2008年03月17日

一億三千万人のための小説教室

・一億三千万人のための小説教室
41YPY8DXC6L_AA240_.jpg

私は小説を書くのが子供の頃からの夢である。でもまだひとつも書いていない。いいガイド本はないものかとずっと探しているわけだが...。

高橋源一郎が書くのだから並みの内容ではあるまいと予想して読んだが冒頭から「実際、わたしの知っている限り、「小説教室」や「小説の書き方」を読んで小説家になった人はひとりもいません。」と読者を突き放す。

「真実というものは、知ってみると、たいていガッカリします。身も蓋もない、という感じだからです。この「小説家」の代わりに、「音楽家」や「数学家」や「建築家」ということばを入れてみてください。みんなあてはまっちゃう。ほんとに、真実って味気ない。」

とはいいつつも、もちろん高橋源一郎なりのアドバイスがある。「つかまえる」「口まねする」という二つの方法が小説家になる近道だと教えている。

つかまえるというのは、生きていればいろいろなボールが飛んでくる、ボールの中にはきっと小説も含まれているのでつかまえなさい、という意味。古今東西の名作の一節を引用して、ほら今何か飛んできたでしょ?あなたわかった?という風なケーススタディが続く。

「ふつう、人は、なにかを考えて、それから、おもむろに、その考えたなにかをことばで表現する、と思われています。しかし、それは、まったくの誤りではないでしょうか。ほとんどの「小説教室」で、まちがったことを教えるようになったのは、そのせいではないか、とわたしは思ったのです。まず、口まねがあるのです。」

好きな小説家の文体を真似してみなさい。そうすればそれを書いた人の感覚で世界を見る練習をしていれば、自分のオリジナルの視線と融合して、やがて自分自身の小説も書けるようになるよ、と高橋源一郎は言う。キャラクターが自然に動き出すという状態に近いのだろうか。

「小説家は、小説の書き方を、ひとりで見つけるしかない」。小説家志望の孤独な挑戦を、もしかすると近道になるかもしれないヒントを提示することで勇気づけてくれる本である。

・物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005281.html

・2週間で小説を書く!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004901.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・小説の読み書き
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004878.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年10月25日

CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ

・CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ
51O70nLsB6L._AA240_.jpg

小寺信良と津田大介の二人がキーパースンとコンテンツの未来を探る対話集。

登場するのは以下の顔ぶれ。

土屋 敏男(第2日本テレビ エグゼクティブ・ディレクター)
草場 大輔(東京MXテレビ 報道制作局ディレクター)
椎名 和夫(音楽家、実演家著作隣接権センター運営委員)
遠藤 靖幸(価格.com マーケティング部)
江渡 浩一郎(産業技術総合研究所 研究員)
西谷 清(SONY ビデオ事業本部長)
長谷川 裕(TBSラジオ「Life」プロデューサー)
中村 伊知哉(国際IT財団 専務理事)
松岡 正剛(編集工学研究所)

松岡 正剛の「プロセスがコンテンツになる」というやりとりが、ふだんネットを使っていて感じていた私自身の問題意識と重なって、参考になった。

「松岡 PCの世界じゃないところでは、例えばゴールデンウィークに旅をする。するとどこか観光地に行くのはいいけど、その間はみんな疲れて車を運転しているわけですね。それを何とか忘れて「楽しかった」と言っている。ところがPCの世界ではそれがなくて、その手続き上で何があったか全部消えているわけです。そこを増やせば、情報社会というか、情報世界にもうちょっと何か実際に体験した身体的なものが蘇るはずです。」

小寺 そういう意味では、アマゾンで本を発注して、本が宅急便で届くていうのは、多少アフォーダンスがあるような気がしますね(笑)。買うときは、書店に行って買うのよりも便利は便利ですけど、本が届くまでのタイムラグがあるから(笑)。

松岡 その「行ったり来たり」をウェブにも入れて欲しいわけ。そういうプロセスにおいては梱包を解くとか、どーんと届いて、「え?こ、こんなに買ったっけ?」って驚いたりすることが残るんだけど、ウェブではそれがなくなってしまっている。だから、それを手がかりとして本来ならば編集が始まるものが、始まりにくいんですわ」

テクノロジーによって人間は高い山の頂上へいきなりヘリコプターでいける時代になったが、それでは登山者の心身の変化ってないと思うのである。あらかじめ準備をして、訓練をして身体を慣らし、緊張しながら仲間と助け合いながら上っていくプロセスがあるから、頂上で大きく感動すると思うのだ。人生観も変わるかもしれない。

先日、ニュースで取り上げられていた比叡山の千日回峰行、9日間断食不眠の修行者の話だって同じだと思う。千日回峰行はこの堂入りの前後に1000日間で地球一周分の約四万キロを歩く荒行。達成できない場合は自殺しなければならない掟がある(この現代に、驚きである)。その途中のクライマックスが「堂入り」であった。

・9日間断食不眠の難行達成 比叡山中の「堂入り」
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200710210156.html

無事、この修行者は難関を達成した。悟りを開くこと、ある究極的な境地に達することを目的としているのだろう。長いプロセスが重要であって堂入りだけ達成しても無意味なのだ。そういえば、この発言者の松岡 正剛氏は、千日で千冊の書評(毎回4000字以上)をブログで公開する荒行の成就者である。プロセスが大切というのは自身の最近の経験もあっての発言なのかもしれない。

・千夜千冊
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/toc.html

情報やコンテンツとの見合い結婚が増えているってことだと思う。検索やSNSは強力な仲介サービスとして機能している。すぐに最適な属性の情報がみつかってしまう。「勇気を出して初めての告白」まで悶々とするってプロセスが失われているのである。コンテンツとしての醍醐味や人間的な価値は、本来はそういう最適化できないプロセスの中にこそ存在しているはずなのに。この本にでてくるキーパースンたちの多くは、デジタル化された現場で取りこぼされているアナログ的なプロセスの重要性を、再度見直すべきと訴えているように読めた。

他の論点では江渡 浩一郎氏の創作性と著作権法に関する考察も鋭い指摘と思った。

「ただ重要なこととして、創作性って謎な部分が多いくせに著作権法では明確に規定された概念だってことなんです。著作権法的に書かれていることによれば、著作物とは「思想を創作的に表現したもの」ですよね。<中略>でも実際には、これが著作権法を支える根本的な概念でもあるはずで、現実の世界では裁判官がそれを最終的にジャッジするということになっている。僕はそれが著作権法内に潜む矛盾だと思うし、現実的に一番処理に困る瞬間じゃないかなと思ってます。」

長い間、コンテンツとメディアそして流通方式は不可分で三位一体だったのだろう。だから、音楽業界が法律によって守ろうとしてきたのは、音楽とCDと流通網の利益分配システムだった。決して著作権者の権利でもなければ、作品の中の創作性でもなかっただろうと思う。それらが分離解体されて、純粋に創作性を評価しなければならなくなったが、既存の法律では記述があやふやなわけだ。

最小の創作性ってなんだろうか。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年10月01日

日本語の作文技術

・日本語の作文技術
51QKNW7MY2L__AA240_.jpg

1982年初版、文章術の古典的名著。ジャーナリスト 本多勝一氏が「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」を目的とした作文技術を披露している。言語学的に正しい文法を講釈するのではなく、現場のノウハウを徹底的に理論化している。

特に「修飾の順序」と「句読点のうちかた」は、文章を書く人すべてが一度は読んでおくとよさそうな内容である。こうするとわかりやすくなるという説得力のある推敲例を多数示した上で、原理原則を抽出していく。

「修飾の順序」

1 節を先に、句を後に
2 長い修飾語ほど先に、短いほどあとに
3 大状況・重要内容ほど先に
4 親和度(なじみ)の強弱による配置転換

「句読点のうちかた」

第一原則 長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ
第二原則 原則的語順が逆順の場合にテンをうつ
#この他に筆者の考えをテンにたくす場合として、思想の最小単位を示す自由なテンがある

文章を書いていて迷った時、これらのルールを知っていれば、救われる黄金則だと思う。
前半で実践的な文法論が語られた後に、後半では表現論や日本語論が熱く展開されている。避けるべき表現法として「紋切型」、「繰り返し」、「自分が笑ってはいけない」、「体言止めの下品さ」、「ルポタージュの過去形」、「サボリ敬語」を挙げている。個性がなくて、手抜きの文章は美しくないということだと思う。日本語はこうあるべきという著者の思想が感じられる。

特に共感したのが、読者の感情を動かしたいならば、文章が感情的になってはいけないというアドバイスである。漫才師と同じで、笑わせるものは笑わないのが鉄則なのだ。「読者を怒らせたいとき、泣かせたいとき、感動させたいときも「笑い」と同様である。筆者自身のペンが怒ってはならず、泣いてはならず、感動してはならない。」。

笑わせてやろう、泣かせてやろうと思って文章を書くとき、人は作為の文章を書いてしまいがちである。その作為性が、無粋であったり、下品であったり、くどい印象などを読み手に与えてしまう。逆説的であるが、そうした作為を排して、自然に流れる文章を書けるようになるための技術や修行法を、この本は教えている。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年08月26日

現代語訳 風姿花伝

・「現代語訳 風姿花伝」
616J77AZE8L__BO2,204,203,200_PIsitb-dp-500-arrow,TopRight,45,-64_OU09_AA240_SH20_.jpg

