2005年01月30日
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
この2年くらい、私の周囲の経営者、マネージャーが話題にする本。読んだのは1年前だが咀嚼できたのが最近なので、いまさらだが書評してみる。
基本的に名著であると思う。でも結論には少し言いたいことがある。
この本の主題のイノベーションのジレンマとは、優良企業はその優良さ故に失敗するという理論だ。
優良企業の特徴:
顧客の声に耳を傾ける
求められたものを提供する技術に積極的に投資する
利益率の向上を目指す
小さな市場より大きな市場を目標とする
優良企業はこうした特徴によって市場のリーダー、大企業になる。だが、やがて成功の要因だったこれらの特徴が”破壊的技術”の開発を妨げ、新興市場への参入に失敗し、最終的には市場を奪われる理由になる、という説である。
破壊的技術とは、既存の技術の連続的な性能向上である持続的技術と対比されるもので以下の原則がある。
破壊的技術の原則:
1 企業は顧客と投資家に資源を配分している
2 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
3 存在しないニーズは分析できない
4 組織の能力は無能力の決定的要因になる
5 技術の供給能力は市場の需要と等しいとは限らない
破壊的技術と持続的技術の関係を検証するため、この30年間のハードディスク市場が冒頭で分析されている。
当初は巨大なメインフレーム時代でハードディスクも大きな14インチドライブが使われていた。勝者の企業は14インチの性能改善に取り組んでいた。だが、一方で新興企業は当時は市場ニーズが不明だった8インチドライブ開発に取り組んでいた。やがてミニコン時代となり、小さなドライブのニーズが大きくなる。かつての勝者企業は慌てて小さなドライブの開発に取り組むが間に合わず、新興企業に市場の勝者の座を明け渡す。だが、その頃には新たな新興企業がニーズ不明の5.25インチのドライブを開発している。デスクトップパソコンの時代が到来し、またもや勝者と新興企業が立場を入れ替える。だが、その頃には後にノートPCで使えることが分かるさらに小さなドライブを開発する新興メーカーがいて...。
破壊的技術を生み出した新興企業が成長するのは、それを持続的技術として性能を向上させる組織力を持っているからである。企業の歴史の中で多くの時間は持続的技術によって成長する時間である。顧客の声を聴き、それに迅速且つ適切に応える。感度が高く、優秀で柔軟な組織が成功の鍵なのだ。
著者が言いたいのは、トマスクーンが科学の進歩に見た「パラダイム革新」と「通常科学」の関係とだいたい同じであると思う。当たり前の進歩を効率よく連続的に進める力がいつか仇になる。突発的で非連続な市場の特異点を切り抜けられい。予想して効率よく動く組織は、予想外の事態に対してとても脆いということになる。この本では、そのプロセスを優良企業の組織に内在する必然として多角的に検証している。その部分は、大変内容が濃く、ビジネスマン必読の一冊であると思う。
もちろん市場はカオスであり、特異点は、誰にもいつ発現するかは分からないが、必ずそれは現れるのもルールである。著者は既存の優良企業は、そうした仕組みの知識を持ち、それに備えることで、破壊的技術と持続的技術の両方を持つという解決が可能だと説く。100年以上市場のリーダーとして君臨し続けるような企業。ジェームズ・C. コリンズが「ビジョナリー・カンパニー」と呼び、トム・ピーターズが「エクセレント・カンパニー」と呼んだような超企業になるには、こうした木でなく森を見る目を持てということだろう。
この本を高く評価した前述の私の友人たちには共通の属性がある。大企業の社員(多くは幹部候補)か、または元社員だったというプロフィールである。逆にベンチャー企業の経営者仲間は有益な本だと評価しつつも、心からピンときている人が少なかったように思う。それは彼らが今の勝者に入れ替わろうと狙う新興企業の担い手だからだろう。
私もこれは名著であると思いつつ、最後の結論には少し違和感も持つ。大企業のイノベーションのジレンマを回復するために、それを気づいた個人が組織の内側から浸透させるコストは巨大なのではないだろうか。特に日本の伝統的企業にとっては努力の価値がどれほどあるのか、分からない。もしも、それだけの知見と行動力を持つビジネスマンならば、独立して新興企業として市場へ打って出たほうが、幸せなのではないか。イノベーションのジレンマの背後には、個人と組織のジレンマがもうひとつあるような気がしてならない。
2005年01月29日
物書きに便利な単位変換ソフト M Changer
・もぐ工房:M changerのページ
http://www6.plala.or.jp/daigoro/software/mchanger.html
・あなたの身長は何インチですか?
・あなたの体重は何ポンドでしょう?
・20マイルって何メートル?
・5ヤードって何センチ?
・華氏451度って摂氏何度だっけ?
・大正5年って西暦で何年?
・一世紀とは何時間?
・1234年の元号は?
・広さ1町って何平方メートル?
・キロ、メガ、ギガの次はテラ、ペタだけどその次は?
・100貫デブとかいうけど何キロのこと?
これ全部にちゃんと答えるのは難しい。
M Changerは単位変換ツールで、任意の単位同士の変換ができる。対応している単位の種類がとても多い。
対応している単位:
長さ、面積、体積・容積、質量、時間、加速度、速さ、出力・仕事率、エネルギー・熱量・仕事、圧力、力・重量、周波数・回転数、角度、温度、比・割合・濃度、年号、数、接頭辞(Prefix)、2進接頭辞
滅多にお目にかからない珍しい単位もある。
たとえば、
清浄 (せいじょう)
虚空 (こくう)
六徳 (りっとく)
刹那 (せつな)
弾指 (だんし)
瞬息 (しゅんそく)
須臾 (しゅゆ)
逡巡 (しゅんじゅん)
糢糊 (もこ)
恒河沙 (こうがしゃ)
阿僧祇 (あそうぎ)
那由他 (なゆた)
不可思議 (ふかしぎ)
無量大数 (むりょうたいすう)
これは何か分かるだろうか。とても小さな数字ととても大きな数字の名前である。
物書きにとって役立つ単位が多数、登録されているのが嬉しい。
面積や高さを「東京ドーム20個分に相当します」だとか「東京タワーを60本重ねた高さ」のように変換できる。説明文章を書くときに便利だ。面積では東京ドーム、大阪ドーム、ナゴヤドーム、甲子園球場、大阪城公園、琵琶湖、日本、長さでは、東京タワー、通天閣、エッフェル塔、新幹線などが登録されている。
機能としても、
・1対1の「通常変換」と、1対多の「一括変換」の2種類の変換方法
・2 〜 36進数での基数変換
・クリップボードから値の貼り付け・クリップボードへ変換結果を出力する機能
・数値入力の際、接頭辞付きの入力 (ex. 45k) が可能
などとよく考えられて作られている。
2005年01月28日
Webのニュースを合成音声ファイル化する楽SpeechS
iPodにWebからダウンロードしたネットラジオ録音をiPodで聴く日が多くなった。
日本でもPodCasting流行の兆しを感じる。
・今年のベストバイはiPod、そしてPodCastingの魅力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002734.html
