2004年06月08日

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〈快楽消費〉する社会―消費者が求めているものはなにか
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P96 表3−1消費者行動に求められる快楽の変遷 より。

高度経済成長期(1960年代)
・余暇活動を通じての楽しさ
・機能的な合理性による満足感

バブル期(1980年代後半)
・高額の出費を伴う消費行動を通じての「お楽しみ」
・経済的な合理性による満足感(好みの多様化に伴って)

バブル崩壊後(1990年以降)
・定額の出費を伴う消費者行動を通じてのささやかな楽しみや喜び
・経済的な合理性による満足感(より切実な問題として)

炊飯器や洗濯機が売れた時代から、ヘリコプターで遊覧ツアーが人気の時代を経て、「デパ地下」「自分にご褒美」「マイ・ブーム」「癒し」の時代へ変遷してきた。消費行動の内容も、経済的合理性や機能の合理性を追求するのではなく、消費体験が大きな意味での快楽となるから買うというように、変容してきたと著者は言う。

学者が書いた本なので学説紹介が面白い。まず快楽を定義するまでに1章使う。

感情心理学者のラッセル、メーラビアンらは、あらゆる感情は、2つの軸(覚醒水準高い-覚醒水準低い、快楽-不快)の上にマッピングできるとした。嬉しさや幸福や歓喜は、覚醒度が高い快楽で、平静や安らぎは覚醒度は低いが快楽である。そして、これらを覚醒水準(A:Arousal)(P:Pleasure)と符号化し、(D:Dominance、自分で制御できるかどうかの度合い)要素も追加して、感情をそれぞれの強さの度合いで数式的に、記述できるという。

この方式を使うと、たとえば、「心地よい」は+0.38P-0.06Aで、「感銘を受けた」は+0.56P+0.07A-0.13Dなどと表記できる。詳細はラッセル、メラービアンの論文にあるようだが、この方法論は、インターネット上のコミュニティの発言などを、一枚の平面上に、感情を軸に分布させるような、分析手法を開発できそうである。

快楽とはこの感情のマップの上で快楽度が高いエリアに入るもので、楽しさ、おもしろさ、喜び、美的な満足、感動、興奮、熱狂など従来の快楽消費論の対象以外にも、癒し、和み、リラックス、懐かしさ、好奇心、元気づけられることなども含まれるとする。快楽消費の取り扱い範囲を広げていく。

快楽消費が従来の古典経済学と異なる点のひとつに限界効用逓減の法則が働かないことが挙げられている。贅沢な生活に慣れればもっと贅沢がしたくなる。マイブームにハマればさらに深くハマっていく。「快楽には、自ら快楽への欲求を強める傾向がある」ということ。食欲のように「もうおなかいっぱい」にはならない。限界快楽は逓減しないのだ。

飽くなき快楽消費スパイラルにはまっている日本人の消費行動の実態が、後半では分析されている。贅沢品を日常的に消費するシルバー層などマーケッターが作り上げた妄想ではないか、とか、節約自体が快楽となっていることだとか、経済的に苦しくても快楽消費する不況の中の消費者像など、マーケティングに役立ちそうな新しい視点が幾つもある。

快楽消費における統計データの紹介が興味深い。不況下ではさまざまな家計の切り詰めが行われるが、高所得者と低所得者の切り詰め方が異なる商品サービスがある。高所得者は、高額ファッションと、文化的催しの支出予定が多いのだそうである。お金持ちに会いたければ、高級ブティックやコンサート会場へ行けということか。起業家ならば、そういった場所でプレゼンすることで、投資家を見つけることができるのかもしれない。

学説中心の前半が特に勉強になった。機能が豊富で安い商品を作っても必ずしも売れないよということは、マーケティングの世界でも言われていることであるが、それを理論的に解説してくれた。

この本では著者が詳しくないためか、取り上げられていないが、快楽的消費の代表例がアキバ的消費なのではないかと思う。秋葉原は最近、家電販売の街からオタク、マニアの街に変容していると言われる。

・AKIBA PC Hotline!
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/

・ASCII24 - Akiba2GO!
http://db.ascii24.com/akiba/

・価格.com - アキバ総研
http://www.kakaku.com/akiba/

・アキバBlog(秋葉原ブログ)
http://blog.livedoor.jp/geek/

アキバの快楽消費者としては、自作PCパーツ系と美少女同人系の2パターンあると思う。どちらも、必要以上に高機能なパーツ、より萌え萌えなコンテンツに何万円、何十万円を落とす、快楽消費の典型パターンだと思う。こちらは高額所得者というよりは、他の消費を犠牲にしても買ってしまう、デジタル、萌えエンゲル係数が高い特殊な集団なのかもしれないが、国際的な都市であり、ユニークな特徴を持ち、再開発計画による変化も起きようとしている。快楽系でイッパツ当てる(下品だなあ)のには、アキバが今後、要注目かなあと思う。

・秋葉原の研究
http://homepage1.nifty.com/straylight/main/akihabara.html



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Posted by daiya at 2004年06月08日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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