すべてのクリエイターにオススメしたいのが「現代語訳 風姿花伝」(PHPエディターズ・グループ)である。風姿花伝はご存知のように、600年前に能を極めた世阿弥が書いた芸能指南の書。明治になるまで一子相伝で伝えられてきた。この書の中でも最も秘匿性が高い「口伝」で語られた「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」というフレーズは有名である。この現代語訳は古い言葉で書かれたその奥義が、誰にでもわかる言葉に翻訳されている

世阿弥によると花とは、面白くて珍しいもののことである。見るものの心を動かさなければ花ではない。そして、どんなに洗練された表現でも、ありふれたものは花ではない。だから、表現者はたくさんの持ちネタを修得し、場の雰囲気に合わせて、最適なものを繰り出せるようになりなさい。それが花のある芸人ですと伝えている。

私流に超訳してしまうと、こんなことも言っている。

・開演は会場が静まるのを待ってから始めなさい。
・昼の公演では穏やかな出し物から少しずつ盛り上げていきなさい
・夜の公演ではいきなりテンションを高く始めなさい
・練習中の芸は地方巡業で磨き、ここぞという東京ドーム公演で完成形を見せなさい
・若い芸人は若さゆえの輝きを持つが、それは一瞬のことなので根気よく精進しなさい
・35歳で世の中に認められないなら一流は諦めたほうがいいかもしれない

まだまだあるが、ずいぶん実践的で、芸能全般に応用できそうなノウハウである。幽玄、去来花、物真似という言葉もこの本から出たもの。長く秘密になっていたものが、こうして読みやすい形で読める現代は幸せだ。

さて、なぜ花は秘すべきなのだろうか。なぜ風姿花伝は一般の目から500年以上も隠されてきたのだろうか。答えが最終章に書いてある。

風姿花伝の極意は、「珍しいものが花だと思って演じていることを周囲に悟られるな」ということだったからなのである。珍しいものが見られると期待する観客の前では、何を出してもびっくりさせることが難しい。つまりネタバレ厳禁ということなのだ。

Web2.0、オープンソース、集合知の時代になってあらゆる知識が万人に共有されている。消費者にとっては便利で快適な時代だが、作り手にとっては「秘すれば花なり」が難しくなってきたともいえる。

世阿弥は芸能は人々を面白がらせ幸せにするものだと語っている。その価値を守るためにクリエイターは、これからも舞台裏は隠すべきなのかもしれない。しかし、隠すものは、隠していることを悟られてはいけない。見るものに不便や無粋を感じさせることなく、舞台裏を秘するは花なり。それがインターネット時代のクリエイティブの目指す理想なのではないかなと考えた。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年04月05日

デザインにひそむ〈美しさ〉の法則

・デザインにひそむ〈美しさ〉の法則
479733794X_01__AA240_SCLZZZZZZZ_.jpg

工業デザインの入門書。

これを読むと「ご祝儀のお札はなぜ3つに折るのか?」なるほどと納得する。

・トランプ
・クレジットカード
・ハイビジョンの画面
・新書
・デジカメIXY digital
・名刺
・iPod
・マルボロの箱

これらの共通点は黄金比(1:1.618)の長方形であるということ。デザインの世界で黄金比は神話化されているが、その意識的な利用はルネサンス時代くらいからだそうである。写真の世界ではフレーミングの理論として画面を縦横に三分割し、4つの交線上におもな被写体を配置する「三分割法」があるが、これも結果的に黄金比に近いレイアウトを得る手法である。

・黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004272.html

黄金比と並んでよく使われるのが白銀比(1:ルート2)で、A4、B5などの紙のサイズに使われているという。現代の人気キャラクターの全身は白銀比に収まるものが多いと紹介されている。「しっくりくる」「かわいい」という主観的な印象も、実はこうした客観的な数学が作り出している可能性があると著者は説く。

この本が扱うのは形だけではない。

「日本の子供たちが大好きなアンパンマンも、シンプルさの法則に忠実です。実は日本語には色を表す形容詞が、「赤い」「青い」「白い」「黒い」の四つと、江戸時代に追加された「黄色い」「茶色い」の六つしかありません。この六色は日本の伝統色、いわば日本版の「原色」だということができます。アンパンマンにはこの六色のうち五色だけで表現されています。そして残りの青は適役バイキンマンの基本色です。」といった色の秘密もある。

質感をデザインする造形技法である「角アール」「面取り」「ハマグリ締め」などについても教えている。私たちが日常使っているモノのデザインの定石がたくさん語られていて非常に勉強になった。

そして、著者の結論的な一節にこういう文章があった。

「そして、現在の工業デザインの流行は、素材感や質感の追求になっています。これからの市場は、本物指向に向かっていきます。そのような市場の要求に、色や形だけで応えるには限界があります。本物が持っている高級感を表現するための素材感や質感の開発と研究が、現在の工業デザインの大きな課題になっているのです。」

ここでは、本物ってなんだろうか?と考えさせられた。

ブランドの偽物はあるが、本質的には、存在するものに本物も偽物もないから、ここでいう本物とはみんなが本物と思っているモノのことだろう。新素材で作った方が安くて高機能にできるモノでも、木や鉄や布という伝統的な素材でつくると本物っぽかったりする。
Webデザインにも本物っぽさってあると感じている。レイアウトやインタフェースがイケているかどうかの印象のことである。写真アルバムであればFlickr、地図であればGoogleマップ、検索であればYAHOO!やGoogleのインタフェースデザインを踏襲すると、本物っぽかったりする。しかし、これらも実は既にあったパーツの組み合わせなのでもある。

まったく新しいものなのだけれども、どこかに過去のイディオムを再利用していることが本物っぽさの正体なのかもしれない。伝統と断絶したデザインは、斬新だけれども使いづらく感じることが多い。新しいイディオムは一度、ユーザに受け入れられると、クラシックになり、次の世代のイディオムの要素になるのだろう。そう考えると、クリエイターの創造性の魔法のように思えるデザイン技術も、歴史学や社会心理学的な理論で検証できる体系があるのかもしれないと思えてくる。

工業製品の「美しさ」について考えるきっかけになるいい本だなあと思った。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年03月26日

脳は直感している

・脳は直感している
4396110642_01__AA240_SCLZZZZZZZ_V43309405_.jpg

「素人にとっては、とくにそれが自分の問題であれば、頼ることのできるのは自分の直感だけであり、当然真剣に取り組むだろう。それが「ビギナーズ・ラック」を呼び起こす要因であると思われる。」

「なぜある異性が、それほど魅力的に見えるのか?そう問われると、たいていの人は自分でも説明できない。「直感で」と答えたりするわけだが、実はその異性を選んだ理由は、「進化論的な意味での正解」だからなのだ。」」

人間の直感は無根拠なものではなく、人類が進化させてきた極めて優秀な知覚システムで、「脳の声」を聞くことで誰もが直観での正しい判断を上手にできるようになるという。この本には直感の機能する仕組みと鍛え方が書かれている。

身の危険を事前に察知する、魅力的な異性を瞬間的に選ぶ、儲かりそうな商売のにおいを雰囲気でかぎわける。相当に複雑で難しい総合的な判断が必要な事柄であっても、当事者として真剣な問題についての直感は、素晴らしい威力を発揮することがある。

人間は完全な論理的判断で動くことは1〜2割程度で、ほとんどの事柄は直感で判断している。日常生活の多くの判断は、言葉ではうまく説明できなくても、なんとなくそう思うからそうするという方がスムーズに進むものだ。

直感の法則として著者は次の3つを挙げている。

・直感は「そのときその場でその人に」発揮される
・直感は「非言語的なメッセージである」
・経験を積めば積むほど、直感力は増大する

直感は言語に先行して状況を判断する。だから「虫の知らせ」のように未来を予知することもある。これは人間の顕在意識がはたらくよりも0.5秒はやく、脳がその行動の準備を始めているという、リベットの準備電位説でも裏付けられている。

たまに私にも驚くべき直感が働くことがある。クジに当たるかどうかの直感である。実はこの前の日曜日にもあった。私は通常はクジ運がよくない。当たる気がしないから引かないのだが、稀にこれは自分が引いたら確実に当ると直感する。そういうときは大抵当たるのだ。

東京ビッグサイトで開催されていたPhoto Imaging Expoを見学していたのだが、あるブースで簡単なアンケートとクジを実施していた。その当たりの直感がきたので、速攻で答えてクジを引かせてもらい、数千円のカメラを当ててしまった。こういう当たりの直感の勝率は極めて高い。

これを後から、冷静に分析してみると、クジの当たり確率を、展示ブースの店構えや雰囲気から、直感で判断しているから、当たりやすいのだと思う。それは一般的な知名度は小さいが、知る人ぞ知る小さな会社が、隅っこに出したブースだった。こういうブースはクジも商品も、ある程度数を用意するが、クジの数はあまり用意しないはず、なのである。ベンチャー経営者として、小さなブースを出す側の心理を知っているから、なんとなく勘が働いて「脳の声」がしたのだと、後から考えて、思った。

この本には、こうした「脳の声」を素直に聞くには雑音を消さねばならない。そのための訓練方法が7つ紹介されている。直感を鍛える方法が、瞑想や禅の方法とたくさんの共通点を持っていることがとても興味深い。

