・明日は誰のものか イノベーションの最終解
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004017.html
・イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002943.html
・競争戦略論〈1〉
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001165.html
2006年05月06日
USEN宇野康秀の挑戦!カリスマはいらない。
この本は、動画配信サイトGyaO事業のほか、個人の資本でライブドアを買収したことでも話題の、USEN宇野社長を、元記者のフリーライターが取材して、タイムリーな内容にまとめている。
先日、動画配信サイトのGyaOは1周年を迎えている。ユーザ登録数は900万人。
・完全無料ブロードバンド放送「GyaO」が、開局1 周年を迎え
視聴登録者数900 万人を突破
〜携帯電話向けサービス「モバイルGyaO」も本放送を開始〜
http://www.usen.com/admin/corp/news/pdf/2006/060425.pdf
「
「株式会社USEN(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宇野康秀、以下 USEN)が
運営する完全無料ブロードバンド放送「GyaO」(ギャオ URL:http://www.gyao.jp/)の視聴登録者数が4 月22 日に900 万人を突破し、本日開局1 周年を迎えましたので、お知らせいたします。また、3 月27 日より試験放送を行なっていた携帯電話向け無料動画放送サービス「モバイルGyaO」も、本日より本放送を開始いたしました。」
」
GyaOはこの本でもそのような記述が出てくるのだが「なんてことはない」サイトである。ブロードバンドで動画を配信するサイトなんて珍しくもなかった。昔からあったが、ネット向き低予算の番組や、あまりもの、間に合わせ的な内容ばかりだったから、ヒットしなかった。GyaOがユーザの心をつかんだのは、アカデミー賞受賞作を含めた人気の映画や、韓国トレンドのテレビ番組など、”本物”の映像を流したから、である。
USENの財務状況のサマリーがある。売上高600億円の放送事業で「安定的な収益を確保」し、500億円に近いカラオケ事業で「安定的な伸び」を得て、240億円のBB・通信事業で「増収増益」、そして150億円のGyaOとGagaの映像・コンテンツ事業が「今後、期待する事業」とされている。安定した財務基盤があったからこそ、GyaOのコンテンツの無償提供が可能になった。
ブロードバンド参入時に蓄積していた著作権処理のノウハウもある。十数種類もの契約書を著作権処理に使い分け、契約をスピードアップして他者に差をつける。番組を編成するプロを呼んで、放送と同じように局づくりを行っている。
既にカリスマのイメージがある宇野社長だが、本人はカリスマ性がないと考えているらしい。カリスマが統率するのではなく、一つのボールを追いかける子供のサッカー的な経営をしている様子が紹介されている。買収したライブドアの、強烈なカリスマであったホリエモンとは対照的な人物であるようだ。
GyaOの登録者数が1千万に達するのはもうすぐだ。次は収益化がいつ達成されるのか、買収したライブドアをどうするのか、業界の注目が集まっている。
GyaOを含めて、動画配信サイトの動向は、「テレビとネットの近未来」でも追跡しているのでご参考まで。
・テレビとネットの近未来 ブロードバンド・ニュースセンター:
動画配信サイト のカテゴリ
http://www.tvblog.jp/tvnet/archives/cat159/cat160/index.html
2006年04月25日
ヒルズ黙示録―検証・ライブドア
こういう本を待っていた。とても面白い。
朝日新聞でライブドアを担当していた記者の本。
創業黎明期から、株式公開し、M&Aを繰り広げての急成長、そして球団買収、フジテレビ、選挙戦、強制捜査まで、ライブドアの実態を、新聞記者らしく取材メモと事実ベースで客観的に解明していく。暴露本ではない、検証本である。