ブログのように個人の情報発信手段として、PodCastingが広く流行するには、音声コンテンツを普通の人が簡単に作れるようにならないといけない。だが、いざやってみると慣れない音声録音は結構大変だ。プロのラジオDJのようには話せない。
そこでテキストを合成音声で読み上げ録音するという方法が思い浮かぶ。
テキスト=音声変ツール楽SpeechSはフリーソフト。別途マイクロソフトの日本語音声合成ライブラリ(無償)をインストールする必要があるが、日本語の音声ファイルを簡単に作成できる。
・楽SpeechS(Windows95/98/Me/画像&サウンド)
http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se306183.html
・Free's (フリーズ) - 自作ソフト
http://frees.maxs.jp/index/modules/mydownloads/
このソフトを使ってできたのがこれ。
サンプル:
Download file
私はWebのニュースを楽SpeechSで音声ファイル化して電車で聴いている。○○白書とか、施政方針とか、PCの前だと飽きてしまってまともに読まない内容も、社内で目をつぶって聞いていると無理やり頭に入ってくる。次はRSSから記事本文を取得して、自動でiTunes、iPod同期が取れるようにしてみたい。
2005年01月27日
安全と安心の科学
セキュリティ、トラストワース(信頼に足る)、コンプライアンス(法令順守)、リスクマネジメントなど、近年、安全と安心は時代のテーマだと思う。これは、元東京大学先端科学技術研究センター長で現在ICUの教授の村上陽一郎氏が語る安全と安心の科学。大局的な視点で、この問題の捉え方が示されている。
■安全と安心、確率と人間心理
人間は安全であっても安心できない。あるいは安全ではないのに安心する。飛行機は落ちる確率が低いはずなのに、自動車に乗るよりも神経質になる。原子力発電所は他のどんな施設よりも安全性に配慮されているのに、危険に思われる。
現代においてリスクの大きさは、それが発生する可能性で測られる。だが、その可能性を人間は主観でとらえている。1万年に一度しか起きないことでも、明日が1万日目なのではないかと考えて、不安を感じてしまう。大隕石の落下を題材にした映画は最近だけでも何本もあり大人気だが、実際に私たちの生きている間に、それが起きる可能性はほとんどない。
逆に私たちはまったく不安を持たずに、自動車を運転したり、タバコを吸ったりしている。これで死ぬ確率は、天変地異や原発事故で死ぬ確率より遥かに高い。交通事故では毎年8000人が亡くなるが、これは阪神淡路大震災よりも多い。
メディアも人々の確率認識のズレを助長する報道をしている。原発事故や飛行機事故は滅多に起きないし、安全性も極めて高いのに、何か小さな事故が起きただけで、危険だと騒ぐ。だが、著者によるとたとえば原発の小さな事故で、多くの場合、放射能が漏れたりしないのは、安全機構がよくできている証明だと見ることもできるという。
■安全にしても危険度は変わらない「リスク恒常性」
”人は間違う”を前提とした「フールプルーフ」機構と、間違いが起きても大事には至らない「フェイルセーフ」機構が安全戦略の基本である。
しかし、安心した状態こそ危険なのだと著者はこう指摘している。
「
システムの中で、「安全」は絶対的な価値として追求されなければならないが、それで「安心」が保障されることは避けなければならない
」
過度にフールプルーフとフェイルセーフで設計されたシステムは、使う人間がそれを空気や水のように当たり前と思いはじめた途端、危険なシステムになってしまうのだ。実際、原発や飛行機などの近年の大事故は、少なからずフェイルプルーフが準備されたシステム上で起きている。
車の運転にしても、安全機構が充実すればするほど、運転手は少し乱暴に扱っても平気だろうと考えて無謀な運転をしてしまう。いくら安全にしても使う側が安心で気を抜くので、リスクの大きさは変わらない「リスク恒常性」が発生している。
組織上の改革としては、内部監査の仕組み、間違いを発見したら内部の人間が警告をする「ホイッスル・ブロウ」の重要性が指摘されている。日本社会ではホイッスルブロウは内部告発であり、裏切り者として組織から排除される傾向がある。だが、QC活動の一環として考え、積極的に取り入れるべきだと著者は提言している。
また、具体的なフールプルーフの戦略として、
1 システム全体をいつでも目に見える形で捉えられるような工夫をしておく
2 操作パネルや作業手順に十分に「人間工学的」な考慮がなされていること
を挙げている。一言で言うと「アフォーダンスに合った」システムを作れということらしい。
誤操作を回復不能にしないという意味での回復不能性も大切。この本ではパソコンのデスクトップのゴミ箱が例に挙げられていた。一度ファイルを捨てても、ゴミ箱を空にするまでは取り戻せる。このように、冗長性をもたせて保護するのが良いという。
これらはITのシステムやアプリケーションの基本設計思想として活かせそうなリストである。
■飛行機と自動車と列車で一番死ぬ確率が高い乗り物は?
私はどうしても必要に迫られない限り飛行機には乗らない。関西へはいつも新幹線に乗る。飛行機は離着陸や乱気流の揺れが不安で、落ち着かないからだ。だが、この本に書かれているように、頭では、飛行機はきっと他の乗り物よりも安全なのだろうなと思っている。
そこで飛行機の危険性について、ネットで調べてみた。こんな面白い数字が見つかった。
・市民と事業者のためのリスク・コミュニケーション・ガイド
http://tokaic3.fc2web.com/body/report/report_h14/2002Rep5.pdf
自動車、飛行機、列車の利用者数と移動距離から、死亡リスクを求めたもの。
| 交通機関別死亡リスク(単位) | 自動車 | 飛行機 | 列車 |
| 利用者数と移動距離あたりで計算した時(100 億人・マイル) | 0.55 | 0.38 | 0.23 |
| 利用者数あたりで計算した時(100 万人) | 0.027 | 1.8 | 0.59 |
解説の引用:
「
車の運転中に事故にあう確率は,何人乗っているかだけでなく,運転の時間あるいは移動する距離が長ければ高くなります。そこで,交通機関による死亡リスクは,一般的に利用者数と移動距離をかけたものを分母として計算されています(表4の欄)。この方法で計算すると,自動車運転のリスクが最も高く,飛行機に乗るより危険で。しかし,飛行機の場合,事故の危険性は離着陸時が最も高く,水平飛行状態ではほとん事故は起きません。つまり,飛行機の危険性は飛行距離にはあまり関係ありません。このとを考慮して,分母を利用者数とすると,実は飛行機のリスクが最も高くなります(表4下の欄)。分母をそろえるということは,どんなリスクを考えるかということを示す一例です。
」
がーん。この本は間違っているのか?
移動距離では、確かに飛行機が一番安全だ。
だが、利用者数で調べると飛行機が危ないという結論。
やはり、私の新幹線の選択はある程度、正しいのではないか。安心した。これからも新幹線を使おう。
2005年01月26日
問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?