直感についての考察とトレーニング方法、どちらも説得力がある良い内容。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年03月23日

Make: Technology on Your Time Volume 02

・Make: Technology on Your Time Volume 02
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4873113180/daiya0b-22/
4873113180_01__AA240_SCLZZZZZZZ_V24358241_.jpg

・Make: Technology on Your Time Volume 01
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004714.html

ものづくりハック雑誌 Make:日本語版の第2号。
「作れる物は決して買ってはならないし、探すことのできる物は決して作ってはならない」

地上30メートルの樹上に家を建て3年間暮らした経験をこの本に投稿した科学史家の言葉である。

今回の第一特集は「生物をハックする」。「生物学なんてそんな難しいものじゃないですよ。つつきまわしてどうなるか見てればいいんですから」。キッチンで自分のDNAを抽出し、カタツムリを凍結して蘇生させ、接木や受粉で植物をカスタマイズするのが趣味の人たちが、その魅力とノウハウを熱く語っている。バイオテクノロジーって身近なんだなと思えてくる。

セグウェイの発明者ディーン・ケーメンのロングインタビューもある。「極端に成功する人、逆に極端に失敗する人は、どちらも学校では非常によくできるか、まったくだめかのいずれかだと思います。学校というのは、この世界でどうしたらまずまずうまくやっているかを教えるところじゃないでしょうか。」。発明家・思想家を増やすための非営利団体を立ち上げて、普通じゃない人達の育成にも力を入れている。

パソコン周りの記事としては、PalmPilotを分解し、中身をくり抜いた厚い本の中へキーボードと一緒に埋め込んで、Palmのノートブックを作る記事が面白かった。電源が何日も持つので便利なのだそうだ。

ページをめくるたびに意表を突かれるのは第1号と同じ。空き缶でスターリングエンジンを、ジャム瓶でジェットエンジンを作る。ハムスター発電機まである。コンピュータ万能の時代に、敢え手を動かしてモノを作る世界は憧れる。参入ハードルが低いWebのマッシュアップよりも、ユニークなモノを作りやすいかもしれないと思ったりする。

この本の投稿には遠く及ばないが、私は最近、ピンホールカメラの撮影にはまっている。自分であけた小さな針穴を光が通ってフィルムに像を結ぶ。デジカメならば簡単にもっとキレイな写真が撮れるわけだが、ピンホールで現像された写真を手にしたときの感動は何百倍である。人に語りたくなる(今後ブログで語る予定)。そういう語りたい人たちの思い入れいっぱいの投稿記事でこの雑誌はできている。面白い。

・水蒸気ロボ
http://www.crabfu.com/steamtoys/rc_steam_rover/

・自宅をスタートレックに改造
http://www.24thcid.com/

・15人乗りバス
http://busycle.com/

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年03月13日

「金のアイデアを生む方法 ”ひらめき”体質に変わる本

・「金のアイデアを生む方法 ”ひらめき”体質に変わる本
4415400264_01__AA240_SCLZZZZZZZ_V43783428_.jpg

アイデアマラソンの開祖 樋口先生の最新刊。私も日々実践中で信者の一人。

アイデアマラソンは、毎日テーマを決めずに、自由に発想をノートに書きだす発想力トレーニング。アイデアを1000個出せば3つは貴重な発見が必ず含まれているというのが樋口さんの持論である。冒頭に一般書として異例の返品保証が宣言されている。

「本書を読んで、1000個の自分の思いを書き続けた後、貴重な発想を発見できなかった人、自分に発想の自信がつかなかった人には、著者として本書の代金を返済する。樋口健夫 http://www.idea-marathon.net/

ネタが尽きない人は、ネタ切れを恐れないものだと思う。仕事のプロというのは新発想を年中求められるから、常にネタ切れの状態からネタを生み出している。逆にアマチュアは持ちネタから離れられない。発想の幅が狭い。

教室で学生に自由にアイデアを書き出すブレインストーミングをやらせると、時間内に数が出せる人と出せない人がいる。観察していると、典型的なパターンがあることにきがつく。

出せる人に共通するのは初速が速いことである。最初におもいつきを全部書き出してしまう。そこで詰まるが、思考モードが変わるとまた猛スピードでいくつか書き出す。そういうスタートダッシュを何度も繰り返している。裏返すと、発想によく詰まるのである。

逆に出せない人は、なかなか書き出さない。なぜ書き出さないかというと、自分のアイデアがつまらないと思っているからなのだ。いきなり金のアイデアを生もうとして、結局、平凡なアイデアのリストも作れないで終わる。こちらは発想が詰まることさえないのだが、文字通りつまらないのである。

重要なのは、ネタ切れして煮詰まった状態の先に金のアイデアがあると信じられるかどうか、だと思う。そのためには経験しないと信じられない。私の仕事の経験では、フリーランスの人は発想が豊かであることが多い。実際、企画プロデュースの大物はフリーである。

これは自由人だから自由な発想ができるというだけでもないと思う。明日の仕事を取るために、生活レベルで強烈に煮詰まった経験があるからだと思う。会社員のネタ切れとフリーランスのネタ切れは深刻さが違う。フリーはどうにかしなくてはいけないから、なくても出すのである。

樋口さんのいう1000という数は、ちょうどいい数字だと思う。誰でもウンウンうなれば100くらいは書きだせる。1000というと何度も停滞を経験せざるを得ない。ウンウンうなるくらいでは勘弁してもらえない状況が金のアイデアを産む境地をつくる秘訣なんではないだろうか。

本書は、樋口さん自身の23年間のアイデアマラソンの、煮詰まり体験とその脱出成功例の本だとも言える。脱出の肝は発想に何らかの制約を課す発想ゲームであることが多いようだ。そういうノウハウがいっぱいある。

たとえば、アイデアマラソンの練習問題が最後に掲載されている。

・「過去の大笑い」を3つ考えなさい
・「過去に得したこと」を3つ考えなさい
・「過去にびっくりしたこと」を3つ考えなさい

これらの問題に答えると、自分にとって刺激的な意味作用を持つ9つのアイデアが得られそうだ。それを他のアイデアと結びつけることで、たくさんの新発想を産みそうである。まず9つ書いてみるかどうかが、できる人とそうでない人の分かれ目になりそうだと思った。

アイデアマラソンって何?という初めての人にもおすすめ。

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年02月08日

小説の読み書き

・小説の読み書き
4004310245.01-AN1VRQENFRJN5._AA240_SCLZZZZZZZ_V65929816_.jpg

小説家の佐藤正午が岩波書店の月刊誌『図書』に連載した「書く読書」というエッセイ24本に手を加えた新書。川端康成、志賀直哉、森鴎外、永井荷風、夏目漱石、芥川龍之介、太宰治など各章で偉大な小説家のひとつの作品を著者が読んでは感想文を書いていく。小説家が他人の小説家を評論するときの目の付け所は、やはり普通とは違うなと思った。自分が同じものを書くとしたら、という前提があるからだ。

たとえば、川端康成の「雪国」の章では、有名な書き出し「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」に対して、なぜ川端は「夜の底」と書いたのか、考察する。わざわざ隠喩を使うわけだから、考えて書いたのに違いないというのである。自然にでてくるわけがない、書き直しもあっただろうというのである。自身も書く人間でなけければ、こういう問題は立てないだろう。

ディティールにこだわる。三島由紀夫は耳がいい、音にこだわる。開高健は目がいい、見たものについての表現が多い、など、そういう読み方もあるのかと気づかされる。小説家たちの文体を書き手の視点で句読点を見て、ここは推敲して書いたはずだ、こちらは推敲していたらそうはならないはずだ、なんてことも見抜いている。

そして、ただの文体研究に終わらないのがこの本の読みどころである。一見、文学部の先生みたいな文体論なのだが、興味が無い作家については、途中で分析は中途半端に投げてしまって余談へ流れていったり、連載時に誤読を読者に指摘された部分に延々と追記をしているが、情報の補足訂正というより、言い訳で上塗りする感じであったり。

真面目に書いている風なのだけれど、どこかおかしくなって笑ってしまう。開高健は細部を観察した表現が多くて女性の肛門の皺について書いているが、そんなに見えすぎるからロマンチックでなくなって、恋愛小説が書けなかったんだろう、という大胆な結論をしてみせたりする。特に、著者の論理展開がまとまらずに、とりとめのなくなった回ほど面白いのだ。著者の地が見える。それが作家としての著者の力であり、個性なのかもしれない。

私もいつか小説を書いてみたい。小説を読みながら、もしこの一行を自分が書くとしたらどう書くかを意識しながら読むというのは、小説作法の本を読むよりも、ずっとスキルの向上に役立ちそうだなと確信した。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2007年01月13日

「視聴率男」の発想術

・「視聴率男」の発想術
4796647724.01._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

「エンタの神様」「24時間テレビ」「投稿!!特ホウ王国」「速報!歌の大辞テン!!」「マジカル頭脳パワー!!」「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」など視聴率20%超の番組を次々に作り出し、ハズレがほとんどないヒットメーカーの本。