堀江社長以外のライブドア経営陣や、村上ファンド、楽天、フジテレビ、リーマンブラザーズなど、各時代の当事者の生々しい肉声も多数公開されている。あの人はそんなことを言っていたのか、と驚きも何箇所かあった。知り合いも数人登場していて、あらあらとも思った。
私は堀江さんとは、そう深くはない面識があった。
1999年ごろ、ニュースサイトのホットワイアードに、NewsWatcher'sTalkという企画が始まり、私は10数人くらいの業界パネリストの一人に選ばれた。その後、数年間、この企画に参加した。同じパネリストの一人として堀江さんがいた。
・News Watchers' Talk ご利用ガイド : Hotwired
http://hotwired.goo.ne.jp/nwt/guide.html
(この企画は今も続いているのだが、当時はもっと活発に議論が交わされていた。)
毎週、IT業界の時事ネタを編集部が選び、パネリストがメーリングリストで議論する。議論した内容はまとめられて翌週にWebで公開される。堀江さんの会社は当時のホットワイアードのシステム構築をてがけていたと記憶している。そういう理由もあってか、堀江さんは、メーリングリストで、しばしば意見を投稿されていた。
私はテーマが提示されると、じっくり考えたり調べてから、長文の意見投稿をしていた。堀江さんは即座に数行の断定的な意見を投稿するスタイルだった。ビジネスの話題でも、技術の話題でも、ばっさり斬る。衝突を恐れず、自分の意見を簡潔に述べていた。私の長文もばっさり一行で斬られたりもした。それに長文で反論すると、また1行で斬られてしまう。
同じ原稿料なのに随分、文字数違うよなあ、効率いいな、堀江さん、などと可笑しくなったりもしたのだけれど、こういう人がいると議論は面白い。この企画での堀江さんの存在感は大きかった。特に技術については鋭い意見が多くて参考になった。ハッカーのワンマン経営者という印象であった。
その後、ホリエモンとして有名になり、次々に世の中をハッキングする堀江さんに、内心では、エールを送っていた。堀江さんの有名なブログのコメント欄が荒れていたときには何度か匿名で応援のコメントを書きさえしていた。規模は違えど同じベンチャー企業経営者として、体制に豪快に切り込んでいく様子は見ていて痛快だった。だから、強制捜査以降の堀江さんの状況は大変、残念だなと思っている。
この本は客観的な検証本なので、著者は敢えて主観的な判断を前面には出していないが、全体的には堀江氏に同情的である。あれは国策捜査であったという見方も取り上げている。まだまだこの国は出る杭が打たれる国だということかもしれない。
この本によれば熊谷取締役が発案した株式100分割で買いやすくなったライブドア株は、20万人以上も個人株主がいたそうである。私の身近にも損をした一般投資家がたくさんいる。株式投資は本来は自己責任のはずだが、集団訴訟も起きている。有罪無罪よりも、これが本質的問題だと思うのだけれど、ライブドアの事後処理をしてから、再起業して、この人たちに2倍返し、3倍返しで儲けさせるような、ドラマをまた見せてくださいよ、堀江さん。
・国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004269.html
2006年04月06日
実験経済学入門~完璧な金融市場への挑戦
統計データを解析する計量経済学に対して実験経済学がある。実験室で被験者集団に市場を模した取引を行ってもらい、どのような現象が起こるかを調査するような研究手法をとる箱庭経済学である。モデル化された経済は現実の経済とは異なるため、長い間、本流の経済学からは軽視されてきた。普遍性に疑いがあると考えられていた。
しかし、実験経済学では、平均的な人間の普遍的な行動だけではなく、人間の個人的な「選好」を対象にすることができる。個別のモノやモノの組み合わせに対する個人の相対的な価値のことだ。「ブランド」や「オプション」、そして「知識・情報」が経済において持つ意味を、個人の選好から光を当てることができる興味深い研究領域である。市場実験による金融市場分析を行ったヴァーノン・スミスが2002年度のノーベル経済学賞を受賞するなど、近年、再評価が進んでいる。
需要と供給は自由市場に任せておけば、自動的に最適な均衡に落ち着く。経済学の常識であるが、被験者同士が交渉で売買を行う実験を行ってみると、理論値よりも少し低い価格に均衡した。なぜか?。