明鏡国語辞典の編者たちが書いた問題な日本語解説。
きもい、きしょい、はずい、きょどい、おもしい、うざい、グロい、こくる、めんどい。
こういう若者言葉、時々、分からないものがある。年を取ったのだなあと実感してしまう。ときどき自分の美的センスに合わないものには不快感を感じてしまったりする。特に可能を表すのに「食べれる」「見れる」「出れる」とする”ら抜き言葉”は大嫌いだ。
一方、この本は、私よりも進歩的だ。新しい言葉遣いを国語の乱れとして批判するのではなく、むしろ、広く使われる言葉がやがては国語の本則になっていくのだ、という意識が感じられる。
■気になっていた日本語の発見の連続
それにしても発見の連続だった。そのうち調べてみようと思っていた疑問が数十個も氷解した。知らないこともいっぱいあった。
たとえば、
・「独壇場」(どくだんじょう)は許容されているが、本来は独擅場(どくせんじょう)が正しい。
どくせんじょうという発音は聞いたことがなかった
・「全然いい」、「全然大丈夫」は間違いではない
間違いだと思っていました。
・「人妻」は「ひとづま」だが稲妻は「いなずま」、神通力は「じんずうりき」が本則。 二つの漢字が単独で意味をなし分離可能なときに「つ、づ」となる
・「おざなり」「なおざり」は別の単語で共に正しい
私はなおざりはスペルミスと思っていました
・「とんでもありません」は必ずしも間違いではない
とんでもございませんの間違いと認識していました
・二十世紀は本来は「にじっせいき」だが「にじゅっせいき」が広く使われる
そうなのか、にじっせいき、なのか
■コンピュータなのかコンピューターなのか
IT業界の人間は「コンピュータ」と書く人が圧倒的に多い。逆にデジタルに縁遠い一般世界の人たちは「コンピューター」と書いていると思う。役所、辞書、新聞では「コンピューター」だ。
この表記はずっと気になっていた。私は相手によって使い分けている。
Web上ではどう使われているだろうかとGoogleで調べてみた。
インターネット上ではデジタル系が多いせいか、
コンピュータ(コンピューターを除く)の検索結果 約 5,230,000
コンピューター(コンピュータを除く)の検索結果 約 2,080,000
で、コンピュータが優勢である。一般書籍では逆転するかもしれない。
ではユーザとユーザーではどうかというと、
ユーザ(ユーザーを除く)の検索結果 約 4,850,000
ユーザー(ユーザを除く)の検索結果 約 6,560,000
この本によると本来はコンピューター、ユーザーと書くそうだが、「外来語の表記」では「ー」は慣例に応じて省くこともできるとあり、間違いというわけではないらしい。ただ、語形が短いメーカー、シャッターなどは省かないほうがいいのではないかとまとめられている。
■リンクを張るのか、貼るのか
この本には出ていなかったが、ずっと気になっている言葉がある。リンクを張る、リンクを貼る、である。
リンクを張る の検索結果 約 169,000 件
リンクを貼る の検索結果 約 99,500 件
おそらく、張るが正しいと思うわけだが、長年、Webを作る側にいると、貼るも正しいことにしてほしくなる。特に画像でのリンクの場合、張るのでなく、貼っている気がする。文字列リンクであっても、コピーアンドペーストで「貼る」場合、感覚的には貼っているのである。張っていない。
普通に考えると「ホームページに画像を貼る」は正しいだろう。ページは紙のメタファーだからだ。「ホームページに画像リンクを貼る」も画像が主ならば論理的には正しいことになると思われる。では、文字列はどうなのか。従来は文字は筆で書くから”貼れ”ないのだが、クリップボードのあるコンピュータでは”貼る”ことができる。認めてもいいような気がする。
いまちょうど使ったが、かつて95年ごろ、ネット上では「ホームページ」論争があった。
「ホームページ」とは、本来、
1 サイトのトップページ
2 ブラウザー起動時に開くページ
であって、その他のページは「Webページ」と呼ぶべきだという議論だった。今ではそう細かい差異を気にせず使うのが一般的だと思う。私はTPOで使い分けているが、古くからの技術系ユーザの中にはこだわっている人も多い。
Googleで調べてみると、利用頻度は
ホームページ の検索結果 約 47,900,000 件
Webページ の検索結果 約 7,910,000 件
ということだった。
それぞれ本来の意味で使われたかどうかは調べていないが、なんでもホームページ派が勝ったような印象である。
言葉はよく使われれば、最初は文法的に間違い、乱れであっても、正しいと認められていく。今まではそれを一部の国語の専門家が決めていたが、この本に登場する専門家たち、結構、ネットで検索して普及状況を確認しているようだ。これからは検索エンジンが国語を決めていくのかもしれない。
2005年01月25日
Web自動ログインを実現するAutol
毎回IDとパスワードの入力による、ログイン作業が必要なサービスは、内容がよくても縁遠くなりがちである。このAutolを使うと、ログインが必要なサイトも入力レスで、ログインすることができる。類似したものにフォーム自動入力支援ツールがあるが、大抵は確認や選択の必要がある。Autolは、それよりも簡単である。
・Autol
http://park15.wakwak.com/~n_i/xm/
まず、ログインしたいページのURLを入力し受信ボタンをおす。すると、IDやPassなど入力すべき項目がリストアップされる。項目を入力すると、まさにログインページに項目を埋めて送信を押した状態のHTMLを生成してくれる。あとは、このHTMLをブックマークに登録しておけば、ワンクリックでログインが可能になる。
HTMLにそのまま記録が残るのは危険もあるため、一応、パスワードの暗号化処理などは行うことができる。それでもオンラインバンキングなどの重要なサービスでこのツールを使うのは、絶対危険であろう。あくまでお気軽、お遊び系のサービスに限定だが、私にとってはかなり便利である。
2005年01月24日
Webshotでスクリーンショット付の検索ディレクトリを簡単構築
・webshot
http://phpspot.net/php/webshot/

Webブラウザー(MSIE)とサーバの連携で検索ディレクトリを構築していくユニークなコンセプト。このソフトを試してみたくて個人でレンタルサーバを借りてしまった。インストールしてみた。とても満足。画期的。
MSIEのプラグイン部分とサーバサイドのWebアプリケーション部分があるので、動作環境として自前サーバ環境(PHPとMySQLが動く)が必要となる。
インストールするとMSIEにサイト登録ボタンが表示される。
このボタンをクリックすると、現在表示中のページのスクリーンショットが撮影され、確認するとディレクトリサーバに、画像とURL、タイトル(自動取得)と説明文が登録される。
登録されたページは未分類カテゴリに追加されていくので、サーバ側で任意の分類に変更する。するとビジュアルなWebディレクトリが構築されていく。後からのカテゴリ変更も可能なので、とにかく気になるサイトはガンガン登録していけばよい。
たとえば私の作ったディレクトリはこんな感じである。
・私のWSHOTディレクトリサンプル
http://glink.jp/webshot/webshot.php
なお、新着登録サイトの画像をJavaScriptでブログに貼り付けることもできる。
以下が貼り付けサンプル。一般的にはサイドバーに張るのがいいだろう。
このように手軽にリッチなWebディレクトリが構築できる。ビジュアルブックマークは一目瞭然のわかりやすさで、自分のみで使うにしても、魅力的である。リモートとローカルをうまく組み合わせた、素晴らしいソフトだと思う。しばらく、これでディレクトリを充実させてみよう。
2005年01月23日
オフィス文書のWeb公開に最適な:いきなりPDF FlashPaper
文句なく便利。定番ツールになりそう。
ワード、エクセル、パワーポイントなど印刷可能な文書をWebで閲覧しやすいFlashPaper形式に変換するソフト。さらに、あらゆるファイルのPDF変換とパスワード認証機能付加にも対応している。FlashPaperとはマクロメディアのデジタル文書の新規格で、Web上で拡大縮小が簡単に行えるFlashアプレットのこと。本来はマクロメディアの制作環境Macromedia Contribute 3に付属する機能だった。
・Macromedia - FlashPaper 2
http://www.macromedia.com/jp/software/flashpaper/
いきなりPDF FlashPaperはソースネクストが正式にマクロメディアのライセンスを受けて、このFlashPaper機能を単独ツールにしたもの。ウィンドウに変換したいファイルをドラッグアンドドロップするだけの簡単操作で変換が可能。MSオフィスとの統合設定を行うと、ワードやエクセルなどのメニューにボタンが表示され、クリック一発で編集中の文書を、Flash、PDF化が可能。
プレゼン資料をWeb公開したり、編集されたくないファイルをメールで送ったりする際に
重宝しそうだ。
実際のパワーポイントを変換してWebに埋め込んだのが下の例。ブログの生態系分類とこのブログで過去に行ったアンケート調査の結果グラフでサンプルを作ってみた。細かい文字も、拡大機能で読み取れるし、文字列の検索や印刷もできる。
2005年01月22日
おまいら2chカードゲームで遊びませんか、いいYO!