1000万人が求めるものをコンスタントにつくる人の持論が展開されている。


あえてヒットを生むための肝心な要素を挙げるとすれば、まずは世の中でいちばん多い、いわゆる”普通の人”のことをよく理解しておくことだと思う。常日頃から自分の中に、世の中の最大公約数的な”普通の人”を住まわせておくようにすることが何よりも大事なのだ。この後に続く本書の主要なテーマも、まさしくそこにあるといえる。


スタンダード的要素の割合が多いヒットというのは、わかりやすく言えば、すでに世の中に「ありそうでないもの」を生み出す作業、ということになる。

できあがってみれば「なーんだ」と言われるくらいに当たり前で、誰からもまんべんなく支持されるものでありながら、それまではどこにもなかったもの。

普通の人に受け入れられるヒット番組、ヒット商品とはそういうことだと思う。


普通の人が潜在的には誰もが感じているけれど、誰も気づいていないニーズにうまく応えることができればヒットにつながる

自分の中でつくりあげた普通の人の部分=「100のレベルの自分」に対して「200のレベルの自分」が新しい答えを見つけ出していってあげることが発想の基本だとする。そのためには自分の頭に1000万人を住まわせ、日本一普通の人になることが大切だという。

「まったく新しい何か」を生み出そうとしてその結果、マニアックだったり奇をてらったモノをつくると失敗するということらしい。

テレビの場合は1000万人が見るという前提は常に存在していて、その枠組みの中で、何を売るかという考え方になる。「視聴率は親切率」だとし、とにかくわかりやすさを心がけろとアドバイスしている。外さないことが重要で、アバンギャルドは常に傍流だと切り捨てる。

究極的にマス相手のマーケティングの極意は参考になった。実績が示すようにこの著者は時流に乗った天才なのだと思う。

と同時に疑問も生じる。

「エンタの神様」「24時間テレビ」「投稿!!特ホウ王国」「速報!歌の大辞テン!!」「マジカル頭脳パワー!!」「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」

私はこれらの番組が面白いと思えない一人だからだ。

「最大公約数の面白いと思うもの」という発想は、逆に言えば、そこから外れた人たちにとっては「つまらないもの」にもなりうる。インターネットはよく使うけれどテレビはあまり見ない人たちというのが私の周りには、随分多くなってきた。そうした層の多くは多様なこだわりや趣味を持っていることが多い。多様な最小公倍数のニッチ集合が、画一的なマスとは別に増えてきているのではないだろうか。”ロングテール”はネットだけでなく、テレビでも進行しているのではないか。

「1000万人向けの感動」をしらじらしく感じながらも視ている視聴者はきっと多いはずである。放送の限界を通信が突き破り、コンテンツの世界でも革新が起きるとしたら、新しい世界では、1000万人が浅い感動をするのではなくて、数万人の異なる集団が異なる内容に対して、深い感動をするようになる気がする。


・誰がテレビをつまらなくしたのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003903.html

・テレビの教科書―ビジネス構造から制作現場まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003734.html

・テレビのからくり
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002987.html

・テレビの嘘を見破る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002377.html

Posted by daiya at 23:59

2006年10月12日

ぐっとくる題名

・ぐっとくる題名
4121502272.01._SCMZZZZZZZ_V41613618_.jpg

「週刊ファミ通」でビミョーでオモシロいコラム「ブルボン小林のゲームソムリエ」を書いている著者のブルボン小林は、本名 長嶋有。そちらの名義では小説「猛スピードで母は」で芥川賞を受賞した作家として知られている。音楽、小説、映画をやっている芥川賞作家の辻仁成とか、パンクロッカーで直木賞作家の町田康みたいである。逸脱系マルチタレント。

・ブルボン小林のゲームソムリエ
http://www.ecodec.com/jegame/

・長嶋有公式サイト
http://www.n-yu.com/

ぐっとくる題名を研究するこの本の最初に挙がったのが「ゲゲゲの鬼太郎」。

「やぶから棒ですまないが『ゲゲゲの鬼太郎』のゲゲゲとはなにかを、説明できる人はいるだろうか。」。「ゲゲゲな鬼太郎」でも「ゲゲゲに鬼太郎」でもなく「ゲゲゲの鬼太郎」が印象が深いのは、つげ義春の「無能の人」が「無能な人」ではないからと同じで「の」の持つ機能をうまく使っているよね、と解説している。

ゲゲゲは音の持つインパクトで使ったはずだが、「の」で結ぶことで、「ゲゲゲの意味なんてものは知っていて当たり前というか、ああ、ゲゲゲね、分かります分かります、といわなければならない感じ」を与えているのだという。

「無能な人」については私は英語で有能な人を表す「man of ability」の逆の直訳なのではないかと思っていたのだが、つげ義春がそんなことは考えそうもない、著者の分析の方がずっと深かった。曰く、「無能な人」でなく「無能の人」にすることで「どうしようもなくそうなってしまった」感じになって「無能な人には苛立つだけだが、無能の人には会ってみたいではないか」。

「の」の使い方と前後の二物衝突効果によって、力のあるタイトルを作ることができるというわけである。著者は俳人でもあるらしく短い言葉に込める思い入れが深そうだ。ビジネス書として読むと、かなりふざけた調子で書かれているが、その遊び心こそ本質なのだと思う。考察とノウハウがたくさん含まれており、題名をつける仕事の参考になる。

この本もタイトル買いした一冊だったが、立ち読みができないネット上では特にタイトルで買う人が増えているのではないだろうか。最近狙ってる感ありありで増えている気がするのが「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」式のなぜ系タイトル。この本でも取り上げられていた。

そろそろ飽きてきたのだがアマゾンで書名で「なぜ」を検索したところ3332冊もあった。

なぜ系は「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学」「わたしと仕事、どっちが大事?」はなぜ間違いか―弁護士が教える論理的な話し方の技術 」「若者はなぜ3年で辞めるのか?」など、言われてみればなんでだろう?と気になる問いかけがポイントらしい。昔は「君たちはどう生きるか」なんていう本が売れていたけど、時代が変わったのだなあと思う。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2006年10月05日

もしも、シンデレラの行動がすべて計算ずくだったら? 考える脳の鍛え方

・もしも、シンデレラの行動がすべて計算ずくだったら? 考える脳の鍛え方
4569649122.01._BO01,224,223,220_PIsitb-dp-arrow,TopRight,22,-21_OU09_SH30_SCMZZZZZZZ_V55505752_.jpg

著者は人気番組の制作をてがける古舘プロジェクト所属放送作家。

表題はアングルを変えると企画が生まれるという意味。

たとえば、実はシンデレラが計算高い、したたかな娘で、他の登場人物は不遇な環境の演出に利用されていたとしたら、物語の印象はだいぶ変わってしまう。王子様の視点で考えたり、魔法使いの視点で考えたりしても、別の物語をつくれそうだ。

ベースとなるおとぎ話をゼロから発想するのは難しいが、アングルを変えるだけなら、発想は考えやすい。著者曰く「0から1を生むのではなく、すでにある1から1’を作る。そして、それを磨いて2を生む」べきだという。

できた企画を輝かせるには「フリ・オチ・フォロー」。一番伝えたいこと=オチだけあってもダメで、前フリとフォローの1パッケージをつくれというアドバイスがある。話を聞いてもらう空気を作って、ネタを披露し、フォローで後押しするという意味。番組制作に限らず、プレゼンの基本でもあるかもしれない。

企画発想ノウハウがいろいろと語られているが、強調されているのは、企画のプロセスを楽しむこと。「○○になったらがんばるという人で○○になってがんばる人はいない」と書かれているように、○○になるプロセス自体が好きで楽しいことが、いい企画を出す出発点なのだ。本番だけではなく常に「となりの人を楽しませることができるか」を試すと企画発想のいい練習になるそうだ。

簡潔に番組制作の実例がいろいろ挙げられていて、番組やイベントの企画を仕事にする人にとって参考になるノウハウがたくさんある。

・アングル
http://www.furutachi-project.co.jp/angle/
著者らが主宰するアイデアマン養成セミナー。


Posted by daiya at 23:59 | Comments (0)

2006年08月30日

すばらしい思考法 誰も思いつかないアイデアを生む

・すばらしい思考法 誰も思いつかないアイデアを生む
4569645984.09._BO01,224,223,220_PIsitb-dp-arrow,TopRight,22,-21_OU09_SH30_SCMZZZZZZZ_.jpg

天才の創造性は「ランダムな変異から、優れたものを選択して残す」やり方にあると著者は自論を展開している。ダーウィンの進化論、自然淘汰の仕組みと同じである。


自然界が手当たりしだいに新たな可能性を生むように、天才はバラエティ豊かな代替案をいくつも思いつき、いくつもの推測を生みだす。そこから最良のアイデアを選り分け、さらに発展させたり改善するのに使う。


驚異的にクリエイティブな天才は、二、三の限られた偉業を行ったと広く思われているがこれは誤解だ。トーマス・エジソンは白熱灯と蓄音機の発明で知られているが、彼は1093もの特許を取得した。エジソンは創造をただの地道な努力の結果と見ている。電球が長持ちするフィラメントを作るのに何千回も失敗したのに、なぜあきらめないのかと助手に聞かれ、エジソンは質問の意味がわからないと答えた。彼にしてみれば失敗は一つもなかった。ただ、うまくいかない方法を何千も発見しただけだ。