「ほとんどの人は売り手の経験よりも買い手の経験の方が多く、価格を引き上げる交渉よりも引き下げる交渉の方が得意であるからだ。」。交渉のルール、当事者の知識、交渉の能力が、この取引ゲームに大きな影響を与えている。
株式市場では「サンスポット均衡」と呼ばれる不思議な傾向がある。これは太陽の黒点移動と景気の変動がたまたま似たような周期を持つため、太陽の黒点が景気を左右するという理論があることに関係がある。この理論は根本的に間違っているのだが、信じているトレーダーが少数だが存在するために「自己実現的予言」として機能してしまっている例だ。トレーダーには自分の持つ情報を無視して「群れの後追い」をするものも多いため、さらに傾向は強化されてしまう。「テクニカル分析」も似たような存在である。
従来の経済学は、平時の市場の均衡や景気循環を説明できても、突発的なバブルや暴落を十分に説明することができなかった。実験室での株式取引ゲームやオークションゲームでは、主観を持つ人間だからこそ取り得る非合理な選好がたくさん発見されている。そして人間同士の関係性が、情報カスケード効果を促進し、予測不能な大きなバブルを生じさせたりもする。
「この世は皆オプション」とも述べられている。オプションとは市場に参加するプレイヤーたちがとりえる選択肢のことである。私たちはモノの価値だけでなく、潜在的に取りえる取引上の選択肢までをも考えに入れて行動している。期待と不安、錯覚、知識といった個々の人間のバラバラな選好が、経済全体の大きな流れにカオスとバランスを発生させる。計量経済学が平均的、普遍的、連続的な市場を分析するツールだとすれば、実験経済学は、個人的で、特異で、非連続な市場を分析するのに有効な新しいツールといえそうである。
こうした実験経済学の環境として、早稲田情報技術研究所は、カブロボというサービスを運営している。既に数千種類の株式取引プログラムが開発されている。
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2006年03月23日
ブランド王国スイスの秘密
スウォッチ・グループ オメガ ブランバン ブレゲ リシュモン・グループ カルティエ ロレックス パティックフィリップ ネスレ・グループ ABB 航空スイス クレディ・スイス UBS ロンバー・オディエ・ダリエ・ヘンチ チューリッヒ・ファイナンスサービシズ スイス再保険
これらはすべてスイス企業のブランドである。高級時計、金融、食品会社、保険など内容は多彩だ。
スイスの人口は730万人であるが、スイスの株式市場に上場する企業の株式時価総額を人口で割ると、12万8千ドルで世界第1位になるという。この数字は米国では5万8千ドル、日本は5万9千ドルであり、スイスがいかに資本主義を濃縮しているかがわかる。ブランドがスイスという小国の経済を世界トップクラスにのしあげてきた。
スイスの数々のブランドの成功は偶然ではない。これら成功したスイス企業は傘下に数多くのブランドをそろえる「ポートフォリオ型」のブランドマネジメントを採用してきたことに特徴がある。たとえば、オメガ、ブレゲ、ラドー、ロンジンといった高級時計ブランドはすべてスォッチグループである。スォッチグループは18のブランドを傘下に持つ。カルティエ、ピアジェ、アルフレッド・ダンヒル、モンブランはリシュモングループのブランドだ。コーヒーのネスカフェ、調味料のマギー、パスタのブイトーニ、飲料のミロ、ミネラルウォーターのヴィッテルはネスレの傘下のブランドである。
日本型ブランドマネジメントでは、企業は他のブランドを持つ企業を買収すると、多くの場合、統一ブランドに統合してしまう。その結果、元のブランドが持っていた価値を失うケースが多い。
日立や富士通やソニー、パナソニックやナショナルなどは、世界的知名度を持つブランドであるが、あらゆる製品を扱っているために、ブランドの中身のイメージが湧きにくい。超高級品もあれば廉価な普及品もひとつのブランドに収まってしまっている。最近では、セブンイレブンとイトーヨーカドーとデニーズが「セブン&アイ」というブランド名に統一されてきている。看板を見ただけではさっぱりわからない状態になっている悪い例として、この本でも挙げられていた。