・おまいら2chカードゲームで遊びませんか オフィシャルサイト
http://www.mb.ccnw.ne.jp/garger-studio/2chcard/main.html

2ちゃんねるを舞台にしたカードゲーム。
2ちゃんねるのアスキーアートでデザインされたカードが山札から配られる。カードの種類には、基本となるレスカードのほか、スレッド、自作自演、2ゲット、sage進行、祭、あぼーんなどの特殊カードがある。プレイヤーは3人のコンピュータを相手に、自分のスレッドにたくさんのレスを集めて繁盛を競う。基本ルールはスレッドについた色にあったカードを出すだけだが、自分のサイトだけが賑わうように、特殊カードを使ってさまざまな得点稼ぎや妨害工作を繰り出す戦略要素がこのゲームの面白さ。

ゲームはまず各自スレッドカードを出してスレッドを立てる。そしてレスカードを出してスレッドにレスをつける。原則、スレッドと同じ色のレスカードをつける。レスカードを出すと、そのカードに書かれたレス数およびサイズがスレッドに加算される仕組み。
レスカードにはsage/ageの属性がある。sage進行が出されたスレッドにはsage属性のレスカードしか出せなくなる。祭のスレッドがあるとき、そのグループ色は祭のスレッドにしか出せない。神降臨のスレッドがあるとき、すべてのカードはそのスレッドにしか出せない。虹色のレスカードはどのスレッドにも出せるが、自分がオーナーとなっているスレッドには三回までしか出せない(自作自演)。などなど、2ちゃんねるを知っている人にはニヤリとさせられるルールばかり。
山札が0になったらゲーム終了。その時点で最もレスを集めたプレイヤーが勝ち。ジョークソフトに分類されると思うが、ゲームとしてちゃんと作られていて、とても遊べる仕上がり。
2005年01月21日
Sufaryで自分マイニング ブログでよく使う単語を発見する
検索プログラムのSufaryはときどきデスクトップで使っている。先日、作者のたつを氏がこんな実験をしていた。
・[を] 自分マイニング! - Blogでよく使うフレーズは?
http://nais.to/~yto/clog/2005-01-18-3.html
自分のブログの記事から特徴的な言葉遣いを抽出するテキストマイニングの実験。
・SUFARY
http://nais.to/~yto/tools/sufary/
Unix用だが、Windowsでもコンパイルできる。
Safaryは検索するだけでなく、文書の索引データをn-gramで高速に作成できる。
n-gramとは言語処理の手法の一つで、nの部分には数字が入る。文章を1文字ずつずらしながらn文字分のパターンを抽出する。
たとえば、「こんにちは」を3-gramで処理すると、
「こんに」
「んにち」
「にちは」
というパターンを切り出せる。(厳密には日本語文字は1文字2バイトなのでこの例は6-gram)。
この機能を使って、私のブログの過去ログ520日分すべてを対象に、パターン分析を行った。
・日本語(2バイト)文字のみを対象とする。
・言語処理におけるゴミ(記号や修正不能な文字化け等)を除外する
・明らかにひとつの単語である場合は重複を削除。
実例:
「132 ュニケーション」 「132 ミュニケーショ」 「132 コミュニケーシ」
の場合、回数が同一で「コミュニケーション」であると特定できるので、先頭語を含む「132 コミュニケーシ」を採用し他を捨てる。
こうした処理の結果、以下のようなことばの登場回数ランキングが発見された。
■3文字のランキング
1位 955 がある
2位 950 います
3位 876 ではな
4位 874 サイト
5位 859 されて
6位 839 ていた
7位 812 った。
8位 806 ない。
9位 781 ネット
10位 770 ように
3文字ではまだ実際にどのような文章の一部だったのか特定が難しい。とりあえず、カタカナとしてサイトとネットは多く使ったようだ。
■4文字のランキング
1位 877 っている
2位 856 である。
3位 825 れている
4位 711 います。
5位 702 されてい
6位 612 ではない
7位 575 ることが
8位 503 すること
9位 482 いうこと
10位 463 るという
トップは「〜と、なっている」「持っている」「分かっている」のような使い方の一部だった。2位は文末の「である」。
■5文字のランキング
1位 462 されている
2位 430 ということ
3位 410 ことができ
4位 404 している。
5位 377 れている。
6位 331 ています。
7位 301 のではない
8位 287 ることがで
9位 286 ネットワー
10位 279 もしれない
「されている」、「ということができる」、「している」、「かもしれない」。5文字と次の6文字くらいが語尾の結び方の特徴が顕著に現れている。
■6文字のランキング
1位 287 ることができ
2位 278 かもしれない
3位 273 ことができる
4位 251 ンターネット
5位 251 インターネッ
6位 230 と思います。
7位 226 のではないか
8位 215 されている。
9位 208 ネットワーク
10位 204 コミュニティ
「〜することができる」、「〜かもしれない」、「〜と思います」、「〜のではないか
」、「〜されている」、インターネット、ネットワーク、コミュニティ。よく使うフレーズの数々。
■7文字のランキング
1位 250 インターネット
2位 184 ることができる
3位 152 かもしれない。
4位 144 ことができる。
5位 135 アプリケーショ
6位 133 マーケティング
7位 132 コミュニケーシ
8位 130 インタフェース
9位 125 のではないかと
10位 113 することができ
「インターネット・アプリケーション・マーケティング」が私のカタカナ3種の神器だと判明。そういうタイトルの本でも書いてみようか...。それが売れたら2冊目は「ネットワーク・コミュニティ・インタフェース」で決まり。
なお2文字の漢字単語を調べたところ、以下のような状況になった。
■2文字の漢字単語
1位 867 会議
2位 728 検索
3位 649 世界
4位 616 著者
5位 556 時間
6位 555 技術
7位 544 自分
8位 513 研究
9位 485 科学
10位 460 紹介
「会議」は昨年の無敵会議の影響。「著者」は書評内でよく使うため。
典型的な私の文章というのは、
「
インターネット検索の技術は、コミュニティのマーケティングに利用することができるアプリケーションなのかもしれない、と著者は世界会議で自分の研究を紹介している。」
こんなかんじであることがわかる。そのまま過去に書いていそうな気もする。
この調査、最初は自分の文章の癖が分かって面白かったのだが、だんだんと「自分らしさ」に自家中毒を起こしそうな気分になってきた。もっと語彙や文体に広がりを持ちたい今日この頃である。
2005年01月20日
ソシュールと言語学
現代言語学の祖で、構造主義思想の祖でもあるソシュール入門書。
ソシュールとレヴィストロースは学生時代に夢中になって読んだ。当時、既に構造主義思想も古典だったわけだけれど、あれから10数年、今はどういう扱いになっているのかなというのが手に取った動機。
■ラングとパロール、シニフィアンとシニフィエ、体系と構造
第1章「ソシュールはこう考えた」はソシュールの言語学と構造主義のやさしい入門ガイド。分かっている人にとっては軽いおさらいだが、著者の見解も織り交ぜられている。
要約。
ソシュールは言語の本質とは何か、その構成最小単位は何かをまず考えた人である。言語行為をラングとパロールに分割し、言語学の対象をラングに限定することから、ソシュールの仕事は始まっている。
