2003年12月19日

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・広告の天才たちが気づいている51の法則
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全米に広く顧客を持つ広告コンサルティング会社の代表である著者が、自分のお客や友人に向けて書いた広告についての手紙をエッセイにまとめた本。ひとつのテーマで数ページの読みきりの章が51の法則として綴られている。全米最優秀ビジネス書に輝く。

・著者が代表のWizardAcademy
http://www.wizardacademy.com/default.asp

51の法則を読んだ感想は人によって違いそうだが、私なりの理解を、各章の気になったセンテンスとともに、書いてみる。

■9割以上の割合で、衝動買い、思い込みで買う

・「五人は喜び九人はがっかり」の章
「その調査によると、目当ての品物を買って帰りたいと思って店を訪れる買い物客は全体の67%いるらしい。ところが、何と実際に買って帰るのは、そのうちのわずか24%に過ぎないという(中略)つまり、現在の来客店数のままでも、買う気になって来ているこうした来店客にきちんと買ってもらうようにするだけで、従来と比較して2.8倍の売り上げが期待できる」

つまり、お客は冷静なつもりでも、実は思い込みで衝動買いすることが多い。これは日本でも裏づけがある。関連する資料はこちら。

・店頭からのブランド・プロモーションの戦略的枠組み
http://mic.tama.ac.jp/lss/kiyo/No.1/otsuki.pdf

この論文の「図3 店頭における消費者購買行動調査」は、消費者がショッピングする際の、「店内決定」の率を調べたものだ。つまり、家を出る際に決めているものではなく、店頭で見て決める。広義の衝動買いが91.6%を占めるという数字が出ている。つまり、この本が言うように、店頭での広告の余地が大きいのだ。

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クリックで拡大

注釈:
ブランドレベル計画購入:ソニーの製品を買うと決めている
カテゴリーレベル計画購入:トイレットペーパーを買うと決めている
代替購入:本命がなかったので代わりのものを買う
非計画購入:無計画に衝動買いする

■何をしたいか、何を買いたいかを決めさせて欲しいお客

では、なぜこうも衝動買いが多いのだろうか。この本の以下の章に示唆がみつかる。

・「なぜそうするのかはわかっていない」の章
「われわれはいろいろなことをしている。しかし、なぜそうするのかは、わかっていない」(アルバート・アインシュタイン)

・「絶対にへなちょこワインはありません」の章
「われわれが納得しやすいのはどちらかといえば、一般的に言って、他人が教えてくれる理屈よりも、自分自身で見つけ出した理屈の方だ。」」

・「最高の価値と「思った」ものを買う」の章
顧客は本当に文字通りの「最高の価値(お買い得)」を買っているのだろうか。それとも顧客自身が「最高の価値」と思ったものを買っているのだろうか?

お客はどの店が一番安くて良質かを世界のすべての店舗と比較して一番を探した結果買っているのではなく、広告を見た結果、欲しい物が明確になると同時に、それは自分で選んだと思い込みながら買う。そのプロセスをうまく促進すれば、もっと売れる。

そして、そういったマーケット観を持つ著者は、効果的な広告を以下のように考えているようだ。

■効果的な広告は誰に対して発信するかではなく、何を発信するか

・「単純な変化を加えるだけで奇跡が起こる」の章
「だれに対して発信するかではなく、何を発信するか、それが勝負だ」「広告の対象を間違えたために失敗した、などという広告主に、私はこれまでお目にかかったことがない。」

・「本当に思えるウソの力」の章
ミュロンの「円盤を投げる人」は投げる瞬間の迫力のあるすばらしい造形美を見せてくれている。ただし、このフォームを取るとすれば、どんな選手でも投げられる距離はせいぜい数メートルに終わってしまうだろう」

・「自分自身にカメラを向けない」の章
「ジャッククストーの天才的才能はどんな場合にも、そのカメラを海底の洞穴やサメ、難破船に向けて撮影し、決して自分を被写体にしなかったことだ。」

確かに私たちは、最初に誰に対してメッセージを伝えるか、ターゲットを明確化しなければ広告は作れないと考えがちである。しかし、この本で著者が言うように、「誰に対して伝えるか」の特定は簡単なことだ。そこを間違えるプロのマーケターはほとんどいないだろう。

そして、裸で維持が難しそうなポーズで考えるロダンの彫刻を見ても、それは「考える人」というメッセージとして十分伝わっている。現実的ではないなどと文句はつかない。売りたいものをそのまま写した広告、「自分にカメラを向けた」広告表現はうるさく感じられる。そういうことを著者はウィットに富むコラムに仕立てて、考えるきっかけを作ってくれる。

現代のマーケットで受け入れられる広告とは何か。「何を」の部分について発想の元になるコラムが続いていく。明確な回答は期待してはいけない本ではある。帯に書かれた「米国ではアドマンやマーケッターが仕事で壁にぶつかった時に読んでいます」という推薦文の効果に期待する人にはオススメの良書。軽い。

評価:★★☆☆☆


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Posted by daiya at 2003年12月19日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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