スイス企業のポートフォリオ型ブランドマネジメントは、個々のブランドが持つイメージや顧客を維持することを考える。ブランドの特徴を明確にし、ブランド同士が競合にならないように巧妙に差別化を行っている。スイスのビジネスマンは、こうした創意工夫によって、少ない人口でも、現在の経済的豊かさを築いてきた。いまやスイスは国旗さえもブランドの一部となっている。
この本ではブランドマネジメントの他に、特に詳しく銀行守秘義務制度によるスイスの銀行の繁栄が分析されている。この制度によって、匿名性を守りたい世界の資産家から巨額のマネーがスイスに集まってきている。マネーロンダリングや脱税といった犯罪の温床と批判されながらも、EU統合に際しても、スイスはこの制度を強行に守り通してきた。スイスの高付加価値型経済の実現は偶然ではないのだ。
著者は日本の進むべき未来がスイスにあるのではないかと自論を展開する。日本企業はこれまでは「良いものを安く大量に」をモットーに製品・サービスを提供してきた。しかし、価値観が多様化しニーズが変化した今日ではスイス流の「良いものをいかに高く売るか」に路線を変更すべきではないかと提案している。
スイスという国は一般に永世中立国で美しい自然に恵まれた観光国というイメージがある。だが、歴史的には天然資源に乏しく、国境を接する国が多いために侵略もされやすく、厳しい状況に置かれた貧しい国だった。スイスは、そうした否定的な要素を逆手にとってプラスに変えるアイデアと、それを実行に移すための独特の政治制度や社会制度を持っている。
日本はコンテンツ、知的財産を活用して経済再生すべきだという意見があるが、スイスのブランド立国政策は確かに見習える部分が多そうだなと感じた。
・模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003155.html
2005年12月15日
ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図
高級ホテルの予約サイト 一休.comは、ときどきチェックしている。メディアで話題の一流ホテルに、1万円台という格安のプランがみつかったりして嬉しくなる。
一泊5万円、6万円というクラスになると手が出ないが、この価格帯の宿泊が、いま市場で急成長しており、多数の外資系ホテルが東京へ進出し、サービス競争を繰り広げているようである。
・[一休.com]高級ホテル・旅館予約
http://www.ikyu.com/
日本のホテルには暗黙の格付けがある。
【御三家】
帝国ホテル
ホテルオークラ東京
ホテルニューオータニ
は私も知っていたが、新しく新御三家も成立している。
【新御三家】
フォーシーズンズホテル椿山荘 東京
パークハイアット東京
ウェスティンホテル東京
そして、この本の著者によると2005年以降に開業する新しいホテルによって新々御三家まで誕生しようとしているそうである。
【新々御三家】
マンダリン オリエンタル 東京(2005年開業)
ザ・リッツカールトン 東京(2006年開業)
ザ ペニンシュラ 東京(2007年開業)
旧来の御三家やそれに準じるクラスの国内資本系では、圧倒的なブランドと資金力の帝国ホテル以外は、外資の進出に相当の苦戦を強いられているようだ。
外資が一斉に東京に参入を始めたのは、
・海外観光客の増加
・東京の地価の下落による外資の参入意欲高まる
といった理由があり、地方都市では先行して外資ホテルが次々に成功をおさめてきた。東京はその内外対決の最終決戦の場となっているらしい。
高級ホテルは生き残りをかけて、
1 スモールラグジュアリーホテル
2 グランドホテル
3 老舗ホテル
といったポジショニングを明確にし、差別化をはかっているそうである。ホテルの要は一流のサービスを行うことの出来る人材。ホテルマンの人材獲得合戦も盛んになっている。お客の要望にきめ細かに応えるという部分では、国内資本のホテルは定評があったというが、経営とのバランスを取る点では外資の方が強いという。
この本は最近話題の高級ホテルの内情(客室稼働率、平均単価、経営状況)や、業界地図が説明されているのが参考になった。ウェスティンとシェラトン、ザ・リッツカールトンとマリオット、コンラッドとヒルトンは、それぞれ経営母体が一緒の系列関係にあるなどは知らなかった。各グループの成り立ちの丁寧な説明もある。ホテルについての薀蓄が語れるようになってうれしい一冊。
2005年11月28日
起業バカ 2 やってみたら地獄だった!