ラングとは同じ意味を話し手から聞き手に伝える仕組みのこと。同じ意味が伝達されるには、この言葉はこの意味を表すという社会的な約束が必要である。音声と意味の対応関係を知らない人は、外国人と同じで、聞いても意味が分からない。人類共通の単語と意味の対応リストなど存在しないわけで、音声と意味は本質的には無関係(恣意的な関係)だとする。
これに対して、パロールは具体的な意味の伝達に関わらない要素を指す。たとえば具体的に発声された音声などである。ラングは抽象的だったが、パロールは具体的で観察可能である。だが、パロールだけを見ていても、意味をみつけることができない。だから、言語研究はラングから手をつけるべきだとしたのがソシュールだった。
そしてラングが伝達する言葉は記号であり、記号はシニフィアン(表示部、意味するもの、知覚できる音や図形の集合)とシニフィエ(内容部、意味されるもの、事柄または事物の集合)の対であるとした。両者は別物であり、ある表示部が、ある意味と結びついているのは、ある時代の社会的な約束事でしかない。つまり、単語と意味は、本来は無関係で恣意的な結びつきでしかない、というのが第一原理「言語記号の恣意性」である。
第二原理「言語記号の線状性」とは、言葉とは単語が一列に並ぶことで意味を表すものだという原理。そして、その並び方に規則があり、伝達される意味はその規則を変えると変わってしまうということ。
二つの原理はあまりに当然のように思えるが、世界の言語すべてが普遍的に持っている性質として、はじめて見つけたのがソシュールだった。
そして、どの言語にも数万から数十万の単語があるが、ひとつとして完全に同じ意味を表す単語はないとソシュールは考えた。完全な同義語がないということは、あるひとつの単語の意味を決めるには他と違うということを考慮しないといけないことになる。つまり、言語には、単語の意味を他の単語との関係で決定する「体系」がある。
「体系」内の要素の価値(意味)を決める要素(単語)が線状に並べられて、形成される「構造」にソシュールは言語の本質を見出した。そして、この発見は、そうした体系と構造の性質が、言語だけでなく、婚姻関係や神話の物語構成、経済交換など、人類の文化に普遍的に認められるものであるということが分かり、構造主義の時代が到来した。
要約終わり。
■ソシュールに続いた直系の研究とソシュール礼賛
第2章「ソシュールの考えはどう継承されたか」では、音素に注目したプラハ学派、関係性を重視したコペンハーゲン学派などソシュール直後の継承者たちの研究が取り上げられる。
第3章で「花開くソシュール」は、ソシュールの考えの不足を補ったり、別のユニークな考えを持ち込んで、構造主義言語学を発展させた研究がいくつか紹介される。具体的言語事例を使って構造主義アプローチを実践したバンベニスト、コトバは経済的にできているという機能主義を提唱したマルチネなど。
マルチネは面白い。言葉は記憶や発話の負担が少ない方向に変化していくという機能主義は、言語を物理や経済的に考える仮説。「パーソナルコンピュータ」は長いので、使われているうちに発話しやすい「パソコン」になる。だが、短い言葉は同音異義語が重なって理解しずらくなったりするので、すべてが1文字とか2文字の単語になると脳の負担が増える。ふたつの経済性の均衡で言葉は変化していくという話など。
著者はソシュールは言語学を、疑いえない原理だけを基準に科学にしたとして高く評価している。
「その意味で構造主義の方法こそが、ソシュール以来の健全な科学的分析の伝統を受け継いできているものと確信します。コトバの本質を解明することを目的とする言語学で、構造主義の考え方がこれまでにもまして多くの研究者によって踏襲されていくことが、研究の結果を安心して受け入れることができる学問分野としての発展につながるのです。」
ソシュール絶賛の結論でこの本は終わる。
今、インターネット関連の研究の世界には情報系の人と言語系の人がいると思う。情報系で自然言語処理やセマンティックWebをやっている人は意外にソシュール言語学や構造主義を知らない気がする。コンピュータで言語を扱いやすくしたチョムスキーの言語学ばかりが取り上げられている気がするが、大元の哲学を知るにはソシュールから入るほうが得るものが多いのではないかとこの本で復習して、思った。
2005年01月19日
時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子
講談社出版文化賞科学出版賞 受賞作品。睡眠のメカニズムを遺伝子レベルに探る。
■10分を検出できる体内時計
時計がなくとも朝は目覚め、夜は眠くなる。
脳の視床下部にあるSCNという器官に、24時間周期の生物時計(いわゆる体内時計)があるという。SCNの神経細胞はガラス板の上で培養しても、24時間周期の電気活動リズムを維持して変化するそうで、機械の時計のように自律的な発振器の役割を果たしている。この生物時計は概ね正確に24時間周期で動いているが、狂うこともあり、その場合には朝に強い光を浴びたりすることで調整が可能になっている。
この時計は案外高い精度で働いている。たくさんの被験者に、指示した時間に起きてもらう依頼をした実験結果が紹介されていた。朝6時に起きろといわれた集団では6時に、8時と言われた集団でも8時に、だいたい多くの被験者は起きることができている。そしてこのとき被験者の身体では、起床1時間前からコルチゾールというホルモンの量が増加していた。これは起きる準備が1時間前から始まっていた事実を示す。正確な起床時間は生物時計が10分から15分程度の時間経過を、睡眠中も感じることができるという証明になる。目覚ましが鳴る直前に目が覚めるという人の場合には、分単位で時間を感じている可能性もあるそうだ。
■なぜ眠るのか、なぜ眠くなるのか
人はなぜ眠るのか?その理由はいまだ分かっていない。だが、生存に不可欠であるのは明らかで、医師である著者は不眠症の患者に「眠らなくても死にはしませんから」と慰めたりするそうだが、本当は寝ないと死ぬのだそうだ。動物を眠らせないでおく断眠実験を行うと1週間から数週間で、衰弱し多臓器不全で死んでしまうそうだ。免疫系を損傷するのが原因であるらしい。
では身体の疲労回復のために眠っているのかというと、そうでもないようだ。横になって眼を閉じただけの安静状態の方が、実際に睡眠に入るよりも、代謝率が低い。身体の休息という意味では睡眠より安静にしているほうが良い戦略かもしれないという。睡眠は身体ではなく脳の休息が本質的な目的なのだ。
なぜ夜になると眠くなるのか?も完全には解明されていない。最新の理論では脳に睡眠物質が増えるから眠くなるのではなく、生物時計が発信する覚醒信号が夜になると弱まるからなのではないかと著者は考えている。これは夜型体質の改造に役立つ知識だ。覚醒信号を制御する生物時計を朝型に調整するには、朝の強い光を浴びることがまず有効なので、夜型を朝方に直すには「早寝、早起き」ではなく、「早起き、早寝」が正解だという。いくら早く寝ても生物時計を調整することはできないからである。
オレキシンという脳内物質が覚醒効果の原因であることが近年発見されたらしい。オレキシンは食欲と睡眠に同時に影響する。これは生きるために食物を探せるように覚醒レベルを上げておく、ということと関係がある。夜中にお腹がすいて眠れないのも、食べ過ぎると眠くなるのもオレキシンが原因のようだ。
いくつか本に出てきた睡眠のついての知識を引用してみたが、睡眠は意外にも謎だらけのようである。私は子供の頃、眠る瞬間を意識でとらえたいと思って毎晩のように、眠気と戦ってみたことを覚えている。当たり前だがいつのまにか眠りに落ちてしまう。睡眠に入る境界はみつからなかった。なんてバカな実験をしてたのだろうと大人になってから思ったのだが、訓練次第では夢を覚醒しながら見る覚醒夢というのがあるそうだ。あのまま続けていたら夢を制御できるようになったのだろうか。惜しいことをした。