もちろん、普通は多数のアイデアを生み出すこと自体が難しい。

この本は、ひとつのアイデアが別のアイデアをうむような連鎖反応を起こすための視点変換術、斬新な組み合わせを作る方法、集団で発想する方法、素晴らしいアイデアの作り方といった思考方法の理論とテクニックがテーマだ。

テーママップ、MY法、システムマップ、SCAMPER法、フィッシュボーン・ダイアグラム、真北思考法などなど、何十もの思考法とその使い方が解説されている。すぐに実践できそうなもの、やってみたいものが、いくつか見つかった。

「質問の仕方を変える」というのは簡単だが効果がありそうだ。トヨタで「どうしたらもっと創造的になれるか?」と従業員にアイデア募集しても提案はなかったが、「もっと仕事を楽にするにはどうしたらいいか」に言い換えたら洪水のようにアイデアが寄せられたという。「どうしたら売り上げが伸ばせるか」「どうしたら受験に合格するか」と悩んでいるより、どうしたら楽に○○できるか?と問い直してみたら、根本的な原因や解決の糸口がみつかりそうである。

そしてなにより、追い求めるテーマに対する情熱的なしつこさが最終的には重要みたいだ。

アインシュタインは彼自身と平均的な人の違いを尋ねられて「干し草の山から針を探せと言われたら、普通の人は針を一本見つけた時点でやめるだろうが、私はほかにも針がないか、干し草の山全体をしらみつぶしに探す」と答えたそうである。

情熱的でいられることが、才能の本質なのかもしれないなと思った。

・発想法―創造性開発のために
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003913.html

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000725.html

・デスクトップ発想支援ツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html

・アイデア・ブック スウェーデン式
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004203.html

・ひとつ上のアイディア。
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004030.html

・発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000275.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (1)

2006年08月29日

Make: Technology on Your Time Volume 01

・Make: Technology on Your Time Volume 01
4873112982.01._SCMZZZZZZZ_V60780072_.jpg

これは面白い!。

モノを作る個人のクリエイティビティを次々に紹介していく本である。

スーパーマーケットのショッピングカーにエンジンを取り付けてゴーカートを作る人、アフリカの巨大ゴキブリを頭脳とするロボットを作る人、自宅で低温核融合の実験を続ける学者、中古マウスを自律センサーで動き回るロボットに作り変える人、VHSビデオを猫の給餌マシンに作り変える人、などなど。

クリエイティブで、少しクレイジーなものづくりの現場のドキュメンタリがカラー写真と解説で数十本。

時間があったらやってみたいと思ったのが「カイトフォト」と「ドロイドビルディング」。どちらも見ているだけでワクワクする趣味だ。

カイトフォトは凧に自動撮影機構つきカメラを取り付けて、上空へ飛ばして、航空写真を撮影するもの。飛行機に乗らなくても、上空から見下ろすパノラマが撮影できる。気持ちが良さそう。

・日本カイトフォト協会
http://www.interq.or.jp/japan/jkpa/

ドロイドビルディングは、スターウォーズのロボットを自作で再現する趣味。世界中に制作者がいて、R2D2の頭のドーム部分などは、皆が必要としているので、売られているそうである。映画に登場するR2D2を忠実に再現すると、三本目の足をおろすことはできても、引っ込められなくなるそうだ。だからビルダーの間では、オリジナル設計者よりも踏み込んで可動部のデザインをしなければならないことは常識らしい。

・Astromech Gallery - Astromech.net
http://www.astromech.net/Lists/Galleries/astromechs/Default.htm

なお、この本は米国の雑誌「Make」日本語版で、年に2,3冊出版されるとのこと。これはその日本第一号である。出版社はオライリー。ソフトウェアエンジニアの関心もくすぐるように、ハードウェアハッキングの楽しさが紹介されている。

・makezine.com: MAKE: Technology on Your Time
http://www.makezine.com/

必ず次号も買うと思う。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (1)

2006年07月09日

パワポ使いへの警告

・パワポ使いへの警告
4062820161.01._PE00_OU09_SCMZZZZZZZ_V65201304_.jpg

パワーポイントで企画書をつくる人のための企画力養成本。

まず、「パワポ使いが陥る6つのワナ」はどれも大変に納得。

1 パワポで企画書を書きながら、企画そのものを考える
2 企画の全体像を考える前にディティールばかりに目を向けてしまう
3 ”いつもの”企画書を使いまわす
4 パワポの機能でできないことは諦めてしまう
5 「カット&ペースト」でデータを切り貼りして企画の流れを見失う
6 アニメーション機能など演出に凝りすぎて、企画の本質を忘れてしまう

企画を考えることと、企画書を作ることは別であり、いきなりパワポに向かっても、いい企画のストーリーは作れない。だから、企画を考えるときは、パワポやパソコンからいったん離れろとアドバイスがある。

白紙に向かったときが一番クリエイティブになれるということ。

しかし、まったく自由形式では難しいので、企画作業の”規格”をベースに考えよう、とすすめている。

企画作業の規格:

・目標 最終的にどうなりたいか
・現状把握 それに対して、自分は今どういう状態にあるのか
・課題 なりたいものになるためには、何が阻害要因なのか
・解決案 その阻害要因を打ち破るには何をすればいいのか

これは一枚企画書に似ている。

・鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html

パワポのスライドの使いまわしはダメだが、企画の骨組みだけは、こうした起承転結的なテンプレートを使ったほうがよいということ。説得するストーリーをつくるには、むしろワードの方が向いているという。脱パワポの本なのだが、ワードのすすめもあるのが意外な展開もあって面白かった。

大手代理店に所属の企画のベテランの言葉なので、企画発想作業について、参考になる部分が多かった。技術的にパワーポイントを使いこなせるようになったら、パワーポイントを使わない方法を考えるべき、なんだなあ。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (1) | TrackBack

2006年02月23日

ぶっちぎり世界記録保持者の記憶術―円周率10万桁への挑戦

・ぶっちぎり世界記録保持者の記憶術―円周率10万桁への挑戦
4526055700.01._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

著者は円周率暗記の世界記録を3回更新している記憶の達人。

記憶力の強化についてさまざまな書籍がでているが、円周率8万桁超を暗唱するのに成功した実績を持つのはこの原口式だけである。方法はやはり数字の語呂合わせなのだが、独自の数字と文字変換表をつくり、物語に翻訳することで、記憶に見事に定着させている。富士山ろくにオウム鳴く式の語呂合わせであるが、8万桁の内容は「北海道松前藩の武士の旅立ちからなる壮大なストーリー」になっている。

円周率暗唱の第2位の記録保持者も日本人だが4万桁台なので、著者のやったことは書名どおりぶっちぎりの記録である。驚くべきは記録達成時の年齢が59歳で、思い立ってから4年しかたっていない。それまでの人生でも特に際立った記憶力の人ではなく、普通のキャリアの技術者だったらしい。相当の努力があったのかと思いきや、いきなり、がんばったらできなかっただろう。がんばらないからできたという持論が語られる。

この人は日々の練習も”適当”で切り上げる習慣を持っていた。やりたいときだけやっている風である。あまり真面目に取り組んでいない。お酒を飲んだ日は気持ちよく寝てしまうとか、順調に進んでいてもほどほどで切り上げてしまう。

常に腹八分目に抑えておくことで物足りない感じを残すのがコツなのだという。もっとやりたいのにやらなかったから、またやるの連続で未踏の高峰を制覇せよと述べている。

「続けるのが大事なのではない。続けられるのが大事なのだ」

「楽しくやることが肝心なのではない。楽しくやれるのが肝心なのだ」

根性や努力はまったく不要で、続けられる方法、楽しくやれる方法こそ大切だという。

前半は8万桁達成までの時間を追ったドキュメンタリ。後半は原口式記憶術の内容が詳細に語られている。著者曰くこの方法なら誰でもできるはずという。円周率だけでなく、人の名前や電話番号、誕生日や歴史年表の記憶への応用例も示される。

歴代の円周率暗唱記録保持者は第3位まで日本人で、みな語呂合わせで記憶したようだ。原口式の仕組みもそうなのだが、音と文字の組み合わせが多様に作れて、漢字のような少ない文字数で情報量が多い文字を持つ日本語の構造と関係がありそうである。

この本は二桁の九九の覚え方も教えてくれるのだが、もし日本語が暗記に有利に働くことが事実なら、もっとこの人のやり方を教育関係者は研究して、応用すべきだと思う。コンピュータ・外部記憶の時代とはいえ、記憶の容量が大きい人はまだまだ役立つ。

ところで、この著者の記録は偉業だと思うしメソッドの効果も十分にあるのだと思う。しかし、普通の人間は円周率を何万桁も覚えようという意欲がそもそも湧かないのではないだろうか。


円周率は、私にとって御仏に奉じる読経のような効果があります。どこまでも唱え続けるほどに心が癒され、身体の中の力が自然に抜け去ってリラックスの状態が延々と続くことになるのです。

だから、ついつい毎日やってしまう。暗唱の本番でも緊張で失敗しない。これがこの人の秘訣でもある。幸せな人だなあと羨ましくなった。

何かに心底惚れ込む、天命とめぐり合ったと信じる邂逅の体験は、望んだからできるものではない気がする。やりたいことは”見つける”のではなく”見つかる”が本当だと思うし、ヒトでもコトでもFall In Loveなのであって、惚れようと思って惚れるわけじゃないと思うのである。