起業が失敗した成れの果てを起業地獄と著者は名づけた。
「
ある会社は、会社をたたんで自己破産、夜逃げ、一家離散と奈落の底に転がり堕ちる。ある人間はタガが外れて銀行強盗、コンビニ強盗、放火、殺人、幼児誘拐に突っ走る。また、ある人間は、すべての負債を一身に背負い自殺に追い込まれ無残な最期を遂げる。父親の借金のカタに、風俗に堕ちる娘だって少なからずいる。
」
地獄を見た体験者の実例が多数、取材されて収録されている。著者自身が倒産の修羅場をくぐった実践者でもある。
・起業バカ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003465.html
のパート2。
続編の方が面白くなっていると珍しい例だと思う。
紹介される実例の中で一番魅力的だったのが、1980年代にウィークリーマンションで大富豪となるも、バブル崩壊時に1000億円の負債を負い、しかし、諦めずに新事業で復活を果たした川又三智彦社長の章。
・川又三智彦公式ホームページ
http://www.222.co.jp/president/
このホームページは面白い。
1000億円の負債の話は、
・毎日連載!1000億円失って:バックナンバー
http://www.222.co.jp/president/daily/
で詳細が読める。
「社長になっちゃいけないヤツがなったから失敗する」というのが川又社長の結論で、とにかく、気が遠くなるほど諦めない人間以外は社長は向いていないということになる。
ところで前作で起業詐欺の例としてナマナマしい実態が書かれていて面白かったのだが、案の定、著者は、書いた先から訴訟を起こされているらしい。今回もそれ書いちゃって大丈夫ですか?と心配になる体験談がいくつか書かれている。
ブームに乗った安易な起業に、強烈な警鐘を鳴らす本であるが、起業家にとっての試金石みたいな本であるとも思う。この本の裏テーマが、実は起業のススメであることは間違いないようにも感じる。
とりあえず、この本を読んで少しでも怖いと感じた人は起業は諦めた方が賢明だろう。そもそもこの本を読むような人間は起業に向いていないからやめておきなさいと書いてあったりもする。やる人は読む前にやってしまっているはずだからという。こういう警告の本はもっとあってもいいと思った。
・逆風野郎 ダイソン成功物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003886.html
・成功前夜 21の起業ストーリー
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003020.html
・ 起業人 成功するには理由がある
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000712.html
・図解 株式市場とM&A
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003975.html
2005年11月27日
明日は誰のものか イノベーションの最終解
『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』に続く破壊的イノベーション論の集大成。「ハイテクのマーケティングを理論的にやりましょう」という内容で、情報通信業界では教科書の如く引用されるようになった。ケース満載。
マーケットリーダー企業は、要求の厳しい顧客の声に耳を傾けて、自社の製品・サービスを進化させる。その「生き残りのイノベーション」企業は、より利益率の高い金持ちマーケットに積極的に進出していく。一方で、新興企業は彼らが狙わないローエンドで新たなマーケットの創出を狙う。その武器が破壊的なイノベーションである。
・イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002943.html
詳しくは前作の書評を参照。
破壊的なイノベーションは、
・非消費に挑み全く新しいマーケットの確立を目指す
・ローエンドにおける攻撃(非金持ちマーケット)
という特徴を持つ。