・ヒトはなぜ、夢を見るのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001062.html
・人はどうして疲れるのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000877.html
・朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000651.html
2005年01月18日
アメリカ 最強のエリート教育
■少数エリートの米国、まだまだ横並びの日本
日本経済新聞が発表した2004年3月期の日米上場企業報酬調査が紹介されていた。結果は「主要百社の従業員の平均給与は年間で八00万円、役員報酬はその4倍。米有力企業の経営トップの報酬は平均で九億円とされている」であるとのこと。だいたい日本の一般労働者と大企業社長の給与格差は20倍程度であるのに対して、アメリカでは200倍以上の格差になるという。
米国でのこの大きな収入格差は人生の早い時期にだいたい決まってしまうという。
それには、
・名門の家柄出身である
・私立のプレップスクールに通う
・アイビーリーグなど一流大学を卒業する
・トップクラスの専門職大学院を卒業する
といったことが強い条件となる。
米国というと自由競争、能力主義の国という印象が強いが、エリート中のエリートについては、実態は必ずしもそうなっていないようだ。年間2万ドル、3万ドルの私立校の学費を支払える家庭から、生え抜きのエリートが登場している。
アメリカの公立中学、高校は学区制であるが、教育レベルの差は地域によって歴然とした差があるらしい。これは学校運営の財源が学校区の固定資産税でまかなわれるためで、裕福層の住む学区は財源が豊かで質の高い教育が提供される。これに対して低所得者層の多い地域では日常的にドラッグや学校内犯罪が蔓延しているとのこと。
頂点と底辺の格差が早い段階で決まってしまうため、一部の極めて優秀な例外を除いて、ふたつのグループが競うことはない。これに対して日本では、特に高度成長期には大学を出ていると大抵は課長に昇進できだし、50代くらいまでは誰が部長や役員になるかが完全には分からず、出世競争が長く続くということが指摘される。
米国人のいう平等は「機会平等」でチャンスは誰にでもあることを意味するが、日本人にとっては「結果平等」であるという違いがある。だが、結果の格差の大きさを見ると、米国の機会平等はかなり過酷なものであることがうかがえる。
■アイビーリーグ、ザ・テン・スクールズ、専門職大学院
「アイビーリーグ」という言葉はよく聞くが具体的には以下の8大学を指している。この本には私立の名門高校「ザ・テン・スクールズ」もリストが掲載されていた。
アイビーリーグ
・ハーバード大学
・イエール大学
・ペンシルバニア大学
・コロンビア大学
・プリンストン大学
・ブラウン大学
・ダートマス大学
・コーネル大学
ザ・テン・スクールズ(7,8割は寄宿舎生活)
・チョート・ローズマリー・ホール
・ディアフィールド・アカデミー
・ヒル・スクール
・ホッチキス・スクール
・ローレンスビル・スクール
・ルーミス・シャフィー・スクール
・フィリップ・アンドーバー・アカデミー
・フィリップス・エグゼクター・アカデミー
・セント・ポールズ・スクール
・タフト・スクール
これにビジネススクール、ロースクール、メディカルスクールの専門職大学院のトップクラス数校が、エリート養成装置として機能しているという。
この超エリート層には、自分たちが社会の各分野をリードしなければならないという責任感と、ノーブレスオブリージュ(高い地位や身分に伴う義務を果たす意識)という価値観を持ち、決して威張らず謙虚に振る舞い、社会に貢献する活動に情熱的に取り組む人たちも多いという。
この本で著者はエリート層との華麗なつきあいを次々にと披露して実体験に基づく話をたくさん提示している。関係があるが故に、米国の最強エリート層は抜群に頭がよくて、人柄も優れている、非の打ち所がないと、美化しすぎな部分を感じるが、日米の寄付金の比較や、トップ大学のノーベル賞受賞者の在籍率などを見ると、確かにそうした面はあるのかもしれないと思った。日本のエリートというのは高い地位を約束した社会に対して、責任を果たしていない。
ただ、日本の場合、米国のような本物のエリートが誰なのか分かりにくいという面がありそうだ。名門高校と東京大学くらいは、ああ、エリートだなと分かるわけだが、決定打ではないし、米国ほどのバリエーションもない気がする。また、日本の場合、エリートは官僚や大企業の幹部候補になるわけだが、トップに到達するまでにはかなり長い時間がかかる。組織の頂点として目立つ期間が短いせいか、あまり目立っていないイメージだ。
この本は米国のエリートが受けている教育について、ちょっとミーハー視点で総括する。著者の思い入れが偏っているような気もするが、情報としては結構、面白い本だ。米国人が自己紹介したときに、ちゃんと反応してあげるべき?キーワードが参考になった。
2005年01月17日
プロマネは見た!
・プロマネは見た!

主人公は架空のIT企業グローバルシステムズ(社員1万人)に転職したばかりの新任プロジェクトマネージャ。現場の日常の中で体験する、ヒトと組織の困った問題を33のストーリーで指摘する。
つぎつぎに出てくる、いやーな話。
・上司と部下の関係にこだわる
・責任を問われないエリート社員の失敗はなかったことに
・掲示板やMLを使って議論を始めるSE
・何でもメールで連絡してくるSE
・権力や地位に弱い事業部長
私は大企業の社員として働いた経験がない。大企業のプロジェクトに参加することはあっても、立場が「プロマネ」でなくて「社外コンサル」である。この本に書いてある風景は、ときどき見るなあ、と思いつつ、当事者でないので、疑問や怒りもわかない。ただ、大きな組織の中の論理って複雑だなと思う。社外コンサルとしてはそうした事情も理解しておかねばならないわけで、この本は勉強になった。
私が頻繁に遭遇し不思議に思うのは、プロジェクトの顔合わせで、大企業の社員同士またはグループ内同士で名刺交換をする風景だ。確かに初対面だから名刺交換してもおかしくはないのだけれど、挨拶含めて長時間に及ぶこともある割に、実は名前を覚えられなかったりする。
あれは方程式にするとn×(n-1)だ。10人、20人いたらば大変である。10人×(10-1)枚で90枚の名刺が飛び交う。20人だと380枚だ。あれはやはり無駄なんじゃないかなあ。その後もメーリングリストも作るの決まってるわけだしって、いや、私がわかってないのかもしれないが...。あ、その名刺は再生紙でしたか。失礼。
と、あまり、こういう話を広げて書くと隊長(先日の某所での再会と楽しい懇談とネクタイ批評ありがとうございました)風になるので、ここらへんで提言に向かうとして。
名刺の交換でなくてポジションペーパーの交換に変えてみるのはどうだろうか?。
・ポジションペーパ方式
http://eto.com/d/0403.html#1-wx_JFWRdTXUHIYPZXc3g
一緒に中国を旅したエトさんの説明。
- ポジションペーパとは「立場表明書」を意味する。
- 参加者各自が現在の自分の立場をA4一枚にまとめ、配付する。
- それぞれが5分づつ、そのペーパーを元に発表を行う。
- 参加する全員が配付し、発表することが重要。あらかじめ人数分コピーする。
各自がA4一枚の大きさ内で自分が今考えていること,みんなに伝えたいことを
まとめて,それを全員に一枚づつ配付する.(名刺代りにもなっている.)