・記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003024.html

・記憶する技術―覚えたいことを忘れない
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002369.html

・「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001014.html

・記憶力を高める50の方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000974.html

・なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000470.html

・図解 超高速勉強法―「速さ」は「努力」にまさる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002998.html

・上達の法則―効率のよい努力を科学する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000645.html

・記憶のマジックナンバー7±2とドメイン名の考え方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000330.html

・あたまのよくなる算数ゲーム「algo」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001072.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0) | TrackBack

2006年02月16日

アイデア・ブック スウェーデン式

・アイデア・ブック スウェーデン式
4478760969.09._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

1時間もあれば読めてしまうが考え始めると根っこの深い、発想についての30のエッセイ集。

アイデアに詰まったときに、机の上においてあれば突破口になりそう。

たとえば、こんな話が載っていた。

ある心理学者が、第二次世界大戦中、アメリカ空軍の依頼で、爆撃機パイロットを選ぶ仕事をした。現場の司令官も別に候補者を選んでいた。戦争が終わってみると、心理学者が選んだパイロットはこどごとく撃墜されていた。司令官の人選は生き残った。

心理学者のパイロット選びの敗因は「敵機に遭遇したらどう対処するか?」という質問に対して「上昇します」とマニュアル通りに答えたものばかりを採用していたから。現場の司令官が選んだのは「その場になってみないとわかりませんが...」「ジグザク飛行してみます」「左右に機体を揺らしてみます」などマニュアルに頼らない操縦をしようとした候補者たち。

マニュアル通りの対応は、敵からも予測されやすかったのだ。現場の柔軟な発想で対処できる人が勝つという端的な事例である。また、そういう人をどう選ぶか、マネージャーの知恵についての話でもある。短いが深い。

こういう話が30ばかり。

この本の目次から内容を想像するのも発想の練習になる。

1 針を探す
2 はてなタクシー
3 世界初の創造性テスト
4 メタファーで表現する
5 エジソンのアイデア・ノルマ
6 組み合わせの妙
7 いつものやり方
8 アイデアは潰されやすい
9 満腹病
10 メキシコ・オリンピック
11 バグを探す
12 囚人用ベビーフード
13 混ざらないものを混ぜる
14 失敗するほどいい
15 裸の王様
16 「絶対」はない
17 「もし・…・・」と考える
18 アイデアメーション
19 「メトロ」の裏話
20 考える人、考えない人
21 青いライトと赤い車
22 創造性の4B
23 発想のもと
24 それ、捨てるんですか?
25 暗黙の掟
26 チャレンジャーになる
27 テレポーテーション
28 「イエス」より「ノー!」
29 将来のシナリオ
30 素晴らしき未来


この本を知ったのは、大手広告代理店出身で最近Google社への転職でも話題になった有名プロデューサ高広さんのインタビューから。クリエイティブの現場のプロが推奨する本。

・プロデューサー列伝-vol8.高広伯彦氏
http://www.protama.net/interview/08/1.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0) | TrackBack

2005年12月02日

ひとつ上のアイディア。

・ひとつ上のアイディア。
4844321889.09._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

CMプランナー、コピーライター、クリエイティブディレクター、アーティスト、建築家など、アイデアを仕事にするプロたち20人が、アイデアづくりのノウハウを語る。企画の仕事にかかわる人間にとって参考になる意見がたくさん。

キムタクと岸部一徳の富士通「FMVシリーズ」CMなどをてがけた多田琢氏の後味発想はいいなと思った。今度試してみたい。


だいたい、いつも扱う商品について「自分にとって理想的なCMをいま見た」と仮定することからはじめます。それを見た自分はどういう感覚になって、どういう気持ちになるのか、その後味だけをまず思い浮かべてみる。それから、その後味を味わうためには、どういうCMを見なければならないかと考えます

後味を判断基準に考えるというやり方、まるでアスリートのイメージトレーニングのようだ。

思いついたアイデアを話す作法を語ったのは、サントリーの「ボス」「モルツ」JR東海「そうだ、京都、行こう。」をつくったクリエイティブディレクターの佐々木宏氏。アイデアだしの会議では、思いつきをドンドン話すことが重要だとし、

まずは、

「全然関係ないんだけどさ」
「それって逆に言えば」(続けて、逆になっていない、言いたいことをいう)

と切り出して、言いたいことを言いあいなさいとすすめている。おもいつきを喋ることを許さないのが、日本の会議の悪いところだと指摘している。

クリエイティブの仕事において、アイデアの価値が日本では不当に低いとし、その原因を業界の構造にあると指摘したのは、「南アルプスの天然水」などをてがけた岡康道氏。


欧米ではメディアコミッションが日本の3分の1くらいしかないため、媒体をとったからといって、必ず広告会社が儲かるわけではありません。そのぶん、クリエイターがつくる広告のクオリティがフィーの多寡としてはね返ってくる。つきつめればアイディアの優劣で広告会社の利益が決まるわけです。

最初に大きなメディアの枠を電通・博報堂が買い占めてしまう、寡占市場の日本とは違う状況が、海外の広告市場にはあるようだ。


この本には実に多様なアイデア発想のノウハウが語られている。発想を生み出し続けるには、思考のバリエーションをいくつか持っていることも有効だろう。その素材が発見できる本。


・発想法―創造性開発のために
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003913.html

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・「超」整理法―情報検索と発想の新システム
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003283.html

・「超」時間管理法2005
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002584.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・情報検索のスキル―未知の問題をどう解くか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000616.html

・分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000725.html

・それは「情報」ではない
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000510.html

・デスクトップ発想支援ツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html

・文書アウトライン作成支援ツール iEdit
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000317.html

・理想のアウトラインプロセッサを求めて
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000360.html

・現場調査の知的生産法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001804.html

・「挫折しない整理」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001794.html

・知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001734.html

・広告の天才たちが気づいている51の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000686.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (2) | TrackBack

2005年10月17日

発想法―創造性開発のために

・発想法―創造性開発のために
4121001362.09._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

初版は1967年。読まれ続けて第80版を数える発想法の古典。この本に登場する当時の最新テクノロジーは”ゼロックス”(コピー機)である。データ整理にはパンチカードをうまく使えとも書かれている。隔世の感があるが、発想法の核となる思想はまだ読み応えがある。

KJ法の考案者である著者 川喜田 二郎氏は、科学を書斎科学、実験科学、野外科学の3つに大別した。文献と推論に依存する書斎科学、実験室での検証に重きをおく実験科学に対して、現場や現実を観察するのが野外科学である。この場合の野外とは、場所が屋内、屋外に関わりなく、ものごとが起きている現場を扱っているという意味だ。社会問題やビジネスの課題を解くプロセスも多くは野外科学の範囲となる。

野外科学の方法論として、問題提起→内部探検(頭の中)→外部探検(情報集め)→観察→記録→分類→統合というプロセスを著者は提唱している。問題提起と頭の中でのまとめが終わったら、フィールドへでての野外観察による情報集めが始まる。野外観察とは現地調査であったり、インタビューであったり、アンケート調査であったりする。

野外観察の4条件として、集める情報には、

(1)とき、(2)ところ、(3)出所、(4)採集者

という項目をつけることを徹底せよという。

そして発想法の古典KJ法に集めた情報を持ち込む。

KJ法に必要なもの

1 黒鉛筆とサインペン
2 赤・青などの色鉛筆
3 クリップ多数
4 ゴム輪を多数
5 名刺大の紙片多数
6 図解用の半紙大の白紙
7 文書を書くための原稿用紙
8 紙を広げる場所

KJ法に必要な正式用具がわかったのは収穫だった。集めた情報を紙片に書き出す。意味を圧縮してほどほどの大きさの意味単位に分割する。量的には約2時間のブレインストーミングで紙片数十枚から百数十枚を書き出せという。

次にグループ化。「この紙きれとあの紙きれの内容は同じだ」「非常に近いな」と親近感を覚える紙きれを一箇所に集めていく。5枚程度の小チームを編成して中チームをつくり、同様にして大チームをつくる。チームの次元をわかりやすくするために赤や青で色分けする。小チームはクリップで、中・大チームは輪ゴムで束ねるのがよい。

1 離れ小島は無理にまとめずおいておく
2 小チームから大チームをつくる、逆はだめ

がコツ。

複雑すぎず、相互に親近感を持ちながら、ある程度質的に異なるグループは、独創的解釈を引き出す鍵になる。このようなアイデアの基点となるグループは「基本的発想データ群」でありBAD(ベーシック・アブダクティブ・データ)とも呼ばれる。

図解化、文章化にあたっては、最初にとっかかりとなるBADをみつけ、そこから隣接するグループへとつなげていくのが正しいそうである。離れた島へ飛んで図解化や文章化を行うと全体の関係の説明が破綻しやすいということのようだ。

KJ法で難しいのはグループ化の後のプロセスであると思う。A型とB型、そして複合型のAB型、BA型がある。

KJ法A型 グループ編成した材料を図解化する
KJ法B型 グループ編成した材料を文章化する
KJ法AB型 図解化したものを文章化する
KJ法BA型 文章化したものを図解化する