本作でも、破壊的イノベーションに関わるたくさんの企業ケースが丁寧に解説されている。そこから抽出された、以下のような教訓が掲げられている。
1 破壊はあるプロセスであって、結果ではない
2 破壊は相対的な現象だ。ある企業にとっては破壊的なことが、他の企業にとっては生き残りに役立つということもあるだろう。
3 今までとは違っているテクノロジー、あるいは過激なテクノロジーが、そのまま破壊的だということはない
4 破壊のイノベーションがハイテクのマーケットに限定されているわけではない。破壊はどんな製品やサービスのマーケットでも起こりえるし、国家経済間の競争を説明するのにも役立つはずだ。
破壊的イノベーションが市場を席巻するまでには
1 変化のシグナル
2 競争のための戦い
3 戦略的な判断
という3つのプロセスがある。
大企業のマネージャーにとっては、ベンチャー企業の話題の新製品をまめにチェックし、自社の品質基準で比較したときに見くびらないこと、それが異なる評価軸で新しい顧客を開拓しているかもしれないと疑ってみること、が大切な心構えになる。ベンチャー企業にとっては、大企業同士がハイエンド向けの開発中心の生き残りフェイズに入った市場を発見したら、ローエンド対象に、まったく違う需要を満たす低価格帯製品の開発にアイデアを絞っていけということになる。
時代は動いている。常に眼を光らせて、破壊的イノベーションで勝利する側にまわれ、そのためには、この本を読んで理論を勉強せよ、という本である。一冊目から順に読んだほうがわかりやすいのだが、これは集大成本なので、巻末の資料も読めば、この本一冊でも著者の理論の全体像を理解できるようにまとめられている。
2005年11月13日
図解 株式市場とM&A
縁があって、著者の保田さんと私は毎週顔を合わせて一緒に仕事をしている関係なのだが、この本を偶然みつけて読み終わるまで、実のところ、よく知らなかった。読み終わって一気に尊敬モードに以降。来週の会議からは先生と呼ばせていただきます。いや本当に。
・ちょーちょーちょーいい感じ
http://chou.seesaa.net/
保田さんのブログも発見。最新の株式市場に対する解説記事が参考になる。
身内だからほめているので決してなくて、アマゾンで第三者がたくさん絶賛してもいます。「株式・社債の部」1位にもなったそうです。投資銀行時代の経験と自身の起業体験を活かして、株式市場とM&Aについてやさしく書かれています。
私も学生時代に起業してから10社ほどのベンチャー企業の創業や役員就任を経験しています。株価、株主、出資、議決権、増資、ストックオプション、M&A、配当、デューデリジェンス、上場(これはやったことないけど)は、一通り経験したり、身近でみてきました。この本のキーワードで知らなかった単語はありません。
しかし、この本のおかげで、知っていること同士の関係が、1段階上のレベルでわかった気がしました。創業者の視点で体験する順序で、各キーワードの意味が説明されているのが、わかりやすさの秘密でしょう。
内容は、一人の若者が友人らの出資を受けてカフェを創業し、複数店舗展開した末、株式を公開、他のカフェの買収や、逆に敵対的買収(TOB)を仕掛けられるまでになるという、青春熱血起業物語です。小説形式なのが教科書と違います。
ドラマとしても演出が効いていて、最後のエピソードでは本当に目頭が熱くなりました。ベンチャーに対する見方が、投資銀行業務出身なのに、暖かでさわやかです。カネのためだけではなくて、自分の夢、みんなの夢のために会社を作る、育てることの楽しさと苦労がよく伝わってきます。
もちろん、実際の起業では、こんなにキレイに物事が進んだり、判断要素がクリアなことはないのですが、経営の基本知識の適切な要約になっています。突っ込んだ細かい事柄はばっさり省略されていますが、社長自身が知っておくべき事柄はこれで十分だと思いました。細かいことは、現場で著者のような専門家に聞けば良いわけですからね。
この本、著者は身内ですが、内緒で自腹で買いました。その価値がある本だと思いました。起業を考えている人、創業以来突っ走ってきたけれどもここらへんで知識を整理したい現役経営者にうってつけの良書。

