こうすることによって,各自が考えていることをコンパクトに伝えられる.
この本、軽い読み物として楽しめたが、プロマネをやっている人にはただ日常が書いてあるだけ?
2005年01月16日
情報と国家―収集・分析・評価の落とし穴
■データ、インフォメーション、インテリジェンス
戦争が起きるとよくテレビに登場する軍事問題評論家 江畑謙介氏。この人、普段は何を考えているのだろうと気になって手に取った本。イラク戦争や北朝鮮問題をめぐる主要国家の情報戦略を事例をあげて説明していく。
まず国家が情報を収集し評価分析し意思決定を行う際の、3つの単位を定義する。
データ
断片的でそれだけでは何を意味するか分からないもの
インフォメーション
データを種類ごとに集めたもの
インテリジェンス
インフォメーションを分析、評価したもの
インテリジェンスのための国家の情報収集手段には、次のような手法があると説明されている。
人的情報収集(HUMINT) スパイ、内通者を潜入させたり、亡命者から聞き出す
映像情報収集(IMINT) 衛星による高解像度画像の分析
通信情報収集(COMINT) 電話など通信の傍受
電子情報収集(EMINT) インターネット、デジタル情報を分析する
信号情報収集(SIGINT) 電磁波情報から移動車両や武器の所在を割り出す
日本はこうした情報収集活動を行う専門組織をほとんど持たないが、近隣周辺諸国の情報収集は、ラヂオプレスという組織が一手に引き受けているという。
・財団法人 ラヂオプレス
http://www.koueki.jp/disclosure/ra/radio/
この財団は外務省の情報部ラジオ室海外放送受信部を前身とし、当初は英語放送の受信と分析を行っていたが、大戦後に民間組織となったらしい。今でも外務省国際情報統括官組織第1国際情報官室の管轄下にある。北朝鮮の情報などはこの組織が入手しているのだという。
そして、こうして集めた複数の情報を統合、分析することをマルチ・インテリジェンスと呼び、現代の情報戦略の主流となっている。
■公刊情報中心のインテリジェンスの時代
国家の情報収集といえば、連想されるのはスパイの諜報活動であるが、そうした隠れた情報がインテリジェンスの中心の時代は終わっているそうだ。現代の政府の情報収集は公刊情報(公開された情報)が中心であり、テレビやラジオ、出版物、インターネットなどから情報を引き出し、分析することで、意思決定の9割近くの判断材料を集めているのだという。
そして公刊情報中心の活動になると、情報がないことが問題であることは少なく、情報が多すぎてどれが信頼できる情報なのか分からないことが、大きな問題になっているという。これはITの普及で一般人も同じ感慨を持っているだろう。
米国CIAは衛星やハイテク装置による技術情報収集に頼る部分が大きく、スパイや内通者との取引による人的情報収集は得意ではないらしい。著者によると、イラク戦争で実在しなかった大量破壊兵器の存在を、米国は本気で信じていたらしいのだが、これは人的情報収集が弱かったが故の判断ミスであるらしい。
機械的に集めた情報だけでは、判断を見誤ることがあるわけだが、逆にこの曖昧さを政治に使うのが米国は得意でもあるようだ。
・Space Imaging
http://www.spaceimaging.com/高解像度衛星イコノスの写真をビジネスにする米国企業。
■国家の情報戦 結論ありき、映像情報は出したもの勝ち、真実を見ない組織
高解像度の画像を撮影する衛星を保有する国は少ないため、米国は衛星写真を国家間の情報戦で強引に活用している、という。例えば政府の広報が「これが敵国の毒薬と爆薬の製造基地の衛星写真です。ここに3トントラックとクレーンがあります」などと発表する。だが、衛星写真レベルでは建造物や車両があるのは分かるが、専門家でもそれが何なのかを特定することはほとんど不可能なのだという。数少ない他の衛星保有国の諜報機関はその嘘に気がつくことがあっても、特別な利害関係がない限りは、間違いを指摘して米国と対立する判断は取らない。結局、米国は写真を出せば国際世論を動かせる出したもの勝ちな状況にあるそうだ。
電話傍受の録音資料も同様で、大抵は文脈が不明な会話の断片を自国に有利に引用しているだけで、決定的な内容であることがほとんどないという見方をする。確定的なことはなくても情報の政治的価値があれば使われる。
この本に引用されたマイヤーズ米統合参謀本部議長の言葉が印象的だ。
「
インテリジェンスは必ずしも真実であることを意味する必要はない。インテリジェンスはその状況における最良の推測であればよい。最良の推測とは、事実である必要を意味しない。要するに、判断決定ができればそれでよいのだ
」
最初に「イラクをぶっつぶす」決定ありきなのだ。上がってくる情報のうち、イラク戦争肯定に役立つ情報だけを吸い上げていく。こうした上層部を持つ諜報組織のメンバーは、次第に上司の気に入る情報しか報告しなくなっていく。
著者によると、フセイン政権はまさか米国が本気で攻めてくるとは信じていなかったのだという。米国以上にイエスマンだらけの部下を持つフセインは裸の王様で国内も把握できていなかった。米国侵攻があれば国民が立ち上がって徹底抗戦すると疑わなかったらしい。どんなに先端技術があっても、情報を扱う組織が真実を求めていなければ機能しない。これが国家レベルの情報戦略の問題であるとこの本は結論している。
■北朝鮮弾道ミサイルの性能、ノドンの数
第3部は北朝鮮の兵器の配備状況に関するインテリジェンスを分析する。兵器の専門家である著者の知識が一番、活躍するところだ。北朝鮮が発射し日本を飛び越えて太平洋に落ちたとされる弾道ミサイルについて、メディアは脅威と報じたが、そうではないのではないか?という。ミサイルの弾頭はできても、実用精度で弾頭を飛ばすには別の技術が必要で、弾道弾の実験一回程度では兵器としてはまったく完成できないのではないかという。米国が調査したノドンの配備数も情報の出所が非常に怪しく、信用できないものらしい。
もし今後、北朝鮮に大量破壊兵器の保有を理由に有事が発生するとしたら、イラクのときと同じ間違いを起こすということになるだろう。米国の大本営発表しかないとしたら、日本や小国も追随して判断を間違うことになる。
著者は日本政府が専門の情報収集部門を持たないことを批判しているが、これは一理あるのかもしれない。情報がなければ私たち国民も、判断をすることができないわけだから。
感想としては、国家の情報収集というのは企業や個人の情報収集とは目的や評価の軸がまったく違うのだということ。意外に国の秘密というのは外からはつかめていないものなのだなあという意外性。
2005年01月15日
複数の画像を一枚の巨大画像に詰め込む 画像詰め込みEXE
・画像詰め込みEXE
http://comet.endless.ne.jp/users/tuno/soft01.html
本来の用途が何なのか分からないが、使い方によってはとても効果的なプレゼン、発想支援ツールになるソフトを発見。
画像詰め込みEXEは指定したフォルダ以下の画像の大きさを自動判定しながら、可能な限り多数の画像を詰め込むレイアウトを探して、一枚の巨大画像として出力してくれるソフトウェア。
私のブログで最近使った画像のフォルダを対象に1600×1400の大きさで詰め込んでみた。書籍の表紙イメージやアプリケーションの動作画面など。
自分が何らかの作業で使った画像や写真が一覧できると、いろいろなことを思い出す。記憶が掘り起こされ、類似した要素がつながりを見せ、発想が広がってくる。ハードディスク上の画像を週単位で詰め込んで”今週の画像”として保存していったら、情報密度の濃い記録になりそうだ。