図解化と文章化の長所、短所を次のようにまとめている点がとても参考になったのでそのまま引用してみる。


まず文章化は図解のもっている弱点を修正する力をもっている。もっと平たくいえば、その誤りを見破って、発見し、かつ修正の道を暗示する力をもっている。これが一つの経験的に重要な点である。図解と文章化とを対比してみると、図解の長所は、瞬時に多くのものごとのあいだの関係が同時的にわかることである。この長所は文章とか会話にはない。しかし他面、図解のなかのものごとのあいだの関係は、「関係がある」ことはわかっても、その関係の鎖のメカニズム(たとえば因果関係)、性質、強さなどは、かならずしもあきらかではない。もちろんこれらの関係のメカニズム、性質、強さなども、わかってからあとでは図解上に表現することはできる。それにもかかわらず図解化という手続きは、それを鮮明にあきらかにするためには最適の方法ではない。すくなくとも文章などに劣るのである

それでは一方的に、文章化の方が図解化よりもものごとの関係認知の方法としてすぐれているかといえば、けっしてそうではない。文章化は今のべた点で図解化にまさるかわりに、ものごとを前から後へと鎖状にしか関係づけられないのである。

日本人は理論よりも、日常体験を重視するので、現場の事実や声に密着したところからスタートするKJ法が向いているが、根気のいる組み立て作業である文章化では日本人は不利になるだろう、と国民性と発想法の適性まで分析されている。確かに日本人は雰囲気を把握するのは得意だが、論理的にそれを説明する能力は不得意である気がする。

発想法の古典を読み返して意外な発見もあった。KJ法というのは、そのスタイルから純粋に帰納法的方法論であると思っていたが、当初からアブダクションの要素を強く織り込んだものであったということ。そしてアブダクションは職人芸であるがゆえに、できる人はできるが、できない人が大半という事実が、古典KJ法の限界だったのではないかと感じた。

KJ法は改良が重ねられ、コンピュータも利用できる時代になった。今も有効な手法だとは思うが、グループ化後の解釈プロセスは依然、「才能のある○○さんだからできる」という側面は否定できないように思われる。

そうした人材を組織内につくるための習慣強化技法として、私はこのブログで何度か取り上げているアイデアマラソン法が有効なのではないかと考えている。またIT(ネットワークとデータベース)が、発想を生み出すための人と人、人と情報のセレンディピティを創発するきっかけとなる気がしている。

関連情報の紹介。

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・「超」整理法―情報検索と発想の新システム
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003283.html

・「超」時間管理法2005
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002584.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・情報検索のスキル―未知の問題をどう解くか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000616.html

・分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000725.html

・それは「情報」ではない
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000510.html

・デスクトップ発想支援ツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html

・文書アウトライン作成支援ツール iEdit
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000317.html

・理想のアウトラインプロセッサを求めて
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000360.html

・現場調査の知的生産法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001804.html

・「挫折しない整理」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001794.html

・知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001734.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0) | TrackBack

2005年09月26日

1年で1000件の発想を書こう ポケット・アイデアマラソン手帳’06

・1年で1000件の発想を書こう ポケット・アイデアマラソン手帳’06
4774124737.09._PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg

新しい手帳は1年間、これを使うことに決めた。

アイデアマラソンの樋口さんが考案した手帳。

・アイデアマラソン
http://www.idea-marathon.net/

「この手帳に1000件の発想を書き込めば、あなたの人生は変わる!」

1 毎日、領域を決めないで、最低1件、オリジナルな発想を思いつく。
2 簡潔に手帳に書き込み、できれば絵を描く。
3 同僚、友人、家族に話し、さらに発展させる

初日には決意を書くことと指示があったので「今日から開始1000個など簡単である」と書いた。

この手帳は10月末から日付が始まっているが、私は既に使い始めている。これはスケジュールを管理するのではなく、発想を豊かにするツールなので、まったく問題ない。むしろ早く使い始めて都合がよい点もある。

1日に2つアイデアを書く欄がある。1日に3つ以上のアイデアを発想した場合、翌日の日付のアイデア欄にどんどん書いてしまってよいらしい。だから、発想数が多いと、今日の日付と記入欄の位置はどんどんずれていく。私の場合も既に10月中旬の欄に突入した。この「先を行く」感が快感なのだ。

1日2つの発想がノルマになるのは嫌である。逆に軽々とノルマをクリアして伸び続けるというのは楽しい。目標の上方修正を日々行っている気分になる。考案者の樋口さんは自らに発想数のノルマを課して、何十年もアイデアマラソン生活を続けている人である。アイデアを連番管理する発想ノートには「+100」とか「+200」という数字を書いていると聞いた。本来、その日までに書いているべき数字をどれだけ上回ったかの表示だそうで、これが継続の秘訣だという。このバランス数の欄が手帳にもちゃんと用意されている。

39498371_98.jpg

1週間が見開きで構成されていて、毎週「アイデアのヒント」という課題欄がある。たとえば第一週目は「スリッパに付ける新しい機能を考えてみる。【例】ダイエット中の人向けの万歩計付きスリッパ」」。これで発想のトレーニングができる。発想にまつわる「今週の格言」もアイデアがでないときの参考になる。樋口さん自身の活用例もサンプルとして最初に例示されている。

ポケットに入る大きさで、ビニールカバー、ペンホルダーがついている。移動中はカバンのサイドポケットやスーツのポケットに携帯できる。透明な「簡単スケッチスケール」や、手帳を楽しくする「活用シール」、朝昼晩と自由に数字が書ける「自主記入欄」など、この手帳自体が発想の仕掛けでいっぱいである。

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第6回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003521.html

・パフォーマンスアートとしてのアイデアマン
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003751.html

その他手帳関連:

・人生は手帳で変わる フランクリン・プランナー トライアルセット
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002651.html

・「超」時間管理法2005
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002584.html

・文房具を楽しく使う ノート手帳篇
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002137.html

・メモが上手になる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001388.html

・手帳200%活用ブック
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002677.html

・ミリオネーゼの手帳術―8ケタ稼ぐ女性に学ぶサクサク時間活用法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002714.html

Posted by daiya at 23:59 | Comments (3) | TrackBack

2005年09月08日

3Dコピーライティング

・3Dコピーライティング
4797332271.09._PE_SCMZZZZZZZ_.jpg

Sound(音味)
Mean(意味)
Look(形味)

のSML3つを兼ね備え、立体的に人の心に訴求する上手なコピーライティング方法は何かを探る本。パターンと実例がまとめられており、読み物というより、ネーミングやコピー、詞をつくる際の参照本として使える。

煮詰まったときにパッと開くと手法が見つかる。たとえば「畳語」というネーミング方法。紹介されている事例は以下のようなもの。

コカコーラ
パラッパラッパー
Orange Range

○○の○○という形も手法のひとつであるらしい。この手法がジブリのアニメ作品に共通しているとははじめて気がついた。

天空の城ラピュタ、となりのトトロ、魔女の宅急便、紅の豚、千と千尋の神隠し、もののけ姫、ハウルの動く城、風の谷のナウシカ

私が心を強烈に揺さぶられたコピーと言うと、やはりアップルコンピュータの「ThinkDifferent」キャンペーンのコピーだ。はじめに聞いたときは震えがきた。今も読むたびに力が湧いてくる。


クレージーな人たちがいる。

反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。

四角い穴に、丸い杭を打ち込むように

物事をまるで違う目で見る人たち。

彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。

彼らの言葉に心をうたれる人がいる。

反対する人も、賞賛する人も、けなす人もいる。

しかし、彼らを無視することは、

誰にも出来ない。

なぜなら彼らは物事を変えたからだ。

彼らは人間を前進させた。

彼らはクレージーと言われるが、

私たちは彼らを天才だと思う。

自分が世界を変えられると

本気で信じる人たちこそが、

本当に世界を変えているのだから。

そして、年に一回はヤラれてしまうのが、公共広告機構のCM映像。サイトでも最近のCM映像を見ることができる。

・社団法人 公共広告機構 ACオフィシャルサイト
http://www.ad-c.or.jp/index.html

いまこのサイトで視聴できる作品としては、博報堂制作の、


「あなたが大切だ」

命は大切だ。
命を大切に。
そんなこと、
何千何万回
言われるより、
「あなたが大切だ」
誰かが
そう言ってくれたら、
それだけで
生きていける。

公共広告機構です。

は、いい。グッときた。そうだよ、わたしが大切だ(違)。

ACで歴代で一番記憶に残っているCMは2002年の「IMAGINATION」。

妙なサイトで映像を発見した。

・pya! 心に浮かんだことを、そのまま書けばいいんだからね
http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=1922


コピーの検索エンジンではコピラが充実している。

・東京コピーライターズクラブ コピラ
http://www.tcc.gr.jp/index_main.html

過去40年の広告コピーを13業種、「新聞」「ポスター」「ラジオCM」「TVCM」「パンフレット」「ネーミング」などのジャンルや、広告主別に検索できる。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (1) | TrackBack

2005年08月14日

頭がよくなる本

・頭がよくなる本
4489005261.09._PE_SCMZZZZZZZ_.jpg

1974年に初版が出版されて以来、世界中で100万部以上売れたベストセラーの最新改訂版。原題は"Use Your Head"。脳の使い方を変えることで、潜在能力を最大限に発揮する学習法を教えている。

