2004年01月16日

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・創造学のすすめ
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失敗学会という妙な名前の真面目な学会がある。「特定非営利活動法人「失敗学会」は、広く社会一般に対して失敗原因の解明および防止に関する事業を行い、社会一般に寄与することを目的とする」もので、失敗事例の研究を行っている。会長は東大名誉教授の畑村洋太郎氏で、科学技術振興事業団の失敗データベースも統括している。

・失敗学会
http://www.shippai.org/shippai/html/
・失敗データベース
http://shippai.jst.go.jp/

この畑村教授は本来は創造学の研究者でその近著がこの本である。失敗と創造の両方を研究しているところに興味を持った。

■科学的創造の理論TRIZ

創造学というとTRIZ理論が知られている。この本でも少し紹介されたし影響を受けているという。

・TRIZホームページによる解説
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/IntroJCS011104/IntroJCS011104.html


旧ソ連で1946年に, 海軍の特許審査員G.S. アルトシュラー(当時20才) が, 多数の特許の中には, 似た発想や類似の考え方が, 別の分野で, 別の時代に, 別の問題で適用されていることに気付いた。"独創的" な発明にも, 自ずからパターンがあると認識した。そこで, 優れた特許から, 発明のパターンを抽出し, それを学ぶことによって, 誰でも発明家になれるだろうと考えた。試行錯誤と偶然のひらめきに頼らなくてよくなるだろうと考えた。

250万件以上の世界の特許を分析し、創造の法則を抽出した結果、アルトシューラーは、
40の発明の原理、76の発明の標準解、技術システムの進化のトレンド、アルトシューラーの矛盾マトリックス、ARIZ (発明問題解決のアルゴリズム)などからなる一大発明理論を確立した。

このTRIZ的な発想をコンピュータ支援するソフトとしてインベンションマジックがある。米国Invention Machine社が開発した発明支援アプリケーションである。実は私、このソフトをある方から頂いて手元に持っている。

・“発明”を支援するソフト登場 科学技術原理をリンクし,複合技術を提案抗
http://nmc.nikkeibp.co.jp/kiji/c5303.html
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光や音や熱、摩擦や重力など科学技術原理が1600種類データベース化されており、ユーザはそれらの原理データを組み合わせて、回路のように、発明品を作る。各種係数を変化させて、出力の違いを検証したりすることができる。

私は科学者ではないから、よく分からなかった。結構高いソフトなので、猫に小判だったのかもしれない。この本ではTRIZの限界が語られている。TRIZの原理や発明法を組み合わせて、ある程度自動的にアイデアを得たり、構造を作れても、具体的な発明品にまで落とし込むのは極めて難しいという。ソフトだけではだめということか。

とても参考になった著者の言葉があった。引用させていただくと、


「最近私は具体化とは具体の世界から上位概念へ『登ってみる』ことだ」と考えています。たしかにプロセス上は上位概念の世界から具体の世界へ「降りる」のですが、実際には自分の頭の中にある具体の世界のものを、上位概念の世界でつくりあげた全体構造に当てはめてみるのが具体化の実体です

発明も企画の発想も、頭で考えるのだけれどそれだけではだめで、実感や経験を伴わない創造は大抵は無意味なただの組み合わせに過ぎない。そういうことと思った。

■アウトプット型創造法:思考平面図から思考括り図、思考関連図、思考展開図

著者の創造の定義は明快である。すべては要素、機能、構造の3要素から構成され、創造とは「新しい機能を果たすものを作り出すこと」である。そして、模倣、定式を経て真の創造があるとし、ベースとなる模倣や思考の定式も解説される。

理論よりも実践部分が本論と思った。思考平面図から思考括り図、思考関連図、思考展開図という順でKJ法的にアイデアをまとめた地図を作成するアウトプット型創造法が紹介される。例えば最終形である、思考展開図は要求機能、機能、機能要素、機構要素、構造、全体構造の6つの領域に横軸に並べて、対応するアイデアをこの流れに置いていく手法である。

一人一人が自分なりの思考展開図を作った上で、ディスカッションを行うことで、グループの創造性が豊かになる。一般的にグループでは、参加者が提出した、部分的アイデアを集めても、意味のある創造にはなりにくい。各自思考回路が違うからだ。展開図の構造理解を経験した参加者同士ならば、共有する知識ベースができて共創が可能になる、ということである。

創造法や思考法は、メソッドやフレームを共有したメンバー同士であるとうまく共創原理が働くと思う。さらに多数の思考法を状況に応じて繰り出せる人、メタ創造ファシリテーターというのがいるともっとうまくいく、ような気がしている。創造の技法、アイデア勝負の今の時代に求められている技術と思った。

読みやすい本で勉強になった。企画プロデューサ、商品開発に関わる人におすすめ。

#忘年会議おもしろかったよーと言ってくださる方の声に嬉しくなって今年は、創造法を試す会議イベントを連続開催しようと田口氏と企画しています。もうすぐお知らせできるのでぜひ一緒に試してください。よろしくお願いします!。


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Posted by daiya at 2004年01月16日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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