もっと真面目な用途としては、Web制作の際に使うデザイン素材の候補一覧を作って詰め込み画像をつくり、結果を画面や紙に出力して、皆で眺めながら選ぶのにも使えそうだ。小さな素材をひとつひとつ見るよりも、一覧で比較やバランスを確認できるので実用的だろう。
毎月、買ったものの画像を集めておいて詰め込み画像化するのもいいかもしれない。1年分を合体させれば、自分の関心やお金の使い方の把握ができる。
まだまだ詰め込み画像はアイデア次第で使えそう。このツールは面白さ先行なので、本末転倒のようだが、用途を探そう。
2005年01月14日
Webページを任意の倍率で拡大縮小するルーペ「大好き」
・大好き (D@isuk1)
http://members.jcom.home.ne.jp/dvsoft/
Internet Explorerのツールバーとして動作する表示倍率変更ソフト。
たとえばYAHOO!JAPANのサイトは通常このように表示されているが、
倍率を高めると次のように表示される。
逆に倍率を最小まで下げてみると縮小もできる。
文字や絵が小さくて見えないときに、このツールが活躍する。最大・最小の倍率や表示レイアウトは設定で変更が可能。標準倍率に戻すにはツールバーをダブルクリックすれば良い。
2005年01月13日
福祉工学の挑戦―身体機能を支援する科学とビジネス
著者は福祉工学研究35年、現在、東京大学先端研の教授。
福祉工学とは、「失われたり衰えたりした感覚や手足、脳の機能を、機械で補助・代行する工学分野」で、近年、社会の高齢化によって、障害を持つ人たち以外にも、ニーズが広がることが予想されている。
英語ではAssistive Technology(支援工学)と呼ばれる。人間の改造を中心とする医療工学とは区別され、人間の非改造を基本として、人間の周辺を改造するという立場をとる。具体的には人工聴覚や人工視覚、看護の支援ロボットなどの開発が含まれる。著者の研究室にそうした技術の具体例が多数示されている。
・伊福部・井野研究室 ホームページ
http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/index.html
・触覚を利用した聴覚補助装置(タクタイルエイド,タクタイルボコーダ)
http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/01tactile.html
・人工喉頭
http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/02yourtone.html
・人工内耳
http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/04interear.html
・音声-字幕変換システム
http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/03onsei-jimaku.html
■福祉工学とビジネス 地域の特殊性、対象への愛着がカギ?
福祉工学とビジネスの関係もこの本のテーマのひとつとなっている。
身体の障害は人それぞれであるため、応用製品は多品種少量生産にならざるを得ない。だから、大企業よりベンチャー企業や町工場が得意とする分野であるかのように思える。しかし、実際にはベンチャーが製品化に成功してしばらくすると、大企業が参入してきて市場を独占してしまうことも多いらしい。著者の関係したコンピュータ操作支援ソフトでの苦い体験も綴られている。
この本で福祉工学のビジネス化についての目の覚めるような解決策というのが提示されるわけではないのだが、いくつか考えるヒントになる提言があった。
ひとつは地域性の特色を活かせということ。北海道大学に長く滞在していた経験からの言葉だが、北海道の場合「寒さ」「積雪」「広域性」の3つが地域の特色である。温度差による人体影響の研究や、積雪時にも使える車椅子、点字タイルの開発などは北海道でなければ長期間研究ができなかったはずだと言い、中央でないからこそ、生まれる研究成果を大切にせよとアドバイスしている。
もうひとつ面白かったのは日本のロボット工学がなぜ世界の先端を進めているのかの分析。日本人はロボットを鉄腕アトムのような人間の味方として愛着を持つ人が多く、それが研究が盛んな理由なのではないかとする考察。
・森山和道の「ヒトと機械の境界面」バックナンバー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/backno/kyokai.htm
ロボットとヒトの関係について詳しいサイエンスライターの森山氏のサイト
■五感で感じ取れるようなものが発見につながる
地域の切実な需要だとか、愛着を持っている対象というのは、”本物”のニーズであり、競争力のある研究になる可能性が高いということかなと思った。このほか、五感を大切にするといいという指摘もあった。
著者の長い研究史を眺めると、意外なところに発見があるものだと感心する。九官鳥、インコ、コウモリ、腹話術の研究が、人工声帯の開発に役立ってしまったりする。きっかけは予算で九官鳥を消耗品として購入して研究室で飼う、コウモリを洞窟へ捕獲しに出掛ける、腹話術の大会で講演するなど、机上にとどまらない行動だった。見事に研究の突破口につながっていく。
「
手に取れるような等身大のもので、五感で感じ取れるようなものからの発想が意外と役立つ場合がある
」
というのは福祉工学に限らず研究の極意のように思えた。
■生体機能から生活機能の支援へ。移動、コミュニケーション、情報獲得
著者は、障害者支援を「特殊な境遇の人のための特殊な領域」と見るのではなく、高齢者・病人・幼児などの身体的弱者を支援する社会システムの一つとして考えようとする、世界保健機関(WHO)の提言を支持している。そして、生体機能の障害を補助するという観点から、活動や参加といった、生活機能の充足を実現するための技術開発という方向性が必要だと唱える。
著者の在籍する東大先端研では生活するうえで最も必要な支援技術として、
・移動
・コミュニケーション
・情報獲得
の3つを重点課題として設定しているという。行く、話す、知るということが、活動や参加の原点で、生活の質を引き上げる主要素だということだろう。
引き上げる、支援するだけでは終わらないかもしれないとも思った。障害者があるが故にその他の感覚が研ぎ澄まされて、いわゆる健常者にはない能力を得るケースもあるようだ。全盲の人の中にはモノの気配を感じ取って衝突を避ける能力がある人がいるらしい。この本で紹介された研究によると環境音の反射からモノの位置を割り出すことができるという。耳が聞こえない人の中には読話術といって口の動きから会話を推定する能力を持つ人もいる。マスクをしていても高確率で分かるとも言われる。
こうした技術を突き詰めていくと、まるで超能力のような、まったく新しい能力の開発やロボット開発にも福祉工学は寄与するかもしれないと感じた。
■Windowsのユーザ補助機能
福祉工学と言えるかどうかは知らないが、Windowsにもコントロールパネルを開くと「ユーザ補助」の機能設定パネルがある。ここには普段見慣れない設定が多数用意されている。
例えば視覚が不自由なユーザのために、画面コントラストを大きくする機能。このチェックボックスをオンにすると、
このように、
大きなフォントで白黒のユーザインタフェースに変化する。他にもマウスをテンキ操作できるようにしたり、サウンド再生時に画面を点滅させる機能などがある。場合によっては障害がないユーザでも使えそうな機能だなあと思った。
身体が不自由な人にも、そうでない人にも便利な支援アプリケーションは市場が大きそうだ。音声認識、画像認識、読み上げ、その他、チャンスはどこらへんにあるだろうか。