著者は学校教育では肝心のことが教えられていないと批判する。記憶の働き、記憶術、目の認知機能、注意の集中、動機づけ、キーワードやキー概念、思考そのもの、創造性、学習技術について、通常の教育は素通りしている。

この本は、学ぶ前に学ぶ必要があった脳の使い方についての素晴らしい指導書。

■本を読む技術

学習の基本に読書がある。本の読み方ではまず次の先入観は間違いだから忘れろと書かれている。

・一度に一語ずつ読まなくてはならない
・毎分五百語以上読むのは不可能だ
・速く読むときちんと理解できない
・速く読むほど集中力は落ちる
・平均的な速度で読むのは自然なことであり、それゆえ最善だ

目が文章を追う上下(左右)運動を科学的に分析すると、眼球は一直線になめらかに文章の線を追っているのではなくて、ある間隔で静止と移動を繰り返している。一度の静止でいくつの単語を読むことができるか、静止時間をいかに短縮するか、が読書のスピードを握る鍵になっていると指摘する。

速く読む練習法も示されているが、面白いのは大切なのは速く読む動機づけだという話。「運動が苦手な人が牛に追われて百メートルを10秒きっかりで走ったり、二メートルの塀を飛び越えてしまうようなものだ。」とちょっと無茶とも思えるたとえで説明される。

10秒、2メートルという数字はともかく、普通の読書速度の人間が動機づけで速く読めるようになるということは、無茶ではないようだ。人は試験の時間など、集中して早く読まなければいけないと思っているときは実際、速く読めているのだから。メトロノームを使って読書をする訓練も効果的だという。頭脳がそれを当たり前と感じるような、知覚の高速化を体得せよと説いている。

これは私も日常、長時間の通勤電車で本を読んでいるときに経験している。あと10分で目的地に到着という状況で、本が読み終わるまで残り30ページから50ページということがある。普通時の私の読書速度では無理である。だが、到着までに終わらせようと強く集中すると、理解度を落とすことなく、読み終えることができてしまう。この不思議は動機づけパワーなのだと思う。

■記憶する技術

記憶術についても詳しい。学習開始後20分から50分が記憶の定着度が高いから、その時間を勝負にし、こまめに休憩を入れるのが学習のコツだそうだ。記憶を長く保つには、何らかの関連づけが有効であるとし、特に次のようなイメージと結びつけて覚えると忘れないという。

言葉を結びつけるイメージ
 共感覚・感覚的なもの
 動きのあるもの
 関連のあるもの
 性的なもの
 こっけいなもの
 想像力をかきたてるもの
 数字を使ったもの
 記号を使ったもの
 色彩の豊かなもの
 順序・並べ方
 前向きなもの
 誇張されたもの

具体的にイメージと結びつけて記憶するやり方が例示されていて、大変、参考になる。

キーワードで記憶するには、記憶のためのキーワードと創作のためのキーワードを区別せよというノウハウも興味深い。内容を正しく想起できるようなキー概念を上手に選んで、キー概念同士の関係を記憶することが大切なのだ。そのためには多義的で拡散するキーワードではなく、内容を絞り込んでいくためのキー概念をみつける必要がある。

■頭脳地図でノートをとる

キー概念をみつけるにはノートの取り方に工夫せよという。普通の学習者のノートは先生の講義の内容を、話の順序や構造通りに文章化している。これでは、見直す際にも時間がかかるし、キー概念がみつけにくくなる。こうした一般的なノートの90%の言葉は記憶に必要がない無駄な情報であるとしてばっさり斬る。

キー概念を中央において、関係するキー概念を放射線状に伸ばして線で結ぶ頭脳地図(いわゆるマインドマップ)で、ノートを取ることが推奨される。キーワードは線上に書く。こうすることで無駄な言葉を書かずにすみ、見直す際にも、講義内容を正確に想起しやすくなるという。

そういえば私たちは学校でノートのとり方をほとんど教わっていない。ノートは先生の話の内容をその順序で余すところなく書くものだと思ってしまう。あるいは黒板をそのまま移す作業に終始してしまいがちだ。だが、ノートは結局、自分で後で想起の補助に使うためのツールであることを考えれば、想起に必要な情報だけを、効果的に記録することが重要なのだと気がつかされる。

頭脳地図ではまず学習前に知っていることを2分間で書き出せという。2分で思い出せないような事柄は、想起のベースにならない。学習はこの初期の頭脳地図に枝葉を伸ばす拡張する内容として学んでいくとよい。なるほど。


この本は学習法について示唆に富む名著だと思った。短時間でたくさんの学習が必要な場で有効なノウハウが多い。最近の学習術のノウハウのベースになっているようなので、学生にはとくにおすすめ。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0) | TrackBack

2005年07月26日

新しいものを次々と生み出す秘訣

・新しいものを次々と生み出す秘訣
4761260904.09._PE_SCMZZZZZZZ_.jpg

先日、お台場の科学未来館で動くASIMOを間近で見ることができた。これはそのとき撮影したデジタルビデオからキャプチャ。テレビでは何度も見ていたが、動く実物がそこまで迫ってくると思わず声をあげそうになった。二足歩行はぎこちないのだが、そのぎこちなさが人間っぽいのだ。

asimo_photo01.JPG

その未来館のショップで購入したのがこの本。ホンダのロボット開発創始者で基礎研究所の所長、常務が引退後に書いた新しいものを次々と生み出す秘訣。

このぎこちなさの秘密も本に書いてある。こんな研究所でのやりとりがあったらしい。

「衝撃の大きさが問題なら、ゴムを入れて吸収したらどうでしょう。後は制御でなんとでもなります」

「ゴムなどいい加減なものを、制御系に入れたら、ますます不安定になってしまう」

ゴムの採用を提案した研究者は密かに”ヤミ研”を続ける。上司も黙認する。結果的にはゴムの利用で転倒が減った。

テレビの体操選手が着地してからバランスを崩し、一歩足を前に出す動作を観たことが、更なる改良につながる。「どうせ踏み出すなら転倒力に逆らわず、むしろその力を利用して踏み出したほうが姿勢の回復が早いし美しいんだ」

こうして、転ばせまい、転ばせまいとしていたロボット二足歩行の研究は、倒れそうになったときには積極的にその方向へ加速させ、それによって継続的な歩行を可能にするという発想が生まれた。20世紀中には無理と言われた二足歩行がこうして実現されていった。私が見たぎこちないけれど人間っぽいASIMOの動作は、転びそうな力を逆に利用して継続歩行する設計思想が関係しているのかもしれないと思った。

機器個体の機能を最適に制御しようとするインディビジュアル・インテリジェンスに対して、ネットワークでつながった機器が自律、協調、調和するネット・インテリジェンスの時代になると著者は技術の未来を語っている。ASIMOもまたネット・インテリジェンスのかたまりでもあるようだ。

こうした知恵が創出される自由でありながら理念を持った研究組織をどのように作り出したか、がこの本の主要テーマである。理念なき行動は凶器、行動なき理念は無価値というホンダ創業者のDNAを受け継ぎながら、一人一人が自由に活き活きとした活動ができる「ゆるやかな縛り」を大切にせよという。ASIMOを生んだ”ヤミ研”活動も、理想的動作を諦め転倒力を利用して自然な動きを実現したアイデアも、緩やかな縛りの中で生まれてきたものといえるのだろう。


「要するに君たちに鉄腕アトムを造ってほしい」と切り出すと、みんなすぐに理解してくれた。イメージや目標を共有したいとき、適切なメタファを見つけるやり方は、非常に効果的だ。

そして研究テーマは個人提案という形を取る。言いだしっぺにやらせる。ノッてるときは水を差すな。未来像からやるべきことを考えよ(フューチャー・プル)。そしてビジョンを持て。


「先が見えないからビジョンが描けない」というのがおかしい。ビジョンは先が見えるから描くというものではない。自分たちは将来こうありたい、という姿を描くのがビジョンですから、先が見える見えないは関係がない。むしろ見えないときこそ描かなければいけない

経験知として次の言葉も感銘した。

「先送りされた不都合は必ず未来に存在し、将来、何倍にもなって我々の前にたちはだかる」

開発でも経営でも、不都合の先送りは問題を解決しないどことか、将来の脅威を育ててしまうことが多いと思う。システムの開発でも、技術的な壁にぶつかったとき、難しいからという理由で安易な代替案に逃げていると、やがて大きなトラブルの種になってしまう。
最後に10の法則がまとめられている。

・新しいものを次々と生み出す10の法則

1 企業理念不易の法則 決してブレない
2 ビジョン=旗の法則 総力結集の秘策
3 本質認識の法則 点でなく線や面で見る
4 現状肯定の法則 未来は現在の中にある
5 現状否定の法則 従来の延長線上に未来なし
6 不都合是正の法則 先入観を打破する
7 フューチャー・プルの法則 発想は将来最適で
8 プレゼント・プッシュの法則 問題はさっさと片付ける
9 共創マネジメントの法則 異質な人を集める
10 TDCの法則 踏み出す勇気を持て

新しいものを一度生み出すのではなく、”次々に”生み出す現場のマネジメント論として面白く読めた。

Posted by daiya at 23:59 | Comments (0) | TrackBack

2005年07月09日